脳卒中の下肢装具 第2版
病態に対応した装具の選択法

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脳卒中に対する短下肢装具療法は一般的なものであるが、装具の種類が多く(約30種類)、かつ患者の病態もさまざまであるため、そのフィッティングは容易ではない。本書では、装具自体の機能分類だけでなく、使用する片麻痺者の身体機能をも加味し、個々の使用者の状態に適した装具の機能を紹介。使用頻度も考慮し、さらに見やすく、充実した内容に改訂された。
渡邉 英夫
発行 2012年05月判型:A5頁:200
ISBN 978-4-260-01535-6
定価 4,400円 (本体4,000円+税)
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第2版 序

 本書の初版は2007年10月の発行であったから,4年半が経過したことになる。第2版の構成は大きな枠として初版を受け継いでいるが,内容的にはかなり充実を図った。
 本書は装具のイラストが多いことが特徴の一つであったが,今回はさらに実物写真を大幅に付け加えた。短下肢装具の一覧写真に加えて足継手の一覧もカラー写真にしたので,患者さんへの説明にも便利に利用してもらえると思っている。
 脳卒中の多彩な病態に対して,私はまず適切な下肢装具の選択にはどのような機能を持った装具が望ましいかを考え,そしてそれに見合う機能を有する複数の装具の中から最適なものを選ぶという方法が良いと思っている.改訂版ではその点をいっそう強調している。さらに脳卒中の下肢装具訓練に実用的と考える情報を豊富に加えたが,理学療法士にとってはより使いやすい内容となったのではないだろうか。
 昨年,脳卒中の短下肢装具についての全国アンケート調査を行ったが,その結果ではシューホーン型AFOが約54%,調節式足継手付きAFOが約31%と多かった。そのため,この2項目は特に重点をおいて内容を充実させ,とくにプラスチックー体型のAFOでは,たわみとSVA(shank to vertical angle)の重要性について図を加えて強調している。
 初版は全部で21章であったが,今回は28章に増え,本のサイズも変更されててやや大きく見やすくなった。理学療法士はもちろん,義肢装具士にとっても,医師にとっても,装具の写真やその特徴を手引書的にチェックする際に,より役立つ内容になったのではないかと思っている。本書が脳卒中の下肢装具のいっそうの進歩に役立つことを祈りたい。

 2012年5月
 渡邉 英夫

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1 はじめに
2 脳卒中に用いられる主な短下肢装具(AFO:ankle foot orthosis)
3 脳卒中に用いられる主な足継手
4 脳卒中のAFOの全国アンケート調査
 -回復期リハビリテーション病院で処方したAFOの種類
5 脳卒中に用いられる下肢装具の種類
6 脳卒中の下肢装具療法
7 脳卒中早期の装具選定法
8 脳卒中の下肢装具での歩行訓練について
9 脳卒中のAFO選択について検討すべき事項
10 脳卒中に用いられる主なAFO
11 脳卒中の病態からのAFOの選択,処方
12 シューホーン型AFOの使い方
13 ダブルフレキシブルAFOの使い方
14 コンベンショナルAFOの使い方(調節式足継手付きAFOを含む)
15 訓練室常備の装具の重要性
16 脳卒中のAFO歩行で見られる問題点と対処法
17 脳卒中片麻痺に合併しやすい障害への装具による対策
18 運動学習のための下肢プラスチックモデル
19 AFOの適応に関して問題が生じた症例の紹介と解決法
20 主な下肢装具の一覧(脳卒中に限らない)
21 下肢装具の構成(継手と半月の正しい取り付け位置)
22 脳卒中の長下肢装具(KAFO)
23 脳卒中の骨盤帯長下肢装具(HKAFO)
24 脳卒中の膝装具(KO)
25 すぐ装着できる下肢装具
26 AFOデザイン
27 参考文献
28 各AFOおよび足継手の機能

