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循環器 レビュー&トピックス
臨床医が知っておくべき27の最新知見

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循環器領域のさまざまなテーマについて、それぞれの分野のエキスパート達が最近の研究・治療の動向を臨床医にわかりやすく概説するとともに、そのテーマにおけるトピックスをピックアップして解説する。情報をただ並列に並べるのではなく、重み付けと価値判断をしながら、現時点での位置付けを明確にしている。循環器専門医だけでなく、専門医を目指す医師・研修医にとっても必読の書。
編集 赤石 誠 / 北風 政史
発行 2014年03月判型:B5頁:232
ISBN 978-4-260-01931-6
定価 5,500円 (本体5,000円+税)
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 医学書院の雑誌「呼吸と循環」は,わが国の学術誌の草分け的存在です.今でこそ,英文の学術誌が主流ですが,「呼吸と循環」発刊当時は,医師になり最初に書く論文は和文論文であり,投稿先は和文の学術誌でありました.ですから,当時の和文雑誌は,今の和文商業誌とは,全く異なった位置づけでした.伝統を有するこの「呼吸と循環」は,現在も品格がある雑誌として,多くの方から支持されています.この「呼吸と循環」に,10年以上前から,『Current Opinion』という連載が始まりました.これは,「呼吸と循環」の編集の手伝いをしていた北風政史先生,中沢 潔先生とともに企画したものです.
 現代は,情報過多の時代です.臨床統計で有意差があるからといって意義がある事実ではない可能性もあります.一方,有意差が得られなくても,それは仮説が間違っているのではなくて,解析方法や対象の選択が不適切であったためということもあります.開発する者が有利になるような研究ばかり日の目を見るというバイアスもあります.
 毎月毎月,洪水のように出てくる文献は,撮りっぱなしのビデオテープのようなものです.誰かがきちんと整理して,編集し,1つの流れにまとめなくては理解できません.ただし,まとめかたによっては,本当の流れとは異なったものになりかねない危険もあります.そのことを踏まえて,Current Opinionという名前をつけて企画をスタートさせました.そこには,執筆者の考えが反映されるはずです.単なる,文献のまとめ集ではない包括的なレビューを目指していただきました.15年前のCurrent Opinionの第1回は私が執筆しました.『スタチンによる冠動脈疾患の治療』というテーマでした.それを読むと,15年前に今日の臨床のアウトラインがすでに確立していたことがわかります.つまり,今の最新の文献を読んでいると,その先にあるものが見えてくる,これがこの企画の意図であります.その後,毎月毎月,各分野,テーマごとにその道に見識が深く,かつ客観的,包括的な判断から,文献をまとめていただける方に執筆をお願いしてきました.いずれも力作ばかりで,ただ雑誌の連載にしておくだけではもったいないということになりました.そこで,ここ4年間の「呼吸と循環」に掲載されたものに新しい知見を加筆いただき,単行本といたしました.
 循環器内科学において重要なテーマばかりを集めました.循環器の幅広い分野において,最近の動向を知り,数年先を見通すうえで,皆様方のお役に立つ単行本となったと確信しております.

 2014年1月
 編者を代表して 赤石 誠

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I 画像診断の進歩
 1.MDCT-大規模臨床試験の結果報告を中心に
   MDCTをめぐる最近の全般的な話題
   Topics 放射線被曝量低減の研究
 2.最新の3次元心エコー-3次元スペックルトラッキング法
   3次元心エコーにおける最近の全般的な話題
   Topics 3次元スペックルトラッキング法

II 虚血性心疾患
 3.冠動脈疾患予防におけるスタチンの効果-新規糖尿病との関連も含めて
   スタチンについての概要
   Topics スタチンと新規糖尿病
 4.冠動脈疾患における人種差と性差-これまでの研究とその解釈
   冠動脈疾患における人種差と性差に関する現在までの概要
   Topics 冠動脈疾患における性差・人種差に関する最近のトピックス
 5.冠動脈狭窄における虚血評価-PCIに虚血の証明は必要か?
   冠動脈狭窄における虚血評価についての概要
   Topics FFRによる冠動脈狭窄機能評価のエビデンス
 6.DESの現状-第3世代を迎えて
   DESに関する最近の話題
   Topics DESに関する最近のトピックス
 7.PCI施行患者に対する薬物療法-抗血小板療法継続の必要性と各種危険因子の管理
   PCI施行後の薬物療法をめぐる最近の話題
   Topics PCI術後の危険因子管理
 8.心筋梗塞の再灌流療法における再灌流傷害の対策
  -乳酸付加ポストコンディショニング
   再灌流療法における再灌流傷害対策の現在までの概要
   Topics 再灌流傷害対策に関する最近の話題
 9.虚血性心疾患に対する低出力体外衝撃波治療-低侵襲性の新しい治療法
   低出力体外衝撃波治療の概説
   Topics 低出力体外衝撃波治療に関する最近の話題

