医学界新聞

2009.09.28

第19回日本外来小児科学会開催


 第19回日本外来小児科学会が8月28-30日,原朋邦会長(はらこどもクリニック)のもと,大宮ソニックシティ(埼玉県さいたま市)にて開催された。小児科医不足,小児救急体制整備,虐待の予防と早期発見,予防接種の普及と承認の遅れなど,小児科にかかわるさまざまな問題について,活発な議論が行われた。


原朋邦会長
 会長講演「八百屋医者を目指して45年」では,原会長の「八百屋医者」にかける思いが語られた。氏は,1973年から国立西埼玉中央病院に勤務した経験などから,外来には幅広い年齢層と疾患を抱える患者が訪れることを指摘。外来小児を担う医師に必要なことは,多様な患者の初診の窓口となり,専門医への紹介も含めた適切な対応をとる「八百屋医者」であることだとした。その上で,「八百屋医者」育成の方策について,日々の業務に埋没せずに新たな知識を吸収できるような課題を与え続けることなどを挙げた。また,そのような教育を実施できるような指導医の育成も必要であるとした。

保護者への指導にも効果 小児救急とトリアージ

 教育講演「外来でトリアージを実施するためのヒント」(座長=外房こどもクリニック・黒木春雄氏)では,2人の演者により小児救急トリアージの現状が報告された。

 涌水理恵氏(筑波大)は,小児救急におけるトリアージの意義について概説。まず,小児患者は,患児本人が明確に症状を訴えることができず,重症と軽症の患児が混在しているとし,小児救急におけるトリアージの有効性を指摘した。また,トリアージは,核家族化の影響を受けて子育ての助言を得にくい保護者に受診の必要性の判断基準を指導する場ともなり,救急外来の混雑を緩和する効果もあることを挙げた。最後に,トリアージにおいて誤解されやすい点として,トリアージは診察前だけに行うものではなく,緊急度の程度に応じて反復的に行うものであるとし,注意を促した。

 続いて登壇した小児救急看護認定看護師の三浦英代氏(清瀬小児病院)は,同院で実践しているトリアージを紹介。同院のトリアージは,「蘇生」「緊急」「準緊急」「非緊急」の4レベルで,トリアージのプロセスは3ステップから成る。第1ステップは「全身状態の評価」で,来院時の呼吸状態,循環状態および,呼びかけへの反応などの一般状態をチェックする。第2ステップでは,保護者記入の問診表の情報をカナダ小児救急トリアージ・救急度判定ガイドラインの「緊急度分類表」に当てはめる。続いて第3ステップでは,同ガイドラインの「バイタルサイン評価表」に基づき,体温・心拍数・呼吸数などを測定する。必ず3ステップをふむのではなく,容態が悪い場合には途中のステップでレベルを判断する。トリアージによって診察の順番が遅れることへのクレームは少なく,診察前に概ねの緊急性がわかることなどから患児・家族の理解も進んでいるという。

 その後の質疑応答では,「患児の容態によっては,トリアージの順番を考慮するべきなのではないか」など現場からの生の質問が飛び交い,会場が一体になって議論が行われていた。

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