医学界新聞

2009.03.02

第24回日本静脈経腸栄養学会開催


 第24回日本静脈経腸栄養学会が1月29-30日,髙松英夫会長(鹿児島大)のもと鹿児島市の鹿児島市民文化ホール他にて開催された。「栄養療法は患者のニーズに応えられているか」をテーマとした今回は,演題応募が1200題を超えるなど,多職種によるNST(栄養サポートチーム)活動の熱気が伝わるものとなった。本紙では,日本病態栄養学会との合同セッションのもようを報告する。


 日本病態栄養学会は,日本静脈経腸栄養学会とともに本邦の栄養療法に関する学術活動を支えてきた学会である。2004年には,適切な栄養療法を全国の医療機関に普及すべく,両学会のほか日本外科代謝栄養学会など関連諸団体も加わり,第三者機関「日本栄養療法推進協議会」が設立されたところだ。

 病態栄養学会は内科系医師や栄養士が多く,「病態栄養専門医」(医師),「病態栄養専門師」(コメディカル)などの資格認定制度を持つ。一方の静脈経腸栄養学会は外科系医師や看護師・薬剤師などのコメディカルも多く,医師のための生涯教育コースとして「TNT講習会」,コメディカル対象の資格認定制度として「NST専門療法士」があり,専門性の担保の方法については両学会で差異がみられる。

専門性の質の担保をめざし,学会間でクロストーク

 今学会では,病態栄養学会と静脈経腸栄養学会の合同パネルディスカッション「栄養療法に関わる医療人の専門性の向上をめざして」が開催された。これは第12回日本病態栄養学会(09年1月開催)の会長・恩地森一氏と,本学会長の髙松氏が鹿児島大の同期生という間柄もあり,初めて実現したもの。先の第12回日本病態栄養学会においても,両氏の司会のもと,同じ演者が同じ話題を提供している。

 管理栄養士の本田佳子氏(女子栄養大)は,病態栄養学会における専門医・専門師認定の近況を報告した。また,栄養療法に関する用語を定義する必要があるとした。薬剤師の立場からは東海林徹氏(奥羽大)が,栄養療法における薬剤師の役割を提示。輸液の調整に必要な知識として無菌操作(基本は薬剤部での調製)や輸液製剤の特徴の把握を挙げたほか,経腸栄養施行中に問題となるチューブの閉塞などにおいても,薬剤師が専門性を発揮していくべきだと述べた。

 「栄養管理において看護は何に特化しているのか」も近年議論がさかんなテーマだ。看護師の矢吹浩子氏(兵庫医大)は「患者の傍らでの栄養管理」,即ち(1)ベッドサイドで行う栄養管理,(2)ベッドから在宅に引き継ぐ栄養管理,を看護師の専門性と定義。生化学・生理学などの座学による栄養アセスメント能力の向上,経腸静脈栄養や摂食嚥下に関する管理技能の向上を今後の重点課題に挙げた。東口髙志氏(藤田保衛大)はNSTの効果として,(1)中心静脈栄養の適用の順守,(2)経腸栄養の増加,(3)不要な絶食の回避,(4)褥瘡や感染症の予防など,データをもとに提示。患者中心の医療の構築を訴えた。

 総合討論の場では,卒前教育の充実とともに,卒後教育の基盤を両学会で構築する必要性が確認された。武田英二氏(徳島大)は,NSTにコンサルテーションをしなくても現場で大部分の問題が解決できるようになった米国の実情を紹介。「NSTがなくなることがNSTの最終的なゴール」として,栄養療法のさらなる普及の必要性を説いた。

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