医学界新聞

2009.04.27

大学での保育・育児支援を考える


 東医歯大女性研究者支援室(荒木葉子特任教授)によるシンポジウム「都市部大学/大学病院における保育・病児保育について考える」が3月12日,東京ガーデンパレスで開催され,参加した各大学の試みが伝えられた。

 渡井いずみ氏(東大)は,「世界のトップ大学の一員となるためには,保育所は必須のインフラである」という考え方のもと,女性研究者の支援を重要な戦略と位置づけ,東大の充実した保育環境(現在では4キャンパスに7保育園がある)を紹介した。また,斎藤加代子氏(東女医大)は,女性医師がキャリア形成より子育てを優先せざるを得ず,その結果講師以上の職の女性比率が,医学生のそれに比べ極端に低いことや,子育てとキャリアアップを両立したロールモデルが存在しないことを指摘。同大では,短時間勤務・フレックス制の導入,病児保育所の開設といった研究・保育両面からの支援を行っているという。また氏は,同様の状況にある者同士が協力し合う,ピアサポートの大切さも主張した。

 湯村和子氏(自治医大)は,ベビーシッター制度(ファミリーサポート),保育ルーム,それらサポートシステムの核となる保育サポーターの養成など多彩な支援活動の展開を報告した。氏は,いったん仕事を辞めてからの復職支援より,短時間でも仕事を継続できるよう,子育てとの両立を支援することが最も理想的であると強調した。そのほか保育領域の中で最も社会的取り組みが遅れているという病児保育を専門に,主に都内で業務展開するNPO法人フローレンス・堀江由香里氏も報告を行った。

 その後のパネルディスカッションでは,子育てや勤務の形態から生じる多様なニーズに応えるために,支援方法のカスタマイズの必要性や,研究補助員の増員などワークシェアの積極的な導入・推進が提案された。参加者からは,子育て中は無報酬で大学に所属し研究をしていること,そういった事情に対し行政や教育機関,さらには研究者同士の理解が不十分であるという訴えがなされるなど,働く女性研究者の身分保障と,周囲の意識改革の重要性があらためて浮き彫りとなった。

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