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Minds 診療ガイドライン作成の手引き 2014

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Minds診療ガイドライン作成マニュアルの最新版は、以下のウェブサイトでご覧頂けます。
「Mindsガイドラインライブラリ」
URL: https://minds.jcqhc.or.jp/s/developer_manual
トップ > ガイドライン作成者向け情報 > 作成マニュアル等

監修 福井 次矢 / 山口 直人
編集 森實 敏夫 / 吉田 雅博 / 小島原 典子
発行 2014年04月判型:B5頁:144
ISBN 978-4-260-01957-6
定価 3,850円 (本体3,500円+税)
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2014年版 序(福井次矢)/はじめに(山口直人)

2014年版 序
 『Minds 診療ガイドライン作成の手引き 2007』が発行されて,約7年が経過した。この間,いくつかの欧米先進国と同様,わが国でも,質の高い「EBM(Evidence-based Medicine)の手順に則った─エビデンスに基づく─診療ガイドライン」が専門学会などにより多数作成された。そして,その多くは,Mindsホームページ上に公開されていて,最近では日本語版に加えて英語版も急速に増えつつある。わが国に「エビデンスに基づく診療ガイドライン」が一つも存在しない時期から,EBMを普及させるうえで最も有効な手段として「エビデンスに基づく診療ガイドライン」作成を提唱してきた者のひとりとして,この間の進歩・発展を隔世の感を持って眺めつつ,診療ガイドラインの作成に関わってこられた多くの関係者に敬意を表するところである。
 組織上,Mindsで一定期間に公開できる診療ガイドラインの数には制限がある。そのため,作成された多くの診療ガイドラインの中から公開するものを選ぶという作業が必要となり,Minds内に選定部会が設置され,私も事務局および委員の皆さんとともに,2か月に1度の選定作業に携わってきた。選定にあたっては,2003年に作成された国際的な評価ツールAGREE(Appraisal of Guidelines for Research & Evaluation)の2009年改訂版であるAGREE IIを参考にし,とくに作成の厳密さにかかわる項目を重視した。最近では,かなり理想的な「エビデンスに基づく診療ガイドライン」も作成されるようになったものの,大多数の診療ガイドラインに共通する要改善点も明らかとなってきた。例えば,診療ガイドラインが対象とする集団(患者,公衆,その他)の意向や視点,診療現場での診療ガイドラインへの準拠の度合いをモニターあるいは監査する基準,などの記述が不十分な点である。特に後者の記述が望まれるのは,診療ガイドラインの診療現場での活用促進にかかわり,わが国でも加速度的に普及しつつあるQuality Indicatorの測定とPDCA(plan-do-check-act)サイクルの導入に不可欠なためである。
 「エビデンスに基づく診療ガイドライン」がわが国の医療界で話題になり始めた頃から,多くの関係者に不安を抱かせた一因が,診療ガイドラインの法的側面であった。最近の医療訴訟のデータを解析したところ,診療ガイドラインは医療水準の少なくとも一部を構成する可能性はあるが,当初,臨床医が危惧したような,規範的なものとしてはとらえられていないことが明らかとなった。とは言うものの,実際に行った治療についてはガイドラインと齟齬があっても注意義務違反は問われないが,説明義務違反は問われているのであり,したがって,医師は最新版の診療ガイドラインの存在と内容を知っておき,必要に応じて患者に説明する必要がある。そして推奨に則らない診療を行うときには,その理由をカルテに記載しておくことが強く勧められる。
 本書(手引き2014)では,診療ガイドラインの作成手順が非常に緻密に記載され,作成の過程で利用可能な多くのテンプレートが提供されている。前版(手引き2007)に比べ,内容がずいぶん高度になっているが,EBMの基本的な考え方に変わりはない。科学面と倫理面双方の妥当性を高めるため,国際的には「エビデンスに基づく診療ガイドライン」の作成方法自体が進化しつつある。編集にあたられた森實敏夫先生,吉田雅博先生,小島原典子先生を中心に,作成方法に関する最新の知見に造詣の深い先生方がわが国に導入可能と思われる範囲内で大幅に書き直し,さらにこの分野の識者の方々による外部評価を受けて完成したのが本書である。
 わが国における医療の質向上に不可欠なツールである「エビデンスに基づく診療ガイドライン」の質をさらに高めるため,本書が診療ガイドラインの作成に関わる多くの方々に活用されることを祈念する次第である。

