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レジデントのための呼吸器診療最適解
ケースで読み解く考えかた・進めかた

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さまざまな訴えで呼吸器内科に来院・入院される患者さんへの対応に日々追われるレジデントたち。本書は、呼吸器診療に携わる研修医、若手呼吸器科医が日常診療で遭遇する困難や疑問に感じる「あるある!」を症状・疾患別にまとめ、実際の症例をベースに、折々の場面でどう考え、どう対応していくべきなのか、その思考過程の提示とともにわかりやすく解説する。実際の診療手順とポイントをイメージできるフローチャートも収載。
中島 啓
発行 2020年01月判型:B5頁:392
ISBN 978-4-260-03668-9
定価 5,720円 (本体5,200円+税)

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 本書は主に,初期研修医・非呼吸器専門医・呼吸器内科後期研修医1年次を対象に,呼吸器内科診療について解説しています.臨床医学は急速に進歩していて,Evidence-Based Medicine も導入され, Up To Date®からの情報や,PubMedで見つけた最新医学論文をベースに,診療方針についてディスカッションするのが日常となりました.しかし私は,医学教育の基本スタイルは変わらないと考えています.大切なのは,目の前の患者さんに対する良き診療を通して,オン・ザ・ジョブ・トレーニングで研修医の先生を指導していくことです.
 私は,亀田総合病院で行ってきたレクチャーをベースに,2016年に初期研修医・非専門医向けの胸部画像(X線・CT)の読み方について解説した書籍『胸部X線・CTの読み方 やさしくやさしく教えます!』(羊土社 刊)を上梓させていただきました.そして今回は,救急の現場やベッドサイドで研修医の先生にオン・ザ・ジョブ・トレーニングで指導してきた内容を,書籍として形にしたいと考えました.
 本書は,自身が研修医の先生に指導してきた状況を再現するために,症例に関する研修医と指導医のディスカッションを通して,呼吸器診療の考えかたを学ぶ構成にしています.ですので,読者は,実際に指導医からオン・ザ・ジョブ・トレーニングで教育を受けている感覚で読み進めることができると思います.呼吸器内科領域は日進月歩であり,特に肺がん領域は新薬の開発が進み,毎年ガイドラインが改定されているような状況です。よって,本書は肺がんの内容も含んではいますが,呼吸器内科領域のなかでも診療内容が急に変わることがない普遍的なテーマやコモンな疾患を中心に解説しています.幅広い呼吸器領域を私一人で執筆しているため,多少内容に不足や偏りがあるところはご容赦いただければ幸いです.
 本書を通じて,読者の皆様が,呼吸器疾患の基本を学ぶと同時に,呼吸器診療の面白さや魅力を感じていただければ嬉しく思います.また,本書が日常の診療に少しでも役に立ち,ひいてはそれが患者さんの幸福へとつながることを願っています.
 最後に,亀田総合病院で後期研修医の頃から私を指導していただいた亀田京橋クリニック 副院長/亀田総合病院呼吸器内科 顧問の金子教宏先生,原稿全般にわたりチェックとアドバイスをいただいた亀田総合病院呼吸器内科 顧問の青島正大先生にこの場を借りて深謝いたします.また,「3章 呼吸管理」の内容についてご助言をいただいたフランクストン病院集中治療科の上野諒先生,ならびに,「6章 間質性肺疾患」の内容についてご助言をいただいた虎の門病院呼吸器センター内科 医長の宮本篤先生に感謝いたします.そして,細やかで的確な校正,編集を行っていただいた医学書院の北條立人さんに心より御礼を申し上げます.

