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小児から高齢者までの姿勢保持 第2版
工学的視点を臨床に活かす

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日本リハビリテーション工学協会/SIG姿勢保持により、障害児・者、高齢者に対する姿勢保持の基礎と実際をまとめた入門書。姿勢保持装置・車いすを必要とする障害児・者や高齢者の環境を総合的にとらえ、ニーズにあった機器の提供を目指す。改版に伴い、目次を見直して、より現場に即した内容となった。リハ医、PT・OT、義肢装具士はもちろん、福祉・教育関係者にも分かりやすくお奨めの1冊。
日本リハビリテーション工学協会 SIG姿勢保持
発行 2012年08月判型:B5頁:256
ISBN 978-4-260-01541-7
定価 5,170円 (本体4,700円+税)

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第2版の序

 リハビリテーションや療育の現場では,利用者の真のニーズに応えるべく,多職種の専門スタッフによって日々最善の努力がなされている.何らかの障害のある個人が自由に活動し参加するためには,姿勢,移動,そしてコミュニケーションを確保することが基本となり,さらに個人の状態に合わせた環境設定が不可欠と言える.そのなかでも姿勢保持はあらゆる活動の基盤となるが,障害者や高齢者の介護にかかわる多くのスタッフは,その情報と経験の不足から十分な対応ができていない状況が続いている.このような状況に対応すべく,SIG(Special Interest Group)姿勢保持は,日本リハビリテーション工学協会の専門分科会として1987年から姿勢保持の考え方と基礎的な技術を伝達する活動を続けてきた.全国各地で毎年開催してきた姿勢保持講習会は今年で23回目を迎える.
 本書のベースとなっているのは,SIG姿勢保持の運営メンバーであるセラピスト,リハビリ工学技士,支援学校の教員が長年にわたって積み上げてきた,姿勢保持に関する実践的な知識と技術である.初版を上梓して5年が経つが,その間にSIG姿勢保持の役員も数名入れ替わり,今回の第2版では新たなメンバーによって姿勢保持に関する知見や技術も追加され,大幅に見直されている.特に「II.小児」と「III.高齢者」は,最新の情報と実践例が加えられ,初版よりも一層充実した内容になっている.また,この5年間で車いすや姿勢保持に関連する法制度の改正が行われ,より幅広い選択が可能となっていることから,制度に関連した情報が特別資料として追加されている.さらにすべての章にわたり写真や図を入れ替え,新たに追加することによって視覚的に内容が理解できるように配慮した.
 車いすや姿勢保持に関連した用語は,補装具の制度とJIS規格では異なる場合があるが,今回の改訂も初版と同様に日本リハビリテーション工学協会のSIG姿勢保持と車いすSIGおよびSIG褥そう防止装置がまとめた「車いす・シーティング用語集」に準拠している.
 本書が小児から高齢者まで広範囲にわたるリハビリテーションや療育の現場で,利用者の姿勢を改善し,活動の幅を広げることによって,生活の質を高める一助となることを世話人,執筆者一同,心より願っている.

