薬剤師レジデントマニュアル

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卒後1、2年目の薬剤師に向けて、現場で役立つ情報を箇条書きで歯切れよく、ポケットに入るサイズに編集。総論は調剤、注射、DI、検査、フィジカルアセスメントなど。各論は循環器疾患、消化器疾患、がんなど主要52疾患について、「患者の状態把握→治療(標準的処方例)→薬剤師による薬学的ケア→処方提案のポイント」の順に解説。全国屈指の人気を誇る研修病院、神戸市立医療センター中央市民病院の薬剤部・総合診療科が総力を上げて執筆!
*「レジデントマニュアル」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ レジデントマニュアル
編集 橋田 亨 / 西岡 弘晶
発行 2013年03月判型:B6変頁:376
ISBN 978-4-260-01756-5
定価 3,740円 (本体3,400円+税)
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編集の序

 2012年春に,6年制薬学教育を受けた薬剤師が初めて社会に船出し,それを迎える医療現場にも大きな変化が起こりつつある.
 「医療の質の向上および医療安全の確保の観点から,チーム医療において薬剤の専門家である薬剤師が主体的に薬物療法に参加することが非常に有益である」という厚生労働省医政局長通知(平成22年4月30日付)を目にした時,多くの薬剤師が勇気づけられ,また改めて責任の重さを感じたことだろう.同通知は「薬剤師を積極的に活用することが可能な業務」の中で,「薬剤の種類,投与量,投与方法,投与期間等の変更や検査のオーダについて,医師・薬剤師等により事前に作成・合意されたプロトコールに基づき,専門的知識の活用を通じて,医師等と協働して実施すること」としており,それを受けるかたちで,平成24年度診療報酬改定において「病棟薬剤業務実施加算」が新設された.今や,薬剤師による「フィジカルアセスメント」や「処方提案」といったキーワードがベッドサイドで当たり前のように使われるようになっている.
 このようなパラダイムシフトとも言うべき,新しい業務展開を担える薬剤師の養成は急務であり,卒後臨床研修の最初のステップとしての,薬剤師レジデントプログラムを設ける医療機関も増えている.カリキュラムと運営方針は,各施設が独自に設定しており,神戸市立医療センター中央市民病院においては,コモンディジーズに関する薬物治療は,頭に叩き込んでおくべきである,との考えのもと,薬剤師レジデントおよび新人薬剤師対象の疾患別シリーズセミナーを重ねてきた.本書はその経験をもとに,急性期医療の最前線で活躍する当院の各分野の専門,認定薬剤師や総合診療科医師が中心となり執筆した.
 かねてより,日々研鑽を積む医師にとって心強い味方として評価を得てきた医学書院の「レジデントマニュアル」シリーズの一冊として,本書「薬剤師レジデントマニュアル」が発刊された.これまで同様,本書が広く活用され,安全で質の高い薬物治療を提供する一助となることを願っている.

 2013年2月
 神戸市立医療センター中央市民病院
 院長補佐・薬剤部長 橋田 亨

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第1章 調剤
 1 調剤総論
 2 服用方法や簡易懸濁法に注意を要する医薬品
第2章 注射
 1 電解質・輸液
 2 注意すべき配合変化
第3章 医薬品情報
 1 DI業務における情報源
 2 情報の提供
 3 医薬品・医療機器等安全性情報報告制度
第4章 薬物療法を理解するための基礎知識
 1 臨床上重要な薬物動態・薬力学パラメータと薬物相互作用
 2 主な医薬品の薬物動態データ(TDM対象薬物を中心に)
第5章 スペシャルポピュレーションに対する薬物療法の注意点
 1 腎障害
 2 透析
 3 肝障害
 4 高齢者
 5 小児
 6 妊婦・授乳婦
第6章 病態を理解するための主な検査
 1 生化学検査
 2 血清免疫学的検査
 3 内分泌学的検査
 4 腫瘍関連検査
 5 生体検査
 6 画像検査
 7 電気生理学検査
 8 内視鏡検査
 9 聴力検査
 10 視力検査
 11 その他
第7章 フィジカルアセスメント
 1 アセスメント時の基本マナー
 2 外観のアセスメント
 3 バイタルサイン
 4 血圧
 5 脈拍
 6 呼吸
 7 体温
 8 意識
 9 尿量
第8章 薬剤管理指導/病棟薬剤業務
 1 治療開始前
 2 治療開始後
第9章 感染症
 1 呼吸器感染症
 2 尿路感染症
 3 真菌感染症
 4 HIV
 5 敗血症
第10章 呼吸器疾患
 6 喘息・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
 7 肺結核
 8 間質性肺炎
第11章 循環器疾患
 9 急性冠症候群
 10 不整脈
 11 心不全
 12 高血圧
第12章 消化器疾患
 13 消化性潰瘍
 14 クローン病
 15 潰瘍性大腸炎
 16 肝炎
 17 肝硬変
 18 膵炎
第13章 腎泌尿器疾患
 19 前立腺肥大
 20 慢性腎臓病(CKD)
 21 透析
 22 ネフローゼ症候群
第14章 血液疾患
 23 貧血
 24 DIC(播種性血管内凝固症候群)
第15章 内分泌代謝疾患
 25 糖尿病
 26 痛風
 27 脂質異常症
 28 甲状腺疾患(機能亢進症・低下症)
第16章 膠原病,整形外科疾患
 29 関節リウマチ
 30 骨粗鬆症
第17章 神経疾患
 31 てんかん
 32 パーキンソン病
 33 脳血管障害
 34 脳腫瘍
 35 認知症
第18章 精神疾患
 36 うつ病
 37 統合失調症
第19章 皮膚科疾患
 38 アトピー性皮膚炎
 39 乾癬
第20章 婦人科疾患
 40 切迫早産
第21章 眼科疾患
 41 白内障
 42 緑内障
第22章 耳鼻科疾患
 43 突発性難聴
 44 めまい(末梢性めまい)
第23章 がん
 45 乳がん
 46 胃がん
 47 大腸がん
 48 肝がん
 49 肺がん
 50 悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫,ホジキンリンパ腫)
 51 白血病
第24章 緩和
 52 オピオイド

