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実践! 皮膚病理道場 バーチャルスライドでみる皮膚腫瘍 [Web付録付]

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本書はこれまでにない皮膚病理組織学の入門書。解説を読みながら、Web付録のバーチャルスライドを観察することにより、あたかも指導者が傍らについて手取り足取り指南してくれたかのような学習効果を得ることができる。皮膚科医が必ず押さえるべき皮膚腫瘍の病理診断を網羅したビギナーからエキスパートまで必読の1冊。日本皮膚科学会総会の好評教育講演が待望の書籍化!
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編集 日本皮膚科学会
発行 2015年05月判型:A4頁:200
ISBN 978-4-260-02118-0
定価 13,200円 (本体12,000円+税)

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(島田眞路)/刊行のことば(土田哲也)/制作責任者のことば(山元 修)/本書の特徴と使い方(安齋眞一)


 『実践! 皮膚病理道場 バーチャルスライドでみる皮膚腫瘍』の完成に際して一言ごあいさつ申し上げます.
 第112回日本皮膚科学会総会(川島 眞会頭)の際,「実践! 皮膚病理道場」が開催されました.日本皮膚病理組織学会の諸先生方の多大なご努力のおかげで,大変すばらしい教育講演となりました.聴講者のみなさんからもきわめて高い評価を受けました.しかし,折角,集められた数々の美しい病理スライドをそのまま捨ててしまうのは,あまりにも“もったいない”ということで,ぜひ出版していただきたいと考えました.各種疾患の美しい鮮明な画像と的確で簡明な記載で構成されており,初学者からベテランの専門医まで十分楽しめる内容になっております.今日出版にまでこぎつけられたのは,土田哲也教授(埼玉医科大学),山元 修日本皮膚病理組織学会理事長,安齋眞一教授(日本医科大学武蔵小杉病院)などの多大なご努力のおかげと深謝致します.
 さて,皮膚病理学は皮膚科臨床医にとって最重要分野の1つです.皮膚の病理を知ることなく臨床皮膚科を修得するのは不可能なほどです.日本皮膚科学会専門医試験でも皮膚病理の問題は必ず出題され,面接試験でも重要な位置を占めています.振り返ってみますと,私の皮膚科研修時代,東京大学では「組織デモ」と称する症例検討会が毎週開催され,担当医は学会なみの皮膚病理を中心とする症例報告をさせられました.これが私の皮膚科臨床の基礎になっているものと考えます.
 米国留学時,皮膚病理専門医の存在を知りました.米国の臨床カンファランスでは,臨床所見なしでもHE染色標本だけでどんどん確実に診断していく姿をみて大変感銘を受けました.なかでも,故Ackerman教授の講演やカンファランスは圧巻でした.Ackerman教授のもとには日本からも多数留学されています.日本でも皮膚病理専門医ができればよいのですが,未だ方向性はみえません.しかし,皮膚病理学の重要性は全く変わりません.
 この『実践! 皮膚病理道場 バーチャルスライドでみる皮膚腫瘍』をきっかけに特に若手の方々は皮膚病理の大切さを理解して,臨床の最重要分野であることを再認識してほしいと思っています.
 平成27年4月
 日本皮膚科学会理事長 島田眞路


