Team-Based Learning の試行(井部俊子)
連載
2011.10.24
看護のアジェンダ | |
看護・医療界の"いま"を見つめ直し,読み解き, 未来に向けたアジェンダ(検討課題)を提示します。 | |
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井部俊子 聖路加看護大学学長 |
(前回よりつづく)
大学は,学生の夏期休暇中に,看護職向けの継続教育を実施している。認定看護管理者ファーストレベル講習の教育課程責任者である私にとって,8月下旬から9月は臨床家(2011年度受講者は97人)と議論を交わす重要な時期である。最近の傾向として,認定看護師や専門看護師が看護管理に乗り入れてくる。なぜそうするのか,資格を取るために複数回にわたって現場を離れることは社会的損失ではないのかと問うと,「いや,そんなことはない」と彼女たちは反論する。
認定看護管理者制度
看護職以外の読者のために,認定看護管理者制度の概略を記す。
日本看護協会は,1993年から看護管理者教育と資格認定制度(1998年に認定看護管理者制度と改称)を発足させた。認定看護管理者教育課程は,ファーストレベル(150時間),セカンドレベル(180時間),サードレベル(180時間)があり,実務経験5年以上の看護職が受講できる。認定看護管理者カリキュラム基準を満たしていると判断された教育機関が教育を行う。2011年1月現在,認定看護管理者教育機関は61施設であり,ファーストレベル55課程,セカンドレベル55課程,サードレベル13課程の計123課程となっている。主として都道府県看護協会が教育を担っていた時代から,現在は看護系大学の開講が増加している。なお,看護管理経験者や大学院で看護管理等を専攻した者は,全課程を修了せずに認定審査を受けることができる。資格認定を受けた者は5年ごとの資格更新審査を受けなければならない。2011年9月現在,1339人の認定看護管理者が登録している。
TBLの採用
ファーストレベルの教科目は,看護管理概説(15時間),看護専門職論(30時間),ヘルスケア提供システム論(15時間),看護サービス提供論(45時間),グループマネジメント(30時間),看護情報論(15時間)で構成される。
私は毎年いくつかの授業を担当している。今年の新メニューは,看護サービス提供論の一環として「交代制勤務と夜勤」を組み込んだことである。受講生には事前課題として,『ルールがわかれば変わる 看護師の交代勤務』(佐々木司著,看護の科学社,2011年)を学習してくることを課した。次に,2時間半の授業時間をどのように効果的に使うかということを考えた。講師が一方的に「講義」をするというこれまでのやり方に不全感を感じていた私は,この夏に本学のFD研修会で学んだTeam-Based Learning (TBL)を採用することにした。
多人数でも可能なグループ学習の原則と学習活動プロセス
TBLは「チーム基盤型学習」と訳され,1970年代後半にLarry Michaelsonが着想したものである1)。彼は,オクラホマ大学ビジネススクールの教育スタッフとして,学部の定員増によって40人から120人までのクラスを担当することになった。そこで,知識を“応用する”ことのできるグループ学習を多人数のクラスでも可能とする方略を考えた。
TBLには4つの原則がある。原則1は,グループは適切に編成し,かつ運営すべし。原則2は,学生が自分の学習の質かつグループの学習の質に責任を負うべし。原則3は,学生に即時にかつ頻回にフィードバックすべし。原則4は,学習を促し,かつチームの成長を促進するチーム課題を与えるべし,である。
チーム基盤型学習の学習活動プロセスは,個人学習(予習)に続いて,個人テスト,チームテスト,アピールの時間,教員による口頭のフィードバックの後に,応用重視の演習を行う。
「交代制勤務と夜勤」のクラスでは,冒頭に個人でテストを行い,それらをもとにチームで討論してチームの回答を作成し発表する。チームごとに「なぜそう考えたのか」をアピールし教員がコメントする。そして,提示された課題にチームで取り組む。私が作成した「準備課題テスト」と「チーム討議課題」を図に示す。この方法の手ごたえにわくわくしている。
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図 TBL形式の講習「交代制勤務と夜勤」で筆者が用いた課題 |
(つづく)
参考文献
1)Larry K. Michaelson 編著,瀬尾宏美監修.TBL――医療人を育てるチーム基盤型学習.シナジー;2009.
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