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末梢病変を捉える
気管支鏡“枝読み”術 [DVD-ROM(Windows版)付]

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CT像から気管支分岐を正確にイメージし、気管支鏡で肺末梢病変を捉えるためのノウハウを伝授。区域ごとに多数のCT像、気管支鏡像を呈示し、分岐の位置関係、病変捕捉のポイントを解説する。書籍と同一例の画像・動画を収めたDVDを用いて、実践的なトレーニングを繰り返すことができる。気管支命名法の基本からEBUS-GS法の実際まで、気管支鏡診断の技術を磨き上げた著者がそのテクニックを惜しみなく開陳。
栗本 典昭 / 森田 克彦
発行 2015年06月判型:A4頁:184
ISBN 978-4-260-02072-5
定価 13,200円 (本体12,000円+税)
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はじめに(栗本 典昭)/(森田 克彦)

はじめに
 肺末梢病変に入っている気管支をCT画像から同定すること(枝読み)には,いくつかのポイントが存在するように感じてきた。これらのポイントを掴むようになるまでの私の気管支鏡検査にまつわる経緯は以下のごとくである。
 広島で気管支鏡を始めた1986年当時は,“B1の背側の枝にブラシを入れてみよう”といった程度の気管支の予測を行って,X線透視で病巣が動くかどうかで到達したかどうかを推測する検査であり,満足のいく結果ばかりではなかった。1986年頃は断層撮影の読影が中心であり,区域・亜区域支などの末梢気管支を同定していくように格闘していた。1991年に岩国みなみ病院に勤務するようになり,村山正毅先生から気管支鏡検査全般の手技をお教えいただいた。特に,気管支鏡検査時の咽頭・喉頭麻酔の手技は,(1)額帯鏡からの反射光を用い左手で持った喉頭を見るミラーで咽頭・喉頭を観察し,(2)ミラーで見ながらJackson型噴霧器の先端で喉頭蓋を手前に(患者の前方)に引き,キシロカインを声門に直接噴霧する,という習得に時間がかかるものであったが,現在まで変更することなく続けて行ってきている(麻酔手技の詳細は第3章「肺末梢病変に対するEBUS-GS法」で述べている)。1994年に,末梢病変に対し細径超音波プローブを用いた気管支腔内超音波断層法(endobronchial ultrasonography: EBUS)を開始した。1996年には,細径超音波プローブにガイドシース(guide sheath: GS)を被せて,生検を同じ位置から繰り返し行う手技(EBUS using a guide sheath: EBUS-GS)に移行させていった。近年のmulti-detector CT scanにより胸膜直下の気管支までより容易に追うことができるようになった。このような画像診断の進歩が気管支鏡検査手技の改良にも大きく関わってきている。2000年から5年間は再び東広島医療センター,続いて2005年から現在まで聖マリアンナ医科大学でEBUS-GSの手技の改良を追求してきたつもりである。
 これらの施設での経験から,EBUS-GSを成功させる大きなポイントは,“肺末梢病変に到達できる正確な気管支ルートの同定”であることを掴んだ。2006年からコンピューターによる気管支ナビゲーションシステムが使用可能になったが,気管支鏡医自身により“肺末梢病変に到達できる正確な気管支ルートの同定”を自分の頭で構築する作業を行うことが,気管支鏡手技の確立の大きな推進力になると確信している。“肺末梢病変に到達できる正確な気管支ルートの同定”を自分の頭で構築する利点は,(1)気管支と末梢病変の位置関係が把握できる,(2)複数のルートの中で最善のルートを決めやすい,(3)病変に到達できない場合の原因を推測しやすい,(4)すべての手技をコンピューターなしで行えるという自信の確立と,病変に達したときの達成感,などである。今回この書籍で紹介する“気管支の枝読み”には,若干の時間を要する(慣れれば5~10分程度)が,その恩恵ははるかにその費やす時間を超えるものと確信している。
 “気管支の枝読み”には,命名の再現性に課題を抱えているように感じている。本書の中で,私たちが現時点で正しいと考えた末梢気管支の命名を多くの箇所で行っているが,間違いがあれば御容赦いただきたい。
 振り返ってみると,多くの先生方との出会いもEBUSの普及・進歩に多大の助けとなった。EBUS画像と病理組織所見との比較では,県立広島病院臨床研究検査科 西阪隆先生,多くの症例を経験する機会をいただき御指導いただいた岩国みなみ病院院長 村山正毅先生,岩国みなみ病院外科 野坂誠士先生,聖マリアンナ医科大学呼吸器内科 宮澤輝臣特任教授,同呼吸器外科 長田博昭名誉教授,中村治彦教授に深く感謝したい。なお,本書の刊行にあたり,出版にご尽力いただいた医学書院の林裕氏に感謝を申しあげる。