 2012年7月
 日本リハビリテーション工学協会SIG姿勢保持代表  繁成 剛

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I 姿勢保持の基礎知識
 1 姿勢保持の概要
  A 姿勢保持の役割
  B 姿勢とは
  C 姿勢保持の考え方
  D 姿勢保持技術の活用範囲
  E 姿勢保持の目的
  F 使用者
  G 姿勢保持の原則
  H 姿勢保持の技術の留意点
  I 姿勢保持の課題
  J まとめ
 2 姿勢保持の歴史
  A 姿勢保持装置の黎明期
  B わが国での取り組み
  C 工房の誕生
  D 成形技術の進歩
  E 採型と成形技術の普及
  F CAD/CAMの登場
  G 直接発泡法
  H 最近の座位保持装置
 3 姿勢保持装置の概要
  A 姿勢保持装置の種類
  B フレーム・身体支持部の材質と構造
  C 採型方法と成形の種類
  D 体幹前傾姿勢の応用
  E 立位保持装置
  F 臥位保持装置
 4 姿勢保持のおさえておきたいポイント
  A 側方(矢状面)の使用者と装置の関係
  B サポート部品
  C 頭頸部の保持(ヘッドサポート)
  D ベルト類
  E テーブル部
  F サポートの方法,量
II 小児
 1 小児期における姿勢保持の問題点とチェックポイント
  A 姿勢保持の意義と目的
  B 小児期における注意すべき身体的諸問題
  C 疾患別姿勢保持の考え方
  D まとめ
 2 小児疾患における姿勢保持の基礎と実際
  A 姿勢制御のメカニズムと小児期における諸問題
  B 姿勢の経時的変化
  C 小児疾患における姿勢保持の留意点
  D 姿勢保持具の適合評価の実際
  E 姿勢保持具提供にあたっての具体的な配慮点
 3 日常生活における姿勢保持
  A 日常生活で姿勢をどう見るか
  B 臥位姿勢への援助
  C 食事姿勢への援助
  D 排泄姿勢への援助
  E 入浴姿勢への援助
  F 更衣姿勢への援助
  G 学習姿勢への援助
  H 移動と移乗
  I 遊び・余暇活動
  J まとめ
 4 教育現場における姿勢保持
  A 教育現場に必要な視点
  B 背臥位・体幹後傾姿勢保持具
  C 側臥位保持具
  D 腹臥位保持具
  E 外出支援
  F 余暇支援
  G おわりに
 5 療育センター現場における姿勢保持
  A 療育センター現場の視点
  B ブレースカンファレンスでの役割
  C 特別支援学校との連携
  D 毎日の生活を支える姿勢保持
 6 日常生活と姿勢ケア
  A 姿勢ケアの目的
  B 発達と姿勢ケア
  C 24時間アプローチ
  D 姿勢ケアの実際
  E まとめ
III 高齢者
 1 高齢期における姿勢保持の問題点とチェックポイント
  A 高齢期における特徴と諸問題
  B 高齢期に対する姿勢保持の意義と目的
  C 高齢期における姿勢の特徴
  D 高齢期に見られる車いす上の特徴とその対策
  E 高齢期に姿勢保持が必要となる代表的な疾患と座位姿勢で見られる問題点
  F 姿勢保持のための評価と具体的介入例
  G 高齢期の姿勢保持チェックポイントのまとめ
 2 高齢者の姿勢保持のポイント
  A 加齢による心身の変化と姿勢への影響
  B 高齢者の姿勢の特徴
  C 高齢者の身体計測値と車いすの寸法
  D 車いすシートの問題点
  E 姿勢保持のポイント
  F 車いすの調整
  G モジュラー式車いすの特徴
  H 姿勢保持の効果
 3 高齢者用姿勢保持装置と車いす
  A 座いす
  B リビングチェア
  C 車いす
  D 車いす用クッション
  E クッションの種類と特性
  F クッションの使用例
  G 高齢者用車いす
 4 高齢者介護施設における姿勢保持
  A 姿勢保持の実態と必要性
  B 施設で生活することへの理解
  C 車いすでの姿勢保持が高齢者の生活に与える影響(従来型施設編)
  D 車いすでの姿勢保持が高齢者の生活に与える影響(ユニット型施設編)
  E 入浴での姿勢保持が高齢者と介助者に与える影響(集団介護と個別介護の比較)
  F 施設における姿勢保持の今後の課題
IV 姿勢保持装置製作の実際
 1 姿勢保持装置提供までの実際
  A 5W2Hで確認する使用者ニーズ
  B 採寸・採型の実際
  C 仮合わせの実際
  D 完成品検品と適合・納品作業
  E フォローアップ
 2 現場で活きる製作技術の紹介
  A ウレタンフォームのカッティング技術
  B 三層強化段ボールの利用
  C 身近な素材による工夫
V 生活支援と姿勢保持
 1 遊びを広げる姿勢保持
 2 コミュニケーションを促す姿勢保持
 3 水の効果と姿勢保持
 4 乗馬の効果と姿勢保持
 5 スキーを楽しむ支援機器
 6 姿勢保持機能付き自転車と改造方法
 7 セーリングを楽しむための支援機器

