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脳卒中ビジュアルテキスト 第4版

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脳卒中に関して、脳の解剖、診察、症候・疾患、治療、リハビリに至る全体像を、豊富なイラストと画像で解説するテキストの改訂第4版。前版発行時より大きく変わった脳卒中治療をフォローすべく薬物治療・外科的治療については重点的に改訂。また脳卒中の後遺症とその対策の章を新設し、リハビリの章は全面改訂。日常的に脳卒中診療に関わる医師、コメディカルスタッフのみならず「とりあえず脳卒中を理解したい」人も必読の1冊。
荒木 信夫 / 高木 誠 / 厚東 篤生
発行 2015年04月判型:A4頁:280
ISBN 978-4-260-02082-4
定価 13,200円 (本体12,000円+税)

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第4版の序

 本書は,1989(平成元)年の初版刊行以来,脳卒中の診療には欠かすことのできない,脳の解剖,神経学的診察法,部位診断学,症候,画像,治療,予防,リハビリテーションなどの知識をそれぞれ図やイラスト,写真などを駆使して表し,視覚的に大変わかりやすくまとめたユニークな著書として,読者の方々から高い評価をいただいた.医師,研修医,学生はもとより,看護師,理学療法士,作業療法士などのメディカルスタッフの方々にも広くご利用いただいてきた.
 本書第4版は,多数の読者から好評をいただいた第3版を,その後の進歩に合わせて改変・追加した改訂版である.脳卒中の治療はt-PAを使い始めてから大きく変わってきたが,その使用制限時間も発症3時間から4.5時間に変わり,抗凝固薬もワルファリンのみから4種類のNOAC(非ビタミンK阻害経口抗凝固薬)が使用できる時代になってきた.また,脳卒中後の痙縮に対してもボツリヌス毒素による治療なども始まり,大きく変わってきた.これらの変化に合わせて現在の脳卒中治療のニーズに合うように改変したのがこの版である.
 初版は1989年3月,第2版は1994年(平成6)年12月,第3版は2008年(平成20)年3月であったので,今回は7年ぶりの改訂である.脳神経外科,血管内治療なども大きな進歩を遂げつつあるため,脳神経外科の分野とリハビリテーションの分野は,新たな執筆協力者のお力をいただき,全面改訂した.
 今回の改定の主なポイントは以下のとおりである.
脳卒中のビジュアルテキストとしての機能をさらに充実したものになるよう心掛けた.
各項目の病理像や各種画像,シェーマ,イラストなどをすべて点検し,必要に応じて追加,また新しいものと差し替えた.
本書が円滑に読めるように,全体の構成を修正した.
前版で独立した章であった「脳卒中スケール」を,第2章「脳卒中の診察の進め方」に一項目として入れた.
第3章「脳卒中の主要症候」で「失語」を構音障害も含めた「言語障害」に,「偽性球麻痺」を「嚥下障害」に変更,2つに分かれていた「意識障害・脳死」の項目を統合し,せん妄についても記述を加えた.
第5章「脳卒中の主要疾患」の脳梗塞については読者の便を考え,新たに総論的な「臨床病型による分類」と,各論的な「脳梗塞の閉塞血管と梗塞部位による分類」に見出しを分け,大幅に改変した.また「無症候性脳血管障害」を独立した項目として新設するなどした.第6章「脳卒中の治療」に関しては,内科的治療に関して増補を行うとともに,「脳出血の治療」の外科的治療の項,「くも膜下出血の治療」,「脳血管内治療」は,脳神経外科の先生方に新規にご執筆いただいた.
また第7章として「脳卒中の後遺症と対策」を新設.前版にもあった脳血管性認知症のほか,新たにうつ,けいれん,疼痛,痙縮について記述を加えた.
第8章「脳卒中の予防」についても,脳卒中の危険因子に関連した最新のガイドラインや,新たな薬剤などについて,大幅に増補を行った.
第9章「脳卒中のリハビリテーション」はリハビリテーション医学の先生に新規にご執筆いただいた.脳卒中リハビリテーションのエッセンスを,幅広い読者にわかりやすいよう,簡潔にまとめていただいている.

