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胸部X線写真ベスト・テクニック
肺を立体でみる

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胸部X線写真に関する書籍は数多刊行されているが、本書では、読影に際して肺を立体的に捉えることに重点を置き解説。この切り口は他書に類を見ない。1枚の写真から奥行きが見えることが実感でき、まさに立体で捉えるためのガイドブックである。イメージを喚起しやすいシェーマを多数並べ、症例を演習方式で提示することで、読影のポイントや眼のつけどころなどが習得できる。読影に自信が持てるヒントとキッカケが本書で得られるだろう。
齋田 幸久
発行 2013年11月判型:B5頁:152
ISBN 978-4-260-01768-8
定価 4,400円 (本体4,000円+税)

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  • 序文
  • 目次
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本書の目指すところ

 胸部単純X線診断は手ごわい.呼吸器や画像診断の専門家でさえ,胸部単純X線写真の読影は難しい.初学者の多くは,どうやって勉強すればよいのか途方に暮れる.
 ページの下に提示したX線写真を見たときに,肺という臓器が目の前に浮かんで,まるで手でつかめるような感覚を得ることができれば,恐れることはない.
 この感覚こそが胸部の立体感覚であり,まさに胸部単純X線診断の極意である.
 1枚の胸部X線写真で奥行きが見えること,あるいは,それが実感できることが本書の到達目標であり,本書は,胸部X線写真という平面像を立体で見るためのガイドブックである.
 目の前にあるX線写真を少し左右に振るようにしたときに,もし立体的に見えるような気がすれば,しめたものである.

写真

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I 肺の輪郭をみる-肺の拡がりと大きさの診断
 1 肺の左右の大きさ
 2 輪郭が肺を語る!
  1)肺の上縁
  2)肺の外側辺縁
  3)肺の外側下縁から肺底部を探る
  4)肺底部の辺縁は深い
  5)肺下部の内側辺縁の評価
  6)肺上部の内側辺縁
  7)肺の輪郭が完成する

II 肺外と肺内を見分ける!-肺外病変の診断
 1 肺の外と肺の中
 2 食道とその病変
 3 縦隔気腫
 4 気胸
 5 胸水

III 肺を診断するための基礎を固める
 -肺内病変の捉え方,葉間,気管支,肺血管
 1 単純X線診断のための表現
  1)肺野
  2)肺尖部,肺底部
  3)肺門周囲
  4)透亮像
  5)肺胞性陰影,間質性陰影
  6)融合,融合像
  7)濃縮陰影,濃縮像
  8)含気と容積
 2 奨められない表現
  1)肺野濃度の上昇
  2)肺紋理が汚い
  3)第1弓,第2弓
  4)肺門部は大丈夫?
 3 シルエットサインの重要性
  1)肺内病変を診断するためのシルエットサイン
  2)シルエットサインの適応
 4 肺葉と葉間裂の知識
 5 肺血管の知識
  1)肺動脈の解剖
  2)肺静脈の解剖
  3)走行でわかる肺血管の区域
 6 肺内の基本要素としての気管支の知識
  1)まずは各肺葉の気管支の走行を認識する
  2)肺葉と肺区域の解剖
  3)ブロンコ体操

IV 肺炎による局在診断の演習
 症例1 38歳,女性
 症例2 19歳,男性
 症例3 10歳,男性
 症例4 40歳,男性
 症例5 28歳,女性
 症例6 69歳,男性
 症例7 7歳,男性
 症例8 42歳,女性
 症例9 50歳,男性
 症例10 35歳,男性

V 肺の容積増減を重視した診断演習
 症例1 息切れ 64歳,男性
 症例2 喘息 30歳,女性
 症例3 呼吸困難 85歳,男性
 症例4 結核の既往あり 78歳,女性
 症例5 咳嗽 60歳,女性
 症例6 微熱 80歳,女性
 症例7 咳,痰 80歳,女性
 症例8 咳,痰 56歳,女性
 症例9 無症状 25歳,女性
 症例10 肺癌の疑い 59歳,男性

