医学界新聞

対談・座談会

2010.04.12

【座談会】

グローバルヘルスにおける“がん対策”のいま

赤座英之氏(東京大学特任教授・先端科学技術研究センター 総合癌研究国際戦略推進講座)=司会
David Hill氏(国際対がん連合(UICC)理事長)
Jae Kyung Roh氏(延世大学教授・腫瘍内科学)
Xi-Shan Hao氏(天津医科大学学長)


 2009年11月12―14日につくば国際会議場(つくば市)で開催された第20回アジア太平洋癌学会(Asia Pacific Cancer Conference;APCC)では,海外から32か国300人,国内より200人の参加者を迎え,アジア太平洋地域のがん治療の現状と方向性が議論された。アジアにおけるがん患者の急増は,世界全体のがん問題にもつながる喫緊の課題である。しかし,国際保健においてはHIVやマラリアといった感染症の問題がいまだ主流で,途上国を中心にがん問題の大きさが認識されていないのが現状だ。そこで本座談会では,「グローバルヘルスにおけるがん対策」という新しい視点で議論を展開したい。日中韓それぞれの立場からのがん対策を,世界のがん問題を統括する国際対がん連合(UICC)からの視点も交え幅広く語っていただいた。


がんはグローバルヘルスの中でどんな位置を占めるのか

赤座 APCCでは長らくアジアのがん研究を行ってきましたが,私が会長を務めた今回の第20回APCCでは,初めてワーキング・グループ(WG)による事前準備という仕組みを設けました。これは,アジアと欧米の疫学的背景の対比からその根底にある問題を浮かび上がらせることを目的としたもので,私はこの対比の中に世界のがん克服の鍵があると考えています。そこで,膀胱がん,腎がん,子宮頸がん,肝がん,胃がん,前立腺がん,大腸がん,乳がん,肺がん,疫学,がん登録,医薬品開発の各分野でWGを組織し,その問題点の解決法について十分議論するとともに,問題解決の糸口を見いだすことをめざしました。

 国際保健の世界では,いまだに途上国のがん問題があまり認識されていません。ですので,われわれは既存の枠組みの中でもできることから始める必要があります。がんは今後,国際医療連携の一つの柱になることは明らかですが,研究の進展に比べて連携のための言説をこれまであまり構築してきませんでした。その反省からAPCCの準備を兼ねて組織されたアジアがんフォーラムでは,国連大学などで内外の有識者を交え議論を積み上げてきました。

 本座談会では,今回のAPCCの議題である「What should we do to raise awareness on the issue of cancer in the global health agenda?」(がんをグローバルヘルスアジェンダにするには何をすべきか)の視点に立ち,途上国のがん急増を受けて,グローバルヘルスにおけるがんについて議論します。UICCの立場からは,Hill先生はがんの問題をどのようにとらえていますか。

Hill 今後,がんが世界,特に発展途上国で大きな悩みの種になっていくことは明らかです。がん罹患率の増加と平均寿命の延長との間には,確かにある程度の因果関係がありますが,UICCではがんは単なる老年病の一種ではなく,それよりも広い概念の疾患と考えています。

赤座 老年病という考え方では,がんを理解することはできないということですね。

Hill はい。さらに政策的な見地から言っても,単に老年病の一種として位置付けられたら,社会や公共団体の興味は得られませんので,やはりがんを老年病の一種として考えるべきではないでしょう。そして,何よりも多くの発展途上国や新興国では,がんの予防や改善の機会がたくさんあるにもかかわらず,それがほとんど行われていないという現実があります。

 UICCでは,「World Cancer Declaration」でがんへの決意を示しています。これは世界中でますます大きな問題となるがんに,注目を集めさせるための運動で,政府や行政にがん対策を働きかけるものです。われわれは,早々にがんという問題にまじめに取り組まなければ事態は悪化する一方だと考えています。

赤座 そうですね。特にアジアでがんは急増していますから,われわれAPCCもグローバルヘルスアジェンダとしてがんを位置付けることに責務を負っていると認識しています。

ダイナミックに変貌を遂げるアジア

赤座 今回われわれは,「Cancer Control Setting the Focus on Unique Asian Pacific Contributions」(アジア・太平洋地域ができる貢献に焦点を当てたがん管理)として,アジアのがんの状況を分析することが欧米も含めた世界全体のがん克服につながると考えたわけですが,まずアジアのがんの状況について,Roh先生にお聞きします。

