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介護施設の看護実践ガイド 第2版

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介護施設で働く看護職員が、介護職員など他職種と協働しながら、効果的にケアを提供するための実践ガイド。ケアを提供する際に必要となる具体的な知識とその根拠を解説し、チェック項目を用いて、それらを確認しながら、日々のケアに活用できるという好評の構成はそのままに、今改訂では、「倫理」「記録」「ポリファーマシー」「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」などの項目を新たに追加。
編集 公益社団法人 日本看護協会
発行 2018年12月判型:A5頁:272
ISBN 978-4-260-03634-4
定価 2,750円 (本体2,500円+税)

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はじめに―第2版発行にあたって

 わが国は,世界に類をみない超高齢社会を迎えています。このような状況のなか,高齢者が安心して暮らせる住まいとしての介護施設の役割は重要です。特に高齢者の多くは医療ニーズをもち,安全・安心な生活を求めています。さらに多死社会にあっては,看取りに関するニーズへの対応として,看護職の専門性の発揮が期待されています。その専門性を発揮するためのガイド(道案内)として,2013(平成25)年に『介護施設の看護実践ガイド』(初版)を出版したところ,発行とほぼ同時に増刷が決まりました。つまり,介護施設で活躍する看護職員に必要とされていた書であったことが明らかになりました。現在も,多くの方々に活用していただいています。
 2013年以降,社会環境は大きく変化しています。さまざまな制度も改正されています。そこで,内容の見直しを行い,第2版を出版することとなりました。

 この5年間で,大きく変わったこととして,早期退院が促進され,医療ニーズの高い在宅療養者等の受け皿として,介護保険施設のみならず,サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホーム等,高齢者の住まいの需要が拡大していることが挙げられます。その社会環境の変化に対応するため,法制度も変化しました。例えば,介護保険法改正では,特別養護老人ホームへの新規入所者が原則として要介護度3以上の要介護者に重点化されました。また,身体拘束等の適正化のための体制整備や,看取りの体制の評価などが強く打ち出されるなど,療養者の尊厳を保持しながら,医療ニーズへ対応することや安全管理が必須となっています。

 介護施設において「穏やかな生活を送るための空間をつくり出す」ことと「医療ニーズに適確に対応し,介護事故を予防する対策をつくる」ことはともに重要であり,安全で安心な療養生活のために,看護職員は日々尽力していることと思いますが,利用者の生活を重視し,かつ医療ニーズに適確に対応していくためには,施設の体制整備,介護職員とのコミュニケーションや人的資源管理など,施設をマネジメントするための基盤づくりや課題解決に向けた取り組みが必要です。

 本書には,その取り組みを後押しするため,具体的で実行可能な看護実践を示しました。なお,今回の改訂では,大項目として「介護施設における倫理的課題と看護職の責務」と「記録と個人情報の取り扱い」を,コラムとして「介護施設でのポリファーマシー」「介護施設で実践する 人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」「情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断等ガイドライン」を新しく設けました。
 皆さまの日々の看護実践のなかで本書をさらに活用していただくことで,一層充実した取り組みが可能になると確信しております。
 本書は介護施設で働く看護職員ばかりでなく,その他の介護施設関係者の皆さまにもお役立ていただけることと思います。

 最後になりましたが,本書をまとめるにあたり,ご協力いただきました皆さまに,心より感謝申し上げます。

 2018年10月
 公益社団法人 日本看護協会
 会長 福井トシ子

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はじめに―第2版発行にあたって
日本看護協会がめざす介護施設における看護職員の役割
介護施設における看護
本書の活用方法

Chapter 1 倫理と高齢者の特性
 介護施設における倫理的課題と看護職の責務
  高齢者ケアにおいてなぜ倫理的課題が生じやすいのか
  生活支援における倫理的気づきの重要性
  意思決定支援─日々の意思を支える
  看護者の倫理綱領
  チェック項目
 老年期の身体・心理・社会的側面の特徴
  高齢者をとらえるための視点
  加齢による「4つの力」の低下
  高齢者の心身に起こりやすい状態や変化
  高齢者ケアにおけるアセスメントのポイント
  高齢者の身体機能の変化
  高齢者の心理・社会面の特徴
  チェック項目
 認知症に対する理解とケア
  認知症の概念と原因疾患
  認知症ケアのためのアセスメントとケアプラン策定の視点
  認知症の症状とケア・コミュニケーション
  家族からの情報収集とケア
  チェック項目

