医学界新聞

2010.03.01

第1回日本臨床試験研究会開催


シンポジウムのもよう
 第1回日本臨床試験研究会が大橋靖雄会長(東大)のもと,1月22日にニッショーホール(東京都港区)にて開催された。新薬開発や医学のエビデンス構築のためには質の高い臨床試験・研究が必要とされるが,わが国では質・コスト・時間の問題から試験・研究が遅々として進まず,世界から取り残されつつあるのが現状だ。知識,技術の向上および臨床試験・研究の推進と質向上をミッションとして設立された本研究会では,臨床試験・研究に携わるアカデミアや企業の専門職が一堂に会し,熱い議論が交わされた。

 シンポジウム「研究者主導臨床試験の支援をどうするか」(司会=順大・佐瀬一洋氏,北里大・青谷恵利子氏)では,特に基盤整備が遅れている研究者主導臨床試験の推進に向けた取り組みについて,5人の演者が報告した。

 まず,荒川義弘氏(東大病院)が東大病院における支援体制について発言。同院では,2001年に発足した臨床試験部を発展させ,本年4月からは「臨床研究支援センター」として組織的な支援を行うという。課題として研究者の育成や試験を貫徹できる実施体制の構築を挙げ,サイエンスとオペレーションの両面から臨床試験・研究の支援を行うことが重要と主張した。

 松山琴音氏(臨床研究情報センター)は,トランスレーショナルリサーチ推進拠点の立場から臨床試験・研究の支援について述べた。氏の施設では現在,全国の120の試験を包括的に推進・管理し,そのうち2件で治験に進むことができたという。

 樋之津史郎氏(京大)は,さまざまな臨床研究に携わった経験から,研究を進める上でのデータマネジメントの重要性について発言。研究者主導臨床試験は比較的小規模かつ複雑なものが多く,研究に適したシステム構築が重要となるため,データ管理の知識と経験のある医師の育成を訴えた。

 生物統計家の立場からは大津洋氏(東大)が登壇。生物統計家の活躍の場を広げるため,臨床試験全体を理解し,研究デザインやプロトコル作成にも関与できる存在として医学研究者と共に歩む必要があるとの見解を示した。

 最後に,新美三由紀氏(京大病院)がコメディカルの視点から支援方法を紹介。京大病院では臨床試験の実施計画書のテンプレートを用意し,コメディカルがプロトコルコーディネーターとして計画書を管理しているという。研究者にしか書けない研究の背景情報や目的以外の項目は,計画書作成などの支援ができると提案した。

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