医学界新聞


健康と生活を支える看護科学の創造

2008.01.28



健康と生活を支える看護科学の創造
第27回日本看護科学学会開催


 さる12月7-8日,東京国際フォーラム(東京都千代田区)において,第27回日本看護科学学会が村嶋幸代大会長(東大)のもと,法人化後はじめて開催された。大会テーマは「人々の健康と生活を支える看護科学の創造」。

感染症拡大防止に向けて

 シンポジウム「感染症とリスクマネジメント」(座長=慈恵医大・奥山則子氏,東大・内田美保氏)では,感染症対応の当事者かつ媒介者・感染者になり得る看護職が,感染症の発生予防から拡大防止策までの計画について話し合った。

 はじめに坂本史衣氏(聖路加国際病院)は,サーベイランスの最も重要な目的は,特定の感染症や微生物の検出などが日常的にどのくらいの頻度で起きているのかを明らかにし,この頻度を下げる予防を主眼とした活動であると説明。得たデータを疫学的・統計学的手法を用いてベンチマーキングとして感染予防に活用する実例を示した。そして,サーベイランスの結果を感染症予防に役立たせるためにも,専門教育を受けた担当者を配置し,十分な活動時間を確保できる体制をつくっていくことが必要とまとめた。

 つづいて小林典子氏(結核予防研究所)は,結核はいまだにわが国最大の感染症であるが,医療従事者の関心は低く,診断までに時間を要し,入院患者から職員への感染と同時に,入院患者間の菌の伝播とそれに続く発病を伴う事例が目立つとした。結核の感染を広げないためには,患者本人の重症化予防,周囲への感染リスクの軽減のうえでも「早期発見」と,再び感染源とならないよう「治療の徹底」が重要と提示し,退院後のDOTS(Directly Observed Treatment, Short-course:直接監視下短期化学療法)体制構築をめざし,外来診療を担う地域の中核病院や高齢者施設,在宅の看護・介護に携わる施設を巻き込んだ地域連携パスの導入が試みられていると述べた。

 地域社会での集団感染発生時の対処と予防活動について,保健所の活動を中心に河西あかね氏(多摩府中保健所)が口演。感染症対策は,発生予防と拡大防止に重点を置いた平常時からの対策が重要なため,各施設の感染管理担当者を対象とした講習会や,自主管理チェックリスト等の配布およびその活用の支援など各施設における感染症対策の自主管理能力の向上支援に力を入れている。そして,感染症のリスク管理のカギを握るのは看護職であり,所属や立場の違う看護職同士による,感染管理の最新情報の共有,感染症発生時にも連携して対応可能な関係作りが,地域全体の感染症予防対策の大きな力になると述べ,より一層の連携強化を進めていきたいと締めくくった。

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