看護学生のための
実習の前に読む本
実習の不安、解消します。
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「受け持ち患者さんと何を話せばいいの?」「忙しそうな看護師さん、いつ声をかけたらいい?」「患者さんの急変どうしよう!」。臨地実習の前には不安がいっぱい。本書は、そんな看護学生を応援するための本。コミュニケーションのコツ、困ったときの乗り切り方など、実習前の学生が知っておきたいノウハウを、この1冊に詰め込んだ。実習前に、実習中に、頼りになるお守り本。
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- 序文
- 目次
- 書評
序文
開く
はじめのことば
実習のすゝめ
看護学は机上の理論だけでなく実践を伴う学問です。人を看る能力を、人と関わる体験を通して身につけていくために、教室を臨地に移し学ぶのが臨地実習です。
臨地実習は、看護学を学ぶ上では絶対に避けて通れない山や谷です。出会って間もない患者さんのよき援助者となるために、お話をしたり身体を拭いたりしながら少しずつ信頼関係を構築していく…簡単なことではありません。喜んだりへこんだりしながら、少しずつ前に進みましょう。
看護を好きになるにも嫌いになるにも、実習は大きく影響します。「人が好き、看護が好き」だからと看護の道を選んだ人も、それほどでもない人も、これから立ち向かう実習に大きな不安を抱き、緊張から夜も眠れない日々が続いてしまうかもしれません。そんなとき、この本を開いてみて下さい。実習中に乗り越えるべき課題を、どのように考え解決したらよいのか、どう行動したらよいのか、ヒントとなることがこの本にはたくさんつまっています。
だれもがすぐに患者さんにピッタリの看護を実践できるわけではありません。ベテランナースだって教員だって、みんな臨地実習を乗り越えてきたのです。私達は看護の先輩として、みなさんが必要以上に不安や恐れを抱いて実習を嫌いになってしまわないように、ただただ応援したくてこの本を作りました。
さあ、勇気を出して、はじめの一歩を踏み出しましょう!
2015年1月
田中 美穂・蜂ヶ崎 令子
実習のすゝめ
看護学は机上の理論だけでなく実践を伴う学問です。人を看る能力を、人と関わる体験を通して身につけていくために、教室を臨地に移し学ぶのが臨地実習です。
臨地実習は、看護学を学ぶ上では絶対に避けて通れない山や谷です。出会って間もない患者さんのよき援助者となるために、お話をしたり身体を拭いたりしながら少しずつ信頼関係を構築していく…簡単なことではありません。喜んだりへこんだりしながら、少しずつ前に進みましょう。
看護を好きになるにも嫌いになるにも、実習は大きく影響します。「人が好き、看護が好き」だからと看護の道を選んだ人も、それほどでもない人も、これから立ち向かう実習に大きな不安を抱き、緊張から夜も眠れない日々が続いてしまうかもしれません。そんなとき、この本を開いてみて下さい。実習中に乗り越えるべき課題を、どのように考え解決したらよいのか、どう行動したらよいのか、ヒントとなることがこの本にはたくさんつまっています。
だれもがすぐに患者さんにピッタリの看護を実践できるわけではありません。ベテランナースだって教員だって、みんな臨地実習を乗り越えてきたのです。私達は看護の先輩として、みなさんが必要以上に不安や恐れを抱いて実習を嫌いになってしまわないように、ただただ応援したくてこの本を作りました。
さあ、勇気を出して、はじめの一歩を踏み出しましょう!
2015年1月
田中 美穂・蜂ヶ崎 令子
目次
開く
I 実習前対策
1 実習前に確認しておきたいこと
Step 1 実習の目的・目標を理解しよう
Step 2 自分の「免疫力」を知っておこう!
Step 3 実習に欠かせない7つ道具をそろえよう!
Step 4 大事なことを、もう一度チェック!
2 受け持ち患者さん決定!
Step 1 まず「わからないこと」を探そう
Step 2 「知ってるつもり」も、復習しておこう
3 自分の時間を管理する
臨地で勉強するって、どんな1日になるの?