 2019年12月
 亀田総合病院呼吸器内科 中島 啓

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1章 呼吸器診療の基本
     病歴・診察・検査所見を統合し肺を通して全身をみよう

2章 呼吸器症候
 CASE 1 血痰,喀血
        局所的な血管の破綻を疑う場合は造影CTを行おう
 CASE 2 救急外来における呼吸困難・呼吸不全
        ABCを確認しながら鑑別診断を考えよう
 CASE 3 原因不明の呼吸困難の鑑別
        臓器別の鑑別法と呼吸生理学的な鑑別法を組み合わせて考えよう
 CASE 4 咳嗽
        鑑別診断は胸部X線における異常の有無で分けて考えよう
 CASE 5 胸水の対応
        Lightの基準で滲出性か漏出性かを判断しよう
 CASE 6 BALの適応
        鑑別診断と目的を考えよう

3章 呼吸管理
 CASE 7 挿管人工呼吸管理
        設定は酸素化・換気・同調性で考えよう
 CASE 8 非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)
        初期設定から離脱までを理解しよう
 CASE 9 ネーザルハイフロー
        吸気酸素濃度と流量を設定しよう

4章 感染症
 CASE 10 市中肺炎
        予測される起炎菌と重症度から抗菌薬を選択しよう
 CASE 11 医療・介護関連肺炎/院内肺炎
        escalation治療か?de-escalation治療か?を考えよう
 CASE 12 膿胸・細菌性胸膜炎
        ACCPのリスク分類をおさえよう
 CASE 13 肺結核
        空気感染対策,診断から治療までをおさえよう
 CASE 14 非結核性抗酸菌症
        適切な治療タイミングを総合的に判断しよう
 CASE 15 慢性肺アスペルギルス症
        分類,診断から治療までを理解しよう
 CASE 16 免疫不全者の肺炎
        免疫不全の種類から起炎菌を想定しよう

5章 閉塞性肺疾患
 CASE 17 気管支喘息の外来マネジメント
        自分が使えるICSとICS/LABAを一つ覚えよう
 CASE 18 気管支喘息発作
        診断,治療,入院適応をおさえよう
 CASE 19 COPDの外来マネジメント
        治療の主役のLAMAとLABAを使いこなそう
 CASE 20 COPD増悪
        ABCアプローチをおさえよう

6章 間質性肺疾患
 CASE 21 間質性肺炎(びまん性肺疾患)の原因診断
        臨床情報・画像所見・病理所見から総合的に診断しよう
 CASE 22 特発性間質性肺炎の管理
        IPFを主軸に考えよう
 CASE 23 間質性肺炎の急性増悪
        診断から治療までを理解しよう

7章 肺がん
 CASE 24 肺がん診療の基本
        組織診断,病期診断,治療の考えかたをおさえよう
 CASE 25 肺がんの集学的治療
        外科治療,薬物療法,放射線療法を組み合わせよう

略語一覧
索引

column
 医師のプロフェッショナリズム
 ARDS
 Non-resolving pneumonia(難治性肺炎)
 人工呼吸器関連肺炎
 肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチン
 潜在性結核感染症
 β-D-グルカン,アスペルギルスガラクトマンナン(GM)抗原の偽陽性
 非HIV-PCP
 妊娠喘息
 ACO(喘息とCOPDのオーバーラップ)
 臨床研究の重要性
 IPAF
 医学教育のやりがい

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呼吸器実例を追体験できるクリニカルパール満載の良書
書評者: 皿谷 健 (杏林大学准教授・呼吸器内科学)
 本書は,読み進めると実際の症例の追体験が可能であり,症例に出合ったら「どう診断し,どう動くか?」という臨床の最前線に立つ医師のためのエビデンスと最適解を示してくれる。

 1章から7章まで系統立てて幅広く,かつ深くまとめてある良書である。各章のポイントやパールは痒いところにまで手が届く内容で,私が気に入った点の一部を独断と偏見を持って以下に示すが,1つでも“ビビッ”ときたら本書を手に取る価値がある。

【1章 呼吸器診療の基本】
・普段の血圧より30 mmHg低ければ低血圧,発熱の脈拍数は0.55℃ごとに10回/分増える。

【2章 呼吸器症候】
・喀血の起源は気管支動脈由来が多く90%を占める。
・パール:気管挿管を考慮していることが気管挿管の適応である。
・低酸素血症の定義:PaO2<60 mmHgもしくは臥位PaO2<100-0.4x年齢,立位PaO2<100-0.3x年齢
・COPDの急性増悪で来院時の動脈血ガスから安定期PaCO2を予測する方法:安定期PaCO2=受診時PaCO2-(7.4-受診時/pH)/0.008
・咳嗽の分類,診断,治療までをcase-basedにより解説。