III 心不全
 10.心拍数と心不全-心拍数の低下が及ぼす影響
   心拍数と予後,心不全の病態との関連についての概要
   Topics 選択的心拍数低下薬イバブラジンに関する最近の話題
 11.心不全領域におけるNPPV-急性心原性肺水腫と睡眠呼吸障害を中心に
   心不全とNPPVをめぐる最近の話題
   Topics 心不全とNPPVに関する最近のトピックス
 12.開心術後の心臓リハビリテーション-急性期と回復期以降
   Topics 開心術後心臓リハビリテーションをめぐる最近のトピックス
 13.和温療法-慢性心不全・閉塞性動脈硬化症に対する全人的医療
   和温療法の最近の活動および研究
   Topics 慢性心不全・閉塞性動脈硬化症に対する全人的治療
 14.心臓老化-バイオマーカーと老化制御
   心臓老化研究の最近の動向
   Topics 心臓老化は制御可能か?
 15.心不全に対する再生治療-細胞移植から組織移植へ
   心不全に対する再生治療についての概要
   Topics 細胞移植から組織移植への展開

IV 心筋炎・心筋症
 16. 閉塞性肥大型心筋症に対する経皮的経中隔心筋焼灼術治療
  -手技の実際と術後成績
   肥大型心筋症に対するPTSMA治療に関する最近の全般的な話題
   Topics 肥大型心筋症に対するPTSMA治療に関する最近のトピックス
 17.心臓サルコイドーシス-病因論,診断基準,治療をめぐる諸問題について
   最新の病因論,診断基準,治療をめぐる諸問題について
 18.肥大型心筋症の遺伝子診断
  -遺伝子異常による発症機序の解明から治療・予防に向けて
   肥大型心筋症の遺伝子診断に関する最近の研究動向
   Topics 肥大型心筋症における遺伝子異常に基づく病態形成

V 弁膜疾患
 19.弁膜症評価のための負荷心エコー検査-重症度評価に果たす役割
   負荷心エコー検査の概説
   Topics 各弁疾患における負荷心エコー検査の有用性
 20.低侵襲弁膜症治療-TAVRを中心に
   経カテーテル弁膜症治療をめぐる最近の全般的な話題
   Topics 低侵襲弁膜症治療を巡る課題および今後の展望
 21.パーキンソン病治療薬による弁膜疾患の発症
  -麦角系ドーパミンアゴニスト(DA)
   薬剤性弁膜症の歴史
   Topics パーキンソン病治療薬と弁膜疾患に関する最近のトピックス

VI 不整脈
 22.心房細動のアップストリーム治療におけるRAS阻害薬の効果
  -ARBはどこまで有効か
   心房細動のアップストリーム治療をめぐる最近の話題
   Topics 心房細動とRAS阻害薬に関する大規模臨床試験
 23.新規経口抗凝固薬:心房細動における心原性脳塞栓症の予防
  -ワルファリンとどう違うか
   新規経口抗凝固薬の特徴
   Topics 国際共同大規模試験から学んだこと

VII 高血圧
 24.高血圧診療における新しい合剤の特徴-どのように使い分けていくか
   降圧薬の配合剤に関する最近の動向
   Topics 高血圧診療における新しい合剤の使い方に関する最近のトピックス
 25.高血圧治療におけるレニン阻害薬-アリスキレンは有用か?
   レニン阻害薬に関する概要
   Topics アリスキレンに関する最近のトピックス
 26.高齢者の薬物動態-降圧薬を中心に
   高齢者における薬物動態研究に関する概要
   Topics 薬物動態研究に関する最近のトピックス
 27.本態性高血圧の遺伝子診断-候補遺伝子アプローチへの期待
   本態性高血圧の遺伝子診断をめぐる最近の全般的な話題
   Topics 候補遺伝子アプローチからの本態性高血圧症の遺伝子診断
       -腎尿細管イオントランスポーターに着目した
       本態性高血圧症の遺伝子診断