 本書の初版は,当時東京都済生会向島病院副院長であった海老原進一郎先生,東京都済生会中央病院神経内科医長 高木康行先生,そして慶應義塾大学医学部神経内科専任講師 厚東篤生先生の3名によって企画,刊行された.第2版の刊行後まもなく,本書の発案者で初版から立役者でもあった海老原進一郎先生が急逝された.また長年編集に情熱を注いておられた高木康行先生も編集から退かれ,厚東篤生先生を中心に後進の東京都済生会中央病院院長 高木 誠先生と埼玉医科大学神経内科教授であった私に,第3版を託したい旨の提案をいただき,第3版の刊行となった.今回も,厚東篤生先生,高木 誠先生と私の3人で7年ぶりに第4版を刊行できることは,望外の喜びである.
 本書の完成にあたっては,多数の方からのご協力をいただいた.脳神経外科関係の項目は,慶應義塾大学医学部脳神経外科専任講師の堀口 崇先生ならびに同専任講師の秋山武紀先生にご執筆いただいた.また,リハビリテーション関係は杏林大学医学部リハビリテーション医学教授 岡島康友先生にご執筆いただいた.また,慶應義塾大学医学部放射線診断科専任講師 百島祐貴先生,埼玉医科大学国際医療センター神経内科・脳卒中内科教授 棚橋紀夫先生,同 高尾昌樹先生,同センター総合診療・地域医療科教授 古屋大典先生には,多くの画像を提供していただいた.ここに各先生方に深謝する.
 また,東京都済生会中央病院脳卒中センターのスタッフ,特に神経内科部長 星野晴彦先生,脳神経外科部長 淺田英穂先生に深謝する.
 最後に,積極的に本書を完成に導いてくれた,医学書院医学書籍編集部 小南哲司氏,同 制作部 黒田 清氏に感謝する.

 2015(平成27)年2月記す
 荒木信夫

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1 脳の解剖
   1 脳の解剖
  OM lineに平行な断面
   1 半卵円中心レベル
   2 側脳室体部レベル
   3 大脳基底核・視床レベル
   4 松果体レベル
   5 第3脳室レベル
   6 中脳レベル
   7 橋上部レベル
   8 橋下部レベル
   9 延髄レベル
  ドイツ水平面に平行な断面
   1 半卵円中心レベル
   2 側脳室体部レベル
   3 大脳基底核・視床レベル
   4 中脳レベル
   5 橋上部レベル
   6 橋中部レベル
   7 延髄レベル
2 脳卒中の診察の進め方
   1 脳卒中患者の診察の進め方
   2 内科的診察
   3 神経学的検査法
   4 脳卒中スケール
3 脳卒中の主要症候
   1 視野障害
   2 注視麻痺・共同偏位
   3 瞳孔異常
   4 運動障害
   5 感覚障害
   6 言語障害
   7 失行・失認
   8 嚥下障害
   9 めまい
   10 頭痛
   11 意識障害・脳死
4 脳ヘルニア
   1 脳ヘルニア
   2 テント切痕ヘルニアの症状
5 脳卒中の主要疾患
 脳卒中の分類
 一過性脳虚血発作(TIA)
 脳梗塞
  脳梗塞の臨床病型による分類
   1 アテローム血栓性脳梗塞
   2 心原性脳塞栓症
   3 ラクナ梗塞
   4 Branch atheromatous disease(BAD)
  脳梗塞の閉塞血管と梗塞部位による分類
   1 内頸動脈閉塞
   2 前大脳動脈閉塞
   3 中大脳動脈閉塞
   4 後大脳動脈閉塞
      視床梗塞
   5 椎骨脳底動脈閉塞
      脳底動脈閉塞
      中脳梗塞
      橋上部梗塞
      橋中部梗塞
      橋下部梗塞
      延髄梗塞
      小脳梗塞
 脳出血
   1 被殻出血
   2 視床出血
   3 皮質下出血
   4 橋出血
   5 小脳出血
   6 脳室内出血
 くも膜下出血と脳動脈瘤
 無症候性脳血管障害
 その他の脳血管障害
   1 脳動脈解離
   2 もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)
   3 奇異性脳塞栓症
   4 抗リン脂質抗体症候群
   5 アミロイド血管症
   6 脳静脈洞血栓症
   7 脳血管奇形
   8 MELAS
   9 CADASIL
   10 慢性硬膜下血腫
   11 硬膜外血腫
6 脳卒中の治療
   1 脳梗塞急性期の治療
   2 脳出血の治療
     ・内科的治療
     ・外科的治療
   3 くも膜下出血の治療
   4 脳血管内治療
7 脳卒中の後遺症と対策
   1 脳血管性認知症
   2 うつ
   3 けいれん
   4 疼痛
   5 痙縮
8 脳卒中の予防
   1 脳卒中の一次予防
   2 脳卒中の再発(二次)予防
9 脳卒中のリハビリテーション
   1 リハビリテーションに関連する障害の評価
   2 脳卒中リハビリテーションの流れ
   3 急性期リハビリテーション
   4 回復期リハビリテーション
   5 在宅リハビリテーション

