脊椎内視鏡下手術[Web動画付]

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和歌山県立医科大学整形外科学教室では、脊椎内視鏡視下手術を全国に先駆けて導入しており、これまで良好な成績とともに圧倒的な実績を積み重ねている。本書は、これまで当教室で培ってきた経験、知識、技術を余すことなく落とし込んだ内容となっている。各手技については、術中写真に加え、シェーマも並行提示し、ポイントをつかみやすい構成とした。また、主要な手技はWeb動画を付すことで、紙面では伝わりづらい部分の理解も促す。
読者の皆様へ 付録Web動画のご案内
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編集 吉田 宗人
編集協力 中川 幸洋
発行 2017年06月判型:A4頁:248
ISBN 978-4-260-03053-3
定価 19,800円 (本体18,000円+税)

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推薦の序(菊地臣一)/序論(吉田宗人)

推薦の序

 今,脊椎外科領域に内視鏡下手術という新たな技術革新の波が押し寄せ,そして定着しつつある.今回,その第一人者が,内視鏡下手術のすべてを著した本書を出版した.
 本書の価値を認識していただくために,椎間板ヘルニアを例にとって,その歴史を俯瞰してみたい.われわれがいま認識している坐骨神経痛の概念が確立したのは,18世紀の後半である.そして,治療として,手術という観血的手技が導入されたのは,20世紀の前半である.これらの事実を考えると,手術が治療手段の1つとして確固たる地位を確立したのは,それほど昔のことではない.
 その手術に焦点を当ててみよう.Love Gが1939年に,彼の術式を報告した.これが,標準的手技の嚆矢とされている.その後,経腹膜前方アプローチ(Lane JD, Moore ES, 1948),キモパパイン注入(Smith L, 1964),人工椎間板(Fernström U, 1966),経皮的髄核摘出(Hijikata S, et al, 1975),微小外科による椎間板切除(Cospar W, 1977/Yasargil MG, 1977),自動髄核摘出(Onik G, 1985),レーザーによる椎間板蒸散(Choy DS, 1989/Ascher PN, 1992)といったように,次々と新しい技術が発表されてきている.そして,内視鏡による椎間板切除術が1997年に,Foley KTにより報告された.
 わが国では,吉田宗人先生が,1998年にMED法を導入して現在に至っている.すなわち,わが国における脊椎外科の内視鏡下手術を確立したのが吉田先生といえる.
 その吉田先生が教室を挙げて著した本書は今後,間違いなく脊椎外科内視鏡下手術の教科書としてゴールドスタンダードになる.
 本書の特徴を幾つか挙げると,まず1つは,和歌山県立医科大学のスタッフでまとめ上げている点である.書籍には一貫かつ共通した哲学が流れているべきであるというのが私の考えである.そのような立場からすると,記載内容や考えかたにブレがないことは,本書の持つ大切な価値の1つといえる.
 2つ目に,本書が受け手側の要望を汲み取って構成されている点が挙げられる.すなわち,本書は吉田先生の下で学んだ先生方へのアンケート結果から抽出された要望を参考にして目次を立てているのである.
 最後に,合併症に対する項目を独立して設けている点も特徴として挙げられる.残念ながら,合併症は必ず起きる.トラブルが発生した際の対処方法に関する知識は,手術を行う者にとっては必須であり,伎倆である.
 吉田先生と教室の先生方の築き上げてきた努力の結晶である本書は,必ずや脊椎外科医,引いては国民に福音となるに違いない.18,000円というのは決して安くない.しかし,それだけの価値は十分にある.

 2017年4月
 菊地臣一
 (公立大学法人福島県立医科大学・常任顧問兼ふくしま国際医療科学センター・常勤参与)