実習期間中の勉強&遊びのバランスは?
II 指導者との関係
1 看護師への報告・連絡・相談〈ホウレンソウ〉を活用する
伝わる報告をしよう
定時報告の腕を上げよう!
III 看護援助技術
1 コミュニケーション
対人距離 interpersonal distance を考える
同情と共感は違うもの
2 感染予防
手指衛生は感染予防の基本
自分を守る、個人防護具
3 食事の援助
おいしく食べるための儀式
食事の前に確認すること
間違って配膳しないために
食器配置の決まりごと
経鼻経管栄養法の注意
4 清潔の援助
清潔方法の決め方
安全・安楽な入浴のために
着替えの常識を知っておこう
事前に自己練習しておきたい技術
清潔ケアは観察の機会
5 排泄の援助
排泄方法の見極め方
膀胱留置カテーテルの管理
尿量測定と蓄尿
排泄ケア時、観察すべきこと
6 活動の援助
動かないことの弊害
褥瘡を防ぐ
起立性低血圧による転倒を防ぐ
日常生活行動がリハビリテーションになる
患者さんが昼間、寝てばかりいたら?
7 検査の援助
検査に行く前の確認
検査について行くとき、検査中
検査から帰ってくるとき
造影剤、バリウムの排泄
8 呼吸の援助
吸引時の注意点
酸素療法(酸素投与)
サチュレーションモニター
生活行動の中で呼吸を観察する
9 与薬の援助
患者さんの飲んでいる薬を確認しよう
安全な与薬のための確認事項
内服のタイミング
与薬のときに特に注意すること
副作用で起こりがちな症状
薬の飲み方の工夫
IV 観察のポイント
1 バイタルサイン
バイタルサインの測定だけで終わらせない!
援助の前・後にもバイタルサイン測定
2 フィジカルアセスメント
胸部の観察
腹部の観察
脳神経の観察
3 検査値をみるときのポイント
V アクシデント
1 受け持ち患者さんが急変!
Step 1 人を呼びましょう
Step 2 意識を確認しましょう
Step 3 呼吸と脈拍を大まかに把握しましょう
Step 4 血圧を測定しましょう
Step 5 呼吸と脈拍を正確に測定しましょう
Step 6 看護師に報告しましょう
Step 7 家族の方への対応
2 暴力・セクシャルハラスメント
Step 1 「やめて下さい」と言いましょう
Step 2 その場から離れましょう
Step 3 教員や看護師に相談しましょう
Step 4 忘れられず、嫌な思いが続くときは
もしも友達に打ち明けられたら?
VI 実習記録の書き方
文章作法を復習しよう
個人情報の取り扱い
看護の専門用語を使おう
VII ホームへ帰還
忘れ物はないですか?
家に帰ったら
COLUMN
01 オペ室・ICUってどんなところ?
02 知っておきたい援助 排液バッグと心電図モニター
03 カンファレンスも実習の一部です!
04 おやすみ前のセルフ・モニタリング
05 臨地で人の死に触れる
付録 話題作りツール
索引
1 実習前に確認しておきたいこと
Step 1 実習の目的・目標を理解しよう
Step 2 自分の「免疫力」を知っておこう!
Step 3 実習に欠かせない7つ道具をそろえよう!
Step 4 大事なことを、もう一度チェック!
2 受け持ち患者さん決定!
Step 1 まず「わからないこと」を探そう
Step 2 「知ってるつもり」も、復習しておこう
3 自分の時間を管理する
臨地で勉強するって、どんな1日になるの?
実習期間中の勉強&遊びのバランスは?
II 指導者との関係
1 看護師への報告・連絡・相談〈ホウレンソウ〉を活用する
伝わる報告をしよう
定時報告の腕を上げよう!
