看護教員ハンドブック

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看護教員となったら最低限必要になる知識や情報を集めたハンドブック。第1章から第4章では、日々の業務の中で押さえておきたい理念や方式を、第5章では授業や指導で使える技法を中心に、簡潔な記述でまとめている。はじめて教員となった人はもちろん、基本に立ち返って確認をしたい人まで幅広く活用できる。
編集 古橋 洋子
発行 2013年10月判型:A5頁:152
ISBN 978-4-260-01894-4
定価 2,640円 (本体2,400円+税)
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まえがき

 近年,看護大学や看護系学部の新設・定員増が相次ぐなかで,看護教員の需要は年々増してきている状況にある.平成22年に取りまとめられた「今後の看護教員のあり方に関する検討会報告書」(厚生労働省)においても,看護基礎教育の充実において,看護教員の質・量の確保の必要性が指摘されており,とりわけ質の向上が不可欠であることが述べられている.
 実際の看護教員の養成状況はどうであろうか.看護専門学校(専修学校)では,最低5年の臨床経験を積んだのち,都道府県で実施される看護教員養成講習会を受講することが教員になるための必須条件とされている.しかし,講習会の実施状況が全国的に均一化されてはおらず,看護教員養成の質が担保されていないという課題がある.一方,大学教員の場合は,学士課程を卒業後,修士・博士号を取得し研究業績を積んだうえで,各大学の公募を通じて就職することが多い.その後,所属大学で教育法全般についてのオリエンテーションを受け,看護教育の実際は配属先の教授が指導することとなる.勤務先が専修学校(厚生労働省管轄)か大学(文部科学省管轄)かにより,新任時期の教員教育に差異があるのが現状なのである.このように,さまざまな教育背景を経て教員となった方が,実務で迷ったときにすぐ手に取り確認できるハンドブックがあったらよいな,との思いから本書を企画した.
 本書は,特に新任教員が知っておきたい基本的な知識を中心に整理されている.持ち運びやすく手軽に調べられることを意識し作成したため,本文では簡潔な記載にとどめているが,より深く学びたい方に向けて,それぞれの記述の根拠となる法令や指針,理論を多く掲載するよう努めた.また,適宜コラムを配置し,各章に関連した事項についても押さえられるようにした.
 どのような要件・背景であったとしても,新任教員には入職後すぐに一人前の教員としての実践が求められる.本書を大いに活用し,日々の業務につなげていただけることを期待している.
 本書の作成にあたり,医学書院編集長の七尾清氏,看護出版部の北原拓也氏,近江友香氏にはたいへんお世話になった.ここに感謝の意を記したい.

 2013年10月
 古橋 洋子

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1 教員の組織と役割
 1 大学における教員組織と役割
  大学の目的/教員組織と役割/教員になるための要件/教員組織の編制/
  大学教員の3つの使命/大学の機能遂行のための組織運営/助手の役割と心得
 2 専門学校(専修学校)における教員組織と役割
  専修学校の目的/教員組織と役割/教員になるための要件/専任教員の役割
 3 資格試験
  看護師国家試験(保健師助産師看護師法第3章第21条)/
  准看護師試験(保健師助産師看護師法第3章第22条)

2 カリキュラムから授業の実施まで
 1 カリキュラムとは
 2 看護師教育におけるカリキュラム
 3 カリキュラムの立案
 4 カリキュラムマップ
 5 カリキュラムの要素
  教育目標/学習方略/評価
 6 教育目標の分類
 7 教育目標の記述方法
  原則/一般目標の記述/行動目標の記述/教育目標のもつべき性格
 8 シラバス(授業計画書)
  役割/基本設計とフォーマット
 9 授業設計
  どのような時に学生は学ぶか/授業設計の意義/授業までの流れ/授業案の作成
 10 学習方略
  学習方略の種類/教育資源
 11 授業(講義)の展開
  導入/展開/まとめ
 12 テスト(客観試験)
  テストの利点と欠点/問題作成の流れ
 13 成績評価
  評価の種類/評価の方法/評価の基準/評価結果の通知・報告

3 看護学実習を指導するための基礎知識
 1 実習の目的・目標の確認
  所属する大学や専修学校の実習目的・目標の確認/
  看護学実習の構成の確認/実習科目の目的・目標の確認
 2 担当学生の情報収集
 3 実習施設との打ち合わせ
 4 実習施設の把握
 5 受け持ち対象者への協力依頼
  学生の受け持ち対象者・家族への依頼/
  学生が受け持ち以外の対象者に看護援助を行なう場合
 6 受け持ち対象者の情報収集
 7 実習指導案の作成
  実習の位置づけ/実習の考察/週案/日案/評価計画
 8 オリエンテーション
  実習科目のオリエンテーション/実習施設別のオリエンテーション/
  実習グループのオリエンテーション
 9 実習指導
  実習状況の確認と把握/指導方法/看護過程の展開と指導のポイント
 10 診療情報・実習記録の取り扱いについて
  診療情報について/実習記録について
 11 実習評価
 12 臨地実習指導者の実践
  学生を受け入れる準備/受け持ち対象者の選定と協力依頼/
  オリエンテーション/実習指導/評価
 13 事故発生時の対応および報告手続き
  主な事故の種類と事故発生時の応急処置の流れ
  報告の流れ/事故報告書の作成・提出/事故負担への対応

