基礎から学ぶ
クリニカルパス実践テキスト

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クリニカルパスが、分かって・作れて・使いこなせるための入門書。パスの形式から作成、使用、バリアンス分析、運用の工夫まで、現場に必要なパスの知識を精選し具体的に解説した。初心者から作成・運用の中核となる中堅層まで、実務書として手放せなくなる。目下のパスの進化をキャッチアップしながら初心者にも理解できるよう工夫されている。
監修 日本クリニカルパス学会学術委員会
発行 2012年07月判型:B5頁:144
ISBN 978-4-260-01599-8
定価 3,740円 (本体3,400円+税)
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 クリニカルパス(以下,パス)が日本に導入されて約20年が過ぎました。導入してから10年以上経過している病院も多いのではないでしょうか。その間に世代交代が進み,2代目,3代目の委員長が増え,現場のスタッフもパス導入後に就職した人が多くなってきました。その結果,パスの本質を理解せずに,ただ使っている,あるいは使われている状態に陥っている病院の声も聞かれるようになりました。そこで,正しい知識を習得してもらおうと,日本クリニカルパス学会では2009年に開催された第10回学術集会(会長:松波和寿先生)で,6時間に及ぶ「教育セミナー」を開催しました。「教育セミナー」を計画するときから,3年分の内容をテキストにしようと話が持ち上がっていました。これと並行するように,学問の体系化を目的とした「学術委員会」が立ち上げられました。そこで,学術委員会の事業の1つとして,テキストの発刊に取り組むことになりました。「教育セミナー」は第11回(会長:河村進先生),第12回(会長:福井次矢先生)学術集会にも引き継がれ,若干の講師の変更はありましたが,毎年多くの参加者が集まりました。
 2011年4月に項目立て・執筆者の割り振りに着手し,正式に決定したのが7月で,10月に本格的に執筆が始まりました。さあ,そこからがこのテキストの真骨頂です。書き始めて出てきた疑問点を,執筆者のメーリングリスト(ML)でやり取りし始めました。「医療者アウトカム」「観察項目」「ゲートウェイ方式」「クリティカルインディケーター」などの言葉の定義をし,執筆者間で齟齬がないように,かなり突っ込んだ議論がなされました。また,執筆中の原稿をお互いに見せ合い,忌憚のない意見交換をしました。お互いのもっている図表やパスデータのやり取りもしょっちゅうでした。これにとどまらず,いったん全員が書き上げたあとの執筆者校正の段階でも,全員に全原稿を送りました。そこでも改めて「適用基準」「抗菌剤」などの言葉の定義を議論し,図表の食い違いも是正し,テキストのタイトルにも言及しました。この作業が終了したのは2012年5月になっていました。やり取りしたメールは200通を超えました。
 分担執筆の書籍で,ここまで突っ込んだ査読(peer review)・読み合わせは,今までに経験ありませんでした。日本クリニカルパス学会では,「用語検討WG(2005年2月発足)」「用語・出版委員会(2008年3月発足)」「クリニカルパス用語解説集(2009年6月発刊)」「Basic Outcome Master(BOM)(2011年4月発売)」「第2回エキスパートミーティング(2012年3月熊本)」などで,言葉の定義は繰り返し論じてきました。その時々で最も適している解釈をしてきていますが,今回のテキストでは,さらに進化しています。副島秀久先生がMLのなかに「言葉が生きていると感じさせる機会です。新しい時代,新技術に適応し,それにふさわしい言葉を適用する!」と書かれています。われわれ執筆者が行った議論は,われわれだけの共通理解にとどまらず,これから先しばらくの日本クリニカルパス学会としての見解につながる重要な議論と認識しています。今後も議論は繰り返され,変化していくことを十分ふまえて,現時点で考えられる最高の内容になったと自負しています。
 これからパスを学ぶ医療者・学生はもちろん,すでにパスを使用している現場のスタッフに,現場に必要なパスの知識をわかりやすく解説することで,実務書として手元に置いておきたくなるテキストです。また,いずれ日本クリニカルパス学会資格認定制度の参考書になることも意識しています。何度も読み返して,実務に結びつけてもらうことを期待します。
 最後になりましたが,原稿締め切りを無視して議論し続けたわれわれを暖かく見守ってくれた,医学書院医学書籍編集部の大橋尚彦氏,同制作部の金子哲平氏に深謝します。