III 看護援助技術
1 コミュニケーション
対人距離 interpersonal distance を考える
同情と共感は違うもの
2 感染予防
手指衛生は感染予防の基本
自分を守る、個人防護具
3 食事の援助
おいしく食べるための儀式
食事の前に確認すること
間違って配膳しないために
食器配置の決まりごと
経鼻経管栄養法の注意
4 清潔の援助
清潔方法の決め方
安全・安楽な入浴のために
着替えの常識を知っておこう
事前に自己練習しておきたい技術
清潔ケアは観察の機会
5 排泄の援助
排泄方法の見極め方
膀胱留置カテーテルの管理
尿量測定と蓄尿
排泄ケア時、観察すべきこと
6 活動の援助
動かないことの弊害
褥瘡を防ぐ
起立性低血圧による転倒を防ぐ
日常生活行動がリハビリテーションになる
患者さんが昼間、寝てばかりいたら?
7 検査の援助
検査に行く前の確認
検査について行くとき、検査中
検査から帰ってくるとき
造影剤、バリウムの排泄
8 呼吸の援助
吸引時の注意点
酸素療法(酸素投与)
サチュレーションモニター
生活行動の中で呼吸を観察する
9 与薬の援助
患者さんの飲んでいる薬を確認しよう
安全な与薬のための確認事項
内服のタイミング
与薬のときに特に注意すること
副作用で起こりがちな症状
薬の飲み方の工夫
IV 観察のポイント
1 バイタルサイン
バイタルサインの測定だけで終わらせない!
援助の前・後にもバイタルサイン測定
2 フィジカルアセスメント
胸部の観察
腹部の観察
脳神経の観察
3 検査値をみるときのポイント
V アクシデント
1 受け持ち患者さんが急変!
Step 1 人を呼びましょう
Step 2 意識を確認しましょう
Step 3 呼吸と脈拍を大まかに把握しましょう
Step 4 血圧を測定しましょう
Step 5 呼吸と脈拍を正確に測定しましょう
Step 6 看護師に報告しましょう
Step 7 家族の方への対応
2 暴力・セクシャルハラスメント
Step 1 「やめて下さい」と言いましょう
Step 2 その場から離れましょう
Step 3 教員や看護師に相談しましょう
Step 4 忘れられず、嫌な思いが続くときは
もしも友達に打ち明けられたら?
VI 実習記録の書き方
文章作法を復習しよう
個人情報の取り扱い
看護の専門用語を使おう
VII ホームへ帰還
忘れ物はないですか?
家に帰ったら
COLUMN
01 オペ室・ICUってどんなところ?
02 知っておきたい援助 排液バッグと心電図モニター
03 カンファレンスも実習の一部です!
04 おやすみ前のセルフ・モニタリング
05 臨地で人の死に触れる
付録 話題作りツール
索引
書評
開く
実習生の不安を和らげる,著者の愛情がこもった一冊
書評者: 善村 夏代 (NTT東日本関東病院看護部)
この本を読んで,お二人の先生方の実習生に対する深い愛情を感じるとともに,こんな本がもっと早く出版されるべきだったのではないかと思いました。机上の学習が臨地に変わることは,実習生にとって地上から大海原に出るようなものです。穏やかな海もあれば荒れ狂う海もあります。どのような実習になるのか予期できず不安は募るばかりです。この不安を解消することは簡単ではありません。
不安が強すぎると実習生は平常心を維持できず,目標や目的を見失い,小さなミスや不安を解決しようと自己学習に励みすぎて混乱し,実習場所に来られなくなることすらあります。しかし,この本に記載されている情報を先取りしていれば,実習生はいたずらに不安を煽られることなく,不安を最小限に留めることができそうです。
実習生の不安の要因の一つとして,「何のために実習に行くのか」,実習生自身がきちんと動機付けできていないことが挙げられます。本書にもある通り,目的や目標がわからないと,実習生は何をしたらよいのかわからず迷子になってしまうのです。
目標には「患者のゴール」と「実習生がこの実習で何を得るのかというゴール」があります。この二つのゴールを教員も臨地実習指導者も導き出せるように実習生を誘導できれば,充実した実習ができるのではないでしょうか。