VI 気管支疾患の診断演習
 症例1 喘息様発作 30歳,男性
 症例2 慢性咳嗽 38歳,男性
 症例3 無症状 89歳,女性
 症例4 咳,発熱 62歳,女性
 症例5 呼吸困難 73歳,女性
 症例6 肺の嚢胞性変化 71歳,男性
 症例7 咳嗽,呼吸困難 45歳,男性
 症例8 息切れと動悸 93歳,女性
 症例9 肺炎を起こしやすい 60歳,女性
 症例10 検診で異常を指摘された 46歳,女性

VII 心血管と肺循環の診断演習
 症例1 労作時呼吸困難,発汗 43歳,男性
 症例2 胸痛発作 83歳,男性
 症例3 著明な下腿浮腫および悪心 94歳,女性
 症例4 呼吸困難 70歳,男性
 症例5 息切れ 76歳,女性
 症例6 息切れ 61歳,女性
 症例7 労作時呼吸困難 77歳,女性
 症例8 高血圧 65歳,男性
 症例9 心雑音 79歳,女性
 症例10 高血圧,心房細動 72歳,男性

あとがき
索引

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「肺を立体でみる」習慣が身に付く教科書
書評者: 芦澤 和人 (長崎大大学院教授・臨床腫瘍学/長崎大病院がん診療センター長)
 齋田幸久先生のご執筆による単行書『胸部X線写真ベスト・テクニック―肺を立体でみる』が刊行された。わが国には,胸部X線写真に関する数多くの教科書が存在するが,本書は他書とは異なる視点で執筆されている。すなわち,本書のサブタイトルにあるように,胸部X線写真の読影において「肺を立体的に捉える」ことに焦点が置かれている。巻頭の「本書の目指すところ」に記載されているが,「1枚の胸部X線写真で奥行きが見えること,あるいは,それが実感できること」が到達目標である。

 その目標を達成するために,CTの横断像のみならず3D画像やMPR画像が適切に配置されており,読者が胸部X線写真上,「肺を立体でみる」ことを助けている。

 さらに,極めて明快なシェーマも適宜挿入されており,単純X線所見の成り立ちが理解しやすい。胸部X線写真はアナログからデジタルに移行してきたが,使用されているすべての胸部X線写真は,極めて画質がよく,かつ大きく提示されている。また解説の文字を極力少なくしてあるため読みやすい。私は本書を1日で通読してしまった。著者の豊富な知識と経験に基づいた完成度の高い専門書である。

 本書はI~VII章で構成されているが,基礎編(I~III章)と実践編(IV~VII章)に大別することができる。基礎編では,正常画像解剖と肺内・肺外病変の捉え方について豊富なシェーマを交えてわかりやすく解説されている。後半の実践編は4つの章からなり,各章に10例の厳選された症例が並んでいる。Q&Aの演習形式になっているので,ぜひ1枚(一部側面像も提示)の胸部X線写真で肺を立体的に捉えることにトライしていただきたい。もし,解答で使用されている3D画像やMPR画像がイメージできるようになれば,著者の意図する到達目標に達したといえよう。

 近年の画像診断機器の進歩は目覚ましく,64列以上のMDCTが多くの施設で標準となってきた。胸部領域の画像診断においてもMDCTは不可欠な検査法となったが,安価で簡便な胸部X線撮影が第1選択の検査法であり,その重要性は何ら変わっていない。胸部X線写真の読影能力を高めるためには,CT所見を胸部X線写真にフィードバックする作業が重要である。この作業を繰り返すことで,単純X線所見の成り立ちの理解が進み,さらには「肺を立体でみる」習慣が自ずと身に付いてくる。前述したように,CT画像が多く提示された本書は,まさにその作業のお手本となる教科書である。胸部X線写真の読影にあたる若手の放射線科医はもとより,呼吸器疾患の診療に携わる内科医,外科医,総合診療医などが必読されることを期待する。

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