みるよむわかる生理学
ヒトの体はこんなにすごい

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医療専門職をめざす学生に薦める生理学のサブテキスト。医学部・看護学部で教鞭をとり、多数の教科書に執筆している著者ならではの視点が随所に。わかりやすくユニークなたとえ、柔らかな語り口、豊富な図やコミカルなイラストなど、生理学理解の敷居を下げる工夫が満載。体の不思議に迫るコラム、「なぜ頭痛が起こるの?」「なぜ動物は眠らないといけないの?」などの身近な疑問に答えるQ&Aコーナーも充実。カラダって、すごい。
岡田 隆夫
発行 2015年03月判型:B5頁:184
ISBN 978-4-260-02120-3
定価 3,520円 (本体3,200円+税)

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 ここに『みるよむわかる生理学』をお届けします。楽しんでいただければ幸いです。
 私は序文を書くのが苦手です。何故だか構えてしまってリラックスして書けないのです。しかし本を出版する以上,序文なしでは格好がつかないようで,本文とは違い,いやいや書いています。
 実はこれは「生理的に好きになる生理学」というタイトルでMedical Tribune社の薬剤師さん向けの雑誌『Pharma Tribune』に連載していたものに手を加え,単行本化を医学書院が引き受けてくださって出版に漕ぎ着けたものです。薬剤師さん向けということで,薬に関連する記載も多く,それらの部分はできるだけ削除したのですが,文章の流れから削除しきれない部分も若干残ってしまいました。そこのところはご容赦ください。
 私は医学部や看護学部で生理学を教えています。その関係で真面目な教科書も書いていますが,もう少し柔らかい,読んでいて楽しいものを書きたいと常々思っていました。というのは,生理学に拒絶反応を示す学生が意外に多いからです。そのような学生さんに生理学の面白さ,楽しさを伝えることができればと考えました。そこで雑学的な話題,会話の中でちょっと知識をひけらかせることのできるような話題をコラムとして随所に挿入してみました。自分で言うのもちょっと気が引けますが,読者の皆様にはなかなか好評でした。ただ,コラムだけを拾い読みするのではなく,本文にも目を通していただければ幸いです。本書の題名で,「みる」が最初に来ているように,画家の村山絵里子さんがとても楽しい挿絵を描いてくれました。挿絵もぜひとも楽しんでいただければと思います。
 最後になりましたが本書の出版に際しては医学書院編集部の金井真由子さん,安部直子さんに大変お世話になりました。また,お堅いことで有名な医学書院がこのような本を出版してくださることも意外でした。紙面を借りて厚く御礼申し上げます。

