皮膚科レジデントマニュアル

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レジデントマニュアルシリーズに待望の皮膚科版が登場! 診断、治療、検査、主要疾患へのアプローチなど、皮膚疾患診療に必要な知識を1冊に凝縮。コンパクトでありながらも、日常診療で目にする代表的疾患の臨床写真を多数収載。また、各疾患の頻度、好発年齢、男女比はアイコンで、好発部位はイラストで示すなど参照しやすい構成となっている。研修医、若手皮膚科医はもちろん、皮膚疾患を診るすべての医師必携の1冊。
*「レジデントマニュアル」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ レジデントマニュアル
編集 鶴田 大輔
発行 2018年04月判型:B6変頁:346
ISBN 978-4-260-03439-5
定価 5,280円 (本体4,800円+税)

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序 教科書としても使える「マニュアル」を目指して

 大阪市立大学皮膚科(大阪市立大学大学院医学研究科皮膚病態学)の総力を結集して,『皮膚科レジデントマニュアル』を出版することとなりました.
 当教室の臨床における理念は,1)現代医学的にみて最善と思われる医療を提供する,2)わかりやすい納得できる説明を行う,3)他の医療機関からみて安心して紹介できる診療科となる,としています.この3点を実現するためには,基準となる医療方針を提示しなければなりません.本書はその最初の提示となります.また,教育における理念は,1)次代を担うよき医療人を育成する,2)最先端の科学技術を駆使し,世界に通用する臨床とサイエンスを融合できる臨床医―Physician Scientist―を養成する,としています.1)を実践するためには,すぐに取り出すことができ,直ちに教えることができる基準を提示する必要があります.また,2)を行うためには,研究時間を確保しなければなりません.そのためには仕事の効率化・省力化が肝要であり,“直ちに利用できるマニュアル”を作成することは,われわれにとっても必須のことでした.

 仕事の効率化・省力化はわれわれの医局運営上の最重要課題と考えています.皮膚科の仕事の基本は「診療」にあることはいうまでもありません.しかしながら,「研究もしたい」「卒前・卒後教育もしたい」というわれわれにとっては,効率化・省力化を考えなければ時間がいくらあっても足りません.多くの仕事をルーティンワークとしてまとめることで,その他に注力する時間をつくることがわれわれの目標です.日常診療における「ルーティンワークマニュアル」があれば,いちいち,教科書をみたり,論文を紐解いたり,ネット検索をしたりする手間が省けます.この『皮膚科レジデントマニュアル』はそうしたものにしたいと思いました.全医局員がポケットに入れておけば,カンファレンス,回診の省力化につながります.また,本書が教育にも活用できれば,学生講義の題材としても準備が効率的にできますし,参考書としても使えます.さらに臨床実習においても活用できると思います.われわれの『皮膚科レジデントマニュアル』はそのような1冊を目指しています.

 当教室が開講して55年になりますが,これまで教室を挙げて何かを出版する機会がなく,本書は歴史的な刊行物となります.本書は主に,当大学で日常臨床を行っているスタッフ,レジデントを中心に執筆し,編集者,編集協力者の4名で日夜チェックを重ね,刊行の運びとなりました.このような企画を提案いただいた,医学書院編集部天野貴洋さんをはじめ,編集部の方々に感謝します.また,このような書籍をまとめることができたのは,これまで教室の歴史をつくられてきた同門の方々をはじめ,先人の方々のご努力をおいてほかにございません.先生方の脈々と受け継いでこられた皮膚科学が随所にみられると思います.この場を借りて御礼申し上げます.
 また,今回の出版に当たり『今日の皮膚疾患治療指針』『標準皮膚科学』(医学書院),『あたらしい皮膚科学』(中山書店),『皮膚科学』(金芳堂),『皮膚疾患最新の治療2017-2018』(南江堂)などの教科書や,さまざまな診療ガイドラインを参考にしました.ここに示して謝意を表します.

 今後,実際に使われるなかで記載を改める必要のある箇所も生じるかと思われます.まだまだ未熟なわれわれですので,レジデントの皆さん,諸先生方,学生諸君のご批判ご叱責をお待ちしています.日進月歩を遂げる現代医学からいっても,定期的な改訂は必須であると思いますので,その努力は惜しまないようにしたいと考えています.
 さあ,この「レジデントマニュアル」を携えて,外来,病棟,外勤に出ましょう.そして,自己研鑽,卒前・卒後教育にどんどん使っていきましょう.

