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内科レジデントマニュアル 第9版

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研修医の定番「内科レジデントマニュアル」渾身の大改訂!チーフレジデント、専門医、内科研修専門委員会がここに結集。聖路加内科が教える「研修医が行う、夜間の緊急処置や入院時の初期対応を、安全に実施するためのすべて」をまとめた、真のマニュアルが完成した。改訂により実用性がアップし、すぐに役に立つだけでなく、さらに聖路加内科の標準化医療も示す手順書・指針。
*「レジデントマニュアル」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ レジデントマニュアル
聖路加国際病院 内科専門研修委員会
発行 2019年02月判型:B6変頁:474
ISBN 978-4-260-03613-9
定価 3,740円 (本体3,400円+税)

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    2022.01.20

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第9版 序

 『内科レジデントマニュアル』は1984年の発行以来,聖路加だけではなく日本中の多くの若手研修医の診療・教育に貢献してきました.その後,版を重ねるごとに対象疾患も増えて内容が充実してきた半面,網羅的・教科書的にもなってきました.マニュアルの本質が日常使用に供する初心者への実用書ということを考えると,現場のニーズと相違する場面も増えたようです.また,EBMを重視しエビデンスに基づいた医療を実践することが常識となりつつある昨今,エビデンスの希薄な領域は個々の医師の裁量に任せるガイドラインや指針を目にする機会があります.医療が発展して専門性が進む現在,一般的な病気や病態に対してさえ,各専門家でそれぞれの考え方や方針が異なることも珍しくありません.しかしながら,確固たるエビデンスがなく,さまざまな考え方があろうとも,日常的な一般的な診療行為に対して具体的な手順を示すことができなければ,マニュアルとしては不十分です.組織としての方針の一貫性,医療安全,チーム医療,さらに仕事の効率を考えると,標準化医療を提示することは重要と考えます.
 そこで今回の改訂では本書の原点に立ち返り,夜間の緊急処置や入院時の初期対応を研修医が安全に実施することのできる実用性の高いマニュアルの作成を目指しました.また単なる研修医のための参考書を超えた,病院として専門科を問わず標準化医療を提示する「手順書・指針」としての性格も兼ね備えたものとしました.改訂に際してエビデンスやガイドラインが存在すれば従いますが,高いレベルのエビデンスがない領域に関しては,各専門科が吟味し担保する当院内科標準化医療を提示しました.これらの高い理想を達成するため,改訂作業は壮大なものとなりました.
 まず,網羅的でなく本当に現場で必要とされている実践的な項目へ改訂するためにデータ分析を行いました.当院内科入院患者数と疾患分布,夜間当直コール件数と内容,前版の項目別使用頻度のアンケート調査をデータ収集・分析し,項目と項目ごとのページ数を選定し直しました.次に,若手医師に時系列を意識した実践的な対応を執筆してもらい,各専門科の上級医師が査読して内容の質を担保しました.さらに手順書としての内容の一貫性,さらに現場のニーズと専門家の意見のバランスを保つため,チーフレジデント経験者主体の編集委員が原稿全体の詳細な読み合わせを行って査読原稿をさらに改訂しました.最後に,聖路加国際病院内科専門研修委員会が当院内科の標準化医療として内容を精査・承認し,晴れて出版の運びとなりました.この気の遠くなるプロセスには足掛け3年かかり,特に編集委員による読み合わせ,改訂には多くの時間と労力を費やしました.この作業に協力してくれた若手の諸君には大変感謝していますし,私自身も多くを学ぶ貴重な時間でした.
 本書が現在の聖路加内科における標準化医療と実用性を兼ね備えた真のマニュアル本であると自負します.この聖路加スタイルが,全国の研修医にも役だつことを願っています.

 2019年1月
 聖路加国際病院内科専門研修プログラムディレクター
 長浜 正彦

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1 スタットコール(院内急変)
 Side Memo ①救急カートの中身(当院の一例)

2 ショック
 Side Memo ①忘れがちなショックの原因

3 意識障害
 Side Memo ①鑑別を意識した問診のポイント/②昏睡カクテル coma cocktail
         ③意識障害を表現する用語

4 失神
 Side Memo ①反射性失神,起立性低血圧に対する指導/②head-up tilt試験/
         ③失神とてんかん発作の鑑別/④失神患者の自動車運転に関する指針

5 頭痛

6 脳血管障害
 Side Memo ①脳幹の神経解剖とその障害に伴う症状(Weinerら)/②ABCD2スコア/
         ③CHADS2スコア/④CHA2DS2-VAScスコア