刊行のことば
 『実践! 皮膚病理道場』というタイトルをみて,少しひいてしまう方もいらっしゃるかもしれない.いわばこわもての師範による熱血指導のイメージだろうか.ただ,ちょっと気になって,この書を手にとってご覧いただいた方は,この道場は熱血指導ではあるが,こわもてのかけらもないことはすぐにわかるはずである.経験のない若い先生方も最初に打ちのめされることなく,それなりの鍛錬を積み重ねさえすれば一定の技の領域に到達できるような仕掛けが施されている.
 この書は,第112回および113回日本皮膚科学会(日皮会)総会・学術大会において「実践! 皮膚病理道場」と題した皮膚病理実習の際に用いた教本をもとに作成された.皮膚病理の実技指導が学会の場で行われたのは画期的なことである.講義のあとバーチャルスライドを自分で見て考え,疑問点はその場でチューターの個人指導を受けるというシステムは,教育に特化したはずの日皮会学術大会においてさえそれまで実現できていなかった双方向性の教育環境である.この病理実習は,第112回日皮会総会・学術大会会頭の川島 眞教授から日本皮膚病理組織学会(皮膚病理学会)へ企画の依頼があり実現した.かねてから若手皮膚科医の皮膚病理へのいざないに熱意を注いでこられた皮膚病理学会理事長の山元 修教授を中心に,学会の総力をあげて取り組みが行われた.実務を取り仕切ってくれたのは安齋眞一教授で,この書も安齋教授が中心となり発刊にこぎつけることができた.第113回日皮会総会・学術大会会頭の岩月啓氏教授には,さらに教育環境を整備していただき,「皮膚科の職人魂」という学会のスローガンにぴったりの皮膚科医の技を高める機会を与えていただいた.
 例えて言えば,この道場は,まず学会において,川島会頭,岩月会頭という皮膚病理に造詣の深い両道場主のもとで,山元師範,安齋師範代が中心となって熱血指導を行う場であった.今回は,道場の場を学会から書面に移して,さらに広く実際的な皮膚病理の鍛錬を行えるように企画されたものである.
 道場の指導者は実に優しい.こわもての道場イメージとは正反対である.著者の三砂範幸氏,安齋眞一氏,伊東慶悟氏,宇原 久氏,福本隆也氏,大塚幹夫氏の各先生ともご自身で培ってきた実際的な皮膚病理の見かたを惜しげもなく披露してくださっている.この書では,従来の皮膚病理の教科書では経験できないような,あたかも傍らにマンツーマンで指導者がついて教えてくれる感覚で学習することができる.そしてこの書の最大の特徴は,実際の病理組織をバーチャルスライドで見られることである.バーチャルスライドをPC画面でみることが楽しいと感じたらしめたものである.自分で考え,さらに書面の解説を読むことを繰り返せば,皮膚病理の剣豪を名乗れる実力を身に付けることができる.長い時間をかけて,多くの標本を顕微鏡で見ながら考えていくことの積み重ねが,今でも皮膚病理学習の王道であることは間違いない.しかし,この書による学習では楽しみながらより効果的に基本技を修得することができ,しかも独りよがりではなく正しい方向に導いてくれる.
 この道場の入門者としては,これから鍛錬に励もうとする若い先生方を想定しているが,ベテランの先生方にもぜひ参加していただきたい.私を含めて自分で思い込んでいた偏った知識を修正するよい機会になる.
 今回は「腫瘍」が中心であるが,今後はさらに「炎症」などについても続刊が望まれる.この書をきっかけに新しい時代の皮膚病理学が始まる予感がしている.
 平成27年4月
 土田哲也