索引

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下肢装具の詳細な機能が理解できるわかりやすい実用書
書評者: 浅見 豊子 (佐賀大病院教授・リハビリテーション学)
 私の恩師である渡邉英夫先生の著書『脳卒中の下肢装具 病態に対応した装具の選択法』の初版が発刊されたのは2007年11 月で,本書は約4年半ぶりの改訂版となる。初版は脳卒中に使用される多くの下肢装具について,渡邉先生が描かれた装具のイラストと共に,その特徴と適応が解説されている大変わかりやすい実用書として好評を博した。初版は,茶色の表紙が印象的な1冊だったが,今回の第2版はさらなる進化を遂げた本になっている。まずサイズが一回り大きくなったため,より見やすく使いやすくなっていることは読者としては大変嬉しいことである。また,装具のイラストに加え,実物写真が初版よりも多用されている点も臨床医にとってはありがたい。目次上も初版の21章から28章へと大幅なボリュームアップが図られているが,特に各種継手一覧はカラー写真で実際的である。さらに,2011年に行われた脳卒中短下肢装具についての全国アンケート調査まで掲載されており,より臨床的なデータも入った広範で多角的な本となっている。表紙の色はこれまでとは全く異なるベージュがベースで,グリーンの差し色が入った上品な出来上がりになっているのも素敵である。

 さて,リハビリテーション医療において脳卒中症例は日々の臨床でかかわる疾患である。そのため,装具療法の対象としても脳卒中片麻痺の下肢障害に対して下肢装具を処方する例は多く,特に最近,脳卒中下肢装具の重要性が見直されてきていると感じる。しかし,脳卒中は時期により病態が変化したり,処方する時期で装具の支給制度が異なっていたり,そもそも下肢装具の種類や価格が多種多様である。したがって,症例に最適な下肢装具のタイプを1種類に絞って選択し処方することは非常に難しく,装具の選択決定時に選択の適正について誰しもが多少不安を感じていることも事実である。

 脳卒中下肢装具の処方内容に悩む際にこの本を手にすれば,多数の下肢装具の詳細な機能が理解できるため,その中から処方対象の病態にあった機能の装具を見つけやすい。最終的に適した装具処方内容に自然に導いてくれ,処方時の不安を解消してくれるように思う。もちろん処方する医師以外にも,脳卒中の下肢装具に日常的にかかわっている理学療法士,作業療法士,義肢装具士,看護師,ソーシャルワーカー,介護保険関連職種などの方々において,本書は臨床の場での心の拠り所になるはずである。ぜひ本書を診療の場の手の届く所に1冊置くことをお薦めしたい。
脳卒中の下肢装具とその療法を網羅的に分析,解説
書評者: 森中 義広 ((株)リハライフ取締役/装具の分野の生活支援系専門理学療法士)
 わが国のリハビリテーション医療の4大疾患の一つである脳血管障害を対象とした「脳卒中治療ガイドライン2009」において,急性期より早期立位歩行に装具を用いることがグレードAとして強く勧められている。しかし,推奨のグレードは高いものの漠然としたものである点は否めない。脳卒中と下肢装具は多彩な病態により,おのずと装具のデザインの違いや足継手,膝継手の機能性も多種となる。そのため,どのような装具を選択すればよいのか迷うことも少なくないのが現状であろう。

 本書はこのような実態を踏まえ,脳卒中の多彩な病態に対して,いかに適切な下肢装具を選択すればよいのかに重点が置かれた書である。著者の長年の豊富な臨床と研究活動(世界義肢装具学会,日本リハ医学会,日本義肢装具学会ほか,多くの書籍や論文)を通じて,諸家の公表された下肢装具はもとより,公表されなくとも価値ありと思われる装具についても紹介している。著者自身が学会の商業展示で実物を見聞したり,入手したパンフレットを分析,さらに開発者に直接情報収集を行っているので,その評価は正確性が高い。装具使用の地域性にも偏ることなく,公平に紹介されていることもよく理解できる。

 私は38年来,脳卒中の下肢装具の臨床にかかわっているが,本書を読めば読むほどに,緻密な調査の積み重ねからなる記述や,歴史的価値のある装具から最新の装具までが網羅されていること,強度別,機能別などが順序よくまとめられていることがわかる。それはまさに脳卒中に焦点を当てた下肢装具と下肢装具療法の辞典ともいうべきレベルの高さと精度の極みと考えられる。

 以下に本書の一部ではあるが特徴を述べてみたい。

①脳卒中の下肢装具を世界的視点で網羅している。

②脳卒中に用いられている下肢装具を病態に応じて分類している。

③下肢装具デザイン(材質も含めて)の特徴と足継手機能がSVA(shank to vertical angle)を基に,「固定,遊動,制限,制動,補助」と理論的に分類,解説されている。

