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救急レジデントマニュアル 第6版

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救急・ERの現場で求められる実践的な情報をコンパクトな判型に詰め込んだ定番のマニュアル。(1)症状から鑑別診断と治療を時間軸に沿って記載、(2)診断・治療の優先順位を提示、(3)頻度と緊急性を考慮した項目立て、(4)教科書的な記述は思い切って省略し救急診療のポイントに絞った内容で、救急室で「まず何をすべきか」「その後に何をすべきか」がわかる! 初期研修医・救急に携わる若手医師、必携のマニュアル、待望の第6版。
*「レジデントマニュアル」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ レジデントマニュアル
監修 堀 進悟
編集 佐々木 淳一
発行 2018年05月判型:B6変頁:594
ISBN 978-4-260-03539-2
定価 5,280円 (本体4,800円+税)

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第6版の序

 「救急レジデントマニュアル」は1993年11月に黒い箱入りの初版が上梓された後に版を重ね,このたび第6版が出版されることとなりました.初版の序で,「救急医学・医療は大きく変わろうとしている」と書かれていましたが,この四半世紀で救急医学はまさしく大きな発展を遂げ,急性期医療の中心としてその専門性が確立したことは間違いありません.全国の大学医学部において救急医学の講義が行われるようになり,新医師臨床研修制度では必須診療科として3か月以上の救急研修が課せられ,救急科は新専門医制度における19基本領域診療科の1つと位置づけられています.
 マニュアル(manual)とはラテン語で「手が動く」という意味があり,具体的に現場でどう行動するかを示したものです.世界国家を作ったローマ人は,行動がすべてであること,その行動が戦争に勝つか負けるかを決定するのは「一定の標準的機能の遂行ができるか」であることを知っていました.この遂行の可否が勝敗を分けたポイントであったといえます.マニュアル化とは「暗黙知」を「形式知」に置き換えることだと言われます.組織に属する人が暗黙のうちに持っている知識・知恵を,マニュアルに明示化・固定化することによって業務の「標準化」が果たされます.マニュアルは単なる取扱説明書だけではなく,1人ひとりが持っている知識を共有し,「伝える」ためのツールであるといえます.編者も初版から執筆を担当しておりますが,救急医療の現場で働く医療関係者の実用的な視点が常に要求されながらも,最新のエビデンスを盛り込んだ医学ツールとしての水準を維持するために,推敲を繰り返したものです.本書を担当した歴代の編者や執筆者の熱意は脈々と受け継がれ,版を重ねるに連れて,この分野における定番書籍となり,多くの読者を獲得できていることに繋がっていると考えています.
 2018年は我々の教室創設30年にあたり,第6版を企画立案するに際し,これまで救急医療の現場で苦楽を共にした先生方に広く執筆をお願いしました.大まかな構成は前版を踏襲していますが,項目立てについては新規・廃止・復活も含め議論を重ねました.その結果,総頁数が増加することになったため,いくつかの工夫により,これまでの本書のコンパクトさを維持するように努めました.例えば,1つの章の中では項目ごとの改頁をやめました.また,海外の教科書や論文に倣い「など」という記載を極力省略し,薬剤の一般名も簡略表記としました.一方で,薬剤師の立場による専門的な監修もお願いし,マニュアルとしての質にこだわりました.
 救急医学・医療は,「医」の原点として,医師臨床研修の充実のためにも,その必要性は明らかです.Common diseaseに対する診断・治療を提供するだけではなく,緊急事態を抱えるすべての患者に対する初期対応を教えるのが救急医学であり,緊急時に的確な初期対応ができる医師を育てることにも繋がります.正しい救急医学の理論に基づいた救急医療の実践は,社会のセーフティーネットおよびリスクマネジメントの視点からも非常に重要です.本書が,救急医療の現場で日々奮闘する医療関係者に真のマニュアルとして広く活用され,自信をもってより質の高い救急医療を提供できるための「ツール」になることを期待しています.