制作責任者のことば
 私が駆け出しの青二才の頃,全国津々浦々,勤務医,開業医の別にかかわらず,皮膚病理にめっぽう精通した皮膚科医が多数おられました.それがいつの間にか激減し,今では自ら病理組織を見ることなく,病理医のレポートをそのまま鵜呑みにする皮膚科医もいると聞いております.このような事態を招いたのにはさまざまな要因があろうかと思いますが,いずれにせよこのままでは日本の皮膚病理医は絶滅危惧種どころか,完全に滅んでしまうという危機感を抱いていた皮膚科医がほんの一握りおりました.その1人であった私が日本皮膚病理組織学会の理事長になったのをきっかけに,「今後は皮膚病理組織学会も若手育成と皮膚病理の発展のための方策を講じるべきである」と方向転換いたしました.
 そのために新たな企画を次々立ち上げました.その中の1つとして第112回日本皮膚科学会(日皮会)総会学術大会(会頭:川島 眞 東京女子医科大学教授)にて,川島教授から深いご理解をいただいたうえで,皮膚病理組織講習会「実践! 皮膚病理道場2013」の開講を依頼され,実施しました.専門医試験受験前の皮膚病理初心者の若手を主な対象に,HE染色標本のバーチャルスライドを見ながらセルフアセスメント方式で学習しつつ,会場に配置されたチューターに気軽に質問ができるという形式です.この企画は,翌年の日皮会総会学術大会(会頭:岩月啓氏 岡山大学教授)にも引き継がれ,多数の受講生の参加を得ました.
 対象疾患を,受講生の習熟度に応じ,まったくの初心者レベル,専門医試験受験直前レベル,それらの中間レベルと3段階に分けましたので,幅広い受講生に対処できました.過去2回にわたる企画で学習が必須とされる皮膚腫瘍はすべて網羅しました.第114回学術大会(会頭:古川福実 和歌山医科大学教授)以降は2回連続して非腫瘍性疾患を対象にします.
 さて,企画として大成功した後に出てくるのはやはり「実践! 皮膚病理道場」の書籍化の話です.まずは1クール終わった腫瘍編をまとめてみよう,ということで安齋眞一氏(日本医科大学武蔵小杉病院,日本皮膚病理組織学会若手育成担当理事)に先頭に立って旗を振っていただいたおかげで具体化しました.自己学習用にバーチャルスライドファイルが付属した皮膚病理組織学教科書という点できわめて画期的です.また,出版については日本皮膚科学会の全面的なバックアップもいただいております.本書の実現にあたっては,担当の各氏にはまったくの手弁当で執筆していただいております.また,病理組織が苦手という初心者にも取り組みやすいよう,解説に関しできる限りわかりやすい工夫をしていただき,またできる限り美麗な標本を選んでいただいております.ぜひとも若い皮膚科医は,本書を手にとっていただき,画面上で典型的な症例標本を眺めつつ,皮膚病理組織の美しくかつ素晴らしい世界を体験していただきたいと思います.
 最後に,本書の企画につきまして多大なるご理解をいただきました日本皮膚科学会理事長島田眞路先生(山梨大学教授)に深く感謝申し上げます.また,川島先生に実習形式の講習会の企画をもちかけて下さった土田哲也氏(埼玉医科大学教授),本書出版の真の牽引役である安齋眞一氏,そして何よりまったくのボランティアで素晴らしい内容に仕上げてくださった執筆陣である三砂範幸(佐賀大学),安齋眞一,宇原 久(信州大学),伊東慶悟(東京慈恵会医科大学),福本隆也(札幌皮膚病理診断科),大塚幹夫(福島医科大学)の各氏に厚く御礼申し上げます.
 平成27年4月
 山元 修


本書の特徴と使い方
 本書の最大の特徴は,ネット上で観察できるバーチャルスライドデータが付属していることである.各標本データを見ながら本書に記載されている病理組織所見を確認し,各疾患の病理診断のポイントを修得することが本書の基本的な使い方である.
 あらかじめ断っておくが,本書は,さまざまな疾患を網羅的に解説するいわゆる教科書ではないため,取り上げている疾患に若干の偏りがある.学習対象とする疾患の選定基準として,皮膚病理初学者が知っておくべき疾患,そして日常診療で比較的目にすることの多い疾患を第一に考えた.また,比較的稀なものであっても,病理組織診断を学ぶうえで,重要な所見や考え方を含む疾患については選定している.そのため,本書に述べられている各疾患の病理組織学的所見は,各疾患の最大公約数的所見ではなく,バーチャルスライドで実際に観察してもらう標本における所見が記載されている.すなわち,教材として使われている標本は,各疾患の定型的な病理組織像をもつものであるが,必ずしも各疾患で出現が予想される所見をすべて備えているわけではない.したがって各疾患の病理組織診断のポイントについて理解をさらに深めるためには,いわゆる教科書的な書籍も併用するとよい.次頁には,各疾患において有用と思われる“いわゆる”教科書を列記しておくので,参考にしてもらいたい.
 さらに,本書では,疾患を難易度別にA,B,Cの3段階のレベルに分けている.レベルAは,基本的かつ日常診療でよく遭遇する疾患を並べている.初学者は,ここから順序よく観察し,理解していくことをお勧めする.レベルBは,レベルAの応用編とでも言うべきランクの疾患である.レベルAほどの頻度で遭遇するわけではないが,比較的遭遇する機会の多い疾患や,レベルAで取り上げた疾患の亜型などが含まれている.レベルCには,さらに難易度の高い疾患が含まれ,専門医試験受験直前程度の実力をもった皮膚科医が身に付けておくべき疾患が含まれている.ただし,これらの疾患の病理診断の理解が,専門医試験の受験に必要にして十分であると言う意味ではないので,誤解のないようにされたい.
 また,標本によっては,その疾患の診断とは直接関係のない正常組織に関する説明が,各項目の末尾に挿入されている場合がある.これらの所見に関しても,標本を観察して確認し,自分のものにしていただきたい.
 以上,簡単に本書の企画意図と制作責任者らの想定した使い方について説明した.これはあくまで制作責任者らの想定の範囲でのことであり,皆さんは個人個人で本書を十分に活用し,皮膚病理学あるいは皮膚病理診断学に関して,少しでも理解を深め,さらには興味をもっていただければこれに過ぎる喜びはない.
 平成27年4月
 安齋眞一