Roh はい。ではまずその前提として,アジアの経済とアジア人の疾患パターンの変化からお話ししましょう。日本やシンガポールのような早くから欧米諸国並みの発展を遂げた国は,複雑で多様性のある社会となっています。一方でアジアには,例えばアフガニスタンのように戦争で苦しむ国があれば,東南アジア諸国や中国,韓国のように過去数十年でようやく経済成長を果たしてきた国もあります。欧米諸国は,概ね足並みをそろえて成長してきましたが,アジアの国々の成長は非常にダイナミックな一方で,バラバラであるとも言えます。

 韓国の話をすると,約10万km2の小さな国土におよそ5千万人が暮らしています。経済成長が始まった1960年代には平均年収は150ドルぐらいだったと思いますが,今日ではそれが2万ドル以上となりライフスタイルは急変しました。過去30年のアジアの国々の変化をみると,どの国も西洋的なライフスタイルへと変わり,結果として得たものと失ったものがあるように思えます。つまり,その地域独自の文化や倫理が失われる一方で,平均寿命の延長や健康の向上を得ることができたわけですが,それががんの増加と直結しているのです。

赤座 韓国におけるがんは,現在どのような状況になっているのですか。

Roh 韓国でも1983年以降,がんが死因の第1位となっています。1位となった当時のがんによる死亡者数の割合は11-12%程度でしたが,今日では死因の約30%はがんです。また,がん罹患率も10万人中250人に上っています。がんが増加した理由には確かに寿命の延長があるのですが,がんの種類を見ていくと,アジアで伝統的に多い胃がんやウイルス性の肝細胞がん,がん腫などは大幅に減ったのに対し,大腸がんや前立腺がんなどが増えてきました。私がまだ学生だった約40年前は,前立腺がんは非常にまれだったと記憶しています。

 経済成長を図ろうとするアジアの国は多くありますが,結果として現在の韓国のようにがんの急増を招く危険性があります。また,東洋的なライフスタイルを失うことにもつながりますので,西洋的なライフスタイルとの親和性の向上を図ることが大きな課題でしょう。ただ,私は東洋的なライフスタイルを忘れてはいけないと考えています。

赤座 幸いかどうかはわかりませんが,韓国も日本も小さな国です。ですから,ほとんどの国民が医療を平等に受けることができています。

 少し前にカザフスタンの腫瘍内科医と話す機会があり,腎がんとその治療薬について話をしたのですが,カザフスタンでも欧米とほぼ同様に最新の分子標的薬が使用可能であるにもかかわらず,人口の約5%でしかその薬を使えないというのです。それは主に経済的理由からです。そこでHao先生にお聞きしたいのですが,中国は国土も非常に大きく,医療システムを享受できる人とできない人がいると思います。アジアという地域自体にも国ごとに格差がある状況ですので,アジア各国間の違いで考えたほうが容易だと思いますが,治療機会の不平等という問題についてはどのようにお考えでしょうか。

Hao 世界のがん患者の半分はアジアにおり,さらにその半分が中国にいます。中国は現在13億人という膨大な人口を抱え,約20年前の市場経済化から経済が急成長したのと同時にがん患者数も急増しました。2009年9月に中国の国家衛生部長(日本の厚生労働大臣に相当)から聞いた話ですが,中国でもがんが死因の第1位だということです。都市部では2001年からがんによる死亡が最も多かったのですが,今日では農村部を含めても死因の第1位となりました。

 中国の国土に目を向けると,東部と西部とでは大きな経済格差があります。今日,中国政府は格差の問題に注目し始め,西部および中央部の経済発展を推進しようとしていますが,まだ10-20年はかかると予想されます。中国対がん協会のがん専門医とも話すのですが,今は医療システムの平等化よりも政府ががん問題を注目するよう働きかけることが先決です。幸い中国政府は,これまでも少しずつがん問題に目を向けてきました。例えば,1987年から子宮頸がん検診を実施し,2008年からは乳がんの無料検診も始まりました。乳がん検診は,これまでに中国全土で53万人の女性が検査を受けましたが,とても良いプログラムです。とは言え,政府のみならず社会にもがん問題に目を向けさせることが大事でしょう。2010年8月にUICC世界がん会議を中国の深セン市で開催する予定ですが,社会や専門家などの協力を得て,「がんは予防できる」ということを知らしめたいと模索しています。