 2014年3月
 監修者を代表して
 福井次矢


はじめに
 公益財団法人日本医療機能評価機構は,平成14年度からEBM普及推進事業〔Minds(マインズ)〕を開始し,我が国で公表される診療ガイドラインの中で作成方法の面から信頼性が高いと判断された診療ガイドラインをホームページ上で公開してきた(http://minds.jcqhc.or.jp/n/)。さらにMindsでは,診療ガイドライン作成の主体である医学関係学会・研究会に対してEBMの考え方を重視した診療ガイドラインの作成方法を紹介し,作成を支援することを最重要事項と位置づけており,2007年には「Minds 診療ガイドライン作成の手引き 2007(以下,手引き2007)」を刊行して,その時点で最も妥当と思われる診療ガイドライン作成の手順を紹介した。しかし,それから7年が経過して,診療ガイドライン作成方法は世界的に大きく進展し,より良い作成方法が確立しつつある。そこで,Mindsでは手引き2007の改訂版である「Minds診療ガイドライン作成の手引き2014(以下,手引き2014)」を刊行して,新しい作成方法を紹介することにした。手引き2014は,手引き2007の内容の多くを踏襲しているが,手引き2007では十分に記載されていなかった項目について充実させた内容となっている。
 手引き2014では,「エビデンス総体(body of evidence)」の重要性が強調されている。診療ガイドラインの作成に当たっては,システマティックレビューという確立した方法によって,研究論文などのエビデンスを系統的な方法で収集し,採用されたエビデンスの全体をエビデンス総体として評価し統合することが求められる。また,手引き2014では,「益と害(benefit and harm)のバランス」の重要性が強調されている。診療ガイドラインでは,ある臨床状況で選択される可能性がある複数の介入方法(診断,治療,予防,介護など)を比較して,最善と考えられる方法を推奨するが,その際に,介入の有効性と同等に,介入がもたらす有害面にも注意を払うべきという点を強調したものである。
 想定される本書の利用者は,診療ガイドライン作成に関わるすべての方たちである。診療ガイドライン作成には,学会・研究会の理事など作成の意思決定に関わる人たち,診療ガイドラインの内容を企画し,推奨を決定する立場の人たち,あるいは,システマティックレビューを担当する人たちなどである。本書の記載内容は診療ガイドラインの作成プロセスに則っており,はじめから順番に読んでいただくことで診療ガイドライン作成の全体像を理解できる構成となっている。また,医学や疫学・生物学に関する特段の専門知識がなくても理解できるように配慮した。
 診療ガイドラインの基礎となるエビデンスは世界共通だが,診療ガイドライン自体は,それが適用される国に固有の医療制度によって異なって当然であり,ガイドライン作成方法も,我が国に固有の事情を配慮することが望まれる。本書では,海外で開発された診療ガイドライン作成方法を検討しつつ,我が国の医療にとって最も適切な診療ガイドラインのあり方を精査して本手引きに取り入れるように努めた。本手引きの作成にあたっては,執筆者が草案を作成し,複数回の編集会議において内容の検討を重ね,外部評価委員による外部評価,パブリックコメントを経て内容を確定した。また,本手引きが紹介するのは作成方法のひとつの考え方であり,すべての診療ガイドラインが,本書で示した作成方法に厳密に準拠することを求めるものではない。
 本手引きが,我が国における診療ガイドラインのさらなる質の向上に役立ち,ひいては,我が国の医療の質の向上に役立つことができれば,この上ない幸せである。

 2014年3月
 公益財団法人日本医療機能評価機構 特命理事
 山口直人

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 2014年版 序
 初版の序
 はじめに

第1章 診療ガイドライン総論
 1 「Minds 診療ガイドライン作成の手引き 2014」について
 2 本書の提案する方法の位置づけ
 3 診療ガイドラインとは
 4 診療ガイドラインの作成の全体像

第2章 準備
 1 診療ガイドライン作成手順およびスケジュール
 2 診療ガイドライン作成主体の決定
 3 診療ガイドライン作成組織の編成
 4 診療ガイドライン作成資金
 5 利益相反(conflicts of interest;COI)
 6 診療ガイドライン作成への患者・市民参加