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レベルA
 1 表皮腫瘍
  脂漏性角化症 seborrheic keratosis
  尋常性疣贅 verruca vulgaris
  日光角化症 solar (actinic) keratosis
  Bowen病 Bowen's disease
 2 毛包脂腺腫瘍
  表皮(漏斗部)嚢腫 epidermal (infundibular) cyst
  外毛根鞘嚢腫 trichilemmal(tricholemmal) cyst, isthmus-catagen cyst
  脂腺嚢腫 steatocystoma
  毛母腫 pilomatricoma
 3 汗腺腫瘍
  Paget病 Paget's disease
 4 色素細胞腫瘍
  色素細胞母斑,真皮型,Miescher型 melanocytic nevus, intradermal, Miescher type
  色素細胞母斑,複合型,Miescher型 melanocytic nevus,compound, Miescher type
  色素細胞母斑,真皮型,Unna型 melanocytic nevus, intradermal, Unna type
  色素細胞母斑,接合部型,Clark型 melanocytic nevus, junctional, Clark type
  色素細胞母斑,複合型,Clark型 melanocytic nevus, compound, Clark type
  口唇メラノーシス melanosis of the lip
  悪性黒色腫 malignant melanoma
  先天性色素細胞母斑,複合型 congenital melanocytic nevus, compound
 5 軟部腫瘍
  脂肪腫 lipoma
  線維脂肪腫 fibrolipoma
  皮膚線維腫 dermatofibroma
  立毛筋平滑筋腫 piloleiomyoma, pilar leiomyoma
  血管平滑筋腫 angioleiomyoma
  化膿性肉芽腫 pyogenic granuloma
  神経線維腫 neurofibroma
 6 リンパ球腫瘍
  菌状息肉症,扁平浸潤期 mycosis fungoides, plaque stage
  木村病(皮膚偽リンパ腫) Kimura's disease (cutaneous pseudolymphoma)

レベルB
 1 表皮腫瘍
  脂漏性角化症,クローン(胞巣)型 seborrheic keratosis, clonal (nested) type
  有棘細胞癌 squamous cell carcinoma
 2 毛包脂腺腫瘍
  基底細胞癌,結節型 basal cell carcinoma, nodular type
  毛芽腫/毛包上皮腫 trichoblastoma/trichoepithelioma
  ケラトアカントーマ keratoacanthoma
 3 汗腺腫瘍
  汗管腫 syringoma
 4 色素細胞腫瘍
  青色母斑,通常型 blue nevus, common type
  青色母斑,富細胞型 blue nevus, cellular type
  Nanta母斑 nevus of Nanta
  悪性黒色腫 malignant melanoma
 5 軟部腫瘍
  血管脂肪腫 angiolipoma
  皮膚線維腫,萎縮型 atrophic dermatofibroma
  血管腫様(動脈瘤様)線維性組織球腫 aneurysmal fibrous histiocytoma
  隆起性皮膚線維肉腫 dermatofibrosarcoma protuberans
  グロムス腫瘍 glomus tumor
  神経鞘腫(Schwann細胞腫) neurilemmoma (schwannoma)
 6 リンパ球腫瘍
  菌状息肉症 mycosis fungoides
  未分化大細胞型リンパ腫 anaplastic large cell lymphoma
  びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫 diffuse large B-cell lymphoma
  皮膚偽リンパ腫 lymphocytoma cutis (cutaneous pseudolymphoma)