索引

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循環器病学の最新知識を学べる出色の書籍
書評者: 永井 良三 (自治医大学長)
 循環器臨床のカバーする範囲は広い。高齢社会では循環器診療の重要性が増しているが,循環器の患者は,小児から学童,成人,高齢者にわたる。また急性期疾患から慢性疾患のステージに対応しなければならず,内科と外科の診断・治療法に通じていなければならない。このように診療は極めて多彩である。

 循環器病学は,EBMの推進に大きな役割を果たしてきた。それは,単に検査値の改善ではなく,死亡率や重大な心血管イベントで評価しなければ,治療法の真の評価ができないからである。このため,いまや循環器医は,分子病態から診断・治療法の進歩,さらに疫学や臨床試験まで視野に入れていなければならなくなった。しかし,循環器病学は,毎年,急速な進歩を遂げており,専門医といえどもこれを俯瞰することは極めて困難である。

 こうした状況の中で,赤石誠および北風政史の両博士が編集された『循環器 レビュー&トピックス』は,循環器病学の最新の知識を学ぶ上で,出色の小冊子である。序文によると,この冊子の企画は10年前にさかのぼる。当時,医学書院の総合医学誌『呼吸と循環』の企画に,赤石,北風の両博士の参加をいただいたことに始まる。両博士の発案で,「Current Opinion」という連載が始まり,折々の話題について,文献を紹介しつつ各筆者の考え方を紹介いただいてきた。今回の冊子は,最近4年間に掲載された論説の中から,重要な話題をまとめたものである。

 本書は,画像診断の進歩,虚血性心疾患,心不全,心筋炎・心筋症,弁膜疾患,不整脈,高血圧の計7章,212ページの構成をとっている。各論説の冒頭には,それぞれの項目の課題や話題が歴史を踏まえて概説されており,それに引き続いて話題と関連の深い最新のトピックスが簡潔に紹介されている。したがって必ずしも最新の知見の紹介にとどまらないため,かつてのトピックスを知る世代にとっても,紹介記事の位置付けが明確に理解でき,読みやすい。

 近年,インターネットを通じて最新の知識を得ることが容易となった。このため,活字の出版物が苦戦をしているという。しかし本書のような工夫がなされれば,雑誌や刊行図書の生き残る道は残されている。情報爆発の時代の最新の循環器病学を学ぶために,あらゆる世代の医師と研究者に本書を推薦したい。
本物志向の臨床医に薦めたい一冊
書評者: 中川 義久 (天理よろづ相談所病院循環器内科部長)
 読み応えのある医学書が出版された。循環器領域において本物の知識を求める知的好奇心の高い臨床医に薦めたい一冊である。

 出版業界において「出版不況」という言葉が叫ばれている。本が売れないのである。その理由として,インターネットの誕生・若者の活字離れなどさまざまな要因が挙げられている。純文学の長編小説は売れず,書店で手に取ってもらえるのは軽い書籍のみであるという。医学書においても例外ではない。学会の会場で医学書の販売コーナーを訪れてみればわかる。そこで並べられた書籍のトレンドは「軽い」の一言に尽きる。タイトルには「わかりやすい」といった枕ことばが付き,内容にはイラストが多く,文字が大きく余白が多い。文字がぎっしり埋まった本は数少ない。本物の書籍が売れず,それゆえ出版されないのだ。

 評者は天理よろづ相談所病院に勤務している。教育的な病院として知られ毎年優秀な若手医師が入職してくる施設である。彼らと接していて感じるのは,本物志向で深く考える能力を持つ者は少なからず存在するということだ。担当した疾患で感じた問題点や疑問を,真摯に追求し調べ学ぼうとする者は確実にいる。

 本書では,循環器領域で27のトピックスを選出し,それぞれの分野のエキスパートが治療と研究の最新の動向を論述している。循環器のさまざまな分野に及ぶが,どれも今話題のものばかりである。このトピックス選択の妙が編集者の慧眼を示している。

 単に「わかりやすい」ことを目指した「軽い」書籍ではない。もちろん,難解な書籍を目指したものではなく,知識が整理され頭に入ってくる。平板な知識ではなく,もう一歩進んで学びたいという者に最適の書籍である。紹介される参考文献も単なる羅列ではなく重み付けがなされている。

 知的好奇心の高い循環器内科専門医,そして専門医を目指す者にも薦めたい一冊である。今後も,このような本物志向の書籍が出版され続けることを切望する。

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