 2012年6月18日
 日本クリニカルパス学会学術委員長
 勝尾 信一

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第1章 クリニカルパスの歴史と意義
 1 歴史
 2 意義
  1)標準化
  2)目標管理
  3)医療の質向上
 3 パスの基本構造
  1)オーバービューパスと日めくり式パス
  2)電子化とパス
  3)BOM
第2章 クリニカルパスの形式・基本構成
 1 オーバービューパス
  1)オーバービューパスの変遷
  2)ステップ(フェーズ)式オーバービューパス
  3)電子パスのオーバービューパス
 2 日めくり式パス
  1)日めくり式パス
  2)電子パスの日めくり式パス
 3 アルゴリズム(フローチャート,プロセスチャート)
 4 バリアンスシート
 5 オールインワンパス
第3章 アウトカムとクリニカルパス作成
 1 アウトカムの考え方
  1)病院におけるアウトカム
  2)パスにおけるアウトカム
  3)自院におけるアウトカムの定義
 2 医療者用パス作成
  1)アウトカム志向の考え方
  2)作成方法
  3)標準化によるパス作成
  4)標準化によるアウトカム志向のパス作成
  5)多職種によるパス作成
  6)パスの運用基準
 3 患者用パスの作成
 4 パスの認可
  1)審査・認可の方法
  2)認可基準
第4章 クリニカルパスの使用と記録
 1 パスと診療記録
 2 医師記録
  ・パス使用に関する医師の役割
 3 看護記録
  1)看護記録の要件
  2)看護記録の目的を満たすパス
  3)看護記録の構成要素を満たすパス
 4 チーム医療の実践ツールとしてのパスの記録
 5 バリアンス分析のデータにできる記録
  1)バリアンス対応の内容の記載
  2)パスのどこに記載するか?
  3)バリアンス記録として何を記載すべきか?
 6 バリアンス登録
  ・バリアンス登録は誰がする(べきな)のか?
 7 パスを使用するということ
第5章 クリニカルパスの見直しとバリアンス分析
 1 クリニカルパスの見直しにおける基本的な考え方
  1)見直しは必要なのか?
  2)見直しは何の視点で行うのか?
 2 バリアンス分析
  1)バリアンスの定義と活用
  2)バリアンスの分類
  3)バリアンスの収集方法
  4)バリアンス分析のシステム化
 3 見直しの根拠と検証
  1)プロセスアプローチによる医療の質改善
  2)臨床指標の活用
  3)DPC(diagnosis procedure combination)の活用
  4)実例:市中肺炎パスの見直し
第6章 クリニカルパス運用の工夫
 1 わが国のパス活動の現況
  1)調査の概要
  2)調査結果の概要
 2 パス委員会について
  1)委員会の問題
  2)委員会運営の問題への対策
 3 パス大会について
  1)パス大会の歴史と意義
  2)パス大会の開催に必要なこと
  3)アンケート結果からみたパス大会運用の問題
  4)問題への対策
第7章 電子クリニカルパス
 1 紙パスとの違い
  1)視認性
  2)情報共有性
  3)オーダ
  4)診療録(カルテ)との関係
  5)権限と承認
  6)運用
  7)アウトカム達成とバリアンスチェック
  8)統計
  9)管理
  10)患者に合わせたパスの作成
 2 電子パスへの移行
  1)電子パスの選定
  2)委員会内組織
  3)マスタ準備
  4)リテラシーと運用規定
  5)紙パス移行作業
  6)患者用パスシート作成
  7)移行に関わる問題
  8)運用
  9)移行前後のパス適用率
 3 地域連携クリニカルパス

索引

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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