④脳卒中の下肢装具に用いる用語の意味と,正しい使い方が統一され説明されている。また,日本語と英語の両方が多く記載されており勉学に便利である。

⑤脳卒中の短下肢装具について全国アンケート調査を実施した結果が示され,シューホーン型AFO(ankle foot orthosis)が約54%,調節式足継手付きAFOが約31%であったこと,何はともあれ多く使われている装具の正しい使い方が強調されている。

⑥6章「脳卒中の下肢装具療法」は臨床現場の理学療法士にとって,多くの示唆と反省点が明記されており,特に興味深く目からうろこであり参考になる。

⑦どの章を読んでも,絶えず関連したページ参照が随所に加えられているため,直ちに知りたい内容が確認でき読み進めることができる。これは便利でありモチベーションアップとなろう。

⑧脳卒中の下肢装具とその療法が高い精度で仕上がっているのにもかかわらず,卒業間もない理学療法士や義肢装具士,学生でも理解できるように解説されている。

⑨28章「各AFOおよび足継手の機能」については47タイプの装具が紹介され,うち20種が外国製,27種が日本製である(世界的レベルで網羅)。例えば,「足継手のない後方支柱の装具デザインにおいて,尖足には効果があるが内反足には効果が少ない」,逆に「足底板や下腿支持部が短い装具は,尖足矯正は弱いが側方支持のため内反足には効果を出す」など病態に合わせた装具デザインと,足継手あり/なしなどの機能と病態の選択がわかりやすく解説してある。

 以上,まだまだ多くの特筆すべき事象はあるが,その一部をPTの立場から書評した。脳卒中に下肢装具を処方する医師をはじめ,義肢装具士の方々など,それぞれの立場で辞典としたり,製作上でのデザインの参考とするためにもお役に立つ一冊である。
脳卒中の下肢装具にかかわる関係者すべてにお薦めしたい一冊
書評者: 小峯 敏文 (熊本総合医療リハビリテーション学院学科長・義肢装具学)
 脳卒中に対する下肢装具は,その医学的リハビリテーションの中で従来から広く用いられてきた。日本脳卒中学会,他がまとめた「脳卒中治療ガイドライン2009」をみてみると,急性期リハビリテーションでは装具を用いた早期歩行訓練がグレードA,歩行障害に対するリハビリテーションの項では歩行改善のために短下肢装具使用はグレードBとされ,エビデンスからみても効果が優れていることがわかっている。また近年では,単に医学的治療といった側面のみならず,在宅すなわち介護や福祉の領域においても,ユーザー側からみればQOLそのものに直結するほど大変重要な役割を持つようになった。

 ところで,脳卒中リハビリテーションの分野では,これまでにさまざまな機能を有する装具が研究・開発されてきた。その背景には,病態がより明らかになってきたこと,人の正常歩行の理解が進んだこと,さらには医学的リハビリテーションそのものの諸技術が進歩してきたことなどがある。他方で,装具にも多様な機能が求められるようになっており,各種プラスチックやカーボン繊維をはじめとする新しい素材の導入によって,装具自体がさらに多機能化してきた。機能障害に対する下肢装具として,単に変形の予防や矯正といった基本的な役割のみならず,脳卒中の回復段階に求められる多様な機能,例えば足関節の固定,制限,補助,制動に対応できるものも登場してきたのである。

 このような状況の中,脳卒中患者が呈する諸病態に応じた下肢装具を確実に選択することは,非常に難しくなってきていると感じている関係者は多いのではないだろうか。

 本書は2007年に初版が発行されたが,サブタイトルには「病態に対応した装具の選択法」と銘打ち,当時わが国で用いられていた一体型のプラスチック短下肢装具はもとより,足継手も網羅され,装具選択の指標となるべき項目を中心に構成されていた。著者の渡邉英夫先生は,脳卒中のリハビリテーションに対する長年の臨床経験,研究活動から,現場で使えるガイドブック的資料として本書を執筆されており,既に医師やセラピストを始め多くの関係者が手にされていることであろう。

 さて,今回発行された第2版では,近年では当然のようになってきた脳卒中早期の下肢装具について新たに言及されており,時流に対応した内容になっている。装具の記載ではイラストに加え,実物写真もカラーで紹介されており,患者さんへ説明するにも非常に有効な資料となろう。また,臨床の場で多く用いられているシューホーン型のような一体型プラスチック短下肢装具や,調節式足継手の詳しい内容が追加された。その他の新しい項目には問題提起的な症例の紹介もあり,思わずうなずいてしまったほどである。まさに,脳卒中の下肢装具にかかわる関係者すべてにお薦めしたい一冊となっている。

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