【3章 呼吸管理】
・人工呼吸器管理やNIPPVの適応,管理,酸素濃度とPEEP値の関係,抜管までの流れを概説。

【4章 感染症】
・SOFA,q-SOFA score,CAP,NHCAP,HAP,VAPについての概念の整理,理解が深まり,免疫不全者における感染症など種々のセッティングが想定された記載。
・パール:MAC抗体はM. abscessusM. fortuitumでも陽性になる。

【5章 閉塞性肺疾患】
・気管支喘息のステップ分類,治療方法,ステップアップとステップダウンの方法,気管支喘息発作,COPD分類,診断,治療と急性増悪への対応,ACOの大枠を捉えマネジメントできる。
・パール:COPDの発症率は20 pack-yearsの喫煙者では20%, 60 pack-yearsでは70%に及ぶ。

【6章 間質性肺疾患】
・特発性肺線維症を主体に,考え方,治療へのタイミングまでを網羅。

【7章 肺がん】
・一般的な肺がんへの対応,化学療法,放射線照射,手術の選択の他,昨今のデュルバルマブによる地固め療法まで理解できる。肺がん診療で頻用される免疫染色の表,TMN分類も載っていてうれしい。

 ざっと述べたが,本書の真髄は,著者のコラムにあるように,「教えることは学ぶこと」という医学教育にかける想いが症例を介したコメントの随所に出ている点だと考える。研修医から指導医まで,ぜひ手に取って読んでいただきたい一冊である。
患者さんにとっての最適解を求めるための必携書
書評者: 徳田 安春 (群星沖縄臨床研修センターセンター長)
 最適化理論による数量モデルを利用すると,アウトカムを最大化させるような変数の解を求めることができる。これが最適解だ。数学では微分積分法などを用いて推定する。医療分野への応用では,感染症疫学での流行カーブを遅らせて小さくするためのパブリック・ヘルス的介入を求める方法がある。今,世界的に流行している新型コロナウイルス感染拡大に対する介入における最適解を求めて,研究者が数量モデルをつくり政策作成者に提言している。

 日常診療で患者さんにとっての最適解を求めるには,変数とその組み合わせが無数にあるため数理モデル化は困難だ。医学部受験のために勉強した微積分を使うことはできない。患者さんのための最適解を求めるにはどうすればよいか。

 それには三大条件がある。第一に,患者さんへの問診と診察を丁寧に行い,必要な検査データを把握した担当医がいること。第二に,臨床経験が豊富で,かつ最新のエビデンスを熟知した指導医がいること。第三には,両者の効果的な対話によって診療計画が徐々に形成され,それと並行して両者が学習することである。

 研修病院において,研修医や若手医師は自力で頑張れば,問診と診察,検査について把握することはできる。しかし,多数に分かれている診療科で最適解を提示できる臓器別専門指導医が全て身近にそろっているとは限らない。

 本書の著者は,自身が所属する病院で優秀指導医賞を長年連続受賞しているカリスマ指導医。優しく,丁寧に,最適解を教えてくれる指導医だ。できれば,呼吸器内科の研修はこの著者のもとで受けたいと思う読者が多いだろうが,それは簡単ではない。

 そこで登場したのが本書だ。真の理想的な指導医が,実際に経験したケースに基づき,対話方式で教えてくれる。25のケースによって呼吸器内科のコモンディジーズは全てカバー。それぞれのケースで,病歴と診察所見のみの情報からスタートする。わかりやすい図表と写真もあり,網羅的な鑑別診断が表で示される。肺の画像読影での教育が得意な著者は,本書でも肺CTにおける読影ポイントをわかりやすく図示し解説してくれている。治療では,具体的な処方や注射内容が細かく記載されている。メモとして,さらに詳しい事項はコラムにまとめられている。

 多くのレジデントが本書を読むことで,呼吸器系疾患の実臨床において,患者さんのための最適解を求めることの助けになることを確信している。

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