第3回日本看護評価学会開催
2013.03.25
第3回日本看護評価学会開催
シンポジウムのようす |
“学士力”を活かす方法を議論
現在,国内にある看護系大学は209校。文科省からは「看護実践能力育成の充実に向けた大学卒業時の到達目標(看護学教育の在り方に関する検討会報告)」(2004年),「大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会最終報告」(2011年)が出されるなど,看護基礎教育に対する大学への期待は高い。
はじめに大学教員の立場から,京都橘大の河原宣子氏がキャリア教育の現状を解説した。同大では入学から卒業までの4年間を通じて「キャリア開発演習」を開講し,段階的,継続的なキャリア教育を実施。知的好奇心を持って,看護学を主体的に学ぶことのできる基礎的能力の育成をめざしているという。氏は同演習における各学年での到達目標を示すほか,授業を通して先輩から後輩への知の伝達が図られていることを報告。「看護師としてだけでなく,人間としての成長を支えている」とその効果を語った。
大学卒業者と専門学校の卒業者の新人職員を比較して「差は感じられない印象」と発言したのは,北里大病院看護部長の別府知恵氏。「臨床現場で身につけるべきことは,臨床現場でなければ身につけられない」と述べ,新人職員はすべて基本的な看護技術の研修が必要であり,新人期に抱える悩みも同様であると考察した。氏は,看護技術は臨床経験によって向上すると述べ,看護基礎教育に求めることとしては,チームワークやリーダーシップ,コミュニケーションスキルといった基本的な態度や能力の養成を挙げた。
女子医大病院看護部では,多様な教育背景を持つ看護師の育成を充実させるため,2010年から「クリニカルコーチ」制度を開始した。一定のキャリアラダーレベルを達成し,かつ看護師長の推薦を受けた看護師が,コーチングスキル,ナレッジマネジメントなどの研修を経た上でクリニカルコーチとして認定される。クリニカルコーチとなった看護師は,自部署の看護師の指導・支援やキャリア開拓・発達に関する相談を受けるなどの役割を担う。クリニカルコーチの一期生として活躍する武部恵子氏は,活動内容を概説するとともに,新人看護師,実地指導者,チーフナースなど相手の経験年数や立場によって声掛けの言葉を使い分けるなどの実践例を示した。
総合討議では,各シンポジストの施設で行われている取り組みに対してフロアからの質問が相次いだ。座長の佐藤氏は「看護基礎教育と卒後教育,大学教育と専門学校教育など,各現場の担当者がさまざまな接点を持ち,相互の理解を深める必要がある」と語り,シンポジウムを締めくくった。
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