 2018年4月
 大阪市立大学大学院皮膚病態学 鶴田大輔

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凡例

第1章 発疹の診かた
 皮疹の把握
 原発疹
 続発疹
 年齢,症状・症候,所見からみた鑑別診断のポイント

第2章 検査
 ダーモスコピー
 病理検査
 細菌・真菌・ウイルス検査
 アレルギー検査
 その他の検査

第3章 治療
 全身療法
 局所療法
 皮膚外科
 光線療法
 レーザー療法
 その他の治療法

第4章 主な皮膚疾患
 湿疹・皮膚炎
  接触皮膚炎
  アトピー性皮膚炎
  脂漏性皮膚炎
  貨幣状湿疹
  皮脂欠乏性湿疹
  うっ滞性皮膚炎
  痒疹
 蕁麻疹
  蕁麻疹
  血管性浮腫
 薬疹
  薬疹
  Stevens-Johnson症候群・中毒性表皮壊死症
  薬剤性過敏症症候群
  分子標的薬や生物学的製剤による皮膚障害
 血管・リンパ管の疾患
  IgA血管炎
  閉塞性動脈硬化症・Buerger病・コレステロール結晶塞栓症
  リンパ浮腫
  糖尿病性壊疽
 紅斑症
  多形滲出性紅斑(多形紅斑)
  結節性紅斑
  Behçet病
  Sweet病
 角化症
  尋常性魚鱗癬
  掌蹠角化症
  Darier病
  胼胝・鶏眼
  黒色表皮腫
  汗孔角化症
 炎症性角化症と膿疱症
  乾癬
  掌蹠膿疱症
  類乾癬
  扁平苔癬
  Gibert薔薇色粃糠疹
 水疱症
  天疱瘡
  類天疱瘡,後天性表皮水疱症
 膠原病および類症
  エリテマトーデス
  皮膚筋炎
  Sjögren症候群
  全身性強皮症
  混合性結合組織病
  成人Still病
 代謝異常症
  アミロイドーシス
  ムチン沈着症・黄色腫
 肉芽腫症
  環状肉芽腫
  顔面播種状粟粒性狼瘡
  サルコイドーシス
 光線による皮膚障害
  光線過敏症
  色素性乾皮症
 物理・化学的皮膚障害
  熱傷
  凍瘡・凍傷
  肥厚性瘢痕・ケロイド
  下腿潰瘍
  褥瘡
 色素異常症
  眼皮膚白皮症
  尋常性白斑
  肝斑・雀卵斑
 母斑と母斑症
  母斑細胞母斑
  扁平母斑
  毛細血管奇形・乳児血管腫
  青色母斑・太田母斑・蒙古斑
  脂腺母斑
  結節性硬化症
  神経線維腫症1型
  Peutz-Jeghers症候群
  色素失調症
 遺伝性皮膚疾患
  弾力線維性仮性黄色腫
 良性腫瘍
  皮膚線維腫・脂肪腫・グロムス腫瘍
  脂漏性角化症・表皮嚢腫・稗粒腫
 悪性腫瘍
  基底細胞癌
  光線角化症・Bowen病・有棘細胞癌
  乳房外Paget病
  転移性皮膚癌
  血管肉腫,Kaposi肉腫
  隆起性皮膚線維肉腫
  悪性黒色腫
  菌状息肉症・Sézary症候群
  成人T細胞白血病/リンパ腫
  Langerhans細胞組織球症
 ウイルス感染症
  単純ヘルペスウイルス感染症・Kaposi水痘様発疹症
  水痘・帯状疱疹
  風疹・麻疹
  尋常性疣贅・尖圭コンジローマ・伝染性軟属腫
  伝染性紅斑・手足口病
  伝染性単核球症・突発性発疹
  後天性免疫不全症候群
 細菌感染症
  癤(せつ)・癰(よう)・毛嚢炎
  伝染性膿痂疹・ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群
  丹毒・蜂窩織炎
  壊死性筋膜炎・ガス壊疽
  慢性膿皮症
 真菌感染症
  白癬・カンジダ症
  癜風・マラセチア毛包炎
 抗酸菌感染症
  皮膚結核
  非結核性抗酸菌症
 性感染症
  梅毒
 動物性皮膚症
  虫刺症
  しらみ症・疥癬・マダニ刺症
 付属器疾患
  尋常性痤(ざ)瘡
  酒皶(さ)・酒皶(さ)様皮膚炎
  毛髪の疾患
  爪の疾患
 粘膜疾患
  口腔粘膜疾患
 全身疾患に伴う皮膚症状
  内臓悪性腫瘍に伴うデルマドローム

付録
 ジャパニーズスタンダードアレルゲン2015
 PASI
 DESIGN-R®
 薬疹の原因薬剤
 PDAI
 BPDAI
 DLQI

索引

MEMO
 FTU
 検体採取のコツ
 臨床写真撮影のコツ
 基剤の選択

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名付けて“市大マニュアル(皮膚科のWashington Manual)”
書評者: 椛島 健治 (京大教授・皮膚科学)
 以前私が内科のレジデントをしていた時分,白衣のポケットに必ず入っていたのは,『Washington Manual』と抗生剤に関する『熱病』という2冊の本でした。おかげで,どこにいても何とかなるという安心感がありました。

