医学界新聞

2007.03.26

 

NURSING LIBRARY 書評・新刊案内


フットケア
基礎的知識から専門的技術まで

日本フットケア学会 編

《評 者》南 由起子(聖路加国際病院・WOC看護認定看護師)

自分ができるところからフットケアを

 日本ではまだ,多岐にわたる足病変に専門的に関わる医療者が存在しておらず,「足病変に関わるさまざまな職種が専門的知識・テクニックを集約・統合し治療やケアを進めることの大切さ」を感じている人々により2003年にフットケア学会が設立されました。このフットケア学会は,臨床現場からフットケアの実践を多く積み,その効果を検証しエビデンスを示していくことと,Podiatrist(足医療)のような役割を担う職種の日本における育成をめざしている学会と伺っております。

 『フットケア―基本的知識から専門的技術まで』は,フットケアの発展をめざすさまざまな専門領域の人々が編集し,フットケアに関する多方面からの知見が網羅された内容の書籍といえます。フットケアの意義やフットケアを実践するために必要な基礎知識をわかりやすく記した「フットケアとは?」から始まり,「始めようフットケア」では,フットケアを始めるための方略や実践するためのアセスメント方法・ケア技術などが,詳細に記されています。

 また「多く見かける足の疾患とケア」では,(1)糖尿病・内科患者,(2)皮膚科患者,(3)整形外科患者,(4)血管患者,(5)透析患者,(6)足の難治性潰瘍患者,(7)褥瘡患者,(8)脳神経内科患者という形式で疾患別の患者へのフットケアに必要な内容が説明されており,さまざまな臨床現場の方々に活用できる内容となっています。「ライフステージとフットケア」では高齢者や小児のフットケアに焦点をあてた内容と,在宅や高齢者施設でのフットケアのあり方なども説明されています。最終章の「サポートいろいろ」には患者教育から始まり,心理・社会的サポート,靴・インソール,診療報酬・介護報酬,これからのフットケアといったフットケアに関連する多くの情報が盛り込まれています。

 本書全般に図表や写真も多く掲載され,読者にわかりやすいような配慮がされているのも編集された人々の思いが伝わってくるところかと思います。超高齢化社会を迎える日本において「歩けること」が非常に重要となってきていることは,周知の事実であります。歩くためには足が健康であることは必要条件であり,おのずとフットケアの重要性も浮かび上がってきます。

 これから日本の医療界には年間100名以上のWOC看護認定看護師が誕生することが予測されますが,社会のニーズに合わせフットケアを自分の専門分野とするナースも増えてくると思います。それでもフットケアを必要としているすべての人々に十分なフットケアが提供されることは難しいかもしれません。さまざまな現場で活躍されている人々に,専門家をめざさないまでも,自分ができるところからフットケアを始めていただくことが,日本のフットケアのレベルアップにつながり,足のトラブルで悩んでいる方々の救いになることと思います。ぜひ本書を活用されることをお薦めします。

B5・頁224 定価3,360円(税5%込)医学書院


クリティカルケア看護のQ&A

山勢 博彰 編著

《評 者》明神 哲也(慶大大学院修士課程・医療マネジメント/重症集中ケア認定看護師)

「クリティカルケア看護」とは

 クリティカルケア看護という言葉が使われだしてからまだ日が浅い。それゆえクリティカルケア看護というと集中治療室や救命救急センターなど急性期患者を対象とした領域での看護というイメージが大きい。本書はまさにこれらの領域の臨床現場で,日ごろ教育されているポイントを中心に記述されている。もちろん専門的医学知識のみでなく,看護の視点で書かれている点も,おそらくこれらの領域で勤務している看護師にとっては,理解しやすい構成であろう。

 またクリティカルケア看護の領域では,専門的で高度な医療が行われており,これらは各施設により異なり,また対象とする疾患や患者によっても違いがある。それゆえにQ&A方式で記載されている点は,必要とされる知識を短期に理解し,習得するために有効である。本書を読まれたうえで,確かな知識を持ち,臨床現場で患者観察や行っているケアの効果がどうであったかを確認していくことで,これらの知識が確かな技術として備わることであろう。

 また今日では,当たり前のように一般病棟での血液濾過の実施や人工呼吸器使用がされるようになってきてもいる。それゆえに今まで集中治療室や救命の領域に限られていた技術や治療のなかには,これから一般化していくものも少なくないだろう。このような患者が急性化した時などは,まさにクリティカルケア看護の本領発揮である。

 そのような視点で考えた時,本書は別の要素を帯びてくる。つまりクリティカルケア看護をより広義にとらえた場合である。集中治療室や救命救急センターの後方病棟や術後患者を受け入れる病棟での看護でも本書は役立つであろう。記述されている内容は,各々の領域での観察や行っているケアや処置の,「なぜ」を解き明かしていく糸口として端的にそれらを示している。また日常生活援助や患者家族の心理的ケアなどの章は,簡潔かつ的確にまとめられており,これらの病棟で勤務している看護師にも十分に役立つ知識であろう。

 もちろん本書の内容だけで知識や技術が完結されることはない。本書のQ&Aから始まり,さらなる専門書や高度な知識や技術を深めていきたい方には,ステップとして是非とも必読していただき,臨床現場で活用していただきたい。

B5・頁256 定価2,730円(税5%込)医学書院

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