序論

 脊椎後方内視鏡下手術がわが国で始まったのが1998年であり,思い返せばこの20年の進化は目を見張るものがある.内視鏡自体の改良に加え,カメラとモニターの進化は目覚ましく良くなった.われわれはわが国で先駆けて1998年9月にMED法を導入し,その器機の改良と発展に力を注いできた.手術手技はヘルニアの摘出から始まり,腰部脊柱管狭窄症,頚椎症性脊髄症とその適応を広げ,除圧手術のほぼすべては内視鏡下で可能になっている.この20年間において,内視鏡,カメラ,モニターの進歩でモニター画面は非常に綺麗な手術画像が得られるようになった.手術手技自体は少しずつ,より安全に操作できるよう,そして,より確実に除圧できるよう改良を続けてきた.ただ,われわれの施設ではスタンダードになった手技が,施設によって技術格差がまだ存在しているという現状がある.
 脊椎後方内視鏡下手術の件数は2010年に全国で1万例を超え,以後毎年増加しているが,腹腔鏡視下胆嚢摘出術といった消化器外科の手術に比べるとその数はまだはるかに少数である.脊椎手術は年間13万件ほど行われているものの,内視鏡下手術はまだそのうちの約1割にしかすぎない.しかし,今後この数倍には達するものと思われる.そのためにはスタンダードな手術手技を広めること,手術適応,手術成績をもとにエビデンスを示し,より多くの脊椎外科医が除圧手術を適応の第一に挙げるようになっていく必要がある.
 われわれは手術手技の改良を重ね,スタンダードなところに到るまで各疾患に対する手術手技を確立してきた.そうしたなかで,医学書院の北條さんから,和歌山県立医科大学で今まで確立してきた手術方法を書籍にまとめてはどうかとのご提案をいただいた.これまでに脊椎内視鏡下手術の書籍を2冊手がけてきたが,手術方法も施設,術者によりかなり異なっていた.当然,アプローチの仕方から使う器具も執筆者によって異なるものであった.
 今回,われわれの施設のスタッフだけで執筆することで,統一した考え,術式で手術手技を理解していただけるものと思う.この20年の集大成ともいえる本書が少しでも内視鏡下手術の発展の一助になればと切に願う.

 2017年4月
 吉田宗人

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第I部 基礎編
 1章 後方進入内視鏡下手術を行うために知っておきたい解剖の基本
  A 頚椎(後方進入)
  B 頚椎椎間孔部
  C 胸椎
  D 腰椎
  E 腰椎椎間孔
 2章 内視鏡下手術のためのセットアップ法
  A 基本セットアップ
  B 手術器具のセットアップ
   [Q&A 1]ダイレータ挿入時に気をつけることは? また,軟部組織剥離のポイントは?
   [Q&A 2]サクションが邪魔になって処置具をよい位置に
        もっていくことができない場合の対応法は?
   [Q&A 3]レンズを汚れにくくする工夫は?
 3章 内視鏡視野の特性を知る
  A 視野特性について
  B 器械操作時のポイント
  C 適切な視野を得る工夫
 4章 手術器具を使ってみる
  A 円筒レトラクター
  B ハイスピードドリル,内視鏡用骨ノミ
  C スコープ,モニター,カメラ
   [Q&A 4]フレキシブルアーム不具合時の対処法は?
   [Q&A 5]バーが届かず削りにくいときの対応法は?
   [Q&A 6]スコープの破損やwandingの際の愛護的な把持の方法は?
 5章 内視鏡下手術-成功へのコツ
  A モニター画面を綺麗に保つ工夫
  B 画面内への軟部組織混入対策
  C 視野を広くとるために
  D 体位の工夫
  E レベル誤認対策
  F 止血法
  G 血腫対策とドレーン挿入
  H 肥満患者対策
 6章 おさえておきたい内視鏡下手術の基本手技
  A 皮切の位置
  B 黄色靱帯の切開
  C 神経組織のレトラクト
  D 神経組織のレトラクトからの椎間板の露出と展開
  E 椎間板の郭清
  F 片側進入両側除圧
   [Q&A 7]除圧,鋭匙など各種器具を使用する際のポイント(届かせるためのコツ)は?
   [Q&A 8]カメラワークについて,より見やすくするポイントは?
        また,見えないときの対応法は?
   [Q&A 9]止血 特に隆々とした血管を損傷したときの対応法は?
   [Q&A 10]フィンガーナビゲーションの方法は?
   [Q&A 11]円筒レトラクターの設置や傾きについてのポイントは?