がん予防と文化

赤座 「がん予防」は,これからのがん対策のキーワードになりますね。

Roh 1970年代以前,韓国のB型肝炎ウイルスのキャリアは人口の8-10%ほどいました。最近では,ほとんどの子どもは予防接種を受けているのでキャリアの割合は人口の約2%です。これは喫煙防止活動を通じて喫煙率を下げた後,30年ぐらい経ってやっと肺がんの患者数が減ったケースを考えるとわかりやすいのですが,がんの予防では実際の効果につながるのは20-30年後になります。それと同様に,B型肝炎ウイルスキャリアの減少の結果,韓国では徐々に肝臓がんの件数が減ってきています。

 また,子宮頸がんでも同じことが言えます。私がまだ学生だった70年ごろ,東部の農村部の公共医療機関に見学に行ったのですが,当時からスメア法による子宮がん検診が始まっていました。そして検診が普及した結果,もともと女性で最も多いと言われる子宮頸がんによる死亡者数は,普及から20-30年を経て6番目まで順位が下がりました。がんの予防と制御のためには,その原因を防ぐ活動が非常に大事となるのですが,結果が出るまでに多くの時間が要求されることがわかります。

Hill われわれ医療者には,がんを予防する機会と手段は既にある程度あります。また,今後の研究の進展からそれはさらに増えるでしょう。しかしそれだけでは駄目で,その機会と手段を人々が十分に利用するように,一人ひとりの行動や習性を変化させることが必要です。つまり,これまではがんの生理学的な研究が多くなされてきましたが,これからは人々に効率よくがんの予防法を教え,動機付けるための行動科学を研究することがとても大事なのです。

 私は,アジアでもがんの分野における行動科学の研究を進める必要があると考えています。実は,人々の「習性」は文化によって決まるものなので,単に欧米の研究成果をまねるだけではうまくいきません。アジアで行動科学の研究をすることに大きな意味があるのです。

赤座 人々ががんの予防に目を向ける「文化」を育む必要がありますね。今回のAPCCでは,「Culture and Cancer」というセッションを目玉の一つとして設けました。文化人類学者が病気を語ることはよくありますが,アジアの一流のがん研究者たちが,それぞれの置かれている文化とがんの関係について語ることはこれまでになかった試みです。医療連携を進めるためには,それぞれの文化によるがんの違いを丁寧に理解していかなければなりません。

■世界の医療格差から考える「平等」とは

赤座 われわれは,UICCの方針を実現するためのがん対策を,筑波宣言(MEMO)として第20回APCCでまとめました。医療における不平等や不均衡は,アジアのみならず世界中で見受けられます。いかにしてより平等で素晴らしい医療システムを世界に構築していけばよいか,UICCの観点からお聞かせください。

Hill まず,医療システムの強化や医療連携の仕組み作りが必要ですね。この仕組みはがんだけでなく,他の病気に対しても大きな影響を及ぼすでしょう。また,子宮頸がんにおけるHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンのような,がん予防の手段と機会を提供することに努めなければならないと思います。オーストラリアでは,費用はかかりますがHPVワクチンを若い女性に無償で提供し,その結果子宮頸がんがゼロに近づいてきています。世界の必要とされる地域でこのワクチンを適切に使うことで,女性のがんの上位にある子宮頸がんが20-30年後には70-80%減ることも考えられます。

Roh B型肝炎の予防接種も有効ですね。

Hill はい。面白いことに,感染症を予防する手段やアプローチと似たような方法で,がんを予防することができる場合が多くあります。

 一方で,生活習慣によって生じるがんに対しては,人々の習性の変化が必要です。これはRoh先生が指摘されたように,単に西洋のライフスタイルにおける不健康な部分を避けるだけでは不十分です。私が一つ気になるのは,アジアではタバコに十分な課税を行う国が少ないことです。疫学からタバコが原因となるがんの割合を算出し,科学的根拠を示すことでタバコ税の増税を行い,さらにがん対策の資金調達にもその税が活用できるかもしれません。

