第3回日本疲労学会の話題から
「慢性疲労症候群」新・診断指針発表
2007.09.03
「慢性疲労症候群」新・診断指針発表
第3回日本疲労学会の話題から
さる6月30日-7月1日,東京医大病院で開催された第3回日本疲労学会(会長=東京医大・下光輝一氏)において,慢性疲労症候群(Chronic Fatigue Syndrome: CFS)の新しい診断指針(診断基準でないことに注意)が発表された。
本紙では,シンポジウム「慢性疲労症候群――診断基準改定に向けて」で座長を務めた橋本信也氏(同学会CFS診断基準改定「臨床症候」検討小委員会委員長)の発表を中心に,診断指針の内容について報告する。
従来のCFSの診断基準は,(1)自覚症状が中心で客観的身体所見に乏しく,特異的検査異常がない,(2)除外診断が明確でない(一部の精神疾患あるいは線維筋痛症と鑑別できない),(3)CSF疑診例はCSFか否か明確でない,(4)厚生省(当時)の研究班の診断基準(1992年)からかなりの時間が経過している,という問題点があった。
日本疲労学会では昨年の学会においてCFSの診断基準の改定に着手。「臨床症候」「感染・免疫」「神経・内分泌・代謝」「小児CFS」の4つの検討小委員会を設置し検討を続け,今回の発表となった。
CFSの新しい診断指針
6か月以上持続する原因不明の全身倦怠感を訴える患者が,下記の前提I,II,IIIを満たした時,臨床的にCFSが疑われる。確定診断を得るためには,さらに感染・免疫系検査,神経・内分泌・代謝系検査を行うことが望ましいが,現在のところCFSに特異的検査異常はなく,臨床的CFSをもって「慢性疲労症候群」と診断する。〔前提I〕
病歴,身体診察,臨床検査を精確に行い,慢性疲労をきたす疾患を除外する。ただし,抗アレルギー薬などの長期服用者とBMIが40を超える肥満者に対しては,当該病態が改善し,慢性疲労との因果関係が明確になるまで,CFSの診断を保留し,経過観察する。また,気分障害(双極性障害,精神病性うつ病を除く),不安障害,身体表現性障害,線維筋痛症は併存疾患として扱う。
〔前提II〕
〔前提I〕の検索によっても慢性疲労の原因が不明で,以下の4項目を満たす。(1)この全身倦怠感は新しく発症したものであり,急激に始まった。(2)十分休養をとっても回復しない。(3)現在行っている仕事や生活習慣のせいではない。(4)日常の生活活動が発症前に比べて50%以下になっている。あるいは疲労感のため,月に数日は社会生活や仕事ができず休んでいる。
〔前提III〕
以下の自覚症状と他覚的所見10項目のうち5項目以上を認める。(1)労作後疲労感(労作後休んでも24時間以上続く),(2)筋肉痛,(3)多発性関節痛(腫脹はない),(4)頭痛,(5)咽頭痛,(6)睡眠障害(不眠,過眠,睡眠相遅延),(7)思考力・集中力低下,(8)微熱,(9)頚部リンパ節腫脹(明らかに病的腫脹と考えられる場合),(10)筋力低下((8)(9)(10)の他覚的所見は,医師が少なくとも1か月以上の間隔をおいて2回認めること)。
今回,CFSに加え,特発性慢性疲労(Idiopathic Chronic Fatigue: ICF)という診断名が追加された。上記前提I,II,IIIに合致せず,原因不明の慢性疲労を訴える場合,ICFと診断し,経過観察する。従来の「CFS疑診例」に相当するものだが,ICFは国際的に通用する用語であり,ICFという病態は患者に説明しやすく,診療報酬の観点からも有用と考えられている。
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