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レジデントのための呼吸器診療マニュアル 第2版

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呼吸器内科専修医のニーズにズバリ応える診療マニュアル。疾患・症状のマネジメント、他科との診療連携、検査、治療が網羅され、それぞれのポイント、診療のフローが使いやすく整理されている。伝統ある長崎大学第二内科の総力を挙げて執筆された好評書。
シリーズ レジデントマニュアル
編集 河野 茂 / 早田 宏
発行 2014年01月判型:A5頁:404
ISBN 978-4-260-01865-4
定価 5,170円 (本体4,700円+税)

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第2版の序—如己博愛

 本書の初版は,2008年に従来にない新しいスタイルの呼吸器教科書を目指して刊行した.そのスタイルが医学生やレジデントの方々に受け入れてもらえるのか若干の不安があったが,幸いにも若い諸子の高評価を得て増刷を重ね,今回,改訂に至ることができたことは喜ばしい限りである.
 現在,呼吸器内科医の必要性と比べて,全国的に専門医の数が少ないといわれている.呼吸器内科は,感染症,腫瘍,アレルギー性疾患,自己免疫性疾患,循環・呼吸管理と幅広い分野とかかわり,呼吸器疾患以外の知識も求められる.ジェネラリストかスペシャリストかという二極論があるが,ジェネラリストの基盤があってこその呼吸器内科の専門性があると信じている.そこで,今回の改訂にあたっては,呼吸器診療を俯瞰して必要と判断した,救急医療,総合診療,チーム医療の観点からも新たな記載を行った.私どもの医学・医療への理念を理解していただき,編集作業では医学書院に多大の尽力をいただいたことに深く感謝したい.
 一方,医学・医療の進歩で書きかえられなければならないことは多いが,変わらない,変えてはならない事柄がある.「如己博愛」の精神であり,「自己の如く,人を博く愛する」ことを忘れてはならない.医師は患者の全人的な苦しみを,自分や家族のことのように共感を持って優しく接するように,また,自身の肉体的な苦労も,勉強の煩わしさも厭わずに,患者に尽くしてもらいたいとの思いをこめた言葉である.本書によって,「一人でも多くの呼吸器疾患で苦しむ患者を救いたい」と若い世代の方々が思っていただければと,心から願ってやまない.

如己博愛2014年1月
長崎大学病院・病院長
河野 茂

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A 疾患・症状のマネジメント
 A1 呼吸器診療の流れ
 A2 市中肺炎に出あったとき
 A3 院内肺炎に出あったとき
 A4 医療・介護関連肺炎に出あったとき
 A5 慢性気道感染症に出あったとき
 A6 のどの痛みを訴えられたら
 A7 インフルエンザを疑うとき
 A8 抗酸菌が陽性ならば
 A9 急性の間質性肺炎に出あったとき
 A10 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の管理
 A11 亜急性から慢性の間質性肺炎に出あったとき
 A12 気管支喘息の管理と救急
 A13 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の管理と救急
 A14 睡眠時無呼吸症候群(SAS)を疑うとき
 A15 急性の胸痛・呼吸困難をみたら
 A16 血痰・喀血をみたら
 A17 慢性の咳をみたら
 A18 孤立性肺結節をみたら
 A19 喀痰細胞診陽性をみたら
 A20 胸水をみたら
 A21 胸膜肥厚をみたら
 A22 縦隔に腫瘤性病変をみたら

B チーム医療のために
 B1 プレゼンテーションとコンサルテーション
 B2 他科から術前評価を依頼された際の注意
 B3 妊婦の呼吸器疾患を診療するときの注意
 B4 チーム医療とノンテクニカル・スキル
 B5 infection control team
 B6 呼吸ケアチーム(respiratory care team)

C 基本的な検査のポイント
 C1 胸部の身体診察
 C2 胸部X線写真
 C3 胸部CT写真:びまん性肺疾患
 C4 呼吸機能検査
 C5 血液ガス検査とパルスオキシメータ
 C6 血液生化学検査
 C7 グラム染色
 C8 微生物検査
 C9 気管支鏡検査
 C10 気管支肺胞洗浄(BAL)

D 治療のアプローチ
 D1 抗菌薬
 D2 気管支拡張薬/抗炎症薬
 D3 マクロライド長期療法
 D4 副腎皮質ステロイド薬(内服・静注)
 D5 抗癌剤(分子標的治療薬を含む)
 D6 酸素療法
 D7 在宅酸素療法
 D8 呼吸リハビリテーション
 D9 人工呼吸器療法
 D10 NPPV
 D11 胸腔ドレナージ

E 臨床に役立つエッセンス
 E1 患者中心の医療-包括的評価の重要性
 E2 診療録(カルテ)の記載
 E3 インフォームド・コンセント
 E4 悪い知らせを伝える-癌の告知の場合
 E5 医療事故への対応
 E6 こころある医療を求めて-患者そして家族・地域社会へ

