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ロジックで進める リウマチ・膠原病診療

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すぐれた若手リウマチ内科医・指導医として知られる著者が、その診療ロジックを惜しげもなく開陳した。プライマリ・ケアの場で一般医は、リウマチ・膠原病を「どう疑い」「どう追い詰める」べきなのか、治療薬を「何をもとに決定し、どう使用するのか」などの診療の基本を、著者ならではのロジック(思考経路)をもってわかりやすく示した。すべてのプライマリ・ケア医が読むべき「通読できるリウマチ・膠原病の教科書」の登場。

リウマチ・膠原病診療のロジックは?(萩野昇先生)

【週刊医学界新聞 第3280号 〔インタビュー〕『リウマチ・膠原病をどう疑い,追いつめるか』
萩野 昇
発行 2018年03月判型:B5頁:176
ISBN 978-4-260-03130-1
定価 4,180円 (本体3,800円+税)

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まえがき

 本書はプライマリ・ケアのセッティングでリウマチ性疾患・膠原病を診療するための方法について,主に「筋骨格・軟部組織の診察」という観点からまとめた叙説(Discours de la méthode)である.
 個々の疾患について,あるいはその治療薬(生物学的製剤など)については優れた教科書・モノグラフが数多あるが,その疾患を「どのように疑い,どのように追いつめるか」,治療薬を「何をもとに決定し,どのように使用するか」など,根柢にある考え方を説いたものが意外と見当たらず,初期~後期研修医への説明に時間を要することがあったため,自分の思考経路(ロジック)を開陳するつもりで書いた.言ってみれば,本書は優れた「単語集」「用例集」を使いこなすための「リウマチ・膠原病診療の初級文法書」を目指したものである.文法書は無味乾燥となりがちであるため,通読可能となるように,多くの注釈(Huggy’s Memo)を付した
 英国の哲学者ギルバート・ライルは,知識を“knowing that”型と“knowing how”型に分類し,“knowing how to operate is not knowing how to tell how to operate”と的確に表現している.本書で述べられた個々の事項は,先人の業績を参照したもので,特に新しいことはないが,その事項を徹底して臨床現場で「斬れるかたち」に配列し,多くの注釈をつけて,“how to practice”が伝わるように工夫した点が,あえて言えば「本書の新しさ」である.
 リウマチ・膠原病診療の魅力の1つとして,適切な診断と治療方針には,苦痛から解き放たれた「患者の笑顔」が漏れなくついてくる,ということが挙げられる.その魅力が伝わる本になったかどうか,それはひとえに本書の読者が,本書内容の実践を通じて,より多くの「患者の笑顔」によって迎えられたかどうかによって証されることだと思う.
 また,決して大部とはいえない本書だが,浅学の身では一冊にまとめるために多大な労苦を要し,自身の菲才が痛感された.読者の皆様のご批判を乞う次第である.
 医学書院の滝沢英行氏には本書のもとになる連載「あたらしいリウマチ・膠原病診療の話」(medicina)をご提案いただき,本書の完成に至るまで一貫してご努力いただいた.また,『なんびょうにっき』(フリンジブックス)でご自身の成人スティル病との闘病記を描いておられる,さとうみゆきさんに本書イラストをお願いできたのも僥倖であった.記して感謝の意を表する次第である.
 聖路加国際病院リウマチ膠原病センターの岡田正人先生・岸本暢将先生が主催される「リウマチ・膠原病セミナー」ではいつも多くを学んでいると同時に,筆者が本書で開陳したような「考え方」を披瀝する最初の場にさせていただいている.そこで得られた反応が本書の通奏低音である.
 最後に,本書は息子の夜泣きの合間に書かれ,娘の誕生とほぼ同時に完成したことを,家族への感謝とともに記しておきたい.

 平成30年1月9日
 萩野 昇

 注釈だけ拾い読みしていくのも面白いかもしれない.リウマチ・膠原病診療の裏道.

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覚えておくべき“即席リウマチ・膠原病診療”
 1 年齢・性別・主訴からの鑑別診断として代表的なもの
 2 各疾患の診断のポイント
 3 発症の早さと経過による診断のポイント