Roh 韓国では国会議員がタバコへの増税に反対していた経緯があります。われわれ医療者は患者を診るだけではなく,議会や行政を説得する義務もありますね。

赤座 予防を「差し迫った問題」としてとらえ計画的に政治が働けば,行動変容を伴う予防,例えば禁煙などは比較的平等にできるかもしれませんね。しかし,それだけではなく膨大な費用がかかるかもしれませんが,治療や診察に関しても平等な医療システムの可能性を探るべきだと私は考えます。今は世界中にITが普及したため,例えばインドネシアの地方部に住んでいる人でも新薬の情報を入手することができます。しかし,貧しい人にはそれを利用する機会がありません。この状況を改善することは非常に大きな課題だと思います。

Hao 平等な医療システムというのは,薬剤だけではなく診察も含め,すべてのがん患者に最も効果的な治療を行うことです。例えば,HPVワクチンは中国では経済的な理由から臨床研究が行われず,またAIDSも先進国では治療薬がありますがアフリカではそれを使用することはできません。これが薬を開発した先進国と,途上国の患者との格差です。もちろん,がん患者に最も効果的な処方と薬へのアクセスを平等に与えたいのですが,そのためには経済成長が必要です。そこでまずは,政治や行政機関,またUICCのような国際機関などの協力を得ながら,世界中のキーマンに呼びかけてグローバルヘルスとしてこの問題に取り組むべきです。

Hill 不平等や貧困とがんには相関関係があります。がんの制御がうまくできなければ経済成長は途切れますが,同様に経済成長がなければがんをうまく制御するのは困難なのです。今後,がん問題に対し何らかの措置を取らなければ経済成長にも悪影響を及ぼすことを訴えれば,各国の政府がわれわれの議論に目を向けるようになるかもしれませんね。

 世界を見渡せばがんの治療が問題となっている国はたくさんあります。まず確保したいのは十分な手術の機会,そして放射線療法,最後に化学療法です。アフリカには放射線の照射装置さえない国もあります。また,手遅れになる前に患者さんが受診することも必要ですね。そのためには,まさに「教育」と「医療」の協働が必要だと思います。

Roh 途上国以外でも,いかに予防を安価に普及させるかが大事になってきました。韓国の医療界では,常に新しい技術や薬を早く取り入れようとする傾向がありますが,それには膨大な資金が必要です。韓国政府からの支援はあるのですが,それだけでは足りず結果として国民健康保険では保障できない薬や技術が多くあります。これはほかの国も同様だと思いますが,新技術・新薬を積極的に取り入れる前に,まず予防と制御を図り,予防接種などを提供すべきだと思います。例えば新薬も,10年ぐらい経てば特許が切れ価格も安くなります。また,その間にそれを平等に提供できるシステムも出来上がっているはずです。がん治療では,多様な科学や分野を融合することが大事です。

 一つ例を挙げると,腎臓がんでは泌尿器科医が腎摘出術を行うことで完治をめざせるのですが,がん細胞が肺に転移した場合,現状では手術は不可能ですので抗がん薬などで平均3-4か月寿命を延ばすことしかできません。また,最新の薬物療法は非常に高価です。完治が望めない現状では,やはり予防したほうが医療経済的にも優るでしょう。また,手術可能なうちにがん細胞を見つけることも大切ですね。

■日中韓が力を合わせて行うがん対策

赤座 われわれは医療格差の大きなジレンマを抱えていますが,日本,中国,韓国の3か国で協力体制を作り,がんを「グローバルヘルスアジェンダ」として世界に認識させ,国際貢献をしていくことはできそうですね。

Hao いいアイデアだと思います。東アジアにある日中韓の3国は,歴史的にも共通するところがたくさんあります。多様な文化を持ち経済もバラバラに成長しているからこそ,お互い協力し合うことが非常に重要です。日本は平均寿命が世界一であり,韓国は非常に優れた医療システムを持っています。ですので,われわれ3国が率先してがんの予防を訴えることで,アジア全体に影響を及ぼすことが可能だと思います。

 同時に,アジア特有の問題もあるので,アジアの文化にも目を向ける必要があります。例えば,食生活を考えるとアジア人は米から作った酒やビールを主に飲みますが,西洋人はウイスキーやワインも多く飲みます。アジアでは塩辛い食べ物や豆腐,一方,西洋ではバターやチーズ。食べ物のほかにもアジアと西洋の違いはたくさんあります。研究や調査を通じて,多様なアジア人の食生活とがんの関係性を明らかにするのは,われわれアジア人の世界に対する責務です。

赤座 UICCの立場からは,日中韓でがん対策を考える組織を作ることをどう思われますか?

