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DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引

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米国精神医学会(APA)より刊行されたDSM-5マニュアルから診断基準のみを抜粋した、いわゆる「Mini-D」と言われる小冊子の最新改訂版。19年ぶりの改訂となる今回は、自閉スペクトラム症の新設や双極性障害の独立など従来の診断カテゴリーから大幅な変更が施されている。今回から日本語版用語監修として日本精神神経学会が加わった。
※「DSM-5」は American Psychiatric Publishing により米国で商標登録されています。
シリーズ DSM-5
原著 American Psychiatric Association
日本語版用語監修 日本精神神経学会
監訳 髙橋 三郎 / 大野 裕
染矢 俊幸 / 神庭 重信 / 尾崎 紀夫 / 三村 將 / 村井 俊哉
発行 2014年10月判型:B6変頁:448
ISBN 978-4-260-01908-8
定価 4,950円 (本体4,500円+税)
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訳者の序DSM-5の病名・用語の邦訳について原書の序

訳者の序
 本書はDesk Reference to the Diagnostic Criteria from DSM-5の日本語訳であり,親本である Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition(DSM-5)のコードと診断基準を中心に編集された小冊子,通称「ミニD」である.DSM-IVから19年ぶりに全面改訂されたDSM-5は,『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(2014,医学書院)として,すでに2014年6月の第110回日本精神神経学会学術総会の開催に合わせてその全訳が出版されている.一方,世界保健機関(WHO)の『国際疾病分類』(ICD-11)の発行は大幅に遅れており,当分は,今回かなりの改訂のあったICD-11の新しい精神疾患の分類,およびそれに相当するICD-10コードは,このDSM-5に頼らざるをえない.
 文字どおり,この本は“Desk Reference”,つまり卓上用の参考書であり,随時,診断名とコードと診断基準を確かめるための“手引”というところだが,親本であるマニュアル,すなわち便覧ないし必携こそは,図書室の書架に飾らずにいつも手許において診断の疑問点を調べるDoctor's Manualである.
 こうして本書『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引』を手にとってみると,1982年にわれわれがDSM-III〔高橋三郎,花田耕一,藤縄 昭(訳):精神障害の分類と診断の手引,第3版〕をDSMシリーズの第1弾として上梓した当時のことが思い出される.確かにDSM-IIIは1980年代のわが国の精神科診療に大きなインパクトを与えた.第1に思い出すのは,32年前,出版されたものがポケットに入るDSM-III診断基準集(手引)だけであったことから,せいぜい5~6項目の基準だけで奥の深い精神疾患の内容が表されるはずがないという強い反論がある一方,臨床家の誰もが診察のたびにこの小冊子を出して自分の判断をチェックする習慣が広まっていった.それがまさにこの本(Quick Reference to the Diagnostic Criteria from DSM-III)の意図しているところであった.
 第2の点は,DSM-IIIはわが国の従来の精神疾患のレパートリーにない新しい疾患名を紹介したことであろう.30年以上も前,わが国の精神科医の間ではまだまだドイツ語を使用する人が多くおられた時代,新しい病名と用語で試案として示したわれわれの訳語は,それらを受け入れるか,またはどう翻訳するかで論議が絶えなかった.今日,気分障害,パニック障害,全般性不安障害,広汎性発達障害,性同一性障害,等々は広く用いられ,若い世代には抵抗なく使用されるようになった.DSM-IIIをきっかけにしたこうした流れは,わが国の精神科診断学の見直しという大きな流れとなり,今回のDSM-5刊行にあたっては,DSM-5の原稿段階であった2012年に日本精神神経学会精神科病名検討連絡会が組織され,2013年11月には「DSM-5 病名・用語翻訳ガイドライン(初版)」が作成されるまでになった.ガイドラインの基本方針は,患者中心の医療を行ううえで病名・用語のわかりやすいもの,差別意識や不快感を生まないもの,一般人の精神疾患への認知度を高めるもの,訳語になるべくカタカナ語を使わないもの,とされたが,これらは臨床家ならば当然心がけておくべきことである.学会がかりでこのような作業に着手されたことは,わが国の精神科医療に大きな意識改革があったといえるのではなかろうか.
 第3の点として,「併存症」に言及しておきたい.精神疾患のようにいまだに原因が科学的に確定されていない疾患の場合,症候群だけの分類による「一人一診断」は過去のものとなった.すでに1980年の当時,DSM-III編集実行委員長であったSpitzer氏は重複診断に積極的だったことを思い出す.いわば,精神疾患の分類をステンドグラスのように綺麗にはめ込んだ壁画を描くより,オリンピックの五輪の重なり合うモチーフを描くほうが診療の現実に合っていると気づかれたのであろう.例えば,この人の疾患は分裂病圏のようだから神経症圏ではないだろう,という論議はもはやありえない.本書の親本のDSM-5マニュアルでも,統合失調症の併存症には,強迫症,パニック症,猜疑性パーソナリティ障害,物質関連障害があげられており(DSM-5マニュアル,105頁),統合失調症にパニック症が重なることはしばしばあることが認められている.
 第4に,DSM-III以来の実用主義導入は,わが国においても疾患名のコード化表記をもたらし,今日では入院届や各報告書にICD-10コードを記入することは広く行われている.わずかこの10年来のことであるが,いずれ,診療報酬請求でもコード化が進められることであろう.
 第5に,DSM-III以来の診断体系は組織的な多数例の症例研究を推進し,精神疾患の科学的原因解明が進んだことにふれておかねばならない.DSM-5マニュアルは約1,000頁に及ぶ大冊ものであるが,その大部分は,特にDSM-IV以来の19年間に蓄積された膨大なデータの記述よりなる.統合失調症の項でも(DSM-5マニュアル,99頁),診断基準に続いて,診断的特徴,診断を支持する関連特徴,有病率,症状の発展と経過,環境要因,遺伝要因と生理学的要因,文化に関連する診断的事項,性別に関連する診断的事項,自殺の危険性,機能的結果,鑑別診断,併存症,が記述されている.つまり,今回上梓したこの本は“手引”であるが“手引”にすぎず,親本のマニュアルとペアになって初めて生きた診断ができるのである.
 最後に,今回の企画を担当された医学書院の担当者の方々に訳者を代表して感謝の言葉を述べておきたい.

