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造血幹細胞移植ポケットマニュアル

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造血幹細胞移植に関するガイドラインや書籍・雑誌は多数出版されているが、具体例まで記載されたものは多くはない。特にエビデンスが少ない分野は、施設ごとにプラクティスが異なっており、臨床現場では「実際、どうすればいいの?」との困惑もある。本書では、国立がん研究センター中央病院で実際に行っている方法を具体的に解説。また移植適応判断や合併症対策の基本なども詳述。血液内科医はもちろんコメディカルにもおすすめ!
編集 国立がん研究センター中央病院 造血幹細胞移植科
執筆 福田 隆浩
発行 2018年02月判型:B6変頁:500
ISBN 978-4-260-03160-8
定価 4,950円 (本体4,500円+税)
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 造血幹細胞移植は,造血器腫瘍に対する最も強力な治療法ですが,その反面,合併症も多く,救命できないこともあります.造血幹細胞移植に関するガイドラインや単行本が出版されていますが,具体例まで記載されたものは多くありません.特にエビデンスが少ない分野は,施設ごとにプラクティスが異なっているのが現状で,臨床の現場で「実際,どうすればいいのだろう?」と困ることもよくあります.そこで当院の若手医師向けのマニュアルを土台として,以下のようなコンセプトでマニュアルを作成することとしました.
・ポケットサイズにコンパクト化し,日常診療の際に持ち運べる.
・移植の全体像をつかむことができ,重要なポイントを簡潔明瞭に記載している.
・当院で実際に行っている方法を,具体的にわかりやすく解説している(処方例には,国内で保険適用されている病名・用法・用量と異なる場合もあります).

 当院の「造血幹細胞移植科」は,医師だけではなく看護師,薬剤師,移植コーディネーター(HCTC),管理栄養士など多職種チームで年間100件前後の造血幹細胞移植を行っています.1人でも多くの患者さんの完治を目指して,特にGVHDや感染症など合併症のコントロールと移植後長期フォロー外来には力を入れてきました.

 本マニュアルは,造血幹細胞移植の初心者である「レジデント」にわかりやすい内容を目指していますが,看護師・薬剤師・HCTC・管理栄養士などコメディカルスタッフの教育用にもお勧めです.もちろん,日本造血細胞移植学会の認定医試験にも役立つように最新の考え方を紹介しています.また,各疾患の移植適応判断や感染症も含めた合併症対策の基本など,普段,移植にかかわることが少ない血液内科の医師にとっても重要な内容を盛り込んでいます.ただし小児患者についての記載は不十分な面もあり,他の総説やガイドラインを参照していただけましたら幸いです.

 今後,造血幹細胞移植にかかわるすべての職種にとって,病棟・外来の診療現場で役に立つ「ポケットマニュアル」になることを願っています.

 2018年1月
 国立がん研究センター中央病院造血幹細胞移植科
 福田 隆浩

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第1章 造血幹細胞移植を行うまでの準備
 1 造血幹細胞移植の基本
 2 患者・家族への説明
 3 HLA検査・ドナー検索
 4 ドナー・幹細胞の選択
 5 移植コーディネートの進め方
 6 移植適応の考え方:総論
 7 移植適応の考え方:急性骨髄性白血病
 8 移植適応の考え方:急性リンパ性白血病
 9 移植適応の考え方:骨髄異形成症候群
 10 移植適応の考え方:骨髄増殖性疾患
 11 移植適応の考え方:リンパ腫(ATLも含む)
 12 移植適応の考え方:骨髄腫
 13 移植適応の考え方:再生不良性貧血
 14 移植を目指す場合の注意点
 15 不妊対策
 16 移植前オリエンテーション
 17 同種移植ドナーへの説明
 18 同種移植ドナーの適格性評価
 19 末梢血幹細胞採取(アフェレーシス)
 20 骨髄採取

第2章 造血幹細胞移植:入院編
 21 移植前の入院時チェックリスト
 22 移植前処置の選択
 23 GVHD予防
 24 造血幹細胞輸注
 25 移植患者における輸血
 26 移植患者の栄養管理
 27 移植患者の食事
 28 嘔気・嘔吐
 29 口内炎
 30 下痢
 31 腎機能障害
 32 肝機能障害(VOD/SOSを中心に)
 33 心機能障害
 34 呼吸機能障害
 35 神経障害
 36 血管内皮障害(TMAを中心に)
 37 造血幹細胞移植患者に対する集中治療
 38 移植病室の防護環境
 39 中心静脈カテーテル感染対策
 40 移植後の感染症対策:総論(FNも含めて)
 41 敗血症への対応
 42 肺炎への対応
 43 移植後の感染症対策:各論
 44 PIR・生着症候群
 45 急性GVHDの診断
 46 急性GVHDの治療
 47 キメリズム検査・生着不全への対策
 48 原疾患再発を減らすための対策
 49 リハビリテーション
 50 疼痛管理
 51 精神的サポート
 52 移植医療にかかる費用と社会制度

