医学界新聞

2009.07.27

第43回日本作業療法学会開催


 第43回日本作業療法学会が6月19-21日,太田睦美会長(竹田綜合病院)のもと,ビッグパレットふくしま(福島県郡山市)にて開催された。今学会のメインテーマは「社会の変化と作業療法士の役割再考――すること,できることからの創造」。社会の変化を受け,作業療法士がいかに役割を果たしていくか,7つのシンポジウムなどにおいて議論された。


作業療法士の役割再考

太田睦美会長
 全シンポジウムの基調に位置づけられたのが学会長講演である。太田氏は江戸落語の調子で,長屋のご隠居と大工見習いの小僧との掛け合いを演じ,「社会の変化」「作業」「療法」「士」「役割」「再考」の語を解題した。作業療法士の役割を,(1)ニーズのある人に作業療法を直接提供すること,(2)より有効な作業療法を開発して人々に提供すること,(3)集団の作業を地域づくりに結びつけること,の3点にまとめ,特に,作業療法に研究と開発の余地が残されていることを強調し,“役割再考”を会員に促した。

国民に作業療法を供すために

今回の学会事務局の合言葉は「一人ひとりが主役になれる学会」。学会のエンディングもそれを体現したもので,地元の福祉団体による打楽器合奏と合唱だった。学会員も一緒に盛り上がった。
 会場がほぼ満席となったシンポジウム「作業療法士はこれから何をすべきか――新たな作業療法の創造に向けて」では,4人の演者が今後の作業療法士のあるべき姿について提言を行った。

 佐竹真次氏(山形県立保健医療大)は,読字障害児へのイラスト漢字を用いた介入研究から論を展開。子どもを良質な作業の結び合わせ(joint attention)に導くために,「発達支援学」ともいえる領域の開発と実践が必要であると強調した。

 野中猛氏(日本福祉大)は,作業療法士には,ケアチームの視点より,ケアマネジャーの視点と技術,チームのつなぎ役と作業分析,そして何よりもリカバリー支援が求められていると語った。

 畠山卓朗氏(早稲田大)は,生活支援におけるテクノロジー活用の視点から言及し,利用者へのよりよい支援を行うためには「気づき」に出合うことが大切で,そのためには利用者との場と時間の共有や,先入観の排除などが求められるとした。

 中村春基氏(兵庫県立西播磨総合リハビリテーションセンター)は,患者に対し,その人らしい生活の再構築を行うことが大切で,作業療法を共有することが患者の自立への第一歩であると述べた。

 最後に会場からの「作業療法士をひと言で説明すると?」との質問に対し,佐竹氏は「打ち出の小槌」,野中氏は「チームの中において素晴らしい職種」,畠山氏は「支援技術者や工学者にとって最大のパートナー」,中村氏は「作業を通して人と社会を元気にする職種」と返答し,盛況のうちに本シンポジウムを締めくくった。

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