第17回日本外来小児科学会年次集会開催
これまでと,今を見つめ,次の世代へ向け考えよう
2007.10.01
これまでと,今を見つめ,次の世代へ向け考えよう
第17回日本外来小児科学会年次集会開催
第17回日本外来小児科学会年次集会が8月25-26日(一部24日に開催),島田康会長(しまだ小児科・上天草市)のもと,「これまでと,今を見つめ,次の世代へ向け考えよう」をテーマに熊本県立劇場(熊本市)にて開催された。
小児科開業医・勤務医が中心となる本学会の特徴は,豊富なアイディアを実践する会員らの情熱と行動力にあろう。全国の診療所や研究センターを独自のネットワークで結びリサーチを行う「子どもネット」,患者教育用の「リーフレット」づくり,医学生のための「小児プライマリ・ケア実習」,休業した医師の再研修プログラム「リフレッシュコース」など,さまざまな活動が行われている。
年次集会には医師だけでなく,看護師,薬剤師,保育士,栄養士など小児医療に携わる多くの職種が集い,時に会員数を上回る。会場内には,各医院で作られているおもちゃや院内報の展示,絵本の読み聞かせコーナーなどもあり,子どもたちのための外来づくりのアイディアをみることができる。
今回,学会と同テーマで行われた会長講演では,200名でスタートした学会の活動を振り返り,「2000名を超す規模となったがこれからも一人ひとりが積極的に参加し,子どもたちの幸せをめざして小児医療に役立つプロダクトを出しつづけよう」と呼びかけた。
小児科勤務医の課題と魅力
講演形式で行われた「Meet the Expert」の1つ「勤務医のための外来小児科学」では,小児科勤務医の過重労働を補う救急診療体制の整備や,小児科勤務医の魅力について話された。木野稔氏(中野こども病院・大阪市)は小児の時間外受診が増加している現状を示しながら,開業医と勤務医の2人体制で休日診療にあたっていると話した。さらに乳幼児急性疾患の予後予測の難しさや親の不安など,小児医療の本質的な問題に対応するため,救急患児を翌日まで入院させる「観察入院制度」の取り組みを紹介。また小児医療を支援する職種として,臨床心理士や保育士導入の意義は大きいと述べた。
市川光太郎氏(北九州市立八幡病院)は「外科的疾患まで含め,すべての小児初期診療を行うこと」をモットーに診療・教育していると話し,出会い(症例)が豊富,チーム医療の実践により切磋琢磨できるなど,勤務医のメリットをあげた。また家庭内事故と虐待のリスク因子について解説し,子どもたちのトータルケアのために勤務医も積極的に地域に出て,社会医学的な関わりを持つ必要があるとした。
後藤善隆氏(熊本地域医療センター)は,医学的には最善の対応をしたが救えなかった患児の親から過剰な苦情を受けた例(いわゆるモンスターペアレント)をあげ,医療の限界・不確実性の周知が十分でなく,医療への風潮は厳しくなっていると話した。一方,各地で危惧されている小児救急医療については,20年以上前から開業医・医師会病院(近年は熊本赤十字病院も参加)・大学病院が一体となり機能している「熊本方式」と呼ばれる夜間・休日の小児救急医療システムのほか,小児救急電話相談の取り組みを紹介。トリアージナースの育成にも力を入れていると話し,子どもたちの笑顔があれば元気になれると,患児らが描いた絵を見せながら小児医療の醍醐味を伝えた。
その他にも,後輩や関連職種の育成,診察技法の向上,育児支援,感染症対策など,多彩な切り口でプログラムが展開され,それぞれの持つ知識・技術を積極的に教えあう姿がみられた。小児医療の厳しさがいわれているが,エネルギーあふれるこの小児科医たちの活動があることは心強い。
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