第II部 手術手技編
 7章 椎間板ヘルニアに対する内視鏡下手術
  A 内視鏡下腰椎椎間板摘出術(microendoscopic discectomy:MED)
  B 外側ヘルニア
  C 中心性ヘルニア
  D migrateしたヘルニア
  E 脊椎椎体後方骨片摘出術
  F スポーツヘルニアの特徴
  G 再発ヘルニア
   [Q&A 12]尾側safety triangleは安全か?
   [Q&A 13]広範囲膨隆型ヘルニアでの対側神経根の確認とヘルニア処理の方法は?
   [Q&A 14]皮切の位置が悪いと後で気づいたときの対処法は?
 8章 腰部脊柱管狭窄症に対する内視鏡下除圧術(MEL)
   [Q&A 15]膨隆した黄色靱帯が邪魔になって対側の骨切除が
        ブラインド気味になってしまう際の対策は?
   [Q&A 16]直のケリソンとカーブケリソンをどう使い分ける?
   [Q&A 17]見えているものの器具が届かない場合の対処法は?
   [Q&A 18]対側除圧のコツは?
   [Q&A 19]多椎間除圧の際の皮切の位置は?
   [Q&A 20]腰部脊柱管狭窄症の病型ごとの除圧範囲は?
   [Q&A 21]多椎間狭窄における除圧範囲は?
   [Q&A 22]骨棘,椎間関節の肥厚が強くて円筒レトラクターの設置が浅くなる場合,
        どのように対応すべきか?
   [Q&A 23]除圧の際,硬膜管の膨らみが悪いときに考えることは?
   [Q&A 24]どういう順番であれば最も安全に骨を削れるか?
        -対側が削りにくい際の秘策とどこまで削るかについて-
   [Q&A 25]黄色靱帯剥離時にケリソンが入りにくい場合にどうしたらよいか?
 9章 腰椎変性すべり症に対する内視鏡下手術
 10章 種々の病態に対する内視鏡下除圧術
  A 変性側弯を伴う場合の除圧手技
  B 腰椎分離症に対する内視鏡下除圧術
   [Q&A 26]変性側弯進入側はどのように決定するのか?
   [Q&A 27]変性側弯症に対する手術の成績不良症例
 11章 嚢腫性病変に対する内視鏡下手術
 12章 神経根奇形に対する内視鏡下手術
 13章 椎間孔部狭窄に対する内視鏡下手術
  A 手術について
  B 椎間孔部狭窄症に特徴的な理学所見,画像所見
  C 椎間孔部狭窄症診断のための電気生理学的検査(SNAP, DML)
   [Q&A 28]椎間孔部狭窄症に対する手術の成績不良症例
 14章 頚部脊髄症に対する内視鏡下頚椎後方除圧術(CMEL)
   [Q&A 29]頚椎内視鏡下手術に際し,METRx-MEDシステムの
        標準器械以外に準備するものは?
 15章 頚部神経根症に対する内視鏡下頚椎椎間孔拡大術(CMEF)
   [Q&A 30]CMEFにおける出血対策はどのようにすればよいか?
   [Q&A 31]CMEFにおける前方骨棘,ヘルニア摘出の判断基準は?
   [Q&A 32]CMEFの際にランドマークをどこに置くか?
   [Q&A 33]頚椎内視鏡下手術時のヘルニア摘出の方法は?
   [Q&A 34]CMEF外側のランドマークを確認する際のポイントは?
 16章 頚椎椎間板ヘルニアに対する後方内視鏡下除圧術の適応と椎間板縮小
 17章 胸髄症に対する内視鏡下胸椎椎弓切除術(TMEL)
 18章 タンデム手術(Tandem Operation)
 19章 術前シミュレーターの開発と臨床応用
 20章 ナビゲーションガイド下手術の実際

第III部 合併症対策編
  A 日本整形外科学会の報告より
  B 硬膜損傷:縫合
  C 硬膜損傷:パッチテクニック
  D ヘルニア再発
  E 術後血腫と予防
  F 術後血腫の発生時対策
  G 術後性後根神経節関連神経痛の予防と発生対策
  H ドレーン関連
  I 腰椎内視鏡下手術におけるレベル別の注意点
  J 変性側弯(回旋)

索引

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手術動画も参照できて痒いところに手が届く実践書
書評者: 中村 博亮 (阪市大大学院教授・整形外科学)
 このたび和歌山県立医大整形外科学教室吉田宗人名誉教授の編集によって『脊椎内視鏡下手術[Web動画付]』が医学書院から発刊された。表紙の帯に記載されているように,和歌山県立医大がめざしてきた洗練された手術手技,そのために積み重ねてきた技術と真理の全てが本書に集約されている。内視鏡下脊椎手術は1991年にObenchainが腹腔鏡視下手術を施行したのに始まり,その後,1997年にはSmithとFoleyによって後方からの内視鏡による椎間板切除術が施行された。