特別資料 座位保持装置・車いすなどに関する支給制度について

索引

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姿勢保持の理論を学ぶ幅広い職種に役立つ書
書評者: 樫本 修 (宮城県リハビリテーション支援センター)
 障害の有無にかかわらず姿勢を良くすることは,健康,教育,活動,就労,生活,コミュニケーション,余暇などすべての面で基本となる。座位姿勢を改善する効能が現場のリハスタッフはもちろんのこと,介護スタッフにも浸透しつつあり,補装具の判定現場では,姿勢改善や快適性を図る機能を有した車椅子や座位保持装置の支給件数が年々増えている。数年前,姿勢保持の理論をわかりやすく解説した本を求めていたときに出会ったのが本書の初版である。そしてここに,待望の第2版が刊行された。

 本書は「日本リハビリテーション工学協会SIG姿勢保持」のグループが編集し,2007年に初版が,5年目となる2012年の同じく8月15日に第2版が刊行された。SIGの代表である繁成剛氏が初版の序文で述べている「長年,姿勢保持装置の製作や適合作業に携わってきたエンジニアとセラピストが中心となって,これらの姿勢保持に関する支援技術を,初心者でも理解しやすい内容に集大成したもの」という表現が,第2版ではさらに納得ができるものとなっている。姿勢保持のチェックポイントが工学的な視点はもとより,実際に現場で苦労や処方に創意工夫をめぐらした,筆者たちの経験から出た生の声が随所に記載されている。読み手の経験に応じて教えられること,共感できること,納得できることなどがたくさん見つかるに違いない。

 姿勢保持に初心者の方は,第1章の姿勢保持の概要,歴史,装置の概要,押さえておきたいポイントまでを読むだけでも,姿勢保持の歴史を知り,基本的な考え方を学ぶことができる。そこには,単なる理論だけでなく,実際の処方現場で押さえておくべき基本姿勢が説いてある。「対象者を知り尽くした上でないと姿勢保持はできない」「子どもは基本を大切に,成人は応用と融通を利かせることが大切」「身体状況が同じように見えても原因によって支持方法は変わる」「使ってもらえる装置にする」「安定した楽な受け入れられる姿勢を見つけ出したい」など,本文中の随所に同感できる考え方が述べられている。姿勢保持の押さえておきたいポイントでは,どうしてこうするのかという考え方の基本が詰まっている。

 応用編ともいえる小児,高齢者の章では,疾患別特異性や年齢特性に基づいた姿勢保持の問題点とチェックポイントから始まっており,実践に役立てることができる。教育,療育の場,日常生活,介護施設において姿勢保持の援助方法や装置の実際,車椅子の工夫などを,豊富な図・写真を通して学ぶことができる。リハビリテーションの最終目標である生活支援と姿勢保持の章では,さまざまな活動場面や余暇での姿勢保持が紹介されている。さらに,最後に最近めまぐるしく変化した補装具費の支給制度が詳しく掲載されているのもうれしい。

 本書は,姿勢保持の教科書,入門書として,実際の処方現場での実践書としてなど,活用の仕方はさまざまである。これから姿勢保持を学ぼうという初心者からベテランのセラピスト,製作業者,医師や介護職など幅広い層に役立つ本書をぜひとも傍らに置いていただきたい。
「姿勢保持」の基礎から応用までを正しく学べる有益な書
書評者: 染谷 淳司 (東京小児療育病院・みどり愛育園理学療法士/らっこ支援者の会代表)
 1980年以来,工房や車いす製作者,時には著者たちSIG姿勢保持運営スタッフと共労し,小児や重症児・者など多様な障がいをお持ちの方々の姿勢保持環境の改善やスポーツに関与してきたPTとして,感想を述べさせていただく。

 総論の第1章「姿勢保持の基礎知識」では,姿勢保持の概要と歴史,姿勢保持装置の基礎知識やチェックポイントが簡潔明瞭に記載されている。そして,第4章「姿勢保持装置製作の実際」に連携し,実践的な知識や技術が紹介されている。日本における姿勢保持の分野をリードし,歴史を築かれてきた繁成剛,飯島浩の両氏を中心に,工業デザイン・リハビリ工学技師たちがこれらの骨格を担い著作されている。さらに,厚生労働省障害福祉専門官の高木憲司氏による特別資料「座位保持装置・車いすなどに関する支給制度について」は端的・詳細・最新情報である。以上で,過去から現在に至る姿勢保持について有効に学べる内容である。