 2015年1月
 岡田隆夫

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1 細胞の機能とその調節
    細胞の構造
    細胞膜
    細胞内情報伝達
2 血液
    血液の細胞成分と液体成分
    赤血球
    白血球
    血小板と血液凝固
3 免疫グロブリンの働き-血液型とアレルギー
    免疫と抗体
    ABO式血液型
    Rh式血液型
    HLA抗原
    アレルギーと自己免疫疾患
    花粉症
4 静止電位と活動電位
    細胞内液と細胞外液
    静止電位の成り立ち
    細胞の興奮
    心筋の活動電位
5 心臓の電気的活動とその異常-不整脈
    心臓の電気的活動と心電図
    心臓における興奮の発生と刺激伝導系
    徐脈性不整脈と頻脈性不整脈
    頻脈性不整脈の成因
    心室細動と心肺蘇生法
6 心臓の収縮と前負荷・後負荷・収縮性
    ヒトの心拍出量
    スターリングの心臓の法則
    ラプラスの法則
    心臓の仕事
    心周期と心室の圧-容積関係
    収縮性
    慢性心不全
7 血圧
    血圧の単位
    最高血圧と最低血圧,平均血圧
    なぜ高い血圧が必要なのか
    高血圧
    起立性低血圧
8 微小循環と物質交換
    拡散と血液の循環
    肺におけるガス交換
    末梢組織における物質交換
    ショック
9 呼吸とガス交換
    生命=エネルギー産生
    呼吸運動
    気道の働き
    肺気量
    ガス交換
10 腎臓の役割と排尿
    腎臓によって調節されるもの
    浸透圧
    腎臓による尿の生成
    クリアランス
    蓄尿と排尿
11 消化と栄養素の吸収
    胃
    十二指腸
    空腸と回腸
    大腸
12 ホメオスタシス-内分泌とホルモン
    自律神経とホルモンの役割分担
    分泌の種類と特徴
    ホルモンの特徴
    ホルモン分泌の調節
13 糖質コルチコイドと炎症
    副腎
    副腎皮質ホルモン
    副腎皮質の機能異常
    炎症のしくみ
    炎症に対する糖質コルチコイドとNSAIDsの効果
14 体温
    熱の出納
    熱の放散
    体温の臨床的意義
15 骨と皮膚
    骨
    皮膚
16 神経系1-末梢神経・中枢神経(脊髄・脳幹・間脳)
    末梢神経
    中枢神経
17 神経系2-中枢神経(大脳・小脳)
    大脳
    小脳
18 受精・妊娠と胎児の発生
    減数分裂と生殖細胞の形成
    女性の性周期
    受精と卵の着床
    胚の成長
    胎児の血液循環
19 成長と老化
    成長
    老化
    死
20 感覚-痛みを中心に
    Q1 気圧と頭痛の関係性はどうなっているの?
    Q2 なぜ冷たいものを食べると頭がキーンとするの?
    Q3 なぜ風邪をひくと頭が痛くなるの?
    Q4 なぜ走ると横隔膜が痛くなるの?
    Q5 なぜ痛い部分をさすると痛みが和らぐの?
    Q6 なぜ痛風発作は足の親指の関節に出るの?
    Q7 なぜ年をとると腰痛になりやすいの?
    Q8 なぜ肩こりが起こるの?
    Q9 なぜ「朝のこわばり」が起こるの?
21 睡眠
    Q1 なぜ動物は眠らないといけないの?
    Q2 なぜ眠いと欠伸が出るの?
    Q3 なぜ欠伸をすると涙が出るの?
    Q4 欠伸はどうしてうつるの?
    Q5 なぜ電車で眠くなるの?
    Q6 なぜ寝入りばなに手足がピクッとするの?
    Q7 なぜ金縛りは起こるの?
    Q8 なぜ就寝時にこむら返りが起こりやすいの?
    Q9 なぜ夢を覚えている時といない時があるの?

索引

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基礎と臨床の橋渡しをしてくれる,全ての臨床医にお勧めしたい本
書評者: 中尾 篤典 (兵庫医大准教授・救急・災害医学)
 医学部の学生の頃に学んだ生理学は,何とも難解で,拒絶にも近い感情を持っていたことを記憶している。本来生理学は医学の中心をなす最も大切な分野であるといっても過言ではないが,医学部の過程の比較的初期に学ぶため,その大切さに後から気づくことが多いように思う。小生もまさにその類に属し,生命科学の基盤であるべき生理学の重要さを最近,学生に臨床医学を教える立場になって再認識している。

 岡田隆夫先生により執筆された本書は,もともとは薬剤師向けの雑誌に連載されていたものであり,21の臓器・機能別の項より成っている。平易な文章で簡潔に書かれているため,読み始めると一気に読み進めることができるが,小生はあえて,オフィスのソファに横になり,救急患者さんの検査結果が出るまでの待ち時間を利用したり,移動の電車中などを利用して読んでみた。それくらいどこから読んでも,気楽に生体の機能とメカニズムを理解することができる好著である。

 美しいレイアウトとともに,コミカルな挿絵も魅力的であるし,ユーモアに富んだ(親父ギャグともいうが)コメントからも,著者の細やかな気遣いが感じられる。また,コラムには,なるほど,と感心させられる著者の体験談なども盛り込まれており,最近発表された最先端の論文に公表されたデータなども実に簡潔に興味を引くように工夫されて引用されている。著者の専門であるところの循環器に関する記述は,さすがにその道の第一人者として造詣の深さを感じる。

