医学界新聞

2009.11.30

海外専門医制度に学ぶ医療のかたち


 日本専門医制評価・認定機構が主催する海外専門医制度についてのセミナーが,10月20日,東京ステーションカンファレンス(東京都千代田区)にて開催された。医療崩壊が叫ばれるなか,診療科の偏在を解消し効率的な医療制度とするためにも,医療者・患者がともに納得できる専門医制度の構築は喫緊の課題となっている。本セミナーでは,講師に米国専門医認定機構(The American Board of Medical Specialties:ABMS)のKevin B. Weiss理事長と,ドイツの神経病理学の専門医資格を持つ堀映氏(福祉村病院長寿医学研究所)を迎え,日本ではどのような専門医制度を作っていけばよいか活発な議論が交わされた。


Kevin B. Weiss氏
 講演では,まずWeiss氏が米国の専門医制度を紹介。1908年に眼科から始まった米国の専門医制度は,共通組織の必要性から1933年に設立されたABMSを中心に,約100年をかけて発展してきたとのこと。そして現在では,ABMSの傘下に内科など各専門科の24のボード(認定機関)が作られ,約90万人の米国の医師のうち85%が何らかの専門医資格を持つと述べた。ABMSは専門医の教育水準の設定や専門医認定を自主的に行う組織であり,傘下のボードは学会や医師会とは利害関係がないため,専門医基準の相互評価を行い質の向上にも貢献しているという。

 米国の専門医制度はかつては生涯免許であったが,1982年に試験による更新制となった後,2000年からはMOC(Maintenance of Certification)というプログラムを導入しているとのこと。これは専門医の質の担保を目的とし,試験や自己評価に加え,患者による調査や同僚医師間の調査も行い診療の質向上に努めるものである。氏は,MOCの利点として,最新の医学の情報が得られるとともに,公的保険からのインセンティブがあること,また医師が適切な能力を保持していることの国民への証明になると説明した。今後はシミュレーション教育などをMOCに追加し,生涯教育への応用とともに医師免許の取得制度にも応用できないか検討していると氏は報告した。

 また,米国での最新の動きとして,オバマ大統領による医療改革と専門医認定の国際プログラムについて紹介。国際プログラムとして,世界と歩調を合わせ各国の見習うべき部分を取り入れながらよりよい専門医制度を構築していく必要があるとの見解を示した。

 引き続き,ドイツの専門医制度について堀氏が紹介した。ドイツでは,専門医制度は規則,試験,認定のすべてを医師会(医師免許を有する者はすべて加入の義務がある)が司るとし,各州ごとに地方医師会が作成した専門医制度を州当局が承認することで法的拘束力を持って専門医教育を行っているという。専門医教育は,医師会が認定した施設で専門医資格を持った医師の指導の下で行い,各施設には定員が存在することから,そこで医師数の調整も行われる。なお,専門医試験は口頭試問により行い,その場で合否が判明するシステムとのこと。

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