I リウマチ・膠原病へのアプローチ
 01 リウマチ・膠原病診療の考え方
  あたらしいリウマチ・膠原病診療
  リウマチ・膠原病診療でつまずきやすいポイント
  変化するステロイドの立ち位置
  リウマチ・膠原病診療の考え方
 02 関節症状へのアプローチ
  来院のたびに愁訴の増える「逃げ出したくなる」患者
  「非外傷性」に起こる関節・筋・骨格の愁訴
  患者の年齢・性別・主訴(来院事由)とその持続時間を聴取する
  リウマチ性疾患を「追い詰める」~近づいたり遠ざかったり~
  他疾患を「除外する」
  まとめ─病歴聴取の基本ストラテジー
 03 関節・筋骨格・軟部組織の診察
  身体診察でわかることは何か
  関節の痛みの診察─痛みを局在化する
  プライマリ・ケアにおける関節診察の目的
  手・手指関節の診察
  手・手指関節痛の鑑別診断
  肘の診察
  肩の診察
  局在診断を考えながらの診察
  股関節の診察
  膝関節の診察
  足関節・足趾の診察
 04 皮膚症状へのアプローチ
  一発診断からの訣別
  皮膚解剖・生理を理解する─皮膚の「読影」のために
  リウマチ性疾患では何を「探しにいくべきか」
  「手は口ほどにものをいう」ふたたび
  皮膚所見と関節所見を統合させる
 05 長引く発熱(不明熱)へのアプローチ
  体温調節と発熱の生理学
  不明熱の定義と臨床現場での実際
  発熱・高体温症と「炎症反応」
  「障害臓器・システムを絞る」ための飛び道具:FDG-PET
  リウマチ科的な考え方に立ち戻る
 06 プライマリ・ケアのための臨床免疫学
  臨床で使うロジックとしての免疫学
  自然免疫と獲得免疫
  適切な免疫反応と自己免疫(炎症)性疾患

II リウマチ・膠原病の薬─治療にはどんな武器があるのか?
 07 ステロイドの使い方
  ステロイド治療の3原則
  最適な臨床使用法を考える
  実際の使用例
  ステロイド投与時の副作用と対策:(1)感染症予防
  ステロイド投与時の副作用と対策:(2)骨粗鬆症予防
  消化性潰瘍予防
 08 免疫抑制薬の使い方
  ステロイドと免疫抑制薬
  どの免疫抑制薬を選択するか
  各免疫抑制薬の用法と副作用─吊り橋を渡るように
  副作用の伝え方

III リウマチ・膠原病の診断とマネジメント
 09 関節リウマチの診断とマネジメント
  早期の診断
  治療開始
  Treat to Target
  長期罹患リウマチ患者とどう向きあうか─ルノアールの治療を考える
  長期罹患リウマチ患者の治療における8つのアジェンダ
 10 プライマリ・ケアにおける膠原病の診断とマネジメント
  膠原病の分類
  全身性エリテマトーデス(SLE)
  炎症性筋疾患
  血管炎
  全身性硬化症,Sjögren 症候群
 11 全身の痛みへのアプローチとマネジメント
  「全身の痛み」に遭遇したら
  「全身の痛み」の鑑別診断
 12 リウマチ性疾患の緊急事態
  診断閾値と治療閾値
  主訴から考えるべき鑑別診断
  “Living with uncertainty”
 13 内分泌疾患による筋骨格症状
  更年期障害(エストロゲン低下に伴う関節症状)
  糖尿病
  甲状腺機能低下症
  その他の疾患
 14 膠原病mimics
  血管炎mimics
  全身性硬化症mimics
  炎症性筋疾患mimics

 索引

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まるで著者の診療に陪席しているようだ!
書評者: 花岡 亮輔 (JAかみつが厚生連上都賀総合病院リウマチ膠原病内科部長/千葉大医学部臨床教授)
◆なぜ医師はリウマチ・膠原病が苦手なのか?

 リウマチ・膠原病科について,世間一般の多くの医師は,「難しい!」と考えているようだ。いわく,リウマチ・膠原病科は,難解で抽象的な免疫学の知識を振りかざし,診断や治療がことさら難しい稀少疾患ばかりを扱う診療科ということらしい。

 難解なイメージの一因は,扱う疾患がほぼ全て原因不明であることだろう。原因不明である以上,病因学的診断は不可能である。通常は疾患原因と密接に結びついている病理学的診断すら,原因不明の疾患においては絶対的意義を持たない。そのため,リウマチ・膠原病科で扱う疾患の多くは症候学的診断でしか捉えようがない。疾患の存在可能性を高める所見を累積することで診断する。疾患活動性評価も単一のマーカーに頼れない。複数の所見を組み合わせて行なわれる。

 リウマチ・膠原病科が敬遠されるもう一つの原因は,筋骨格・皮膚・感覚器など,他領域の内科医が通常扱わない器官をも含めて横断的に診療することにあるだろう。臓器別診療に慣れきった医師たちにとって,単一臓器に関心を絞ることができない診療は大きなプレッシャーなのだと思う。

◆リウマチ・膠原病の「診療の勘所」をわかりやすく解説

 従来,教科書的な疾患各論を語った本は星の数ほど存在する。しかし,初学者の戸惑いは,これら疾患各論には書きようのないリウマチ・膠原病科の特性にこそ生じる。それを筆者は熟知しており,あえて症候学的,横断的な記載を中心に本書を構成している。にもかかわらず,筆致は平易で,何ともわかりやすい。まるで筆者の診療に陪席しているかのような味がある。ページ数は少なく,夢中になれば一日で読破できるほどの分量である。だが,内容は筆者の圧倒的な知識と経験に裏打ちされており,かなりのベテランであっても初めて知ることが数多く見いだされるであろう。リウマチ・膠原病科の入門者にとってはこの領域の勘所を押さえるために,ベテランには,入門者にこの領域をいかに教えるべきかを再考するために,ぜひお薦めしたい良書である。
リウマチ・膠原病診療に携わる全てのプライマリケア医へ
書評者: 矢吹 拓 (国立病院機構栃木医療センター内科医長)
◆レクチャーに定評あるDr.ハギー待望の単著

