医学界新聞

2009.03.16

医療情報システム協議会開催


 平成20年度医療情報システム協議会が2月14-15日,日本医師会館(東京都文京区)にて開催され,医療におけるIT技術のあり方が議論された。本紙では,シンポジウム「外来診療のIT化――IT化で何がよくなるのか,必要不可欠か」(座長=大橋産科婦人科・大橋克洋氏,川出医院・川出靖彦氏)のもようを報告する。

討論では,ITを過信しない「人対人」の診療の必要性が確認された。
 永田啓氏(滋賀医大附属病院)は,診断・治療を迅速かつ的確に行うために,インターネットからの情報や『今日の診療』(氏が監修を務める,医学書院発行の診療支援ソフトウェア)を使用している。同ソフトウェアにより,院外処方の内容や持ち込み薬の詳細などが手早くチェックできるなど,スムーズな診療への可能性を述べたほか,新たな医学知識のup date法などの課題も指摘した。

 山間部での医療に従事する吉村学氏(揖斐郡北西部地域医療センター)は,治療経験の浅い疾患に遭遇することも少なくない。これに備えて氏は,資料をあらかじめ準備しておき,パソコンで素早く出力して診療にあたるという。また,テレビを用いた会議によって,山間部診療所間での連携も実現していると述べた。

 鳥越恵治郎氏(井原医師会)は,日常診療における時間的制約の解決策として,事前の問診をweb上で行う事前問診システムと,実際の診察で得た所見から病名を抽出するシステムを考案。後者では高い精度はまだ期待できないが,診療の効率化が見込めるとした。

 電子カルテなどのITデータは,使用するアプリーションが異なる場合や変更された場合には,データを継続して参照することができない。これに対し,吉山泉氏(富山市医師会)は,情報を一元的に管理・共有する「臨床工房」というシステムを作成。現在,富山県内の130の医療機関などが利用している。

 天野一夫氏(下都賀郡市医師会)は,患者との対話・診察のなかで情報は常に追加されていくものであり,それをそのたびに記載していく点で,紙カルテの有用性を指摘。その上で,ITの補助的利用を考え,自作のIT利用環境を構築。各医療者のニーズに合わせたIT化の方向性を示した。

 足立光平氏(兵庫県医師会)は,同県で開催された日医ITフェアのもようを報告。ITによる医療の効率化を,ITモデル診療所展示などを通して呼びかけた。氏は,「ITを利用することで診療上の業務を簡素化できる」として,身近なところからIT化をはじめていく考えを紹介した。

 その後の総合討論には,特別講演を行った伴信太郎氏(名大)も参加。医療の質向上と安全性の両立を考えながら,各自が自分のペースでIT化を考えていくことが望ましいとした。また,電子カルテなどIT技術を使い慣れた医師が誕生する時期を迎え,ITを過信しないよう教育することも確認された。

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