第39回日本看護研究学会開催
2013.10.21
第39回日本看護研究学会開催
石井範子会長 |
◆夜勤のリスクに対し,どのような対策を講じるか
はじめに登壇した緒方泰子氏(東医歯大大学院)は,米国のマグネット病院に共通する組織特性を反映して開発された尺度「PES-NWI」を用い,都内5病院の常勤看護師1067人に対し,職場環境の在り方について調査した結果を報告した。「就業継続意向」は「看護管理者のリーダーシップ」に左右され,「離職率」は「病院全体の業務における看護師の関わり」や「ケアの質を支える看護の基盤」が関連する。「個人的達成感」は,「人的資源の適切性」「病院全体の業務における看護師との関わり」が要因となり,組織の意思決定への看護師の参加,看護部から個々の看護師への支援やキャリアアップの機会提供,患者への十分な看護提供が実感できることなどが達成感につながるのではないかと考察した。
夜勤のリスクを踏まえ,看護の生活質向上に向けた改善策を提示したのは佐々木司氏(労働科学研究所)。「人員を増やせば改善するか」という提起に対し,2人夜勤と3人夜勤では身体活動量に大きな変化はないという自身の研究結果を提示。看護師が担うべきケア(看護)よりも,キュア(治療)を優先せざるを得ず,身体活動量が減らない実態があるのではないかと解説した。その上で,労働条件の改善策として,(1)System(勤務制度・夜勤人員),(2)Work(やらなければならないことの改善),(3)Job(やることとやらないことの決定)の3点を挙げ,(3)を最優先に解決することとして提案し,「看護師の生活の質改善のためには,他のコメディカルにキュアの役割を効果的に割り振ることが必要だ」と述べた。
12時間の二交代制勤務による看護師の負担軽減の取り組みを紹介したのは眞野惠子氏(藤田保衛大病院)。同院では8-17時の「日勤」,8-21時の「日中勤」,21-翌日8時の「夜勤」の勤務体制を採用。最大の特徴は「4連休がとれる」労働時間の設定だ。この制度には仕事と生活両方の充実が図れるだけでなく,災害ボランティアの活動に当てられるメリットもあるという。一方,超過勤務が発生したときの翌日への影響,急な勤務変更による疲労蓄積,長期休暇明けの状況把握に時間がかかる点などがデメリットとして挙げられた。課題克服には,希望をかなえるための日ごろのコミュニケーションや申し送り時の「わたす」「引き受ける」,超過勤務にならないよう「逆算する」の徹底を継続していくことがポイントだと語った。
最後に登壇した小川忍氏(日看協)は「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」の作成に携わった経験を踏まえ,ワーク・ライフ・バランス推進の方策を紹介。管理者による現状把握と対策の立案・実施,それに対して現場の意見をボトムアップできる仕組み作りが必要と述べた。さらに,基礎教育・現任教育でも,教員や看護管理者が安全衛生教育を徹底させ,夜勤・交代制勤務のリスクを教えてほしいと訴えた。
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