レベルC
 1 表皮腫瘍
  Merkel細胞癌 Merkel cell carcinoma
 2 毛包脂腺腫瘍
  基底細胞癌,モルフェア型 basal cell carcinoma, morpheic type
  線維形成性毛包上皮腫 desmoplastic trichoepithelioma
  脂腺癌 sebaceous carcinoma
 3 汗腺腫瘍
  汗孔腫 poroma
  皮膚混合腫瘍,アポクリン型 mixed tumor of the skin, apocrine type
  皮膚混合腫瘍,エクリン型 mixed tumor of the skin, eccrine type
 4 色素細胞腫瘍
  乳腺堤上の母斑 milk line nevus
  外陰部の母斑 melanocytic nevus, genital
  深部貫通母斑 deep penetrating nevus
  Spitz母斑 Spitz's nevus
 5 軟部腫瘍
  結節性筋膜炎 nodular fasciitis
  平滑筋肉腫,皮下型 leiomyosarcoma, subcutaneous
  Kaposi肉腫 Kaposi's sarcoma
  血管肉腫 angiosarcoma
 6 リンパ球腫瘍
  原発性皮膚濾胞中心リンパ腫 primary cutaneous follicle center lymphoma
  粘膜関連リンパ組織の節外性辺縁帯リンパ腫(MALTリンパ腫)
   extranodal marginal zone lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue
   (MALT lymphoma)

索引

コラム
 「石灰化上皮腫」という診断名について
 色素細胞の免疫組識学的マーカー
 皮膚線維腫の亜型を知っておこう!
 筋肉細胞の免疫組織学的マーカー
 血管内皮細胞の免疫組織学的マーカー
 木村病と鑑別を要する疾患
 脂漏性角化症の亜型を知ろう
 ムチン(粘液)について
 ケラトアカントーマの臨床的鑑別疾患
 Nanta母斑とDuperrat母斑
 色素細胞腫瘍を病理診断するときに注意すべき点
 有痛性の腫瘍
 末梢神経の免疫組織学的マーカー
 免疫組織化学染色を評価するうえでの留意点
 リンパ球腫瘍の診断に用いられる主なマーカーとその意義
 poroid cell neoplasmsの概念
 悪性リンパ腫を疑うべき病理組織学的所見

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革命的な書籍,時空を超えた学習ツール
書評者: 鶴田 大輔 (大阪市立大大学院教授・皮膚病態学)
 バーチャルスライドを利用した『実践! 皮膚病理道場 バーチャルスライドでみる皮膚腫瘍[Web付録付]』を強く推薦する。時空を超えた新時代の学習ツールであるからである。

 初めてバーチャルスライドを体験したのは,2年前に日本皮膚病理組織学会が主催する「皮膚病理道場あどばんすと」にチューターとして参加したときである。とにかく驚いた。なんと楽しいのだろう! 顕微鏡がなくても,コンピューター上で,自分の見たいところを自由自在に心ゆくまで見ることができ,いつでもどこでも病理組織の学習ができるのである。例えば,腫瘍を構成する個々の細胞において,核と細胞質の形態をじっくり見ることができる。「この腫瘍の構成細胞の核の形態は? 核小体の見え方は? 胞体の色は? 大きさは?」などを目に焼き付けることができる。また,そのときに学んだものをいつでもどこでも,顕微鏡がなくても繰り返し復習できるのである。バーチャルスライドがあれば,学習は時空を超えるのである!