付録
 1 これまでに発出された緊急安全性情報,安全性速報
 2 重篤副作用疾患別対応マニュアル・疾患リスト
 3 腎機能低下時に注意の必要な薬剤投与量一覧
 4 妊婦・授乳婦への薬物投与
 5 わが国における薬剤師レジデント制度

索引

column
 抗HIV薬の薬物血中濃度モニタリング
 DOTS(Directly Observed Treatment, Short-course)
 CYP2A6の遺伝子多型
 アミノグリコシド系抗菌薬とミトコンドリアDNA 1555遺伝子の点変異
 抗菌薬の服薬アドヒアランス
 抗アルドステロン薬の心保護効果
 クローン病における適応外使用
 鉄剤反応性不良と感染症
 ACE阻害薬とARB
 点眼のポイント
 LES(late evening snack:就寝前軽食摂取療法)

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6年制の薬学生にもぜひ薦めたい1冊
書評者: 望月 眞弓 (慶應義塾大学薬学部教授・医薬品情報学)
 本書を読んでまず感じたのは,薬剤師レジデントとして研修すべきminimum requirementを要領よくまとめてあるという点である。一つ一つの文章は短いながらポイントは外さず無駄がない。薬剤師の学ぶべき膨大な臨床的知識をこれほど短い文章や表で的確にまとめることができるのは,本書の執筆陣である神戸市立医療センター中央市民病院の薬剤部・総合診療科の皆さんの日頃の臨床能力の高さがあってのことであると思う。さすがは全国屈指の人気を誇る研修病院ならではである。

 本書は,総論として調剤,注射,DI,検査,フィジカルアセスメントなどを解説し,各論で基本的な51疾患を解説している。こんなに内容が詰まっているのに,ポケットに入れても問題ないサイズであり,常に携帯して病棟に出向ける。対象は卒後1,2年目の薬剤師ということであるが,6年制の薬学生にもぜひ薦めたい1冊である。

 日本における米国のPGY1,PGY2に相当する薬剤師レジデント制度は,2002(平成14)年からスタートしている。2013(平成25)年の募集は35施設を数えるに至っているという。しかしまだ,日本のレジデント制度には米国のような公的な研修プログラムの認証は行われておらず,求められるプログラムの水準も明確ではない。本書はそうしたプログラムの現状に1つの指針を与えるものでもあると思う。

 書評にはふさわしいものではないかも知れないが,本書の編集者に2つお願いしたいことがある。1つはそう長い間隔を空けずに改訂をしていただくこと,そしてもう1つは,略語の充実である。臨床検査や医薬品の略語だけでなく医療従事者がよく使う医学用語の略語を整備していただけると新人薬剤師にとってさらに便利になると思う。これら2つが欲張ったお願いであることは承知の上での要望である。あまりにも本書の出来が良く,褒めちぎるばかりになってしまうのも書評の読者はつまらないだろうという手前勝手な気持ちからである。
新人薬剤師のみならず中堅・ベテランにも薦めたいスタンダードマニュアル
書評者: 乾 賢一 (京都薬科大学学長)
 薬学教育改革による6年制薬剤師の誕生,診療報酬改定に伴う「病棟薬剤業務実施加算」の実現など,今,薬剤師にかかわる新しい話題が医療現場で注目を集めている。新卒薬剤師の教育は,これまで大学病院薬剤部の研修制度をはじめとして,各施設独自のカリキュラム,教材を用いて進められてきた。安全・安心の医療が求められる中で,医薬品の適正使用,病棟薬剤業務など,新しい薬剤業務を推進するために,新人薬剤師のトレーニングはさまざまな工夫を凝らしながら行われてきたが,ここ数年,医師にならった薬剤師レジデント制度が普及し始めている。薬剤師研修の教材は,これまで各施設において適宜作成されており,書籍として公開されているものはなかった。