 応用編では,第2章「小児」で,脳性麻痺,二分脊椎,筋ジストロフィーに関しての「問題点とチェックポイント」も含め力作的に記載されている。著者の露峰牧子氏の「身体だけでなく精神的,心の成長も含めて経験させたい」という言葉が強く印象に残る。そして,「小児疾患における姿勢保持の基礎と実際」の辻清張氏も経験豊富なPTである。OTの堀口淳氏(「日常生活」),教員の篠原勇氏(「教育現場」),工学士の中村詩子氏,PTの榎勢道彦氏。彼らは真摯に障がい児・者に寄り添ってきた方々であり,その経験に基づいた指針と事例的アプローチが紹介され大いに参考になる。

 第3章「高齢者 4.高齢者介護施設における姿勢保持」で齋藤芳徳氏は,「生きようとする意欲を支える」ことを合言葉として掲げ,入所利用施設での介護システムと住環境,姿勢保持,車椅子,入浴の支援などについて,多面的に行動様式論としてとらえて論じている。

 第5章「生活支援と姿勢保持」では,遊び,コミュニケーション,さらに,水・乗馬・スキー,自転車,セーリングなどと,スポーツ参加をも保障するための姿勢保持が紹介されている。今回の改訂に伴う加筆もあり,その機能援助のための特記と貴重な実践から培ってきた具体的な器具・環境支援の実績が紹介されている。著者らの「共に人生を楽しむ」心意気とその援助の術が伝わってくる。

 健康であり,隣人と共に歩みたいと誰もが願うであろう。「小児から高齢者まで」の方々が,自らの厳しい障がいや加齢を「工学的視点を臨床に活かし」ながら受容し乗り越えて,日々の生活に意欲的に臨んでいく。その生活基盤は,メリハリがあり,生き生きとした「姿勢保持」の展開であろう。著者たちは,日本の「姿勢保持」を築いてきた多彩なエンジニアやセラピストなどであり,豊富な経験と実績を有している。その持ち前の本領を発揮し,共労してつくり上げたのが的確なタイトルを冠したこの書籍である。見やすいイラストや写真も多用され,わかりやすい構成になっている。当事者,初心者から経験者までのサポーター,多くの関係者の方々が「姿勢保持」の歴史,基礎から応用までを正しく学べる有益な書であるといえるであろう。
リハビリテーション工学の集大成といえる書
書評者: 宮田 広善 (姫路市総合福祉通園センター所長)
 リハビリテーション工学の実践書であり理論書である本書が,新たな執筆者を加え多くの項目を追加して改訂された。

 思えば,「Nothing about us without us(われわれ抜きにわれわれのことは何も決めるな)」を合言葉に,世界中から国際連合に集まった障害当事者たちの参加の下で,「障害者の権利に関する条約」が採択されたのは本書初版出版の前年であった。それ以後の5年間,わが国ではこの条約の批准に向けて,法制度だけでなく障害福祉の理念が大きく変化した。

 特筆すべきは,障害関係法の憲法ともいうべき障害者基本法の抜本改正である。障害を,「障害及び社会的障壁 により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態」と定義し,従来の医学モデルから社会・生活モデルへと大転換を果たしたのだ。わが国の施策は今後,本書が掲げる「日常生活場面での具体的な支援」を課題にして進んでいこうとしている。

 障害は治らない。しかし,障害があっても生活を楽しみ,人生を豊かに送ることは可能である。「障害を軽減する」という医学モデルの目標を持ち続けてきたわが国の福祉,医療,教育には,「障害があっても豊かな人生は保障される」という社会モデルへの変革が求められている。リハビリテーション工学はその先駆となるべき使命を課せられているのだ。

