医学界新聞

2010.07.19

看護の未来に向けて
「看護業務実態調査」に協力を


 2010年3月19日に出された厚労省の「チーム医療の推進に関する検討会」報告書を受け,看護業務実態調査が開始された。本調査は,医療機関等に勤務する医師・看護師を対象に,チーム医療検討会報告書で「特定の医行為として想定される行為例」として列挙された行為約200項目について,実際に現場で実施しているかなど実態を調査する,国内初の大規模な調査である。調査結果は8月中にとりまとめ,今後の議論に反映するという。

 本調査の目的や意義について,「チーム医療推進のための看護業務検討ワーキンググループ」のメンバーである真田弘美氏(東大大学院)に伺った。


真田弘美氏
――「看護業務実態調査」の目的は何ですか。

 今,チーム医療における看護師の活躍が注目されています。「チーム医療の推進に関する検討会」報告書では,チーム医療の推進に資するよう看護師の役割を拡大するためには,(1)看護師が自律的に判断できる機会を拡大するとともに,(2)看護師の実施可能な行為を拡大し,能力を最大限に発揮できる環境を用意する必要があると示されました。

 看護師の力を十分に生かすことが,現在の日本の医療にとって最も重要な課題となっています。看護師は患者さんに一番近い立場で仕事をしますので,適切なタイミングで有効なケアを提供できる場面はたくさんあります。ところが,看護師は「診療の補助」として医行為を行うことができるとされている一方で,個々の医行為が「診療の補助」の範囲に含まれるか否かについては不明確なことが多く,看護師が実施してもよいかどうか迷う場面もありました。

 そこで,今回,看護師が「診療の補助」として安全に実施することができる行為の範囲を明確にするために,看護業務に関する実態調査が行われることになりました。実際に病院や診療所,または在宅の現場でどんな医行為が行われているのか,まず現状を知った上で,さらにどんなことができるのか,これからを考えていくことが重要となります。そのために,この調査がされることになりました。

――どのような調査がなされるのですか。

 現在,看護師がどのような業務を実施しているか,今後,看護師や特定看護師(仮称)がどのような業務を実施することが可能かなどについて,医療現場の実態把握を行う予定です。

――特定看護師(仮称)には,どのような役割が期待されているのでしょうか。

 「チーム医療の推進に関する検討会」報告書では,特定看護師(仮称)は専門的な臨床実践能力を有する看護師で,従来一般的には看護師が実施できないと理解されてきた医行為を幅広く実施できる新たな枠組みとして提案されています。例えば,急性期では,人工呼吸器装着中の患者のウィーニングスケジュール作成・実施と抜管の実施に至るまでの一連の行為,また慢性期では褥瘡などのデブリードメントを判断し実施できるような看護師などがこれに当たります。今までの看護師と異なるのは,端的に言うとより高度な医行為を実施するという点です。

――この調査の結果は,今後どのように活用されていくのですか。

 本調査の結果は,今後看護師や特定看護師(仮称)がどのような業務を実施することが可能なのか検討するときの基礎資料となります。病院や在宅での訪問看護など,さまざまな場面で看護師が専門性を発揮し,患者さんに対して適切なタイミングで安全に看護を提供するために重要な調査なのです。本調査の結果が看護師の今後の未来を決定することは間違いないと思います。

――調査は,どのような方法で行われるのですか。

 本調査は全国調査となっていますが,自由参加ではありません。対象となる施設には研究班から依頼状が届きます。調査は,原則Webを利用して行われ,指定されたURLにアクセスして回答します。いつでも,どこからでもインターネットに接続できる環境があれば,回答できます。ただし,所要時間が30分以上かかるので,まとまった時間がとれるときにお願いします。

――最後に,メッセージをお願いいたします。

 先ほどお話ししたように,この調査は私たち看護師の未来を左右する調査でもあり,また,患者さんやご家族のための看護をますます発展させられるチャンスです。回答の依頼が来た場合は,ぜひご協力ください。また,看護師だけでなく,医師も調査対象です。医師にも一緒に回答してもらえるように働きかけをお願いします。

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