 これまで,病理組織学を学ぶためには,大書をひもときながら実際に病理組織標本を顕微鏡を用いて眺め,一つひとつ個々の症例を積み重ねるしかなく,皆で共用使用する顕微鏡を「取り合いながら」利用せざるを得なかった。このため,これまでの病理学習は,臨床に追われて全ての業務が終了した後の「深夜」あるいは「土日」に行うイメージになっていたと思う。そうした意味では,本書はこのイメージを完全に超越している。なぜなら,コンピューター1台あれば,昼間から空き時間に病理学習ができるからである。

 今や,1,000gを切るパソコンは至るところにある時代である。病棟や外来で,ちょっとした細切れ時間でも病理学習ができるようになったメリットは計り知れない。実際に私もこの書籍をバーチャルスライドを見ながら通読してみた。日常診療の合間でも細切れ時間は結構あるものである。実質2,3日で通読可能であった。

 通読してみて以下の感想をもった。1)これ一冊で初学者が遭遇するであろう皮膚腫瘍を網羅している,2)大書では目に留まりにくい重要所見がコンパクトに「何度も」まとめられている,3)上級者にとっても必要な所見が書かれている。

 書籍に掲載されている写真はどれも秀逸で,記載もコンパクトかつ簡潔,そして重要事項は何度も繰り返し,それぞれの学習レベルに合わせて定着できるようになっている。単著ではないため,ごく一部に統一感のない記載もあるが,それぞれの執筆者の熱い思いが逆に伝わってくるようで好感を持てた。

 今後,第二弾として,炎症性疾患についての本書の続編が登場することを強く期待する。そうすれば,病理学習は真に時空を超えることになるであろう。
今までになかった画期的な皮膚病理入門書!
書評者: 田中 勝 (東京女子医大東医療センター教授・皮膚科部長)
 日本皮膚科学会の編集による,まったく新しいタイプの皮膚病理入門のための貴重な1冊がついに出た!

 各章の執筆者が,現在,皮膚病理診断の中心で活躍している経験豊富な6名,最も頼れる皮膚病理指導医たちである。したがって,全ての章が必要最小限の簡潔で明快な記述で構成されており,病理診断のポイントがとてもわかりやすい。なんと贅沢な本であろうか。

1.バーチャルスライドがWebで見られる点が画期的!
 この本は間違いなく,今までにないタイプの本である。すなわち,掲載されている病理画像を全て,Web上で,バーチャルスライドとして確認できるのである。したがって,本書を見ながら,日本皮膚科学会総会の教育講演「実践! 皮膚病理道場」で習ったことの復習もできるし,参加できなかった人でも,まるでその場にいて質問したことを教えてくれるかのような,丁寧な解説を読みながらバーチャルスライドを見ることが可能になっているのだ。

2.日本皮膚科学会総会の教育講演「実践! 皮膚病理道場」と密接にリンクしている!
 2013年の日本皮膚科学会総会から始まった「実践! 皮膚病理道場」(以下,「道場」)は,今までにない画期的な皮膚病理入門の場であった。今までは教育講演を聞いて受動的に学ぶことが多かったのが,「道場」では,自らPCのバーチャルスライドを見て能動的に学び,わからない点があればチューターに聞くことができるという,まさに両方向性の学習が可能になったのである。それが,本書の登場でさらに素晴らしい皮膚病理入門の場となったと言えよう。本書を開けば一見してわかる美しい写真と矢印や丸囲みを使った明快な解説が示されている。さらに,「写真が小さくて見えない!」という場合でも,Web上に用意されたバーチャル画像にアクセスすることで解決できるのである。

3.腫瘍ごとに学ぶべきポイントが明確に示されている!
 本書がこれまでの教科書と異なる点はもう1つ。皮膚病理所見のみを扱っている点である。臨床情報もなければ文献もない。だからこそ,病理所見にスッと入っていけるのである。先頭に病理診断のポイントが箇条書きに示されており,これから学ぼうとしているポイントが明解である。しかも,皮膚科における日常的な臨床病理カンファレンスで扱われる皮膚腫瘍をほぼ網羅しているのがありがたい。

4.指導医にも勧めたい!
 本書はこれから皮膚病理に入門する研修医のみならず,指導医層にも勧めたいと思う。なぜなら,教育する側の立場で考えても,教えるべきポイントがはっきりと示されているのだから。というわけで,私も医局員に皮膚病理ティーチングする際に,本書を100%利用したい! と思った。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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