 皮膚科に入局してからは,それらの本を持ち歩く必要もなくなり,持病の肩凝りは随分と楽にはなったものの,薬の名前が思い出せなかったりして不便を感じる機会が増えてきました。

 現在,ちまたにはテキストが溢れかえる一方で,若者たちはテキストを買わずにスマートフォンでシャカシャカと検索にいそしんでいますが,これも意外に効率が悪いです。

 そんなご時世に,皮膚科医が持たずにはおれないテキストが発売になりました。この『皮膚科レジデントマニュアル』は皮膚科における『Washington Manual』のようなものです。とにかく白衣のポケットにすっぽりと収まることがありがたい!

 小さなマニュアルでありながら,実は,主な皮膚疾患の診断,検査,治療など診療に必要な知識が凝縮されています。何と,乾癬における生物学的製剤の最新情報や,エリテマトーデスではヒドロキシクロロキンまで載っているではありませんか。外来や病棟ですぐに参照できる設えとなっており,知識の確認に役立つのみならず,専門医試験をめざす方々にもかなり有益なのではないかと思います。個人的には,「薬疹の原因薬剤」一覧にかなり助けられそうです。その他,ダーモスコピー所見,皮膚疾患がどの部位に認められやすいかが一目でわかるイラストなどもついています。

 このテキストは,阪市大皮膚科の鶴田大輔教授による編集のもと,医局員の方々により執筆されたものであり,阪市大の英知の結晶と言えます。それ故,『皮膚科レジデントマニュアル』ではなく,“市大マニュアル”と私は呼んでいます。臨床医の要求にかゆいところまで手が届く内容でありながら,スマートフォンのように手軽に携帯できてしまうテキストです。今後末永く,皮膚科医にとって欠かせない一冊となることでしょう。
阪市大皮膚科のフィロソフィーを全編に感じる専攻医必携の好著
書評者: 大山 学 (杏林大教授・皮膚科学)
 本書の最大の特徴は,巻頭に書かれているように鶴田大輔教授のもと阪市大皮膚科の御一門が“総力を結集して”作り上げたところにある。こと皮膚科に限らず一般に研修医・専攻医向けのマニュアルは分担執筆されたものも多く,章ごとのフォーマット自体はそろっているものの,項目ごとの重み付けや記載の細やかさが異なり,やや統一感に欠けるものも少なくない。長年「同じ釜の飯を食った」先生方が執筆されたことや,諸事にこだわりのある(良い意味で!)鶴田教授の目が細部にまで行き届いていることもあって,あたかも単著本のように,どのページを取り出して読んでも一貫したポリシーが感じられ,かつ密度の高い“特上のドライフルーツケーキ”のような一冊ができあった。ここまでされても,あえて「大阪市立大学皮膚科学マニュアル」などとしないところがいかにも鶴田教授らしいと好感を持った。

 特に高く評価したいのは,約3分の1弱を皮疹の診かた,検査,治療,使用頻度の高い病勢スコア表,パッチテスト成分や薬疹のまとめに割いた構成である。この手のマニュアルではよりコンパクトにしようとするあまり簡潔にまとめられがちな項目が丁寧に記載されている。実は臨床研修において本当に必要とされ,繰り返し見返すのは疾患の各論ではなくこうした情報なのだ。「実にわかっておられる」と感心した。

 「現代医学的にみて最善と思われる医療を提供する」という信念は疾患別各論の記載にも見て取れる。尋常性乾癬,悪性腫瘍など近年大きく治療が進歩した疾患に対する生物学的製剤,分子標的薬に関して最新のものが漏れなく記載されている。皮膚筋炎の自己抗体など最近保険収載されたばかりの検査項目も紹介されている。全ての記載が新しく,「現時点で最善」のものが述べられている。

 利益相反を先に申告するべきであったが,実は鶴田教授とは専門領域が若干オーバーラップすることもあって古くからの友人である。まだ互いに講師であったころ,懇親会か何かの折に「知識の再確認・固定化」にはどのような本を使っているかと尋ねられたことがある。いくつかの成書を挙げたことを思い出した。実は本書の狙いはそこにもあったのではないか。その目で見ると「レジデント」向けとあるが専門医を取得された先生方の知識の再確認にも十分耐え得る内容となっている。

 レジデントマニュアルと名付けた限り内容のアップデートは必須である。ぜひ頻回の改訂を期待したい。その際にはぜひ「MEMO」欄を追加し,読者が適宜必要な情報を追記し自分仕様にカスタマイズできるようにしていただきたいと思う。総論と各論を分冊化できるよう製本し,より持ち歩きやすくするなどの工夫もできよう。さらに良くする提案をしたくなる好著である。わが若き同僚たちにも早速薦めたい。

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