第3回日本医療教授システム学会開催
2011.03.28
医療ニーズに応える学習法を議論
第3回日本医療教授システム学会開催
第3回日本医療教授システム学会が3月3-5日に木村昭夫会長(国立国際医療研究センター病院)のもと,学術総合センター(東京都千代田区)他にて開催された。標準的な医療を安全・確実に提供できる医療職の育成システムの改善・構築をミッションとした本学会。今回は,医療における多種多様なニーズに対応する教授システムの開発をテーマに,各分野における学習法を取り上げた演題が並んだ。
本紙では,効果的な学習法について議論が白熱したラウンドテーブルディスカッションと,臨床研究の促進に向けた特別講演のもようを報告する。
効果的な学習法を双方向で議論
木村昭夫会長 |
本セッションは,参加者が数人単位のグループに分かれ,グループごとに議論を行うとともにファシリテーターと意見交換を行うユニークなもの。このような双方向のセッションは,参加者全員の思考を共有できることから欧米を中心に人気を集めているという。
セッションではまず,池上氏,鈴木氏が研修の効果・効率・魅力を高めるためのシステム的なアプローチに関する方法論である「インストラクショナルデザイン(ID)」の概要と自らのIDとのかかわりを紹介。さらに,グループ内の議論から出た教育への疑問点や悩みを,IDの考え方に基づいて両氏が解説を試みた。
「学習者のレベルが異なる場合,どのような教育体制をとればよいか」という問いでは,学習者のレベルに関係なく,必要な教育プログラムを実施することが肝要と説明。目標とするアウトカムを達成できるまで繰り返し実施することが重要だという。一方,教育時間は限られているため,予習を課すことが効果的と強調。予習せざるを得ないよう研修の最初にテストを行うことが有効との見解を示した。教育を時間で区切る"履修主義"では学習者のアウトカムはそろわないことから,アウトカムの達成度で評価を行う"修得主義"に基づいた教育体制を求めた。
このほか両氏は,学習者にとって魅力的な研修とするための"ARCS理論"や,大人の学びを支援する"成人学習理論"など,IDの理論を参加者の悩みに合わせ適宜解説。日々の教育活動の向上へのIDの活用を要望し,本セッションをまとめた。
"準備"と"機会"で臨床研究を促進する
医学・医療の進歩は日々の研究によってもたらされるが,臨床の現場でいざ研究を行おうと思うと二の足を踏んでしまう医療者もいるのではないだろうか。特別講演「臨床研究をどう促進するか」では,国立国際医療研究センターで臨床研究の教育・支援に当たる新保卓郎氏が,個人,施設の両面から臨床研究の実施に必要なことを解説した。
氏によると,診療を支える情報を生み出す臨床研究は臨床スキルの一部であるという。氏は,古代ローマの哲学者セネカの言葉,「幸運は準備と機会が出合って訪れる」を引用し,臨床研究も知識や意欲といった"準備"と"機会"があって初めてうまくいくと説明。日常診療での疑問を研究開始の契機とし,それを適切なリサーチクエスチョンに変換するための知識を得ることが重要とした。また,一人ではアイデアなどにも限界があることから,研究の最初の段階から同僚や上司とディスカッションした上で進めていくことを提案した。
研究の実施に当たっては,施設からの支援が重要と強調。同センターでは,臨床研究支援室を設置し,臨床研究のコンサルティングを行うとともに,支援室が研究の進捗管理やデータマネジメントを行うデータセンターとしての機能を担っている。また若手による研究を促進するため,院内で競争的資金を提供しているという。
以上から,施設としての支援体制の充実を考慮すべきと氏は結論付けた。
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