 膠原病診療に携わるプライマリ・ケア医の中で,萩野(荻野ではない)昇先生ことDr.ハギーをご存じない方はもぐりだろう。レクチャーのわかりやすさ,スマートさには定評があり,全国引っ張りだこである。そんなDr.ハギーが単著を出すとなれば読まない手はない。

 本書『ロジックで進める リウマチ・膠原病診療』は,ちまたではすでに「ロジリウ」なんて素敵な略称も付き,アイドルグループ顔負けの人気ぶりだという。今回本書を読了した第一声は「いやあ,面白かった!」だった。まさに読後感爽快! とはいえ,それだけでは書評にならないと怒られそうなので,もう少し具体的に。印象的だったのは以下の3点である。

 「リウマチ科医であると同時にやはり内科医!」
 「Pearl満載! その博識とうんちくに脱帽」
 「膠原病臨床の実践が丁寧に記載され,まるでDr.ハギーが隣にいるかのような臨場感」

 本書の中心はもちろんリウマチ・膠原病疾患なのだが,その端々に筆者が内科診療に真摯(しんし)に向き合っている様子が溢れ出ている。例えば,「血液培養2セットの採取なしにPMRと診断してはならない」とか,リウマチ診療では「適切な降圧療法や脂質代謝異常の治療は,免疫抑制薬と同等か,場合によってはそれ以上に重要である」など至言の数々がある。Clinical Pearlも満載で「皮膚を『読影』する」「結節性多発動脈炎は(中略)『リウマチ医の結核』」などきら星のごとくだった。また,Huggy’s Memoと称された注釈や各領域の歴史的な変遷の語りもまたグッとくる。ヒューリスティックスやトラジェクトリーなど視覚に訴えシステム1をわかりやすく解説したかと思えば,SPRFアプローチや思考過程を余すところなく丁寧に記載した構成でシステム2を開示する。何とも贅沢な一冊である。

 本書が多くのプライマリ・ケア医に届き,リウマチ・膠原病診療の底上げがなされることを願っている。そして,「ありがとう,Dr.ハギー(オギーじゃないよ)」。
プライマリ・ケア医必読の書
書評者: 川島 篤志 (市立福知山市民病院研究研修センター長/総合内科医長)
 「血液培養も採らずに,やれリウマチ性多発筋痛症とか,やれ巨細胞性血管炎とか言っている臨床医のなんて多いことか。そんなことをしていると,Huggyに叱られますよ!」。そんなセリフが聞こえてきそうである。「リウマチ・膠原病」と聞くと裏口から逃げ出したくなる感情を抱く医師に,笑顔をもたらしてくれる,奥深い読み応えのある書籍が現れた。

◆付箋をつけて診察室に置いておきたい

 プライマリ・ケアの現場で遭遇しそうな親しみやすい状況を描いた巻頭の12ページは,綴じ込み付録のように切り出して使いたい! 続いて「診察・アプローチ」別にテンポよく読み進めていける。とにかく図表が秀逸であり,付箋を付けて診察室に置いておきたい。突然,波長の異なるやり取りが始まり,思わず飛ばそうかな,となったところで,クギを刺されるコメントを見つけると,筆者に心を見透かされた気分になる。

 随所に出てくる「Huggy’s Memo」は,ロジックを余すことなく開陳してくれている筆者の痛快な講演でのつぶやき(a.k.a.心の叫び?)のようにベテラン医にも響く。「ゴメン」的に可愛いものもあれば,重く深いコメントもある。先人の業績への配慮も素晴らしい。

 Common diseaseである関節リウマチへのアプローチでは,診断だけでなく長期的な視点にも言及しており強い共感を覚える。あえて生物学的製剤を外した,薬剤の使い方も膠原病医とタッグを組む可能性のあるプライマリ・ケア医に優しく深い視点で記載されている。「疑わないと見つからない」疾患への診断とマネジメントでは,「疑う→迫る→除外する→フォローする」というこの書籍の根幹に触れることができる。

◆関節症状を診ることがある医師には必読

 さて,これは誰のための書籍であろうか? 関節症状を診る,細かく言及すれば「リウマチ性多発筋痛症」を鑑別診断に挙げる医師には必読と言い切りたい。Huggyもこう言うに違いない。「今こそ,リウマチ・膠原病に少しでもかかわる医師に伝えたい。この書籍をぜひ手にしてください。明日から『患者さんの笑顔』が漏れなく付いてきます!」と。

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