参考文献
索引

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脳卒中全般を理解するために最適なテキスト
書評者: 片山 泰朗 (総合東京病院脳卒中センター長/日医大名誉教授)
 脳卒中はわが国では死因別死亡率において第4位の座にあり,年間12万人を超す死亡がみられている。超高齢社会を迎え年間約30万人が新たに脳卒中となり,脳卒中患者総数は300万人を超える数に達していると推定され,今後さらに増加することが予想される。このような状況下で脳卒中の予防,脳卒中急性期の治療および脳卒中後遺症の治療の重要性はますます増大するものと思われる。

 そんな中,『脳卒中ビジュアルテキスト』が7年ぶりに改訂され発刊された。この間,脳卒中治療は目覚ましい進歩がみられ,大きく変貌している。わが国では2005年10月に血栓溶解薬,組織プラスミノーゲンアクチベータ(tissue plasminogen activator:t-PA)が発症3時間以内の脳梗塞に適用となったが,これが契機となって全国の脳卒中救急診療体制が整備され,また主要機関病院では脳卒中を集中的かつ専門的に診療するストロークケアユニット(Stroke Care Unit:SCU)も設置されるようになった。

 さらに,近年,治療薬ではワルファリンに代わりNOACと呼ばれる新規抗凝固薬であるトロンビン直接阻害薬やXa阻害薬が市販されるようになり,増加している心原性脳塞栓症の予防に期待されている。

 他方,治療法では血管内治療においてSolitaireTM やTrevo® といった新たな血栓除去デバイスが出現し,血行再建によるさらなる治療成績の向上が期待されている。

 本書は表題にあるようにビジュアルテキストであり,改訂版では見出し・図・表がカラーで施されより見やすくなり解説にはMRI・MRA,CT画像などが随所に示され,疾患の症状・病因・診断を理解するために工夫が凝らされている。

 また,本書の構成は「1.脳の解剖」「2.脳卒中の診察の進め方」「3.脳卒中の主要症候」「4.脳ヘルニア」「5.脳卒中の主要疾患」「6.脳卒中の治療」「7.脳卒中の後遺症と対策」「8.脳卒中の予防」「9.脳卒中のリハビリテーション」からなり,各項目において内容の充実が図られ脳卒中診断・治療に必要な全てが網羅されている。

 本書では始めに脳の解剖,診察の進め方,主要症候が解説され,脳卒中診療の入門者にもわかりやすく書かれている。また,脳卒中の主要疾患の項では原因,症状に加えて解剖組織,MRI・MRA,脳血管撮影さらには3D-CTA,超音波所見も示され,症例検討としても勉強できるように記載されている。また,脳卒中治療では脳梗塞,脳出血,くも膜下出血の治療,さらには血管内治療についても解説され最新の治療が示されている。さらに脳卒中の予防の項では新しいガイドラインに基づいた治療指針が示され,また最新の多くの大規模臨床試験のエビデンスが紹介されている。