Chapter 2 看護の役割と看護実践
 利用開始時の援助
  利用開始時の援助の意義
  利用開始時の援助における看護職員の役割
  アセスメントとケア
  利用者の変化時の対応と終末期ケアへの準備
  チェック項目
 生活リズムを整えるための基本的ケア
  呼吸に関するケア(吸引含む)
  生活からみた高齢者の特性
  看護職員の役割
  アセスメントとケア
  チェック項目
 循環に関するケア
  生活からみた高齢者の特性
  看護職員の役割
  アセスメントとケア
  チェック項目
 体温調節に関するケア
  生活からみた高齢者の特性
  看護職員の役割
  アセスメントとケア
  チェック項目
 睡眠に関するケア
  生活からみた高齢者の特性
  看護職員の役割
  アセスメントとケア
  チェック項目
 移動・姿勢保持に関するケア
  生活からみた高齢者の特性
  看護職員の役割
  アセスメントとケア
  チェック項目
 食べる・飲むためのケア
  生活からみた高齢者の特性
  看護職員の役割
  アセスメントとケア
  チェック項目
 排泄に関するケア
  生活からみた高齢者の特性
  看護職員の役割
  アセスメントとケア
  Column トイレ訓練
  チェック項目
 皮膚に関するケア
  生活からみた高齢者の特性
  看護職員の役割
  アセスメントとケア
  チェック項目
 身体の清潔に関するケア
  生活からみた高齢者の特性
  看護職員の役割
  アセスメントとケア
  チェック項目
 身だしなみに関するケア
  生活からみた高齢者の特性
  看護職員の役割
  アセスメントとケア
  Column 施設看護の楽しさ
  チェック項目
 薬の管理
  高齢者における薬物療法と薬物有害事象
  薬の管理に影響する要因と服薬支援
  看護職員の役割
  Column 介護施設でのポリファーマシー
  チェック項目
 緊急時の対応(事故も含む)
  生活からみた高齢者の特性
  看護職員の役割
  アセスメントとケア
  チェック項目
 看取りの援助
  高齢者の看取り期の特徴
  看取り期にある高齢者の状態像
  看取りケアを行うための基本姿勢
  看取りケアでの留意点
  看護職員の役割および具体的なケア
  Column 看取り
  Column 介護施設で実践する「人生の最終段階における医療・ケアの
         決定プロセスに関するガイドライン」
  Column 「情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断等ガイドライン」
  チェック項目
 利用終了時の援助
  利用終了時の援助の意義
  看護職員の役割
  具体的ケア
  チェック項目

Chapter 3 介護施設での看護実践の仕組みづくり
 施設における組織体制の理解
  組織の理念・目的の理解
  組織図と役割機能
  組織とチーム
  組織マネジメントと連携・協働
  コミュニケーション
  チェック項目
 多職種チームの形成
  多職種チームにおける看護職員の役割と求められる能力
  多職種連携のためのコミュニケーションのポイント
  チーム力がアップすることによる効果
  チェック項目
 施設を超えた連携
  地域包括ケア
  利用者を取り巻く社会資源の評価と再構築
  看護職員同士の連携の促進
  チェック項目
 家族支援
  介護が家族に及ぼす影響
  ケアチームの一員としての家族
  家族との信頼関係を築く
  家族の連絡窓口を明確にする
  チェック項目
  Column 家族支援
 安全管理
  介護事故
  高齢者虐待
  身体拘束
  チェック項目
 感染管理
  感染管理のための基本的対応
  感染症の早期発見・対処のための視点
  感染管理体制の整備
  感染発生時の看護職員の役割
  チェック項目
 記録と個人情報の取り扱い
  看護職員の書く記録の役割
  記録を書くときのポイントと記載基準
  記録の種類と特徴
  記録の書き方
  Column 看護記録に関する指針
  チェック項目

Chapter 4 専門的知識・技術の習得と充実のための体制づくり
 研修体制
  研修体制づくりと企画
  研修の企画・実施のポイント
  チェック項目
 看護学生の実習
  看護基礎教育における介護施設での実習の意義
  臨地実習指導者の役割
  チェック項目

資料
  認知症の基礎知識
  介護施設における看取り研修プログラム・介護施設における看護職のための
    系統的な研修プログラム

引用・参考文献
おわりに
執筆者一覧
索引

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重要性を増す施設看護師の役割を果たすために
書評者: 東 憲太郎 (全国老人保健施設協会会長)
 介護老人保健施設(以下,老健施設)は,介護を必要とする高齢者の自立を支援し,家庭への復帰をめざすために,医師による医学的管理の下,看護・介護といったケアはもとより,リハビリテーション,また,栄養管理・食事・入浴などの日常サービスまで併せて提供する施設である。

 2017(平成29)年の介護保険法の改正により,利用者の定義が「要介護者」から「要介護者であって,主としてその心身の機能の維持回復を図り,居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者」に変わった。これまで,老健施設の役割は運営基準上で在宅復帰施設とされていたが,より上位概念である介護保険法によって,「在宅支援」の役割も明示された。

 国の進める「地域包括ケアシステム」では,施設から在宅への流れを進め,在宅サービスや地域密着型サービスを拡充していく方向性が示されている。老健施設は,在宅支援施設として,地域に貢献していくことで,地域包括ケアシステムの中心的役割を担っていくことが期待されている。

 「医療提供施設」に分類される老健施設において,看護職の役割は多岐にわたる。入所者の身体・精神状態や生活機能をアセスメントし,入所者や家族の願いや希望を取り入れながら,病気が悪化しないようなケアや,自宅で暮らすための生活機能の維持,入所者の生を全うできるような最期を迎えるためのケアを提案するとともに,これらのケアをチームで取り組むことを推進する力も必要となる。

 近年では,老健施設での看取りは増加しており,今や約半数近い老健施設において看取りが行われている。高齢者の多死時代を迎えるにあたり,今後看取りの需要はさらに増すことが予想される。また,施設利用者の重度化が進んでおり,医療の充実は必須であることからも看護職の役割はますます重要となっている。

 医療施設では,医師を頂点としたピラミッド形式の組織が基本となるが,老健施設では介護職,リハビリテーション専門職,ケアマネジャー,支援相談員などの各専門職が専門性を発揮しながら,職種の垣根を越えて,組織がドーナツ型のチームとなって利用者にサービスを提供する。看護職は少ない人員配置の中で,他の職種と連携・協働しながら質の高いケアの提供に貢献することが求められている。

 本書は,上記のように,介護施設で活躍する看護職に必要な倫理から,看護実践,組織体制の構築や教育方法まで掲載され,まさに,老健施設に従事する看護職の皆さまにぜひ,お読みいただきたい書である。

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