 2018年4月
 慶應義塾大学教授 佐々木 淳一

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第1章 救急患者の診療にあたって

第2章 救急診療の進め方
 1 トリアージ
 2 病歴の取り方
 3 バイタルサイン・身体所見
 4 神経学的所見
 5 救急における感染症診療の基本
 6 診療記録の書き方
 7 入院・帰宅の判断(Disposition)

第3章 救急蘇生法
 1 BLS(一次救命処置)
 2 ALS(二次救命処置)

第4章 症候からみた救急疾患
 1 上気道閉塞
 2 ショックの鑑別と緊急処置
 3 心原性ショック
 4 低容量性ショック
 5 閉塞性ショック
 6 セプシス(敗血症)/セプティックショック(敗血症性ショック)
 7 アナフィラキシーショック
 8 神経原性ショック
 9 意識障害の鑑別と緊急処置
 10 脳血管障害
 11 代謝性脳症
 12 髄膜炎,単純ヘルペス脳炎
 13 頭痛
 14 痙攣
 15 失神
 16 めまい
 17 転倒
 18 胸背部痛の鑑別と緊急処置
 19 急性冠症候群
 20 急性大動脈解離
 21 気胸,胸膜炎,帯状疱疹
 22 不整脈
 23 呼吸困難の鑑別と緊急処置
 24 心不全
 25 気管支喘息
 26 肺炎
 27 ARDS(急性呼吸促迫症候群)
 28 肺血栓塞栓症
 29 過換気症候群
 30 喀血
 31 腹痛の鑑別と緊急処置
 32 急性腹膜炎
 33 腸閉塞,腸管麻痺
 34 急性虫垂炎
 35 胆道疾患
 36 急性膵炎
 37 腸間膜動脈血行不全
 38 吐血,下血
 39 消化管異物
 40 尿路結石
 41 尿閉,乏尿,無尿
 42 急性陰症
 43 発熱(成人)
 44 脱水
 45 電解質異常
 46 高血圧緊急症
 47 高血糖緊急症,低血糖症
 48 甲状腺機能異常
 49 急性副腎不全(副腎クリーゼ)
 50 痛風発作
 51 食中毒
 52 皮膚・軟部組織感染症,破傷風

第5章 外傷・熱傷
 1 重症外傷患者の初期治療(JATEC)
 2 頭部外傷
 3 顔面外傷
 4 胸部外傷
 5 腹部外傷
 6 脊椎・脊髄損傷
 7 四肢外傷
 8 骨盤外傷
 9 血管損傷(四肢血管外傷)
 10 虫刺症,動物咬創
 11 熱傷
 12 電撃傷
 13 化学損傷

第6章 中毒・環境障害
 1 薬物中毒
 2 農薬中毒
 3 一酸化炭素中毒
 4 アルコールと救急疾患
 5 熱中症
 6 低体温(偶発性低体温)
 7 溺水
 8 急性高山病
 9 減圧症(潜函病,潜水病)

第7章 各科救急
 1 小児科
 2 精神科
 3 眼科
 4 耳鼻咽喉科
 5 産婦人科
 6 泌尿器科
 7 歯科・口腔外科

第8章 救急治療手技
 1 止血法
 2 創処置
 3 バッグバルブマスク換気
 4 酸素療法
 5 気管挿管
 6 輪状甲状間膜穿刺・切開
 7 気管切開
 8 人工呼吸器(NPPV含む)
 9 気管支鏡
 10 直流除細動(DC)
 11 人工ペーシング
 12 経皮的心肺補助法(PCPS)
 13 動脈穿刺・動脈ライン
 14 中心静脈カテーテル
 15 胸腔ドレーン
 16 心穿刺
 17 イレウス管挿入
 18 腹腔穿刺
 19 腰椎穿刺
 20 関節穿刺
 21 血液浄化
 22 輸血

第9章 救急検査
 1 12誘導心電図
 2 単純X線
 3 心臓超音波
 4 腹部超音波
 5 頭部CT・MRI
 6 胸部CT・腹部CT
 7 血管造影・IVR
 8 その他の緊急画像検査
 9 血液・生化学検査
 10 頭部緊急手術の要否判断
 11 胸腹部緊急手術の要否判断

