医学界新聞

2008.06.16



理学療法のTQMを問う
第43回日本理学療法学術大会開催


 第43回日本理学療法学術大会が5月15-17日,橋元隆大会長(九州リハビリテーション大学校)のもと,福岡市の福岡国際会議場,他において開催された。今回のテーマは「理学療法のTotal Quality Management――時代が理学療法士に求めるものは何か!」。大会長要望演題として理学療法による予防・治療介入のエビデンスに関する演題や公募型シンポジウムなどが企画され,参加人数はおよそ5800名にのぼった。


 大会長講演の冒頭,橋元氏は今年3月に閉校した東京病院附属リハビリテーション学院に改めて感謝と敬意を表した。日本で初めての理学療法士・作業療法士の養成校である同校が誕生して45年,今や養成校は200校を超え,2012年度には有資格者が10万人に達する見込みだ。企業の進学サポートサイトのアクセスランキングで1位が地方公務員,2位が理学療法士となっていることを紹介。社会的認知度が高まる反面,その仕事がどれだけ理解されているか,と懸念を示した。

 現在,理学療法士のおよそ7割が病院などで治療的活動を行い,2割が介護的活動に従事している。氏は,今後の展望として,高齢化社会の進展や医療提供体制の再構築により,予防的活動を含めた包括的で効率的なリハビリテーションが求められると述べた。そのため,施設内の専門職同士による「職縁社会」から,多職種によって構成される地域においては総合性と知的価値をもったいわゆる「知縁社会」の一員となれるよう,対応していくべきである。 また,このように理学療法の職域が拡大し,対象者のニーズが多様化していくなかで,質の向上を図ることが不可欠であると指摘した。

 では,質を向上させるには何が必要なのか。氏はEBPT(evidence based PT)を挙げ,これまで現場で積み重ねてきた経験を,科学的に蓄積していくことの必要性を説いた。また,そのためには理学療法士一人ひとりに自己管理,マネジメントが求められるとし,自己管理として,(1)時間管理(制約された時間の活用),(2)外部への貢献,(3)専門性の提供,(4)成果を上げる決意,(5)優先順位を決める戦略を提示。これらは個々の自己管理だけでなく,日本理学療法士協会自体のあり方にも共通して言えることであり,中でも特に「優先順位を決める戦略」を重視すべきであると述べた。

呼吸理学療法の標準化をめざして

 学術大会会期中の5月16日には,医学書院協賛のイブニングセミナー「呼吸理学療法手技の標準化――正しい理解と適応のために」が催された。同セミナーは『呼吸理学療法標準手技』(医学書院)の出版に合わせて企画されたもの。司会として監修の眞渕敏氏(兵庫医大病院)が,講師として編集の神津玲氏(長崎大病院)が登壇した。

 神津氏は講演の中で,呼吸理学療法をめぐり,これまでに用語や手技の不統一があったため,理学療法士のみならず医師や看護師にまで誤解や混乱を生じていた現状を指摘。呼吸理学療法の概念と手技の標準化が必要であることを強調した。

 セミナーの最後には同書の監修者・編集者らも発言を求められ,呼吸理学療法がEBMの蓄積や臨床家からの建設的な意見・批判によってさらに発展していくものであることを聴講者に説明した。

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