実習内容に応じた目的や目標の切り替えも,難しい問題です。最近では,クリティカルパスやDPC導入により入院期間が短縮化され,実習生は情報を分析しただけで看護展開が実践できずに,実習終了となるケースが多々みられます。基礎看護学実習が終了し成人看護学実習,特に急性期看護への目的や目標の頭の切り替えが難しいのかなと感じることがあります。やっと分析したと思ったら,患者さんの状態は刻々と変化し,あっという間に退院です。そのスピード感をどう克服したらよいのか,その点についても記載があると,実習に対するイメージを強化できるように思われました。
本書には人間関係を構築するためのコミュニケーション能力についても記載されています。自分とは世代や立場が違う人々とどのように会話すればよいのか,この能力は突然身につくことではないので,現場でも苦慮します。これは実習生のみならず,社会に出たばかりの新人スタッフにも通じるところがあります。本書では,例えば「初対面の患者さんとの距離の取り方」や「同情と共感の違い」など机上では学ぶことが難しい部分についても,具体例を挙げてわかりやすく解説がされており,「困難な場面」を乗り越えるための貴重なヒントが得られます。
そう,実習では「困難な場面」が必ずあります。患者さんが入浴を拒否する,薬を指示通りに飲んでくれない……本書では,現場で起きている(または起こりそうな)ことと,その対応策が,著者の優しい言葉で語られています。この言葉は,実習生の心にしっかりと溶け込むのではないでしょうか。
お二人の著者が本書に込めた熱い気持ちが,実習生と,現場である臨地実習場に届きますように。
実習の“結果”を変える一冊 (雑誌『看護教育』より)
書評者: 花里 美雪 (松戸市立病院附属看護専門学校)
現行カリキュラムでは看護実践能力の強化が強調されました。看護実践能力を高めていく現場が臨地実習です。実習では実際に患者さんや,その患者さんに日々ケアをしている先輩看護師にふれる体験を通して,ものの感じ方,考え方,人間としてのあり方を学ぶことができます。実習は体験学習であり,多くの学生が不安を抱き,緊張もします。その状態ですと,自分の力を発揮するどころか実習が辛く嫌いなものとなってしまいがちです。
本書では,学生が実習中に乗り越えるべき課題を,どのように考え,行動し,解決したらよいのかを紹介しています。実際の学生の実習進度に沿って書かれており,『実習前対策』では,実習前に確認しておきたい実習目的および実習目標の理解の重要性や自分の免疫力を知っておくことなどが紹介されています。すなわち,実習とは患者さんと出会いの前に始まっていることを説いています。看護師が怖い,厳しい,声をかけづらいという不安で「看護師への報告が大変!」と感想を抱く学生へのヒントとして,『指導者との関係』のかなで,どんな人間関係を築けばよいのか,伝わる報告のコツを説いています。
文書を書くのが苦手な学生に対しては,『実習記録の書き方』のなかで基本的なルールが紹介されています。実習記録はメールやつぶやきと違うこと,個人情報の取り扱い方も説いています。学生は,実習の準備の一つとして,本書を活用できます。準備を整えることで,自分のなかにこれから臨む実習のイメージが浮かびます。そうすると「次はこれをしてみよう,準備しようと」となります。するとそれまで抱いていた不安や緊張は解消されます。準備を「整えるプロセス」を考えると,実習の第一歩は準備と言えます。
読み終えたとき,著者からのエールが学生に届くとこと間違いないでしょう。
教員や臨床指導者になったけれど指導方法がわからない,不安を抱いている方へのヒントもつまっています。『看護援助技術』の項目では,自立度に応じた援助方法の考え方,見極め方など指導のヒントが得られます。自分の指導と同じものを発見し,自分のかかわりで間違っていなかったと実感でき自信にも繋がります。