 本書はリハビリテーション工学の集大成である。内容は基礎・理論から臨床・応用まで,対象は乳幼児から高齢者まで,そして生活場面からスポーツや遊びの場面まで,さまざまな実践家がその専門性と経験をもとに,具体的かつ臨床的に執筆した数少ない実践書である。同時に,先駆者たちが現場の意識を変え制度の枠を押し広げながら臨床実践を形にしてきたリハビリテーション工学の歴史書でもある。

 本書はまた,障害のある人を支援する者に求められる高邁な理念や高い理想を読者に与えてくれる理論書でもある。本書から,障害とは何か,障害者の暮らしはどうあるべきか,自立とは何かを考えていただきたい。障害のある子どもの育ちや障害のある人の暮らしを支える執筆者たちの熱い想いと障害者支援の未来が感じられるはずだ。

 本書は,医療,福祉,教育の現場の職員だけでなく,学生や研究者そして当事者や家族の方々にも読んでいただきたい。必ず障害のある人に暮らしの安心と豊かさを保障するための指針を与えてくれるだろう。
総合リハビリテーションの視点から姿勢保持について説き起こす
書評者: 小池 純子 (横浜市総合リハビリテーションセンター長)
 初版から5年,車いすや座位保持装置に関する法制度の改正,姿勢保持に関する新たな知見や技術を加えて,内容を大幅に刷新した改訂第2版が上梓された。

 人体の機能や構造の不全や欠損に関わる治療は,細胞レベルの研究や臓器移植など,その成果や社会問題としての側面がしばしばメディアに取り上げられる。人体の,とりわけ運動器の機能や構造の不全や欠損に対するもう一方の取り組み,義肢・装具・車いすなどについては,先のロンドンパラリンピックで,さまざまな競技用車いすや義足が,観衆の目を驚かせることはあっても,普段はあまり関心を寄せられないのが実情である。

 身体障害者が自由に活動し,参加するためには,姿勢,移動,そしてコミュニケーションの確保,環境設定は不可欠であり,そのなかでも姿勢保持はあらゆる活動の基盤となる。身体の麻痺や変形のため姿勢を自力で保つことが困難な状況を改善するため,「身体各部のポイントを外的に支え,安定した姿勢や自発的な動きを引き出す姿勢を維持しやすくする方法」が姿勢保持の技術である。

 本書の特徴は,姿勢保持が困難な方々への支援について,「総合リハビリテーションの視点」をもって書き進められており,執筆者らの所属する日本リハビリテーション工学協会の立ち位置である「工学」を超えて,障害児者や高齢者が人生に向き合おうとする積極的な「姿勢」をも応援するぞ! との熱意が読み取れるところである。また,このような障害者のニーズに応えるためには,多職種のかかわりが必要となるが,医学,教育,福祉,介護,工学,製作などさまざまな専門領域の読者を想定し,写真・図を多用して視覚的にわかりやすく飽きさせない工夫がされている。

 本書は,「姿勢保持の基礎知識」「小児」「高齢者」「姿勢保持装置製作の実際」「生活支援と姿勢保持」の5章から構成され,巻末に支給制度にかかわる資料が添付されている。「小児」の章では,脳性麻痺,Duchenne型筋ジストロフィー,二分脊椎を取り上げ,発達・姿勢制御のメカニズムから説き起こし,ADL,遊び,学習,余暇活動場面での姿勢保持に言及している。教育現場での教材として工夫された,姿勢保持装置のネーミングの妙には思わず笑みがこぼれる。「高齢者」の章では,脳血管障害,中心性頸髄損傷,パーキンソン症候群,脊髄小脳変性症,筋萎縮性側索硬化症,関節リウマチを取り上げ,加齢による心身と姿勢の変化について,施設生活の考え方や介護時のリスク管理も含め対応を紹介している。「姿勢保持装置製作の実際」では,測定した身体寸法を記録する情報カードなどの例示がされているが,コピーして実際に使用できるようにとの親切さである。

 最後に,本書は装置を使って遊びやスポーツを楽しむ子どもたちの写真,その笑顔に心が和む本でもある。われわれ,リハビリテーションに携わる者は,この笑顔のために,日々地道な努力が続けられるのである。

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