医学界新聞

2008.09.15

健康関連QOLから,患者に寄り添う個人のQOL評価へ
――SEIQoL特別セミナーが開催される


 1970年頃からQOLを測定するさまざまな評価法の研究開発が続いてきたが,現時点でもQOLの定義や適切な評価尺度のありかたについては模索が続いている。これまでのQOL評価法の多くは人間としての理想的なQOLを前提として質問紙で答える形式をとってきたが,本来,QOL評価においては患者自身の構成概念(construct)としてのQOLを評価する必要がある。日本の医療全体で病院から在宅に向けた流れが加速し,難治性疾患患者や末期のがん患者の在宅移行も増加している今,患者の個別性を重視したQOLの評価法についてあらためて考える時期ではないだろうか。

 この課題を解決するひとつの手法にアイルランドで開発されたSEIQoL(Schedule for the Evaluation Individual QoL:シーコール)がある。1990年代からWHOが選定しているQOL評価法のひとつ。医療者との半構造化面接を通じて,患者自身がQOLの構成要素(cues,生活のなかで大切なもの)を決定し,さらにそれぞれの要素の満足度と重みづけを行う方法である。このQOL評価法はエビデンスとして数量化を行うが,そのプロセスはナラティブなアプローチである。そのため,実践する医療者には面接技法の習熟が求められる。

 この概念と面接技法を実践的に学ぶ特別セミナー「医療における個人の生活の質(QOL)評価と実践」が2008年8月9日に東京・神田で開催され,臨床で実践を行う医師,看護師や大学院生ら130名が参加した(主催:厚労省難治性疾患克服研究事業「特定疾患患者の生活の質(QOL)の向上に関する研究」班,SEIQoLユーザ会実行委員会)。

 この日は基本的な考え方に関するレクチャーの後,QOLの構成要素の決定,満足度の評価,そしてディスク(円盤)を用いて患者自身が重みづけを行うSEIQoL-DWの手法について,実際のケースを想定してグループワークが行われた。参加者はSEIQoL-DWの監訳者である中島孝氏(国立病院機構新潟病院),大生定義氏(立教大)や臨床心理士の後藤清恵氏(新潟大)らからアドバイスを受けながら,効果的な面接の構成方法について学んだ。

 なおSEIQoL-DWは国立病院機構新潟病院内の事務局に登録をすると利用が可能となる。事務局のe-mailアドレスは以下のとおり。
hiwasaki@niigata-nh.go.jp(担当:岩崎広子氏)

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