最後に私が座右の銘としている言葉を紹介します。それは『視点が変われば語る言葉が変わり行為が変わり,そして結果が変わります』です。本書はその言葉と重なります。読み,実践することによって,思考が広がっていくように感じます。実習に臨む学生はもちろん,教員の皆さん,臨地で指導に携わる指導者さんにも是非読んでいただきたい書籍の一つです。
(『看護教育』2015年6月号掲載)
実習への不安が軽くなる! 「実習の手順書」
書評者: 田中 久仁子 (聖マリアンナ医科大学看護専門学校)
「何のために実習へ行くの?」「入学前の一日看護体験と何が違うの?」,実習を前にして多くの学生が感じるのは,漠然とした不安である。実習がなんだか不安,でも「わからないことが何か」もわからない,何から解決すればいいかわからない,誰に聞いていいかもわからない,など。本書は,このような「わからないことがわからない」初学者にも,自分の不安や疑問が何なのか,そしてその解決策がわかる一冊である。
技術でいうなら「技術の手順書」のような,いわば「実習全体の手順書」ともいえる。
まず,病院という場で実習をするときの心がまえ,実習中の生活や体調管理,患者さんとの会話,看護師への報告など,実習に必要な事柄が網羅されている。予防接種のスケジュールや実習中の一日の流れなどは,初学者にはイメージしづらい。本書では,タイムスケジュールの具体例などが挙げられているので,実際の行動をシミュレーションできる。
また,明日から受け持ち患者さんに援助を実施するにあたり,何を準備しておけば適切な行動ができるのか,そして,「なぜそうするのか?」までを,読み手に考えさせてくれる。
答えそのものではなく,「何をすれば答えがわかるか」を教えてくれるのが,この本の特徴でもある。例えば,受け持ち患者さんの疾患や診療科,受けている治療などを事前学習しておけば,学校での講義・演習を,実際の観察や援助につなげることができますよ,と教えてくれるのである。
学生が実習中に右往左往するのは,看護援助の場面だけではない。看護師とのやり取りの方法に悩むことが多いのではないだろうか。
本書は,学生の行動だけでなく,看護師サイドの状況も考えさせながら,実際の関わりの方法を投げかけてくれる。看護師の都合を確認した後,まずは報告することの大まかな内容を伝え,それから本題に入るなど,臨地ならではのコミュニケーションの仕方は,学校内で学ぶ機会が少ない。だからこそ,具体的な方策がわかると心強い。
ほかにも,患者さんが「入浴したがらない」「昼間寝てばかりいる」など,臨地でしか経験できないことにどのように立ち向かい,解決していくと良いかが簡潔に示されている。
説明に堅苦しさはない。イラストや本の帯に印刷されているお守りなど,緊張したり落ち込んでいるときに開くと「くすっ」と笑みがこぼれ,肩の力を抜かせてくれる。
本のタイトルには「実習の前に」とあるが,実習が不安で仕方ない1,2年生だけでなく,実習のことが少しわかってきた2,3年生も,今すぐ経験しないようなことでも知っておけばお得感を味わえる内容になっている。さらに,実習に少し慣れてきた3,4年生が初心にかえったり,今まで普通に実習してきたことが「あれ?」と感じられるような場面に出会ったとき,改めて読み返して確認することもできる。
また,学生だけでなく,臨地実習指導者や教員にも是非,手に取ってもらいたい。忘れかけていた「実習への不安」を思い出すことができれば,学生へのよりよい関わり方が見えてくるのではないだろうか。
書評者: 善村 夏代 (NTT東日本関東病院看護部)
この本を読んで,お二人の先生方の実習生に対する深い愛情を感じるとともに,こんな本がもっと早く出版されるべきだったのではないかと思いました。机上の学習が臨地に変わることは,実習生にとって地上から大海原に出るようなものです。穏やかな海もあれば荒れ狂う海もあります。どのような実習になるのか予期できず不安は募るばかりです。この不安を解消することは簡単ではありません。
