医学界新聞

2011.01.17

理学療法学教育への共用試験導入に向けて


 理学療法学教育の標準化に向け,OSCE(客観的臨床能力試験)をはじめとする共用試験の導入に関心が集まっている。さる12月4日にユビキタス協創広場CANVAS(東京都中央区)にて開催されたフォーラム「理学療法士育成における臨床教育の再考」では,こうした臨床教育の現状と課題について問題提起が行われた。

 本フォーラムは,「理学療法士育成の教育基盤となる,臨床実習前の到達度確認試験の開発と普及プロジェクト」(文科省「産学連携による実践型人材育成事業――専門人材の基盤的教育推進プログラム」受託事業)の一環として開催された。これは,知識確認テストとOSCEから成る共用試験のプロトタイプ開発を行い,臨床実習に必要な学習目標達成の標準化をめざすもの。複数の教育施設と臨床実習施設が連携して進められており,今回はプロジェクト協力校における活用事例も報告された。

 講演では,奈良勲氏(神戸学院大)が理学療法士臨床教育のあらましと現在の問題点を,内山靖氏(名大)がこれに呼応する形で今後考え得る解決策をそれぞれ概説。学外臨床実習が拡充される傾向にある一方,実習カリキュラムが卒後の臨床現場に即していない現状が確認された。またその解決のためには,教育施設間の到達目標が標準化されるべきこと,さらには,公平で妥当性の高い共用試験がその一助となる可能性が高いことが示唆された。

 続くパネルディスカッションでは,日ごろ臨床実習に携わるパネリストらが各施設の研修内容や到達目標,評価方法を提示。基本的な接遇マナーや心構えを学生に教える過程での苦労はどの施設も共通であり,ポートフォリオなどを活用し学生が自らフィードバック学習を行う必要性が説かれた。また,教育施設の目標設定と実習施設での指導が施設間で異なる問題に対し,実習参加レベルの目安や達成度の評価基準としてOSCEが活用できる可能性が示唆された。プロジェクト開発モデルの紹介では,プロジェクト協力校から「学生へのフィードバックに有用」などの報告があったほか,OSCE実施中の映像を使っての判定体験が行われた。実習担当者間のコンセンサスを高める必要性や評価の統一方法など課題も少なくないながら,共用試験の導入には現場の関心も高いとみられ,最後まで活発な質疑応答が展開された。

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