 2014年9月
埼玉江南病院にて
高橋 三郎


DSM-5の病名・用語の邦訳について
 DSM-5の病名と用語の邦訳を決めるため,日本精神神経学会として,「DSM-5病名・用語翻訳ガイドライン(以下,ガイドライン)」を作成することが決定され,日本精神神経学会精神科病名検討連絡会(以下,連絡会)が設置された.本書はこのガイドラインを遵守して訳出されたものである.
 連絡会は精神科関連15学会・委員会(次々頁に掲載)の代表者で組織され,平成24年2月に行われた第1回連絡会から総計17回にわたり連絡会議を重ねた.会議では,各学会・委員会から提出される病名の邦訳案をメンバー全員で検討し,それを受けて各学会・委員会が案を練り直し,さらにそれを連絡会で検討するという作業を繰り返した.同25年10月には,ガイドライン(案)に関して代議員の意見を求めた.またホームページに案を掲載して一般会員からも意見を寄せてもらい,これらの意見を参考にしてさらに議論を重ねガイドライン(初版)を作成した1
 病名・用語を決める際の連絡会の基本方針を以下に列挙する.(1)患者中心の医療が行われるなかで,病名・用語はよりわかりやすいもの,患者の理解と納得が得られやすいものであること,(2)差別意識や不快感を生まない名称であること,(3)国民の病気への認知度を高めやすいものであること,(4)直訳がふさわしくない場合には意訳を考え,アルファベット病名はなるべく使わないこと,などである.
 連絡会は,各専門学会が練り上げた邦訳案を最大限尊重した.例えば,児童青年期の疾患では,病名に「障害」とつくことは,児童や親に大きな衝撃を与えるため,「障害」を「症」に変えることが提案された.不安症およびその一部の関連疾患についてもおおむね同じような理由から「症」と訳すことが提案された.さらに,「障害」はすべて「症」に変えるべきではないかとする意見が多かったが,「症」とすると過剰診断や過剰治療をまねく可能性があることも議論され,今回のガイドラインでは限定的に変更することにした.ただし,「症」と変えた場合,およびDSM-IVなどから引き継がれた疾患概念で旧病名がある程度普及して用いられている場合には,新たに提案する病名の横に旧病名をスラッシュで併記することにした.前者の例が,例えば「パニック症/パニック障害」であり,後者の例が,例えば「うつ病(DSM-5)/大うつ病性障害」である.
 米国精神医学会では,本書を公認のDSM-5日本語版と位置づけているので,DSM-5の日本語病名・用語は今後本書の病名・用語で統一されていくだろう.それは,連絡会が引き続き検討していく予定のICD-11の病名・用語とも整合性をもつ必要がある.したがって連絡会では,今回の病名・用語がわが国の精神医学界でどのように取り入れられていくのかを見定めながら,必要な改訂を提案していく予定である.