 2015年4月
 栗本 典昭



 日常業務の中で,ここ数年は気管支鏡の仕事が占める割合が多くなってきた。しかし,医師免許を取得して選んだ道は消化器一般外科であった。なぜこうなったのか,恩師を辿ってみたくなった。
 国立下関病院外科でオーベンの矢野一麿先生(肝臓外科医)の指導を受けていた初期研修時代に,平成5年当時としては最新のVATS lobectomyやlung volume reduction surgeryを数十例助手として経験した。高松赤十字病院の森田純二先生が毎月指導に来られていた。研修医であるため執刀医になる機会はなかったが,呼吸器外科に興味が湧いてきた。時期を同じくして,山口県呼吸器外科研究会で岩国みなみ病院の栗本典昭先生が発表されたEBUSの演題が鮮明に脳裏に焼き付いていた。この1演題を聴いたことが,後に自分の職業人生を大きく左右することになるとは駆け出しの研修医にはわからなかった。
 2年間の研修後に赴任することになった中国山地の小さい病院は手術が少なく,矢野,森田両医師に仲介を依頼し,岩国みなみ病院で週1回の研修が可能になった。外科の単科病院でありながら,診断から治療まで外科医6名(4つの医局から派遣)が早朝から深夜まで奔走している光景にショックを受けた。手術は14時から1例目,18時から2例目が開始されており,幸運にも2例目に業務終了後でも間に合わすことができた。
 約2年研修を継続し,常勤医になった。そこで村山正毅理事長から気管支鏡検査,呼吸器画像診断,分離換気麻酔の指導を受けた。EBUSに関しては,エコーで正常解剖がまずどう見えるかの時代であり,摘出標本のEBUSを繰り返した。
 忘れられないエピソードがある。夜11時頃,自宅の電話が鳴った。「エコーをするので病院に出てきて欲しい」と栗本先生からであった。急患ではないかと思って行くと,標本と細径プローブが準備されていた。栗本先生が関連施設でlobectomyした摘出標本であった。アーチファクトが出ないように気管支断端を鑷子で把持し静置する役目が自分の仕事であった。気管支鏡観察し,続いてEBUSまで含めると作業は1~2時間かかることもあったが,何か新しいことがわかるかもしれないという期待もあり,当時結構楽しんで続けていたと記憶している。
 消化器の検査,手術も十分すぎるほど経験できた。主に榎本正満先生に指導を受けた。覗き込むタイプの胃カメラで手首だけ動かして不自由そうに操作していた自分に「君にはステップが足りない」と指摘を受けた。内視鏡検査にはどの領域でもステップが必要と後に何度も感じた。早期胃癌では摘出標本のホルマリン固定後に粘膜面のしずくを取り,観察スケッチし,数枚コピーをとり完全な形態を記録した。カラー写真と白黒のコピーを眺めながら垂直方向,水平方向の進展を評価し,最終的には病理像と対比しながらマッピングの図をコピー用紙に描き込む作業がある。栗本先生は固定前に水浸下にエコー観察すると病理の進展範囲と非常によく一致することを教えてくれた。
 岡正朗先生が主宰されていた山口大学第2外科に帰局し,食道外科グループに属しながら外科侵襲学(ラットの分離換気)で学位を取得した。宇部興産中央病院で4年間,福田進太郎先生の指導のもと消化器一般から呼吸器外科まで広く経験を積み,平成18年に長田博昭先生が主宰されていた聖マリアンナ医科大学呼吸器外科で栗本先生に再合流することになる。“マリアンナ”では東京医科大学から来られた中村治彦先生に師事できたことも大きな財産になった。
 肺末梢病変の術前画像情報(胸部X線写真,CT,EBUS)と摘出標本のマクロ,ミクロの対比は必ずしも容易ではない。消化管病変のように病変の全体像を内視鏡観察することは無理であり,摘出後に消化管のように平面に展開できないことや,プローブが病変のどの部位に到達,通過したのか検証が難しいためである。しかしながら,今回うまく対比できた症例を経験し,その紹介に大胆に紙面を割くことをお許しいただけた。標本情報と臨床情報をリンクさせることができるかどうかは熱心な病理医に依存している。われわれの臨床情報に耳を傾け,長時間つきあってくれた西阪隆先生との出会いは貴重であった。人との出会いのように症例との出会いも一期一会と思う。一例一例を大切に再び示唆的な症例を報告できるように努力したい。