第3章 移植後の外来フォロー編
 53 退院前オリエンテーション
 54 慢性GVHDの診断・治療
 55 移植後長期フォロー外来
 56 移植後の晩期障害
 57 移植後の二次がん
 58 外来フォロー時の感染症対策
 59 移植後の予防接種
 60 移植後再発に対する治療法

略語一覧
腎機能低下時の主な薬剤投与量一覧
索引

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現場で不可欠な知識を移植の流れに沿って記載
書評者: 岡本 真一郎 (日本造血細胞移植学会理事長/慶大教授・血液内科)
 循環器内科や消化器内科のように,内視鏡やカテーテルを駆使して消化管出血や血管閉塞を治療する外科的内科と異なり,血液内科は内科的内科である。中でも造血幹細胞移植は,感染症,免疫,その他多くの分野のさまざまな知識を必要とする,最も内科らしい治療法である。しかし一方で,初めて造血幹細胞移植の臨床を学ぶ医師・コメディカルにとって,移植は“とっつきにくい”“敷居が高い”と感じられることも少なくない。そのような印象を持って移植チームをローテートされる方々には,ぜひこのポケットマニュアルをお勧めしたい。

 造血幹細胞移植に関するガイドラインや教科書とは大きく異なり,このマニュアルでは,日常の移植現場で不可欠な知識が,移植の流れに沿って記載される構成となっており,研修医やコメディカルの方々が,必要な情報にすぐにアクセスできるよう配慮されている。また,移植後の合併症の予防・診断・治療に関しても,単なる羅列ではなく,直面する問題の頻度や重要性に合わせて重みを付けて記載されており,このマニュアルを携えて移植患者さんの診療に当たれば,移植についての知識が自然と積み上がっていくのではないかと思う。

 各章末に記載された,最新かつ吟味して選択された文献にアクセスすれば,さらに知識を深めることができる。また,文献に関していえば,単に重要なものが引用されているばかりでなく,日本の造血細胞移植のデータに基づいたエビデンスが多数引用されている点も特筆に値する。

 このマニュアルは,移植チームのスタッフにとっても,新たなチームメンバーの教育に大いに役立つマニュアルではないだろうか。各項目はコンパクトにまとめられているが,実臨床で大切なポイント,日常の病棟業務での注意点は抜けることなくきめ細かくわかりやすく記載されているので,多忙なスタッフが手取り足取り教えなくとも,新たにチームに加わったレジデントやコメディカルスタッフが日々の臨床を行うことができるように配慮されている。指導医はそれを踏まえて,マニュアルには記載されていない経験や知識を効率よく教えることができることも,このマニュアルのメリットではないかと思う。

 医療の進歩に伴い,造血幹細胞移植は着実に成長し続けている。このマニュアルも,移植医療の進歩だけでなく,その内容や構成などに関する読者からのフィードバックを反映して,改訂を重ね,さらなる成長を遂げることを期待したい。
造血幹細胞移植医療の全てがまとまった実用的な一冊
書評者: 豊嶋 崇徳 (北大教授・血液内科学)
 本書は,わが国の造血幹細胞移植医療をリードする国立がん研究センター中央病院の福田隆浩科長が,移植チームメンバーの協力を得て執筆した実践的なポケット版マニュアルです。造血幹細胞移植医療は他の医療と比べ患者の個別性が高く,また準備から外来フォローまで長期間にわたり,その間さまざまな職種がかかわる,極めて複雑で高度な医療です。そのため,一つの問題を解決するために,さまざまなWebや成書に当たる必要があります。移植の合併症が全身的であり,かつ多岐にわたるのがその理由の一つです。

 本書の特徴は,造血幹細胞移植医療の全てがこの一冊に盛り込まれている点にあります。例えば,移植後の高血圧に対して推奨される降圧剤が具体的に用量まで記載されています。つまり,エビデンスがあっても,実際にはどう対応すればいいのか迷う点にまで踏み込んで記載されています。また編成も移植の準備から,入院,外来フォローと経時的な流れになっており,移植にかかわるさまざまな職種の方が各職種の関与する項目の箇所を調べやすいように工夫されています。また,移植を依頼する立場の血液内科医にとっても移植適応,患者さんへの説明,また移植後のフォローと,座右にあって役立つ書となっています。このように対象とする読者が移植医のみならず,さまざまな医療スタッフ,コメディカル,一般血液内科医と多岐にわたるのも本書の特徴です。

 造血幹細胞移植は複雑であるが故にエビデンスが少なく,ガイドラインも少ない分野が多くあり,各施設でプラクティスが異なる場合もあります。その点においても本書は標準的な記載がされており,各施設においても参考になるものと思います。本書はポケットサイズのコンパクトな書籍なため携行に便利で,一見簡潔でありながら,実際は相当深みのある内容となっています。本書は臨床現場にあって,移植医療の向上に資するものと確信いたします。

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