 2014年5月
日本精神神経学会 精神科病名検討連絡会
座長 神庭重信


1日本精神神経学会精神科病名検討連絡会:DSM-5病名・用語翻訳ガイドライン(初版).精神神経学雑誌 第116巻第6号,429-457頁,2014


原書の序
 DSM-5の出版は,コード化,疾患分類,精神疾患の診断の改革をもたらし,多くの分野にわたって広範囲に効果を及ぼすものである.手っ取り早く参考にできるため,DSM-5分類(すなわち,各疾患のリスト,下位分類,特定用語,診断コード),マニュアル中の使用法を説明した部分,および診断コードだけを取り上げた,小さくて便利な手引は臨床家にとって有用なものであろう.本書『DSM-5精神疾患の分類と診断の手引』は,既刊の大冊である『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』とともに使用するよう意図されている.本書を正しく使うためには,各疾患の基準についての本文記述に通じていることが必要である.
 この手軽な手引には,DSM-5に含まれるすべてのICD-9-CMとICD-10-CMコード,コードするときの注,記録の手順についての情報が入れられており,参考となるDSM-5の付加的な情報は,マニュアル第III部の「新しい尺度とモデル」(評価尺度,文化的定式化,パーソナリティ障害群の代替DSM-5モデル,今後の研究のための病態),およびマニュアルの付録(DSM-IVからDSM-5への主要な変更点,専門用語集,DSM-5診断とコードのABC順および番号順リストを含む)にある.評価尺度と付加的情報は www.psychiatry.org/dsm5 からオンラインで得られる.

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DSM-5の分類

I DSM-5の基本
 1 本書の使用法
   臨床症例の定式化の方法
   精神疾患の定義
   診断の要素
   未来を見据えて:評価およびモニタリング尺度
 2 司法場面でのDSM-5使用に関する注意書き

II 診断基準とコード
 1 神経発達症群/神経発達障害群
  知的能力障害群
  コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群
  自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害
  注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害
  限局性学習症/限局性学習障害
  運動症群/運動障害群
  他の神経発達症群/他の神経発達障害群
 2 統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群
  緊張病
 3 双極性障害および関連障害群
 4 抑うつ障害群
 5 不安症群/不安障害群
 6 強迫症および関連症群/強迫性障害および関連障害群
 7 心的外傷およびストレス因関連障害群
 8 解離症群/解離性障害群
 9 身体症状症および関連症群
 10 食行動障害および摂食障害群
 11 排泄症群
 12 睡眠-覚醒障害群
  呼吸関連睡眠障害群
  睡眠時随伴症群
 13 性機能不全群
 14 性別違和
 15 秩序破壊的・衝動制御・素行症群
 16 物質関連障害および嗜癖性障害群
  物質関連障害群
   物質使用障害群
    物質使用障害の記録手順
   物質誘発性障害群
    中毒と離脱の記録手順
    物質・医薬品誘発性精神疾患の記録手順
  アルコール関連障害群
  カフェイン関連障害群
  大麻関連障害群
  幻覚薬関連障害群
  吸入剤関連障害群
  オピオイド関連障害群
  鎮静薬,睡眠薬,または抗不安薬関連障害群
  精神刺激薬関連障害群
  タバコ関連障害群
  他の(または不明の)物質関連障害群
  非物質関連障害群
 17 神経認知障害群
   神経認知領域
   認知症(DSM-5)および軽度認知障害(DSM-5)
 18 パーソナリティ障害群
  A群パーソナリティ障害
  B群パーソナリティ障害
  C群パーソナリティ障害
  他のパーソナリティ障害
 19 パラフィリア障害群
 20 他の精神疾患群
 21 医薬品誘発性運動症群および他の医薬品有害作用
   神経遮断薬誘発性パーキンソニズム
   他の医薬品誘発性パーキンソニズム
   神経遮断薬悪性症候群
   医薬品誘発性急性ジストニア
   医薬品誘発性急性アカシジア
   遅発性ジスキネジア
   遅発性ジストニア
   遅発性アカシジア
   医薬品誘発性姿勢振戦
   他の医薬品誘発性運動症
   抗うつ薬中断症候群
   医薬品による他の有害作用
 22 臨床的関与の対象となることのある他の状態
   対人関係の問題
   虐待とネグレクト
   教育と職業の問題
   住居と経済の問題
   社会的環境に関連する他の問題
   犯罪または法制度との関係に関連する問題
   相談や医学的助言など他の保健サービスの対応
   他の心理社会的,個人的,環境的状況に関連する問題
   個人歴における他の状況

索引

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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