みるトレ リウマチ・膠原病

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病歴+関節・皮膚の所見で何を考えるか? リウマチ・膠原病診療では、手や足に現れる身体所見と病歴の組み合わせで、診断を考えることが診療のポイントになる。本書はすぐれた診断医、内科医として知られる著者が、一般内科医の診断力アップのためにまとめた臨床問題集である。診断のカギとなる身体所見を学べると同時に、身体所見と病歴を組み合わせ、どんな鑑別疾患を挙げ、診断を絞っていくかを学ぶことができる。
シリーズ みるトレ
松村 正巳
発行 2015年04月判型:B5頁:172
ISBN 978-4-260-02050-3
定価 4,180円 (本体3,800円+税)
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はじめに

 本書は,リウマチ・膠原病をテーマとし,視診からどのように情報を得るか,その知識と観察すべきポイントを「問題とその解説」という形式により,わかりやすく示したものです.症例呈示による問題とその解説が1ページずつ対になるように編集し,解説を詳しく記載して視診の重要性を強調しました.観察する能力は身体診察における最も重要なスキルだと考えています.

 第1章に視診における基本の知識を,第2章以降に実際の所見を含めた症例呈示からの問題,次のページにその解説を記載しました.この本に記述したのは,リウマチ・膠原病における経験から得た知識ですが,未来を担う若い方々に観察することの奥深さをお伝えできればこれに勝る喜びはありません.

 本書をまとめるきっかけとなった雑誌「medicina」(メディチーナ)での連載を支えていただいた高島優理絵氏,吉永麗蘭氏,今回も的確な助言をいただいた本書籍担当の滝沢英行氏,新たな課題をもたらしてくれる医学生,日々ともに診療にあたってくれる研修医,アドバイスをくれる同僚,そして臨床医学の教師ともいえる「経験」を与えてくれる患者さんに心から感謝しています.最後に,私が可能なかぎり良き臨床医,教師であるために長い間支え,耐えてくれた家族,愛する方たちを忘れません.

 2015年3月
 松村正巳

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はじめに
〈イントロダクション〉視診からわかること

第1章 視診でわかる症例
 CASE 01 手の歴史
 CASE 02 硬い腫脹
 CASE 03 指の付け根が痛い
 CASE 04 黄疸?
 CASE 05 指が伸びない
 CASE 06 偏位
 CASE 07 変形
 CASE 08 複数の変形
 CASE 09 亜脱臼
 CASE 10 皮下結節
 CASE 11 指が伸展できない
 CASE 12 足底の痛み
 CASE 13 副作用
 CASE 14 白色の爪
 CASE 15 明瞭なコントラスト
 CASE 16 重篤な病態の証拠
 CASE 17 経過日数
 CASE 18 2本の白線
 CASE 19 緑色の爪
 CASE 20 黒の縦縞
 CASE 21 黒色の爪
 CASE 22 多彩な変化
 CASE 23 炎症による爪の変化
 CASE 24 無数の溝
 CASE 25 多発する腫瘤
 CASE 26 左右差
 CASE 27 鑑別が重要
 CASE 28 紫色の手
 CASE 29 爪の生え際に注意する
 CASE 30 毛細血管の拡張
 CASE 31 合併症に注意する
 CASE 32 指先の短縮

第2章 視診,病歴,身体診察でわかる症例
 CASE 33 指先の形が変わったら
 CASE 34 ギリシャ時代から
 CASE 35 赤い半月
 CASE 36 爪がない
 CASE 37 縦走する溝
 CASE 38 しびれと紫斑
 CASE 39 ふくらはぎの腫れ
 CASE 40 つらい朝
 CASE 41 リウマチかね?
 CASE 42 乾癬と関節
 CASE 43 グローブのような手
 CASE 44 手背の浮腫