第10章 救急医療関連事項
 1 インフォームド・コンセント
 2 脳死判定基準
 3 災害医療,DMAT
 4 医療安全
 5 法医学的知識
 6 感染対策

資料
 1 JCSとGCS
 2 改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)とMMSE
 3 APACHE II
 4 SOFAスコア
 5 TIMIリスクスコア
 6 ISS(Injury Severity Score)
 7 酸・塩基平衡異常に関する計算式
 8 NIH Stroke Scale(NIHSS)
 9 クモ膜下出血の重症度分類
 10 緊急時の髄液検査
 11 慢性呼吸器疾患における息切れの程度の分類
 12 脂肪塞栓症候群の診断基準
 13 食道・胃静脈瘤内視鏡所見記載基準
 14 急性膵炎重症度判定基準
 15 日本外傷学会臓器損傷分類
 16 静脈血栓塞栓症(VTE)の予防と治療
 17 DIC診断基準
 18 抗菌薬一覧(注射)
 19 抗菌薬一覧(経口)
 20 抗真菌薬一覧
 21 妊娠と薬剤

索引

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最新の知見に基づく理論的な「時間を意識した救急診療」の展開が可能に
書評者: 久志本 成樹 (東北大大学院教授・救急医学)
 救急医療では,緊急性に適切に対応すること,すなわちタイムリーに診療を開始することが重要です。しかし,救急に携わるスタッフが救急患者の診療を開始した段階では,緊急性の程度ばかりでなく罹患臓器も不明であり,いずれの病態の緊急性にも対応できる知識と技術が必要になります。急病,外傷,中毒など,原因や罹患臓器の種類にかかわらず,全ての緊急性に対応する診療能力が重要です。

 正確な診断よりも病態に対する蘇生・治療が優先されるショックや呼吸不全患者への対応,救急患者に多く見られる症候からの時間を意識した考え方と対応,そのための検査や治療手技,さらに社会的事項や各種スコアリングなど,救急に携わるスタッフが知っておくべき知識と情報は多岐にわたります。そして,限られた時間と資源という大きな制約を伴う状況でこれらを使いこなし,判断と確実な治療につなげなければなりません。この「限られた時間」「限定された資源」という制約が,救急診療が一般診療と著しく異なる点です。また,この相違こそが救急たるゆえんであり,醍醐味ですらあります。

 25年前に慶大救急医学教室・相川直樹教授(当時)のリーダーシップによって初版が発行され,今回,佐々木淳一教授編集,堀進悟前教授監修により第6版として出版された『救急レジデントマニュアル』は,救急医療のベッドサイドバイブルということのできる一冊です。症候からのアプローチにおいては,「どのように判断して,いかに動くか」に始まる記載で統一されており,限られた時間における判断とこれに基づく対応において最優先となるポイントが明確に記されています。重症度判断,適切な診断とそのための検査や鑑別の考え方,その上で行うべき対応といった本書の構成は,救急スペシャリストの思考過程そのものを形にしたものです。

 救急医療に携わる全てのスタッフが,最新の知見に基づく理論的な「時間を意識した診療」の展開を可能とするマニュアルとして,自信を持って推薦する一冊です。
慶大救急医学の経験と英知が凝縮されたマニュアル
書評者: 高橋 毅 (国立病院機構熊本医療センター院長)
 『救急レジデントマニュアル』が5年ぶりに改訂されたのでご紹介したい。本書は,慶大病院救急部初代教授の相川直樹先生が初版を刊行され,堀進悟教授,そして佐々木淳一教授と,3代30年に及ぶ,慶大救急医学の,経験と英知が凝縮されたマニュアルである。日本の救急医学を臨床面のみでなく,研究面においてもリードしてきた,あの慶大救急医学の歴々が総力を挙げて執筆しているからこそ,エビデンスに基づいた格調高い教科書となっている。