第3章 スコープ(SCOPE)
 1 スコープとは
 2 スコープの全体構成
 3 スコープ作成のプロセス
 4 クリニカルクエスチョンの設定
 5 システマティックレビューに関する事項
 6 推奨作成から最終化,公開に関する事項

第4章 システマティックレビュー
 1 システマティックレビューの概要
 2 エビデンスの収集
 3 エビデンス総体の評価
 4 エビデンス総体の統合
 5 エビデンス総体のエビデンスの強さの決定
 6 システマティックレビューレポートの作成

第5章 推奨
 1 推奨作成プロセスの概要-偏りのない決定方法
 2 推奨文,推奨の強さ
 3 推奨決定の方法
 4 解説の執筆
 5 一般向けサマリー

第6章 最終化
 1 最終化に向けて作成する追加文書
 2 診療ガイドライン草案作成
 3 外部評価
 4 AGREE II(The Appraisal of Guidelines for Research & Evaluation II)
 5 公開

第7章 診療ガイドラインの普及,導入,評価
 1 概要
 2 公開後の組織体制
 3 導入
 4 有効性評価
 5 改訂

 テンプレート集
 文献
 参考
 用語集
 索引

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診療ガイドライン作成の実際を学びたい方に
書評者: 長谷川 友紀 (東邦大教授・社会医学)
 本書は,2007年の旧版発行以来,診療ガイドライン作成者にとって標準的なテキストとして用いられてきた。7年ぶりの改訂であり,診療ガイドラインに関する最近の動向に対応すべく大幅にページ数を増して内容の充実を図っている。公益財団法人日本医療機能評価機構は,1995年の設立以来,病院の第三者評価の実施,医療事故の情報収集・分析,産科医療補償制度(無過失保険制度)など,医療の質向上を目的とした諸事業を行っている。Minds(EBM普及推進事業)は,日本医療機能評価機構の1部門として,診療ガイドライン作成の支援,評価,普及などを行っている。本書は,実際の診療ガイドラインの作成支援,評価などに豊富な経験を有するMindsのスタッフが中心になり作成された。

 EBM手法に基づく診療ガイドラインは,医療の標準化を図るための有力な手法である。日本では2000年ごろより普及し始め,当初は厚生労働省の科学研究費などにより作成が支援され,最近では学会などの自主的な努力により,年間20~30本が作成され,公開されている。累計では300本を超え,日常遭遇する主要な疾患については,ほぼ整備されていると考えてよい。また,学会では評議員など,将来の活動の主体となるであろう多くの若手メンバーがガイドラインの作成にかかわるようになった。作成の主体となる学会も,作成メンバーの教育研修を継続して行うほか,COI(利益相反)の管理など,社会の要請にいかに応えながら作成を進めるかが課題になっている。

 旧版は,作成にあたっての文献検索,エビデンスレベルの評価など,技術的な側面でのニーズが主体であった。一方,本書ではこの間のニーズの変化を反映して,運営主体としての学会の組織づくり,計画策定と進捗管理,予算立て,COI管理などの,組織としての管理面での内容が大幅に拡充されている。また,エビデンスレベルの評価においても,EBM導入当初の個々の論文の研究デザインに基づく,どちらかというと硬直的な評価の反省に立って(例えば,質の悪いRCTでも,ランダム化されていない対照研究より信頼性が高いと評価される),エビデンス総体としての評価概念を明確にするなど,最近の診療ガイドライン作成の国際的な動向に対応している。特筆すべきは,テンプレート集,用語集など,巻末資料の充実であり,これらは,実際の作成にあたって非常に有用である。

 EBMは臨床疫学の手法を基に発展した。そこで用いられる科学論文の批判的な吟味,基礎的な生物統計などは医療を志すものにとって必須の知識である。診療ガイドラインでは,さらに社会に対する学会の責任,組織運営の質が問われている。本書を読むことで,これらの関係を理解することができる。本書は,学会などで診療ガイドライン作成にかかわるもののみならず,EBM,診療ガイドライン,学会の役割について学ぼうとするものにとっても有益な書であり,推奨に値すると考える。

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