 脳卒中の全てが網羅され,ビジュアルに脳卒中全般を理解することができる本書を,医学生,研修医,脳卒中治療に携わる医師およびコメディカルスタッフの方々に最適なテキストとして推薦する。
座右に置いておきたい珠玉の脳卒中テキスト
書評者: 鈴木 則宏 (慶大教授・神経内科学)
 脳卒中学のバイブル『脳卒中ビジュアルテキスト』が7年ぶりに改訂された。本書が故・海老原進一郎慶大客員教授,高木康行前・東京都済生会中央病院院長補佐,そして厚東篤生よみうりランド慶友病院院長(初版発刊当時慶大神経内科専任講師)の三方により,慶大神経内科の脳卒中診療の実践を根幹として著された名著であることは,脳卒中診療に携わる医療関係者万人の知るところであろう。1989年3月の初版出版後,版を重ねその都度,脳卒中学および神経内科学の進歩を取り入れ,改訂第3版が出版されたのが2008年であった。改訂第3版からは脳血管障害の臨床と神経病理学の大家である厚東博士を大黒柱として著者が若返った。脳卒中臨床の泰斗である埼玉医大神経内科教授の荒木信夫博士と東京都済生会中央病院院長の高木誠博士が新たな著者として加わっている。脳卒中の診療と治療および再発予防の進歩は日進月歩であり,脳梗塞急性期治療におけるt-PAの適応時間の延長や脳血管内治療技術の進歩などここ数年新たな動きがみられ,久しく改訂版の登場が待たれていたが,ついに2015年,内容も装丁も一新されここに改訂第4版が登場した。

 一読して瞬時に気が付くのは,本書の最大の特色である「イラスト」がかなりの割合で斬新で美しく,しかも「わかりやすい」ものに差し替えられ,あるいは新たに挿入されていることである。初版のイラストと比較して眺めると,医学教科書にも各時代にマッチした流れとセンスがあることが一目瞭然である。本書は,常に進歩しつつある脳卒中学の「今」の知識と情報を,state of artsのイラストとともに,われわれ読者に惜しげもなく披露してくれているのである。是非まず書店で本書を手に取り,数ページを繰っていただきたいと思う。思わず座右に置いておきたいと思わせる魔法のような抗し難い魅力に圧倒されることと思う。

 内容は9つの章からなり,脳の解剖に始まり,診察の進め方,主要症候,脳ヘルニア,主要疾患,治療,後遺症と対策,予防,リハビリテーションへと進む。本書を眺めてみると,今回の改訂で注目すべきは,第5章「脳卒中の主要疾患」の分類の記述の斬新さである。「脳梗塞の臨床病型による分類」と「脳梗塞の閉塞血管と梗塞部位による分類」に明瞭に分けて記述され,極めて理解しやすい。まさに,臨床神経学における症候から病巣診断に至る「神経診断学」の王道が,脳卒中の臨床に存在することを指し示してくれているのである。すなわち本書により,臨床神経学の基本が脳卒中学にあることをあらためて実感することができる。さらに第6章「脳卒中の治療」では最近進歩の目覚ましい脳血管内治療について詳細な説明が施されている。また,各項目の随所には,当該項目にまつわる興味深い逸話や,より内容を掘り下げた解剖学的・病態生理学的な解説が「MEMO」としてちりばめられている。年配の臨床家にとっては懐かしく郷愁を呼び起こされる「脳循環代謝改善薬」なる話題も配備されており,現在の視点からの鋭い解説に感激を禁じ得ない。この「MEMO」だけを拾い読みしても,時がたつのを忘れて本書に引き込まれてしまう。

 これから脳卒中の基礎を学ばんとする医学部生・研修医にとって,神経内科専門医・脳神経外科専門医・脳卒中専門医をめざす医師にとって,さらには大成した専門医にとっても,最新の脳卒中学を短時間で,しかも効率良くわが物にできる素晴らしいテキストが,内容も装いも新たに颯爽と登場した。まさに「珠玉の脳卒中テキスト」である。

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