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DELTAプログラムによるせん妄対策
多職種で取り組む予防,対応,情報共有

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せん妄!? かもしれないと思ったときのケアで、その後が変わる。DELTAプログラムを用いた、せん妄の早期発見、重症化予防へのケアを解説した実践書
編集 小川 朝生 / 佐々木 千幸
発行 2019年09月判型:B5頁:240
ISBN 978-4-260-03652-8
定価 2,860円 (本体2,600円+税)

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  • 目次

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はじめに

 「せん妄? 何それ?」
 「僕の患者はせん妄なんかになりませんよ」
 「せん妄って特殊なものですよ。普通の緩和ケアには要りません」

 これらは5,6年前にせん妄について話したときに,戻ってきた言葉です。ふと少し振り返るだけでも,大きな変化の波がきていることをまざまざと実感します。
 いま,臨床の現場では,高齢者の診療場面が急増しています。たとえば,がん診療をみれば,がんに罹患する方の約4人のうち3人は高齢者になりました。一般診療の場面でも,エンド・オブ・ライフを話し合う方の中心は80歳代後半に移ってきています。そのようななか,入院・外来の診療場面で目にする合併症として,「せん妄」が徐々にですが,認識されるようになってきました。
 せん妄は身体的な問題を契機として生じる意識障害です。高齢者の多くは,糖尿病や脳梗塞,心不全など併存症をもち,ここにせん妄の一撃が入ると,これらの障害がドミノ倒しのように連鎖的に悪化し,機能低下を招いた末に死に至ることも少なくありません。しかし,せん妄は精神運動興奮などを伴うことがあるため,俗に言う「問題行動」として捉えられがちです。安全管理的な対応に気が向きがちのため,身体的な要因を見直すことが忘れられた結果として,一般病院では安易な身体拘束につながることもあります。特に,身体的な異常に気づき,早期に対応するチャンスであるにもかかわらず見逃されてしまい,利益の大きい治療ができなくなったり,避けられたかもしれない機能低下を招き,本人の望む療養が送れなかったりするのは残念なことです。
 このようにせん妄の与える影響が大きいことや,一般病院においては認知症対応の半分以上を占める主要な課題であることが徐々に認識されるようになってきたこともあり,せん妄に関する教育を行って,実践力を高めようと試みる施設もでてきました。しかし,せん妄を伝えるための教育資材を一から作るのが大変なこと,せん妄の精神症状の評価方法(特に注意障害)を文字だけで伝えるのが難しいことから,院内教育を担当する多職種チームの負担は大きく,系統立てた教育を作るには労力がかかります。また,せん妄を発症した際に対応しなければならない要因が多岐にわたることから,座学で伝える知識だけでは実践が困難である側面もあります。
 この教育にかかる負担を少しでも減らして,病棟チームと多職種チームがより深い連携を組むことができないか,あれこれと試行錯誤するなかで作ってきたものが多職種せん妄対応プログラム(Delirium Team Approach program:DELTAプログラム)です。DELTAプログラムは,一般のプログラムと異なり,教育プログラムが大きな要素を占めるのが特徴ですが,それはこのプログラムが教育を重視してきたことを反映しています。
 どうしても「プログラム」と名をつけると,チェックシートや対応マニュアルが強くイメージされるかと思います。当然実践するうえでは,効果的・効率的な対応をすることも必要になります。しかし,どうしてそのアセスメントをして,対応をするのか,その背景を共有することは正しく確実な対応を導く基本として省くことができないと考えました。
 本書は,DELTAプログラムを紹介することを主としていますが,併せて普段の臨床において,せん妄の症状をどのように捉え,原因を評価し,ケアや対応を進めていくのか,事例を通して紹介することを目指しました。せん妄は治療のあらゆる時期,あらゆる場面で登場します。当然,関連する要因も多方面にわたります。それらをどのように整理をしていくのか,いろいろな要因があれば目移りもしますがいちばん気をつけなければいけないことは何か,対応の要所を確認するように努めました。普段の臨床をイメージしながら,ぜひ対応のプロセスを追っていただければと存じます。
 本書の執筆にあたり,DELTAプログラムの作成に携わった先生方以外にも,臨床の第一線で活躍されている先生方にもお力添えをいただきましたことを篤く御礼申し上げます。

 2019年7月
 編者を代表して
 小川朝生

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はじめに

第1章 せん妄の基礎知識
 せん妄に対するケアを見直す
  ・せん妄の放置により起こりうる問題
 せん妄とは何か
  ・せん妄の臨床像
  ・せん妄を発症する割合
  ・せん妄の病態
  ・症状
  ・せん妄と認知症
 せん妄への対応
  ・せん妄への非薬物療法
  ・周術期におけるせん妄対応
  ・薬物療法
 せん妄に取り組む医療体制を整えるためには――DELTAプログラムの開発
  ・国立がん研究センター東病院での取り組み