付録1:読んでおきたい文献・ウェブサイト
付録2:Respiration Assessment Sheet(A-B-C-C-D Approach)
索引

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ただのマニュアル本と言うなかれ
書評者: 西村 正治 (北大大学院教授・呼吸器内科学)
 本書は2008年3月に初版が上梓され,2014年1月に改訂第2版として発行された。初版の序に「医学は再び長崎から」とあるように,著者は長崎大病院第二内科出身の諸先生による。文字通りレジデントのためのマニュアル本であるが,ただのマニュアル本と言うなかれ! その内容の充実ぶりは素晴らしく実に使いやすい。目次は,「A 疾患・症状のマネジメント」「B チーム医療のために」「C 基本的な検査のポイント」「D 治療のアプローチ」「E 臨床に役立つエッセンス」と章立てされている。その内容を個々に見ると実にうまく工夫されている。

 呼吸器疾患を順に並べたマニュアル本とは異なり,疾患・症状のマネジメントでは,患者の主観的訴え,検査上の客観的症候,そして,市中肺炎,インフルエンザ,喘息,COPDなどのいわゆるcommon diseaseがA1~A22までバランス良く並んでいる。診療に応じて知りたい項目が選びやすい。個々の項目は実際の診療の流れに沿ってポイントがわかりやすく解説されている。「B チーム医療のために」では,今回の改訂で加筆された「他科から術前評価を依頼された際の注意」「妊婦の呼吸器疾患を診療するときの注意」「Infection control team」などの項が並び,この本の際立った特徴となっている。

 長崎大第二内科は感染症学でわが国をリードしている教室であるが,それを反映して,「D 治療のアプローチ」では特に抗菌薬の使い方に関するまとめが出色の出来栄えである。呼吸器専門医が読んでも知識の整理に役立つことだろう。

 最後の「E 臨床に役立つエッセンス」もまたこの著書の特徴を余すところなく伝えている「インフォームド・コンセント」の次に,「悪い知らせを伝える―癌の告知の場合」という項目がある。レジデントは一度この項目に目を通すと,知識を伝達することだけが告知ではないと気付くことだろう。最後の項目「こころある医療を求めて―患者そして家族・地域社会へ」と併せて読んでみて,私はこの著者らの強い想いを感じたのである。良き臨床医とはこうあるべきだと……。レジデントばかりではなく,呼吸器診療に携わる機会のある一般内科医にもお薦めの一冊である。
テクニカルスキルとノンテクニカルスキルを学べる一冊
書評者: 大生 定義 (立教大社会学部教授・立教学院診療所長)
 この度,『レジデントのための呼吸器診療マニュアル 第2版』が上梓された。「第2版の序」で,編集者のお一人である河野茂先生が,長崎大医学部の「如己博愛」を説かれ,さらに「ジェネラリストの基盤があってこその呼吸器内科の専門性があると信じている」として基本方針をうたわれている。この方針に沿いつつのアップデート版である。

 本書はAからEの5章構成になっている。「A 疾患・症状のマネジメント」では,A1で呼吸器診療全体の流れ,臨床推論の基本が述べられた後,血痰? 市中肺炎に出あったら? など具体的臨床的問題についてフローチャートなどで簡潔に提示され,分担執筆の熟練指導医からのコツ・Tipsがちりばめられている。コラムのミニレクチャーも要領よく適切である。読者対象が呼吸器内科の専門研修医と指導医とされているが,他分野の医師や呼吸器病の理解を求める医療・医学教育関係者にも大変役立つ。

 Bは「チーム医療のために」として,研修医に必須な,プレゼンテーションやコンサルテーション,術前評価や呼吸ケアチームについての章である。ここに重要な横断的なスキルである,ノンテクニカル・スキルについての説明もある。これを書かれたのは,もう一人の編集者であり,執筆者としても広範囲を担当されたとお見受けする早田宏先生であるが,先生の医療安全への強いコミットメントが感じ取れる。蛇足ながら「ノンテクニカル・スキル」とは,コミュニケーション,チームワーク,リーダーシップ,状況認識,意思決定など,認知的・社会的なスキルで,専門的な知識や技術である「テクニカル・スキル」と共に,現代チーム医療においては,安全や質の確保に欠かせないものである。この両者を交互にする,章立ての順序自体が本書のポリシーを語っている。

 続く「C 基本的な検査のポイント」や「D 治療のアプローチ」の章も,図表が多くわかりやすい。また具体的で,重要点だけをわかりやすく,本当に歯切れよく述べていてクリアカットである。専門研修医には大変有用な情報であろう。ここまで洗練するには大変なご苦労もあったのだろうと思う。最後に,再び早田先生が「E 臨床に役立つエッセンス」として患者中心の考え方,倫理,コミュニケーションについて要約を紹介し,結んでいる。

 呼吸器専門研修医・指導医だけではなく,呼吸器の臨床に興味のある,他分野の医師・研修医にも本書ご一読を強く薦めたい。というのは呼吸器病を題材にはしているが,そのテクニカルな領域と医療全般に必須なノンテクニカルな横断的な領域をお互いになぞりながら学べる,いわばDual textbookだからである。

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