 本書は非常に知的好奇心をくすぐるので,小生は,もう少し詳しく調べてみたいところに付箋を貼りながら読んでいったが,読み終えた時には本のほとんどのページに付箋が貼られていたことに気付いた。引用文献などの記載があれば,小生のようにさらに深く学習したいと思う読者により親切であったかもしれないが,英語が並ぶページを省くことで本書が堅苦しさから解放されているのであろう。多数の読者に対する著者のやさしさや心遣いは,こういうところからもうかがい知れる。

 長年,医学・看護学教育に尽力してこられた著者ならではの平易な言葉遣いは,実際に大学で教鞭をとるわれわれにとっても斬新で大変参考になる。『生理学』というタイトルの本ではあるが,著者の膨大な基礎医学の知識に基づき,病理学,分子生物学についても理路整然と説明がなされており,本書はまさに「生理学を口語調で語る」本である。

 本書は,学生はもちろんであるが,ある程度医学全般を修めた臨床医にとっても,改めて生理学に違った立場から触れ,その面白さを気付かせてくれる。小生は,現在は救急医学で臨床医として多忙な時間を送っているが,前述したように本当に「気軽に」読める本であり,研修医や学生の指導にも大いに役立てたいと思っている。本書は,全ての医師,特に教育に関わる医師に強くお勧めしたい。
誰が読んでも楽しめる,生理学の新しいサブテキスト
書評者: 荒賀 直子 (甲南女子大学看護リハビリテーション学部長)
 このたび医学書院から『みるよむわかる生理学—ヒトの体はこんなにすごい』が発刊されました。著者の岡田隆夫先生は長年にわたって生理学の教育,研究をされていて多くの書物を執筆されています。長年の経験の中で培われた,わかりやすい生理学の講義がこの書に集約されています。

 医療職を目指す学生が専門科目を習い始めて最初の難関が,生理学・解剖学ではないでしょうか。私が看護学を学んだころは解剖生理学という名前で,教師が人体の各部所の名前や働きを述べていき(時々は事例を入れながら),学生はそれを覚えていくという授業内容であり,授業中にはそれを覚える間もなく次々に新しいことが展開していくので私自身は不得意科目の一つでした。しかし本書を開いて最初に感じるのは美しい色彩で生き生きとした絵が描かれていることで,今までの生理学の本とは違った優しい印象を受けます。

 本書は,まず人体の細胞の構造や血液の構成要素,各内臓の働きなど,生理学の基本的な内容について項目別に解説しています。また理解を進めるために,項目ごとにそれぞれの働きにまつわる物語を作ってコラムにまとめています。

 最後の「感覚」と「睡眠」という項目の中では,日ごろ体に関して起こる現象について人々が持つ疑問や,知りたいことについて取り上げています。このように基礎となる生理学的な体の働きを理解した上で,日常生活で起こる体に関する疑問について説明するという流れでまとめており,各項目がどのように関連して体の現象が発生するのかを示しています。この最後の2項目は,医療職のみならず一般の人にもわかりやすく興味深い読みものになっています。例えば,電車の中で眠くなるのはなぜか? なぜ肩こりが起こるの? なぜあくびをすると涙が出るの? など,この部分を読むと,なるほどそうなんだ!と納得する理由を解説しています。

 最近は医学関係書もカラフルに図解する傾向にありますが,本書の構成でユニークなのはカラフルなだけではなく,生理学を面白く感じさせる図が随所に表されていることです。例えば全身骨格の図は一般的には直立した骨格が描かれていると思いますが,本書は骨格が踊っているように描かれていて発想の転換をさせられます。著者も序文で述べていますが,挿絵も楽しく「みる」本としても楽しめます。

 高齢社会が進んでいく中で特に関心を持たれるのは,「成長と老化」の項目で述べられる不死の細胞といわれるHeLa細胞の話ではないでしょうか。HeLa細胞は必要とされる限り,何百年でも生き続けることから,生理学者が人間の不死につながる新しい発見をする可能性が期待されます。

 『みるよむわかる生理学』のタイトルどおり,本書の活用によって医療職の初学者には生理学が理解しやすくなる新しい形のサブテキストといえます。また自分の健康に関心のある一般の人でも見て読んで楽しめる内容になっており,読者層の拡大により生理学が身近なものになることも期待できる書になっています。

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