4 看護教員にとっての研究
 1 看護教員としての自己研鑽
  自己研鑽の必要性/自己研鑽の方法
 2 看護研究とは
  看護研究の意義および必要性/研究のステップ
 3 看護研究における倫理
  看護倫理とは/倫理的配慮とは
 4 看護教員としての研究の実施上の留意点
  学生を研究対象とした場合/患者および一般の人々を研究対象とした場合
 5 学生への研究指導上の留意点

5 押さえておきたいコミュニケーションの技法
 1 なぜ,コミュニケーションの技法が大切なのか
 2 初対面で人の心をつかむ方法
  常にアイコンタクト/反応を見ながら対応する/
  会話のきっかけになる話題/場の雰囲気を読む
 3 講義を魅力的にするための工夫
 4 話し方の工夫
  話す速度/声と間のとり方/抑揚と強調/その他のテクニック
 5 道具(視聴覚教材など)を上手く使う
  黒板・ホワイトボード/
  パワーポイント・スライド・OHP(オーバーヘッドプロジェクター)
 6 学生を指導するうえでのポイント
  指導技術の多くは集中化の技術/
  学生の意欲を引き出す指導のための「あいうえお」/
  学生自身による目標の確認/望ましいフィードバック
 7 臨地実習指導者のパターンと指導の工夫
  教員の指導パターン/実習の進度に合わせた指導/
  学び方の癖に合わせて指導パターンを選択する
 8 グループワーク(小集団討議法)
  グループ・ダイナミックス(group dynamics)/グループワークの手法/
  ブレイン・ストーミング/KJ法
 9 カンファレンス(conference)の運営の仕方
  カンファレンスのコツ/会議録の作成方法
 10 プレゼンテーションのコツ
 11 コメント力を身につけるためのコツ
 12 質問力を身につけるためのコツ
 13 さまざまなクレームとその対応
  クレームに発展する可能性が高いケースとその対応/
  電話によるクレームとその対応/保護者からのクレームへの対応
 14 教員が身につけておきたいビジネスマナー
  実習施設への訪問時など,初対面での挨拶における注意事項/
  伝言メモの書き方/依頼文書(公文書)の書き方/E-mailの書き方

巻末資料
  資料1 学校教育法(抜粋)
  資料2 大学設置基準(抜粋)
  資料3 専修学校設置基準(抜粋)
  資料4 保健師助産師看護師法(抜粋)
  資料5 看護師等養成所の運営に関する指導要領(抜粋)
  資料6 看護教員に関する講習会の実施概要
  資料7 看護教員の教育実践力と講習会終了時の到達目標
  資料8 看護師教育の技術項目と卒業時の到達度
  資料9 臨地実習において看護学生が行う基本的な看護技術の水準
  資料10 大学における組織的な研究・研修の努力義務について
  資料11 看護教員の向上すべき資質と求められる能力
  資料12 看護者の倫理綱領
  資料13 専門職業人として看護職に必要な能力の全体像

索引

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ポイントをギュッと凝縮! 看護教員必携の1冊 (雑誌『看護教育』より)
書評者: 里光 やよい (自治医科大学看護学部准教授)
 今や,4年制の看護大学は210校を超え,短期大学,専修学校を合わせると759という数の看護基礎教育機関があり,4年制大学の新設も続くことが予想されます。年度末のこの時期には,あちこちで教員の確保について頭を痛めているという話が流れてきます。「新任教員が定着しない,教員の教育方法がわからない,看護教員としての自分の目標がわからない,他の学校ではどうなのだろうか」などの悩み,そしてなんと言っても,臨地実習指導に悩みを抱えている方に読んでいただきたい本です。何らかのヒントが必ずつかめることと思います。

 冒頭は,看護教員として最低限わかっておきたい仕事内容を,その根拠となる法律や指定規則,設置基準などを引用し示してあります。この部分だけでも新任教員向けのオリエンテーションに有効です。担当されている方は「こんな1冊がほしかった!」と実感されることでしょう。

 構成を紹介しますと,1章:教員の組織と役割,2章:カリキュラムから授業の実施まで,3章:看護学実習を指導するための基礎知識,4章:看護教員にとっての研究,5章:押さえておきたいコミュニケーションの技法となっています。

 いい学生を育てるにはいい教員が必要ですが,いい教員とは学生の力を認め伸ばせる教員であると思います。とりわけ臨地実習の場での教育力は重要ですが,教員の醍醐味でもあり悩みどころでもあります。その実習指導についてのさまざまな工夫から学生とのコミュニケーション,臨床とのコミュニケーション,カンファレンス,時に起こるクレームやヒヤリハット時の対応に至るまで,ページを割いて幅広い角度から記しています。

 対応の少しの差が大きな影響となって表れることもあるのが臨床現場の特徴です。微妙なコミュニケーションについてもポイントを押さえて簡潔に書かれてあります。本書は,編者の古橋先生の長年の教育経験からあぶり出された臨地実習成功の鍵となるエッセンスがギュッと詰まった良書であると思いました。

 このように臨地実習のみならず日常の講義演習の準備実施から研究への取り組みに至るまでを網羅していますので,これから教育に入ろうと思っている方や教育経験の少ない方にとっても,活用できる情報が満載の書です。看護教員としてある程度の経験を積まれた方には,自分の足元の確認や後輩の指導に役立つことでしょう。

 とにかく要点がコンパクトにまとまっています。読みやすく,手に取りやすいサイズです。ぜひ,ご一読ください。

(『看護教育』2014年4月号掲載)

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