7 痙攣

8 胸痛
 Side Memo ①心エコー

9 急性冠症候群
 Side Memo ①ACSの重症度診断/②IABPの適応と禁忌/③経静脈的血栓溶解療法の
         適応と禁忌/④TIMI血流分類(flow grade):再灌流後の血流量
         評価法/⑤ACS時の緊急CABG/⑥peak CKによる簡易重症度分類

10 急性心不全(慢性心不全の急性増悪を含む)
 Side Memo ①見落とされがちな心不全 心機能正常型心不全(HFpEF)

11 高血圧症(緊急対応中心)
 Side Memo ①一過性の血圧上昇

12 不整脈
 Side Memo ①抗不整脈薬の使い方/②カテーテルアブレーション

13 肺塞栓症

14 呼吸不全
 Side Memo ①「呼吸困難」にもきちんと対応を!/②CO2ナルコーシス/
         ③NPPV設定時の用語について

15 気管支喘息,慢性閉塞性肺疾患(COPD)

16 腹痛
 Side Memo ①診断の要点

17 肝臓・膵臓の緊急
 [1]肝疾患の緊急
  A 劇症肝炎
   Side Memo ①肝移植適応基準
  B 肝性脳症
 [2]急性膵炎
  Side Memo ②ERCP後膵炎

18 消化管出血
 Side Memo ①本当に吐血?/②内視鏡治療のタイミング/③輸血のタイミング/
         ④抗血小板薬・抗凝固薬の取り扱いについて/⑤EBL

19 下痢・便秘
 [1]下痢
  Side Memo ①小腸型と大腸型/②食中毒と起因菌/③血便を起こす疾患/
          ④下痢を起こす薬剤
 [2]便秘
  Side Memo ⑤用語の使い分け/⑥ブリストルスケール/⑦過敏性腸症候群(IBS)

20 関節痛
 Side Memo ①関節エコー

21 膠原病のエマージェンシー
 Side Memo ①ステロイド薬投与と副腎不全

22 病棟で経験するアレルギー
 [1]アナフィラキシー
 [2]重症薬疹
 [3]抗菌薬アレルギー
 [4]造影剤に対する過敏症

23 脱水と輸液
 Side Memo ①過剰輸液の弊害/②体液量と有効循環血漿量/
         ③体液過剰の場合(利尿薬の使い方)

24 電解質異常
 [1]低Na血症
  Side Memo ①輸液1L投与後の血清Na濃度の変化(mEq/L)(Adrogue式)/
          ②3% NaClを1mL/kg投与すると,血清Na濃度は1mEq/L上昇する
 [2]高Na血症
 [3]低K血症
 [4]高K血症
 [5]低Ca血症
 [6]高Ca血症
 [7]低P血症
 [8]高P血症

25 急性腎障害
 Side Memo ①AKIで血清Cr値は必ずしもGFRの鋭敏な指標ではない/
         ②「〇〇円柱」とは「〇〇」が腎由来であることを意味する/
         ③「FENa<1%は腎前性AKI」には例外が多い

26 慢性腎臓病と透析患者入院管理
 Side Memo ①蓄尿の評価/②バスキュラーアクセス/③不均衡症候群/④CAPD,APD

27 糖尿病,血糖異常
 Side Memo ①グリコアルブミン/②反応性(ストレス性)高血糖/
         ③ステロイド性高血糖/④血清Naの補正値/⑤正常血糖DKA/
         ⑥シックデイの対応

28 甲状腺中毒症・甲状腺機能低下症
 [1]甲状腺中毒症
 [2]甲状腺機能低下症

29 院内患者の発熱

30 感染症治療
 [1]抗菌薬治療の原理原則
 [2]尿路感染症
  Side Memo ①AmpC産生菌とは/②無症候性細菌尿は治療すべき?
 [3]蜂窩織炎
  Side Memo ③うっ滞性皮膚炎
 [4]カテーテル関連血流感染
  Side Memo ④CLABSIの診断基準/⑤抗菌薬ロック療法/⑥黄色ブドウ球菌
          菌血症でUncomplicatedの全項目を満たさない症例の
          抗菌薬投与期間をどうするか?
 [5]肺炎
  Side Memo ⑦間質性肺炎にも注意
 [6]髄膜炎
  Side Memo ⑧Mollaret’s meningitis/⑨髄液検査の前にCTが必要な症例/
          ⑩肺炎球菌の最小発育阻止濃度(MIC)は髄膜炎 vs 非髄膜炎で
          異なる:なぜセフトリアキソン,バンコマイシンで開始するのか?/
          ⑪髄膜炎 vs 脳炎
 [7]感染性心内膜炎
  Side Memo ⑫黄色ブドウ球菌用ペニシリン/⑬culture negative IE/
          ⑭早期の外科治療介入が必要なケース/⑮抗菌薬予防内服について
 [8]肝臓胆道感染症
  A 肝膿瘍
  B 急性胆嚢炎
   Side Memo ⑯急性胆嚢炎のPitfall
  C 急性胆管炎
 [9]敗血症性ショック
  Side Memo ⑰Sepsisを呈する疾患の頻度