Hill なかなか難しい問題ですね。世界には何らかの機構が必要なのは間違いないと思いますが,UICCとしてどのような援助ができるかはまだわかりません。UICCの活動範囲に入る組織であれば,他の地域にとっても良い手本となりますので,もちろんUICCは興味を持って支援すると思います。

Roh 文化的違いを研究するための行動科学の専門家も日中韓に必要ですね。さらに政府の援助が得られるよう各国を説得する必要があります。われわれの提案は国民の健康にかかわるものですので,ぜひ政治家にも協力してもらい,議論の最前線に立ってもらいたいと思います。

アカデミアで広げる地平

赤座 エビデンスあるデータで方向性を示し,関係機関を動かせる政策提言能力をがん領域で作り上げることが必要な局面になってきたということだと思います。

 私はこの4月から東京大学先端科学技術研究センターでがんの国際連携戦略を担う任に就きました。そこでは,分子標的薬などの抗がん薬のうち,副作用や効果が日本人を含むアジア人に特有のプロファイルを示すものについて,ゲノム情報と臨床データを比較検討し,人種特有の要因を洗い出そうと考えています。さらに,安全で効率的な抗がん薬の使用法の提言をめざし日中韓のアカデミアとも連携していきたいと思っています。

 一方で,このような科学に裏付けられた国際連携を進めることで「グローバルヘルスアジェンダ」としてがんをとらえ,国際機関を巻き込んだがん国際連携の可能性を模索し,がん対策における理論を積み上げる準備を,アジアがんフォーラムの河原ノリエ氏に担当してもらって進めています。これは,「限られた医療資源の中でいかに医療を行うか」「地球規模課題と国内問題の調整をいかにするべきか」など,国際公共政策や医療社会経済学などの重要な検討課題を含みますので,がん研究全体の底上げにつながるものです。がん研究者のみならず,まさに人類の叡智を結集した知的共有基盤が形成できると思いますので,みなさんぜひ力を合わせていきましょう。

(了)

編集室註:本座談会は2009年11月13日,第20回APCC会場にて収録しました。

MEMO 筑波宣言
第20回APCCでは,新しい時代のがん制圧に向け下記の5つの課題を「筑波宣言」としてまとめ,赤座学会長のもと宣言した。

(1)アジアのがんの現状について,国際社会に広く認識させる
(2)がん研究と交流の推進を果たすAPCCの役割強化
(3)富の偏在と医療の不平等の克服
(4)アジアにおける抗がん薬の普及
(5)UICCとの協調


赤座英之氏
1973年東大医学部卒。同年同大泌尿器科教室入局後,三井記念病院,都立墨東病院などを経て,86年東大医学部泌尿器科講師。97年筑波大泌尿器科教授。2010年4月より現職。第44回日本癌治療学会総会会長,第20回APCC会長を務める。編著に『標準泌尿器科学』(医学書院)などがある。

David Hill氏
メルボルン大修了後,1986年ビクトリアがん評議会にがん行動研究センターを設立し,がんの治療や予防の研究に従事。2008年より現職。また現在,ビクトリアがん評議会議長も務める。がんの治療および予防について,医学や公衆衛生分野のほか心理学の面からの研究に関する多くの著書を発表している。専門はがんにおける行動科学。

Jae Kyung Roh氏
1973年延世大医学部卒。卒後,同大にて臨床研修を行う。米国ジョージタウン大に留学の後,89年延世大准教授。95年より現職。2006-08年まで韓国がん協会議長を務めるとともに,現在,韓国科学技術者連盟(KFST)副会長,韓国生命倫理委員会委員長を務めている。専門は消化器がん。第18回アジア太平洋癌学会会長。

Xi-Shan Hao氏
1970年天津医大卒。84-86年米国メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターに留学。現在,中国対がん協会長,中国医師連盟副会長,UICC理事などを務める。久留米大,英国ダンディー大で客員教授も務める。2010年UICC世界がん会議(中国深セン市)では会長を務める予定。腫瘍外科や免疫学,生物療法,疫学分野での編著書多数。

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