不安が強すぎると実習生は平常心を維持できず,目標や目的を見失い,小さなミスや不安を解決しようと自己学習に励みすぎて混乱し,実習場所に来られなくなることすらあります。しかし,この本に記載されている情報を先取りしていれば,実習生はいたずらに不安を煽られることなく,不安を最小限に留めることができそうです。
実習生の不安の要因の一つとして,「何のために実習に行くのか」,実習生自身がきちんと動機付けできていないことが挙げられます。本書にもある通り,目的や目標がわからないと,実習生は何をしたらよいのかわからず迷子になってしまうのです。
目標には「患者のゴール」と「実習生がこの実習で何を得るのかというゴール」があります。この二つのゴールを教員も臨地実習指導者も導き出せるように実習生を誘導できれば,充実した実習ができるのではないでしょうか。
実習内容に応じた目的や目標の切り替えも,難しい問題です。最近では,クリティカルパスやDPC導入により入院期間が短縮化され,実習生は情報を分析しただけで看護展開が実践できずに,実習終了となるケースが多々みられます。基礎看護学実習が終了し成人看護学実習,特に急性期看護への目的や目標の頭の切り替えが難しいのかなと感じることがあります。やっと分析したと思ったら,患者さんの状態は刻々と変化し,あっという間に退院です。そのスピード感をどう克服したらよいのか,その点についても記載があると,実習に対するイメージを強化できるように思われました。
本書には人間関係を構築するためのコミュニケーション能力についても記載されています。自分とは世代や立場が違う人々とどのように会話すればよいのか,この能力は突然身につくことではないので,現場でも苦慮します。これは実習生のみならず,社会に出たばかりの新人スタッフにも通じるところがあります。本書では,例えば「初対面の患者さんとの距離の取り方」や「同情と共感の違い」など机上では学ぶことが難しい部分についても,具体例を挙げてわかりやすく解説がされており,「困難な場面」を乗り越えるための貴重なヒントが得られます。
そう,実習では「困難な場面」が必ずあります。患者さんが入浴を拒否する,薬を指示通りに飲んでくれない……本書では,現場で起きている(または起こりそうな)ことと,その対応策が,著者の優しい言葉で語られています。この言葉は,実習生の心にしっかりと溶け込むのではないでしょうか。
お二人の著者が本書に込めた熱い気持ちが,実習生と,現場である臨地実習場に届きますように。
実習の“結果”を変える一冊 (雑誌『看護教育』より)
書評者: 花里 美雪 (松戸市立病院附属看護専門学校)
現行カリキュラムでは看護実践能力の強化が強調されました。看護実践能力を高めていく現場が臨地実習です。実習では実際に患者さんや,その患者さんに日々ケアをしている先輩看護師にふれる体験を通して,ものの感じ方,考え方,人間としてのあり方を学ぶことができます。実習は体験学習であり,多くの学生が不安を抱き,緊張もします。その状態ですと,自分の力を発揮するどころか実習が辛く嫌いなものとなってしまいがちです。
本書では,学生が実習中に乗り越えるべき課題を,どのように考え,行動し,解決したらよいのかを紹介しています。実際の学生の実習進度に沿って書かれており,『実習前対策』では,実習前に確認しておきたい実習目的および実習目標の理解の重要性や自分の免疫力を知っておくことなどが紹介されています。すなわち,実習とは患者さんと出会いの前に始まっていることを説いています。看護師が怖い,厳しい,声をかけづらいという不安で「看護師への報告が大変!」と感想を抱く学生へのヒントとして,『指導者との関係』のかなで,どんな人間関係を築けばよいのか,伝わる報告のコツを説いています。
文書を書くのが苦手な学生に対しては,『実習記録の書き方』のなかで基本的なルールが紹介されています。実習記録はメールやつぶやきと違うこと,個人情報の取り扱い方も説いています。学生は,実習の準備の一つとして,本書を活用できます。準備を整えることで,自分のなかにこれから臨む実習のイメージが浮かびます。そうすると「次はこれをしてみよう,準備しようと」となります。するとそれまで抱いていた不安や緊張は解消されます。準備を「整えるプロセス」を考えると,実習の第一歩は準備と言えます。
