医学界新聞

2008.03.17



協働によるヘルスサービス・リサーチ
日本医療・病院管理学会記念シンポジウム開催

 第262回日本医療・病院管理学会例会が2月16日,東京都新宿区の慶大医学部において開催された。本学会は2008年1月より日本病院管理学会から名称を変更し,今回の例会はその記念シンポジウムとして,「ヘルスサービス・リサーチ」に関連する他の7学会(日本公衆衛生学会,医療経済学会,日本医療情報学会,日本診療録管理学会,日本医療マネジメント学会,日本クリニカルパス学会,医療の質・安全学会)から代表者が講演した。ヘルスサービス・リサーチとは,社会要因や医療技術,組織の構造などが,医療のアクセスや質・コストだけでなく,人々の健康にどのような影響を与えるかを対象とする学際的な研究分野である。

 基調講演として登壇した同学会理事長の池上直己氏(慶大;写真)は,日本における病院管理学の始まりは1949年に占領軍の指示による病院管理研修所の開設であり,研究者と病院の実務家の間にある価値観や方法論の相違をどう乗り越えるか,社会医学の一端として医学会や社会に認知されるかが,1963年の発足以来,今も同学会の課題であると述べた。一方で,日本医学会の分科会加入等を経ていく過程で,同学会の対象領域は病院から保健・医療・福祉へと広がっていった。池上氏は学会の名称変更の理由は,こうした実態に即したものであると説明し,「今後,ヘルスサービス・リサーチという観点はわが国において重要になっていく。今回,各学会の研究領域を相互に再認識し,こうした試みの第一歩としたい」と抱負を語った。

 シンポジウムでは,医療現場のニーズに合わせたIT化の必要性が指摘されたほか,博士課程修了の大学院生が学んだことを十分に生かせる仕事に就職できていない現状に対し,米国のように学会自らがジョブマーケットを創出していくことが提案されるなど,積極的な意見交換が行われた。

 ヘルスサービス・リサーチを軸とした各学会の連携が,こうした問題についても,解決するカギとなるのだろうか。今後の展開に期待したい。

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