 2015年4月
 森田 克彦

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気管支外観図
本書の読み方・使い方
本書における枝読み記載上の注意点
付属DVD-ROMの使い方

1 気管支分岐を正確に読むために
 気管支の命名法
 CT撮影条件
 CT画像を用いた枝読みの方法
  I.肺野全体を見る
  II.分岐部を追う
  III.CT画像を左右反転,回転させる
  IV.気管支を追跡する
  V.水平方向に走行する気管支からの分岐を考える
 肺末梢病変の内部構造解析-EBUS画像によるType分類について
 気管支分岐の形態-側枝(娘枝)について
 EBUS-GS法に用いる超音波プローブ(探触子)
 EBUS-GS法の概略図

2 気管支分岐の同定(枝読み)の実際
 右上葉
 右中葉
 右S6
 右底区
 左上区
 左舌区
 左S6
 左底区

3 肺末梢病変に対するEBUS-GS法
  I.咽頭・喉頭麻酔
  II.ガイドシースの準備
  III.超音波観測装置の設定
  IV.気管支鏡の挿入
  V.ガイドシース/超音波プローブを末梢気管支へ誘導
  VI.EBUSの描出
  VII.プローブが病巣に入らない場合の解決法
  VIII.ガイドシースの留置
  IX.ガイドシースからの細胞・組織採取
  X.ガイドシースの抜去
  XI.合併症と対策

4 EBUS画像と切除標本の対比
 摘出標本の伸展固定
  I.本気で対比するため伸展固定する前にすべきこと
  II.肺を生体内での形状に戻す最大限の努力
 切り出し
  I.全体観察と撮影
  II.割を入れる
  III.切り出し標本を並べて割面撮影
  IV.標本の復元
 対比

文献
索引

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CT画像から立体的位置関係を理解する技を伝授
書評者: 荒井 他嘉司 (公益財団法人 結核予防会複十字病院顧問)
 気管支鏡,特に末梢肺のEBUSに長年取り組んでおられた著者が,自身の努力と経験を基に気管支を末梢枝までCT画像で読影・同定する術を大成させて一冊の本として著しました。

 本書は,第1章ではスライス間隔0.4mmのCT画像を用いての気管支の枝読みの方法とEBUSの基本的な知識,第2章では症例に基づいた枝読みの実際,第3章では末梢病変に対するEBUS-GS法についての基本的技術の解説とうまく入らなかった時の解決法,第4章ではEBUS画像と切除標本の対比,以上4部に分けてわかりやすく解説されています。

 本書の主題である枝読みの内容について紹介します。気管支鏡の初心者がCT画像から気管支分岐を立体的に構築する上で,まずまごつくのは胸部CTの水平断面像が尾側から見る像であるのに対して,気管支鏡医は被検者の頭側に立って患者を頭から見るため,観点が正反対である点はないでしょうか。本書の特徴は,CTの水平断面像を左右反転し,さらに上葉では時計方向(右)または反時計方向(左)に回転した上で,それと内視鏡所見とを対比させながら読影法を解説してあることです。それにより,内視鏡とCTの所見との立体的位置関係が初心者にも理解しやすくなりました。末梢気管支分岐の分析においては,5次・6次気管支に及ぶCT画像分析とそれに対応する気管支鏡所見とを対比して解説しています。このような詳細な分析はほかに類を見ません。

 DVDに納められた症例のCTに対応する内視鏡所見は,鉗子が挿入されると視野が邪魔されてどの枝に入ったかがわかり難くなる傾向にあるのは残念ですが,やむを得ないことと思います。またDVDがWindowsにのみ対応ということで不便を感じる読者も少なくないのではと思われます。

 近年CTの3DCGによるバーチャル気管支鏡によるガイドが進むにつれて,検者が末梢の生検部位への経路,すなわち気管支分岐の立体的位置関係をあまり考えないで検査する傾向にあるのではないかと懸念されます。しかし,気管支分岐をCT画像の読影から頭の中で立体的に構築する能力を磨くことは呼吸器学を極める者の基本と考えます。本書の完成は気管支分岐を立体的に構築しながらCT画像を読むという呼吸器学の基本的な姿勢を再認識させてくれる良い機会となり,その技を磨くための道筋を本書が示してくれていると思います。

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