医学界新聞

2013.11.18

第1回日本看護理工学会開催


真田弘美理事長
 日本看護理工学会の第1回学術集会が,10月5日,東大本郷キャンパス(東京都文京区)で開催された。同学会は,看護学,医学,工学・理学の周辺領域の専門家が互いに協調連携することで,療養環境の向上に貢献する新技術の創成を目的とし,今大会では看護分野における新規介入機器開発に関する研究など,66の演題が発表された。

看護学と理工学,領域を超えた研究で快適な療養環境の実現を

 理事長を務める真田弘美氏(東大大学院)は,快適な療養環境を実現して患者のQOLを高めるためには,看護の臨床現場から発したニーズと基礎研究者のシーズを汲んだ工学研究者によるプロダクトの産生が必要と語り,看護理工学の発展に期待を寄せた。また,副理事長の土肥健純氏(東京電機大)は,「どんなに良い機器が開発されても,看護の臨床現場の実情に即していなければ活用されない。これからは看護学と理工学の専門家が互いに仲間となり,医療機器の開発に取り組んでいかなければならない」と述べ,領域を超えた研究開発の重要性を訴えた。

 第1回学術集会のテーマ「集」から,今学会を新たな集いの契機としてほしいと述べたのは大会長を務める森武俊氏(東大大学院)。工学領域出身の氏は,これまで自身が行ってきた工学と医学の協調研究を紹介した上で,工学も医学・看護学も,実社会における問題解決を目的に人間・ヒトを研究している点で共通していると指摘。すでに高い評価を得ている日本の看護師の臨床行動を一層向上させるためには,理工学の新たな科学的知見に基づいた先端技術の導入が有用との考えを示した。

 特別講演「スーパーコンピュータ『京』で医療・看護がこう変わる」(座長=真田氏)では,東大大学院工学系研究科の高木周氏が登壇し,スーパーコンピュータ(以下,スパコン)で発展するこれからの医学・医療について語った。「京」は,毎秒1京回の計算速度を誇る世界屈指の日本製スパコン。氏が「京」用に開発を進めている「生体力学シミュレータ」は,筋骨格や臓器の変形から血流まで,ヒトの体内で起こる動きをわずか2分間でシミュレーションするソフトウェアだ。例えば血流のシミュレーションの場合,医用画像で判別可能な大きな血管はもちろん,毛細血管の赤血球や血小板の動きまで計算できるのは,現在のところ「京」のみ。将来的には,個々の患者のCTやMRI等の画像データを用いてシミュレーションを行うことで,個別の病状に応じた進行予測や手術計画を立てる臨床応用も可能だという。また,長期的には病態解明や新たな治療法の開発にもつながると考えられている。氏は,「スパコンを用いた研究は始まったばかり。シミュレーション研究を通して新しい医学・医療の創出に貢献したい」と今後の展望を述べた。

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