医学界新聞

2009.05.11

第27回臨床研修研究会開催


シンポジウムのもよう
 第27回臨床研修研究会が4月11日,ホテルラフォーレ東京(東京都品川区)にて開催された。「新医師臨床研修制度を検証する」をテーマとし,全国から多くの研修病院の代表者が集まるとともに2010年度に予定されている臨床研修制度見直しについて多くの議論が交わされた。本紙では,制度見直し後に必修とされる地域医療研修について,その在り方を取り上げたシンポジウム「望ましい地域医療研修とは」(司会=佐賀大・小泉俊三氏,佐久総合病院・髙橋勝貞氏)のもようを報告する。

 まず向原茂明氏(長崎県庁)が,行政側からの地域医療研修の意義を取り上げ,離島医療圏を持つ長崎県を例にへき地医療推進の経緯を述べた。また,行政側からみた地域医療研修体制充実のために,課題として,保健所機能の低下,医師の偏在,専門医不足を挙げ,地域医療を支える総合医の育成や,専門医と総合医の割合の適正化が必要と言及した。

 庭山昌明氏(小千谷市魚沼市川口町医師会)は,小規模医師会における大病院からの研修医の受け入れについて報告した。地域医療は医療者のみではなく住民・行政が一体となることが必要で,地域医療研修もこの視点が必要と指摘。医師が医師を育てるこれまでの研修から,地域が医師を,また地域が医療を育てる仕組みが重要と結論づけ,そのためにはプログラムのほかに地域そのものにも魅力が必要とまとめた。

 また,大都市病院での地域診療所研修の取り組みについて田中雄二郎氏(東医歯大)が報告。地域では手術等の東京ではできない経験もでき,広い視点が身につけられるとした上で,診療所研修が永続するためには研修医・診療所・患者のそれぞれにメリットがあるようなプログラム作りが重要と主張した。

 由井和也氏(佐久総合病院)は,10週間にわたる同病院での研修プログラムの内容を解説。アンケート結果からも,大多数の研修医から今後の臨床に役立つと評価を受けていると報告した。また望ましい地域医療研修とは,「住民のいのちと環境を守り,生きがいのある暮らしが実現できるような地域づくり」に目を向ける姿勢を養う場であると結論づけた。

 最後に,中規模病院での研修プログラムとして岡村博氏(みさと健和病院)が,在宅医療やフィールドワークを取り入れた地域の中核病院としての地域医療研修の取り組みを報告。研修医の感想として,「私の患者は地域に守られている」「いろいろなスタッフの連帯で医療が成り立っている」などが得られたとした。

 このほか,恒例の厚労省・文科省との協議が行われ,田原克志氏(厚労省医師臨床研修推進室長)から今年度のマッチングスケジュールやプログラム作成の考え方が示された。

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