第2章 DELTAプログラムによるせん妄のリスク評価と対応
 看護師としてできるせん妄への対応――治療経過とそのなかでのせん妄対策
  ・看護師としてできること
  ・DELTAプログラムとは
 せん妄のリスクアセスメントと予防的な対応
  ・DELTAプログラムSTEP 1 リスクアセスメントとせん妄ハイリスクケア
  ・せん妄ハイリスクの同定
  ・せん妄ハイリスク対応――せん妄の発症予防
  ・せん妄ハイリスク対応――せん妄のオリエンテーション,環境調整
 パターン別にみるせん妄リスクの変化
  ・せん妄リスクの変化
  ・手術患者
  ・化学療法患者
  ・緩和ケア期に移行した患者
 発症の予防
  ・手術の場合の対応
  ・内科入院の場合の対応(化学療法)
  ・内科入院の場合の対応(症状緩和)
  ・外来の場合の対応(化学療法)
  ・外来の場合の対応(症状緩和)
 せん妄の早期発見・早期対応
  ・DELTAプログラムSTEP 2 せん妄症状のチェック
 重症化させないためのせん妄対応
  ・DELTAプログラムSTEP 3 せん妄対応
  ・体(身体症状への対応)
     疼痛ケア
  ・環境
  ・脳
  ・薬①(抗精神病薬・副作用)
  ・薬②(抗精神病薬の使い分け)
 せん妄に関する大事な要因
  ・意思決定支援
  ・終末期のせん妄ケア
  ・家族へのケア
  ・認知症のある患者のせん妄対応
  ・医療安全からみたせん妄対策
  ・医療者への支援
  ・せん妄の評価ツール
  ・特徴的な症状と重症度評価

第3章 事例でわかる 治療の経過とせん妄ケア
 術後せん妄の事例
  ・アセスメントとケア
  ・経過・結果
 内科入院の事例(化学療法)
  ・入院時におけるせん妄のアセスメントとケアのゴールおよび具体的ケア
  ・化学療法開始後におけるせん妄のアセスメントとケアのゴールおよび具体的ケア
 内科入院の事例(症状緩和)
  ・入院時のせん妄リスク因子評価
  ・せん妄発症時のケア
  ・結果(回復期のケア)
 外来患者の事例(化学療法)
  ・入院時のせん妄の看護ケアの情報収集
  ・外来化学療法時のせん妄の看護ケア
  ・アセスメントの展開
  ・外来化学療法室でのせん妄の看護ケアの実際
 外来患者の事例(症状緩和)
  ・F氏のせん妄準備因子は何か
     【STEP 1 せん妄のリスク評価】
  ・F氏はせん妄を起こしているのか
     【STEP 2 せん妄症状のチェック】
  ・F氏のせん妄の直接原因・誘発因子,対応
     【STEP 3 せん妄対応】
 在宅の患者の事例
  ・在宅医療の特徴
  ・在宅でのせん妄ケアにおける看護師の役割
  ・在宅におけるせん妄患者のケース
  ・在宅医療におけるせん妄ケアの体制と教育
 終末期患者の事例
  ・H氏のせん妄は改善可能か
  ・H氏の終末期せん妄への具体的な支援
  ・妻への具体的な支援
 スタッフへのサポートの事例
  ・精神科リエゾンチームの評価と初期対応
  ・患者の気持ちの読み解きと共有
  ・現場で取り組めることを考える
  ・カンファレンスの開催
  ・カンファレンスにおける集団心理(集団力動)
  ・スタッフへのケア

第4章 ここがポイント! せん妄のチームアプローチ
 せん妄のチームアプローチ
  ・重視されるチーム医療
  ・せん妄におけるチーム医療の重要性
  ・DELTAプログラムの開発
  ・せん妄対策を多職種で取り組む際によくある質問
  ・チーム医療の注意点
 看護管理の視点からみた せん妄のチームアプローチ
  ・せん妄患者へのチームアプローチ
  ・多職種による連携を遂行するために必要な要素
  ・多職種による連携を円滑に遂行するための要素
 せん妄予防・対策チームの取り組みの実際
  ・無床精神科リエゾンチームで取り組むせん妄予防の実際(市立豊中病院)
  ・せん妄対策チームの取り組みの実際(岡山大学病院)
  ・せん妄対策チームの取り組みの実際(熊本赤十字病院)

資料 DELTAプログラムのせん妄アセスメントシート(図2-1の拡大版)

索引

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