 このたび刊行された『薬剤師レジデントマニュアル』は,神戸市立医療センター中央市民病院の新人薬剤師研修プログラムを基本として,急性期医療の最前線で活躍している薬剤師や総合診療科医師が中心となって分担執筆されたものであり,待望の新卒薬剤師の研修マニュアルとして見事にまとめられている。総論の部では,薬剤師の基本業務,薬物療法を理解するための基本知識,腎障害,肝障害,高齢者などスペシャルポピュレーションに対する薬物療法の注意点,臨床検査値の読み方,フィジカルアセスメント,薬剤管理指導/病棟業務の注意点,など薬剤師業務を実践する上で,身につけてもらいたい事項がまとめられている。さらに各論として15疾患領域別に,病態,患者の状態把握,標準的処方例,薬剤師による薬学的ケア,そして処方提案のポイントなど病棟薬剤師としての対応がコンパクトに解説されている。

 2010年4月の医政局長通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」は,医師などと協働して,薬剤の専門家である薬剤師が病棟業務や在宅医療業務において主体的に薬物療法に参画することを求めたものであるが,本書はまさにそれに相応しい知識・技能・態度を身につけた薬剤師を育成するためのマニュアルと言えよう。編集にあたられた橋田亨薬剤部長が,これまでの豊富な経験と実績を基盤にし,総合診療科の医師などと密接に連携して,これからの医療を見据えながら新人薬剤師教育のスタンダードマニュアルとして,本書を世に出されたことに最大限の賛辞を贈りたい。また,レジデントマニュアルシリーズの1つに本書を加えられた出版社の先見性にも注目したい。

 本書は,これからの新しい医療を担う若い病院薬剤師や保険薬局薬剤師はもとより,中堅・ベテランの薬剤師にも,座右の書として広く活用されるであろう。
白衣のポケットに携帯できて頼りがいのある情報源
書評者: 安原 眞人 (日本医療薬学会会頭/東京医科歯科大学教授・医学部附属病院薬剤部長)
 初めて病棟のスタッフカンファレンスに参加するとき,薬剤師として何を持参しますか。医薬品集,治療マニュアル,それとも医学辞典でしょうか。専門家として,薬の正確な情報を伝えるには手元に薬の資料を持ちたいでしょうし,医療チームのコミュニケーションには,薬物療法以外の知識も欠かせません。両手にあふれるほどの資料を抱えて,メモも取れないということになりかねません。『薬剤師レジデントマニュアル』は,新人の薬剤師にとって白衣のポケットに携帯できて頼りがいのある情報源と申せましょう。

 本書の中心は,15章からなる各種疾患に関する解説で,呼吸器感染症から心不全,消化性潰瘍,慢性腎臓病,糖尿病,てんかん,うつ病,アトピー性皮膚炎,緑内障,白血病まで51種類の疾患を取り上げています。それぞれの疾患ごとに,疾患の疫学・病態,患者の状態把握,治療(標準的処方例),薬剤師による薬学的ケア,処方提案のポイントの5項目に分けて,簡潔に解説されています。薬学的ケアの項では,処方チェック(投与量,相互作用),服薬指導,治療・副作用モニタリングの3点について,代表的薬剤を挙げて要点が箇条書きで示されています。執筆者は薬剤師レジデント制度のパイオニアの一つである神戸市立医療センター中央市民病院の現役の医師・薬剤師です。記述は網羅的ではなく,臨床的重要度の高い事項に絞り,日常診療で遭遇する患者さんの多様な問題に対し,外してはいけないポイントのチェックに役立つ内容となっています。

 各疾患の診断基準や治療プロトコールについては,それぞれの専門学会から出されているガイドラインに基づく図表が引用され,標準となる診断,治療法を確認することができます。医学・医療が急速に進歩しEBMに基づくガイドラインの改訂が精力的に進められている現代において,本書が最新の情報を維持するためには,定期的な改訂を重ねる必要がありましょう。今後さらに本書が版を重ねる中で,スリムなサイズを維持しつつ精選された最新の内容を盛り込むことにより,新人薬剤師のバイブルとなることを期待しています。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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