 この方法をいち早く本邦に導入されたのが吉田名誉教授で,1998年のことであった。われわれも1999年からこの方法を導入し,種々のご教示をいただいた。2004年には日本整形外科学会が脊椎内視鏡下手術の技術認定医制度を発足させ,2006年には本法が正式に保険収載された。この間,吉田名誉教授は周辺光学機器およびインストルメントの開発に勤しみ,本法をスタンダード手術手技になるまでに尽力された。日本整形外科学会の脊椎脊髄病委員会のアンケートにおいて,2015年には1万5千件の内視鏡下手術がなされており,80%以上が後方からの手技となっていることがこれを物語っている。

 本書の特徴は基本的な解剖や手術器具のセットアップの方法から,手術の各段階における器械の操作方法,各疾患に対する実際の手術手技が解説されていることである。特に実際に行ってみないとわからない細かいポイント,例えばレンズを曇りにくくする方法などについても懇切丁寧に解説されている。さらには万一起こった際の合併症への対応の仕方まで解説が及んでいるが,これら全てが和歌山県立医大の教室員によって執筆されているということが特筆すべき点であろう。

 手術手技の解説に当たっては多くの術中写真が使用され,またそれに対比するように解説図が多く併記されており,理解しやすい構成になっている。さらにありがたいのはweb上で該当する部分の動画が参照できることである。手術を既に相当数施行している者にとっても,再確認するのに大変有意義である。

 これから本法を始める予定である若手医師にとっても,あるいは既に手術を行っている医師たちにとっても,常に傍らに置いて参照したい一冊であることは間違いない。
読者の“ここが知りたい”に応える贅沢な内容の手術手技書
書評者: 松本 守雄 (慶大教授・整形外科学)
 脊椎手術の多くは体の深部で行われるため,明瞭な術野を確保できるかが成功の鍵となる。大きな切開・展開をすれば視野はよくなるが患者への侵襲は増え,術後創部痛,脊椎不安定性の増悪,社会復帰の遅れなどの問題を生じる。いかに脊椎周辺組織を温存して低侵襲に手術を行い,これらの問題を解決するかが重要である。椎間板ヘルニアなどの脊椎疾患に対する低侵襲除圧手術としては長らく顕微鏡下手術がgold standardとされてきた。1990年代に本邦に内視鏡下手術が本格的に導入され,パイオニアの先生方の多大なるご努力があり,現在ではその手術数が全国で年間1万件を超える標準的な低侵襲脊椎手術になりつつある。本書の編者の吉田宗人先生(和歌山県立医大名誉教授)はそのようなパイオニアのお一人である。

 新しい手術手技の導入初期にはさまざまな技術的困難,手術機器,周辺機器の不備などの問題が存在するが,吉田先生はそれらの問題を一つひとつ解決され,脊椎内視鏡下手術を有効で安全なスタンダード手技として確立してこられた。本書には吉田先生とその門下の先生方が20年をかけて築いてこられた脊椎内視鏡下手術のポイントやコツが美しいシェーマとともに贅沢に詰め込まれている。内視鏡下手術に必要な解剖,手術機器のセットアップ法と取り扱い法などの基本から始まり,疾患ごとの応用手技(これも頚椎から腰仙椎,あるいは脊柱管内から外まで対象疾患が非常に多い!),さらには合併症対策と全てが網羅されている。読んでいてここをもっと具体的に知りたいと思ったところは,実際の手術動画で確認できるようになっており,心憎いまでの配慮がなされている。

 和歌山県立医大には脊椎内視鏡下手術手技の習得をめざして国内外から多くの訪問者があるが(小生もその一人である),吉田先生以下,スタッフの先生方は大変な熱意をもってそれらの訪問者の指導に当たられてきた。本手術をスタンダードな手技として国内外に広め,脊椎疾患で悩んでいる患者の皆さんに恩恵をもたらしたいという吉田先生の強い思いがあってのことと思われる。

 本書は机上にあって,そのような指導を受けられる絶好のチャンスである。脊椎内視鏡下手術をこれから始める方,始めたが伸び悩んでいる方,さらには,経験は豊富だが自らの手技を再度見直したい方など全ての脊椎外科医にとって非常に役立つ手術手技書である。動画付きで18,000円は大変リーズナブルであり,ぜひ手元に置いて熟読することを薦めたい。

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