読み終えたとき,著者からのエールが学生に届くとこと間違いないでしょう。
教員や臨床指導者になったけれど指導方法がわからない,不安を抱いている方へのヒントもつまっています。『看護援助技術』の項目では,自立度に応じた援助方法の考え方,見極め方など指導のヒントが得られます。自分の指導と同じものを発見し,自分のかかわりで間違っていなかったと実感でき自信にも繋がります。
最後に私が座右の銘としている言葉を紹介します。それは『視点が変われば語る言葉が変わり行為が変わり,そして結果が変わります』です。本書はその言葉と重なります。読み,実践することによって,思考が広がっていくように感じます。実習に臨む学生はもちろん,教員の皆さん,臨地で指導に携わる指導者さんにも是非読んでいただきたい書籍の一つです。
(『看護教育』2015年6月号掲載)
実習への不安が軽くなる! 「実習の手順書」
書評者: 田中 久仁子 (聖マリアンナ医科大学看護専門学校)
「何のために実習へ行くの?」「入学前の一日看護体験と何が違うの?」,実習を前にして多くの学生が感じるのは,漠然とした不安である。実習がなんだか不安,でも「わからないことが何か」もわからない,何から解決すればいいかわからない,誰に聞いていいかもわからない,など。本書は,このような「わからないことがわからない」初学者にも,自分の不安や疑問が何なのか,そしてその解決策がわかる一冊である。
技術でいうなら「技術の手順書」のような,いわば「実習全体の手順書」ともいえる。
まず,病院という場で実習をするときの心がまえ,実習中の生活や体調管理,患者さんとの会話,看護師への報告など,実習に必要な事柄が網羅されている。予防接種のスケジュールや実習中の一日の流れなどは,初学者にはイメージしづらい。本書では,タイムスケジュールの具体例などが挙げられているので,実際の行動をシミュレーションできる。
また,明日から受け持ち患者さんに援助を実施するにあたり,何を準備しておけば適切な行動ができるのか,そして,「なぜそうするのか?」までを,読み手に考えさせてくれる。
答えそのものではなく,「何をすれば答えがわかるか」を教えてくれるのが,この本の特徴でもある。例えば,受け持ち患者さんの疾患や診療科,受けている治療などを事前学習しておけば,学校での講義・演習を,実際の観察や援助につなげることができますよ,と教えてくれるのである。
学生が実習中に右往左往するのは,看護援助の場面だけではない。看護師とのやり取りの方法に悩むことが多いのではないだろうか。
本書は,学生の行動だけでなく,看護師サイドの状況も考えさせながら,実際の関わりの方法を投げかけてくれる。看護師の都合を確認した後,まずは報告することの大まかな内容を伝え,それから本題に入るなど,臨地ならではのコミュニケーションの仕方は,学校内で学ぶ機会が少ない。だからこそ,具体的な方策がわかると心強い。
ほかにも,患者さんが「入浴したがらない」「昼間寝てばかりいる」など,臨地でしか経験できないことにどのように立ち向かい,解決していくと良いかが簡潔に示されている。
説明に堅苦しさはない。イラストや本の帯に印刷されているお守りなど,緊張したり落ち込んでいるときに開くと「くすっ」と笑みがこぼれ,肩の力を抜かせてくれる。
本のタイトルには「実習の前に」とあるが,実習が不安で仕方ない1,2年生だけでなく,実習のことが少しわかってきた2,3年生も,今すぐ経験しないようなことでも知っておけばお得感を味わえる内容になっている。さらに,実習に少し慣れてきた3,4年生が初心にかえったり,今まで普通に実習してきたことが「あれ?」と感じられるような場面に出会ったとき,改めて読み返して確認することもできる。
また,学生だけでなく,臨地実習指導者や教員にも是非,手に取ってもらいたい。忘れかけていた「実習への不安」を思い出すことができれば,学生へのよりよい関わり方が見えてくるのではないだろうか。