31 貧血・DIC(播種性血管内凝固)
 [1]貧血
  Side Memo ①輸血による予測上昇Hb値
 [2]DIC(播種性血管内凝固)

32 悪性腫瘍総論・Oncologic Emergency
 [1]悪性腫瘍総論
 [2]Oncologic Emergency
  A 脊髄圧迫症候群
  B 上大静脈症候群
  C 発熱性好中球減少症
  D 腫瘍崩壊症候群
  E 高Ca血症
  Side Memo ①免疫チェックポイント阻害薬の有害事象

33 がん患者の疼痛コントロール
 Side Memo ①換算比の盲点~慣れてきた頃が危ない~

34 せん妄・不眠
 [1]せん妄
  Side Memo ①せん妄の原因となる薬剤
 [2]不眠

35 アルコール離脱症候群
 Side Memo ①アルコール依存の背景を考える

36 看取りの作法
 Side Memo ①予期悲嘆/②子どものケア/③看取りの過程で心電図モニターが
         ないことの利点

37 手技・その他
 [1]プレゼンテーション
 [2]気管挿管・気管切開チューブ(気管カニューレ)交換
 [3]ライン挿入(末梢静脈ライン,動脈ライン,中心静脈ライン,PICC)
 [4]胸腔穿刺
  Side Memo ①アスピレーションキット
 [5]腹腔穿刺
 [6]腰椎穿刺
 [7]関節穿刺
 [8]尿道カテーテル挿入
 [9]経鼻胃管チューブ挿入・胃瘻交換
 [10]血管外漏出
 [11]転倒・転落

38 腎障害時の薬剤投与量

索引

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原点に立ち戻りながらも新しい「聖路加」スタンダード
書評者: 田中 純太 (新潟大医歯学総合病院魚沼地域医療教育センター教授・総合診療科)
 最初に表紙を見て驚いた。初版から一貫して「聖路加国際病院内科レジデント編」であったのが「聖路加国際病院内科専門研修委員会編」に変わっているのだ。
 そして,手に取ってまた驚いた。第8版よりも明らかに軽いのだ。比較してみると,実に50ページ近くスリムになっている。

 表紙を開けてみよう。編集委員は2015年から2017年までの歴代「聖路加内科チーフレジデント」である。そして,編集責任者は3名だ。このうち「聖路加」の医師臨床研修プログラム責任者である木村哲也医師,内科専門研修プログラムディレクターの長浜正彦医師は,ともに1990年代の「聖路加」でトレーニングを受けた精鋭である。また,高尾信廣医師は,単に「初版編集者」ではない。『内科レジデントマニュアル』では第7版まで編集に携わり,木村医師や長浜医師はもちろん,私自身をも厳しく指導してくださった「聖路加内科チーフレジデント」のレジェンドである。

 さて,マニュアル本体のページをめくってみよう。ここでも第8版との明らかな違いに気付く。まず,目次がスッキリして見やすくなっているのだ。
 そして,夜間や新入院時にレジデントが安全,確実に対処できる工夫にあふれている。

 その一つが「疾患概念」,「診断の要点」,「初期対応のポイント」から「初期対応」へとコンパクトに整理していることだ。特に「初期対応のポイント」は囲みで箇条書きになっており,大切な項目がサッと頭に入る。また,各疾患の最後には留意すべき「入院指示オーダー」のポイントが提示してあり何とも心憎い。さらに,小さなことではあるが,薬品名も一般名で記載しており,ジェネリック製品が定着したこの時代には嬉しい限りである。

 実際に1か月間,入院診療やオンコール,当直の際に本書を使用した。そして,初期対応に必要な情報が,まさに過不足なく盛り込まれていることにあらためて納得した。

 そもそも『内科レジデントマニュアル』は,聖路加国際病院内科レジデントの教育を目的に編集している。したがって,2018年度から始まった新専門医制度を考慮すれば,医師臨床研修から内科専門研修に至るプロセスを網羅するために「聖路加国際病院内科専門研修委員会編」としたことは理にかなっている。そして,よりup-to-dateで一般的な内容に絞った編集方針により,結果としてポケットサイズを重視したスリム化にも結びついているのだ。

 私は,高尾医師の指導下で24年前上梓した第4版の編集に当たった。その「序」には「正確な知識と的確な判断,そして冷静で確実な処置」が日常臨床で第一に必要なことであるとの高尾医師の言葉が書かれている。
 初版の上梓から35年,原点に立ち戻りながらも全く新しい「聖路加」スタンダードにふさわしい一冊が登場した。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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    2022.01.20