 本書は,ポケットサイズでありながら550ページを超す情報量がある。内容は,全10章に分かれており,まずレジデントの諸君が救急診療を行う際の心構えと基本的な診察法に始まり,次にERでよく経験する症候や疾患について,「鑑別・診断の進め方」「重症度の判定」「救急処置」などが,表やイラストを多用してわかりやすく親切に解説される。また,慶大が得意としている「外傷・熱傷」「中毒」に関しては,新たに章を立てて詳述している。さらに,マイナー診療科を含む各科救急疾患についても網羅し,救急関連の処置や検査については,使用する器具,手順,ピットフォールまで丁寧に解説している。最終章では脳死や災害医療,医療安全,感染対策などにも触れてあり,もはやその射程はマニュアルを超えた広がりを持っている。

 評者が本書を手にして最も感動した言葉は,第1章の1行目だった。最後まで読み終わった後,もう一度読み返してみたいと思ったのも,やはり第1章だった。そこには「レジデントの心構え」と称して,身だしなみ,態度,言葉使い,患者・家族への対応などが書かれている。この部分を読んで評者は,「救急蘇生や手技を勉強する以前に,救急搬送された患者や家族を思いやる気持ちが最も大切で,それが欠如した者は,救急医療に携わる資格がない」というメッセージを受け取った。なぜなら,慶大病院救急部は,創立時からこの理念を貫き通してきたからである。

 23年前,評者が救急業務実地修練で上京した折,指導を担当してくれた若い慶應ボーイを思い出した。彼は清潔な白衣に身を包み,キリッとネクタイを締め,救急患者に紳士的に寄り添い,この心構えをすでに実践していた。その彼が編集した書籍だからこそ,この第1章のあの1行目を堂々と明記することが許されるのである。救急医療を志す諸君には,ぜひ本書を愛読していただき,救急診療の具体的な手技やポイントのみならず,慶大救急医学に連綿と受け継がれるその真髄も味わってもらいたい。
白衣のポケットの中でいざというときに頼りになるマニュアル
書評者: 松嶋 麻子 (名古屋市大大学院教授・先進急性期医療学)
 約5年ぶりに改訂された『救急レジデントマニュアル 第6版』は第5版より約60ページも多い578ページに救急診療で必要な知識がコンパクトにまとめられています。救急診療に必要な知識は日々増大しており,これを白衣のポケットに入るサイズに収めることは大変なご苦労がおありだったと思いますが,救急の現場を知り,そこに必要なマニュアルとしてまとめてくださった監修の堀進悟先生,編集の佐々木淳一先生の熱意にあらためて感謝いたします。

 『救急レジデントマニュアル』は初版より,救急外来診療中に白衣のポケットから取り出して診療を「確認する」ことを目的に作成されています。レジデントから救急科の専門医まで,救急診療を知っている,理解している医師がすぐに見直せるマニュアルとしてどこの救急外来にも必ず1冊は置いてあることでしょう。第6版では,掲載される内容が多くなった分,各項,特に各論の部分についてはさらにコンパクトにエッセンスに絞った記載が行われています。このため,救急診療を学び始めた初期研修医にとっては「なぜ」「どうして」という記載がないため,この本のみを頼りに救急診療を行うことは危険です。初期研修医の方々には成書や自分にとってわかりやすい本で救急患者の「なぜ」「どうして」に目を向け,考えるトレーニングを積んだ上で救急診療に向き合っていただきたいと思います。

 一方,後期研修医としてある程度,救急外来を任される立場になったレジデントの方々,救急科専門医をめざす方々には,救急診療に必要な知識が網羅的にまとめてあるこの本が救急外来のお供として必携のものになっているでしょう。重症度・緊急度の判断から救急外来で行う処置,入院・帰宅の判断に至るまで,自信がないときにすぐに確認できる心強い味方です。

 その中でも特に私が強調したいのは「第1章 救急患者の診療にあたって」です。救急診療はさまざまな背景や問題を抱える患者さんも相手にするため,医学・医療だけでなく,社会的な知識と心構えも必要です。通常の診療と同じように対応しても深夜の来院や酩酊状態の患者さんの対応に思いがけず苦労することもあります。通常の診療に自信を持ち始め,救急外来を任されたレジデントの方々には,救急診療に向かう前に,ぜひ,一読されることをお薦めします。救急診療に対する「心構え」を最初に教えてくれるこのマニュアルが,白衣のポケットの中で,いざというときの頼りになることと思います。

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