第3章 視診,病歴,身体診察,検査でわかる症例
 CASE 45 診断の鍵
 CASE 46 手,腕の腫脹
 CASE 47 多彩な鑑別診断
 CASE 48 下肢の紫斑
 CASE 49 皮疹と筋力低下
 CASE 50 行うべき検査
 CASE 51 表と裏
 CASE 52 4つの鑑別診断
 CASE 53 萎縮
 CASE 54 腰痛
 CASE 55 末梢神経障害の徴候
 CASE 56 全身性エリテマトーデスの関節炎
 CASE 57 診断のヒント
 CASE 58 複数の所見
 CASE 59 外傷?
 CASE 60 指先での鑑別診断

閑話
 1.シャーロック・ホームズ
 2.ホームズのモデル
 3.ルノワール
 4.Snap Diagnosis(1)
 5.Snap Diagnosis(2)
 6.Snap Diagnosis(3)
 7.知っておくとよい所見:爪のReil線

疾患(診断名)・所見目次
索引

※本書は2009年から2012年まで内科臨床誌「medicina」(メディチーナ)に連載した「手を見て気づく内科疾患」および,2012年から2014年まで総合診療誌「JIM」に連載した「みるトレ」で扱った症例に大幅な加筆・編集を行い,一冊の本としてまとめたものです.

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爪と指の微細な点状の病変や隆起がまるで3Dのようにみえる
書評者: 徳田 安春 (地域医療機能推進機構(JCHO)本部顧問)
◆これだけの美しい爪と指の病変写真集はかつてない

 好評の『みるトレ』シリーズの1つ,リウマチ・膠原病編。しかし,この領域のアトラス集によくあるSLE(全身性エリテマトーデス)の蝶形紅斑などの写真集がまた出た,ということではない。この本は『リウマチ・膠原病の指と爪』というタイトルにしてもよいくらい,これでもかこれでもかというほど爪と指の所見が出てくる。しかも超高画質で高倍率。これだけの美しい爪と指の病変写真集はかつてなかった。微細な点状の病変や隆起がまるで3Dのようにみえる。

 コモンな爪や指の所見でも,これまで教科書であまり取り上げられてこなかったものも多く含まれている。試しにクイズを。下記の所見について述べよ。

 1.半々爪 Half-and-half nail(Lindsay' nail)
 2.ボー線(溝) Beau's lines
 3.ミーズ線 Mees' line
 4.ミュルケ線 Muehrcke's lines
 5.爪甲色素線条 Longitudinal melanonychia
 6.爪甲鉤彎症 Onychogryphosis
 7.赤い爪半月
 8.爪消失
 9.溝渠状中央爪異栄養症 Dystrophia unguium mediana canaliformis
 10.Reil線

 上記のうち,半分以上知っているという医師は爪専門家であろう。これらの所見はしかし,入院患者や外来患者でコモンに認められるものであり,現場の指導医ならベッドサイドティーチングで担当研修医から聞かれる可能性がある。「先生! この患者さんの爪を診てください」と言われて,スパッと答えることができるためには,本書を読むほかはないであろう。あるいは,研修医や医学生がすでにこの本を読んでいたとしたら……。

◆まず手を診察せよ

 膠原病ではとかく疾患特異抗体が話題になり検査に走る傾向があるなかで,手をまず診察して身体所見を大事にする本書の趣旨に賛同する。Charcot-Marie-Tooth病での下腿の逆シャンペンボトル様変化や凹足なども含まれており,総合診療の場面でも役に立つ。牧師の祝福の手(Hand of benediction)・ジャクー関節症(Jaccoud's arthropathy)などの「視診ですぐにわかる診断」は,プライマリケア領域では必須の知識であろう。

 本書にはオスラー先生が登場し,観察能力が臨床で最も重要なスキルである,と説く。ケースの解説には,ローレンス・M・ティアニーJr先生のパールがちりばめられており,明日からの診療に即役立つ工夫が施されている。コラムでは,ルノアールなどの芸術家も取り上げられ,臨床医学とアートの類似性が理解できる。

 スマホがかなり普及したため,ゲーム中毒や睡眠障害などの合併症が問題となるなか,本書が示唆した良い面もある。現場の臨床医もみな自分版「みるトレ」コレクションを作ることができるだろうということ。

 さて,スマホを白衣のポケットに,そして本書を脇に抱えて,ベッドサイドへ行こう!

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