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プロメテウス解剖学アトラス 胸部/腹部・骨盤部 第2版

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圧倒的な美しさで、世界中の読者を魅了する「プロメテウス解剖学アトラス」。その第2巻が、大幅な再編によって生まれ変わった。見開き構成のなかで優れた解剖図と適切なテキストを組み合わせるプロメテウスの特徴はそのままに、各臓器の発生・機能・臨床を系統立てて効率良く学習できるよう、章立て・構成が全面的に見直された。器官発生の章を冒頭に新設、巻末に簡略データ集の「臓器の要約」も追加、全体で100ページ増。
*「プロメテウス/PROMETHEUS/プロメテウス解剖学」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ プロメテウス解剖学
監訳 坂井 建雄 / 大谷 修
発行 2015年01月判型:A4変頁:490
ISBN 978-4-260-01411-3
定価 12,100円 (本体11,000円+税)
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第2版 訳者序第2版 序

第2版 訳者序
 本書は『プロメテウス解剖学アトラス』第2版の第2巻にあたる.原書の初版は,ドイツ語原書として2004年から2006年にかけて全3巻として出版され,圧倒的な実在感と清潔感を合わせ持つ解剖図によって,世界中に大きな衝撃を与えた.日本語版は2007年から2009年にかけて出版され,わが国の読者にも広く迎えられた.

 すぐれた解剖図は解剖学書の生命線であり,まさに解剖図の革新が新しい解剖学書を作り出してきたと言える.近代解剖学の出発点と目されるヴェサリウスの『ファブリカ』は,精緻で芸術的な木版画により生命を与えられ,17世紀から18世紀にかけての銅版画による精細な表現は,ビドローやアルビヌスによる傑出した解剖図譜を生み出してきた.19世紀の木口木版画によりもたらされた解剖図と本文を一体化した編集は,解剖学書に新たな生命を吹き込み,20世紀の写真製版の技術は,解剖図の新たな表現に無限ともいえる可能性を生み出してきた.『プロメテウス解剖学アトラス』の解剖図は,人間の手で描かれたものでありながら,人工のわざとらしさを感じさせない.まさに人智を尽くして自然を再現した21世紀という時代が生み出した解剖図の最高傑作である.

 原書の第2版は2007年から2009年にかけて出版されたが,大幅な改訂増補がなされている.第1巻の「解剖学総論/運動器系」については,臨床に関連する項目や画像診断を加えて大幅な改訂増補が行われた.第2巻と第3巻については,全体としての増頁だけでなく,大幅な内容の組み替えが行われている.頸部の解剖は,初版では第2巻に含まれていたが,第2版では第3巻に移され,それに伴い本書のサブタイトルも「胸部/腹部・骨盤部」となった.頸部の構造は,機能的にも臨床的にも頭部と密接な関係があり,この改訂は学習者の利便性を考慮したものである.本書第2巻では,冒頭に「器官系の構造と発生の概観」が加えられ,胸部および腹部・骨盤部についても主要な器官系ごとに内容を再編成して局所解剖の項目で締めくくることとした.また末尾には「臓器の脈管・神経のまとめ」の他に「臓器の要約」を追加した.これらの改訂により,医学生に必要な事項を読者に分かりやすい形で提供するという『プロメテウス解剖学アトラス』のコンセプトはさらに強化された.見開き構成の中で視認性に優れた解剖図と文字情報を伝えるテキストをバランスよく有機的に配置すること,系統解剖学や臨床解剖学といった伝統的な枠組みに依拠せずに学習内容の重要度に応じて内容を選択したことなど,初版で実現された解剖学学習書の新しいスタイルを,よりよく生かすための改訂がなされている.

 本書「胸部/腹部・骨盤部」の翻訳にあたっては,初版ではドイツ語版の他に英語版を参照することができた.これは翻訳を効率的に行うにあたって有利な事情であった.ドイツ語版と英語版の食い違いも少なからずあり,ドイツ系の解剖学と英語系の解剖学が異なる伝統を有することも,改めて知らされることとなった.この第2版では英語版が刊行されていないために,もっぱらドイツ語版に依拠することとなった.翻訳にあたっては,初版と共通する頁についての変更の有無の点検ならびに増頁部分の仮の翻訳を編集部が担当して原稿を作成し,それをもとに初版を担当した各訳者が最終的な原稿に仕上げるという段取りで,最終的な調整を監訳者が行った.訳語については,原則として日本解剖学会監修『解剖学用語 改訂第13版』に準じるとともに,初版との整合性を可能な限り重視した.日本語訳にあたっては瑕疵のないように最善の努力をしたつもりであるが,至らぬところは監訳者の責である.

 訳者を代表して 坂井建雄,大谷 修
 2014年10月1日


第2版 序
 人体解剖実習では内臓の位置関係が中心的な課題であり,臨床ではそれらを特定の器官系に帰属させることになる.学習においては両者の視点を結び付けることが大切である.『プロメテウス:胸部/腹部・骨盤部 第2版』ではこのため,両者を組み合わせることに力点を置いた.
・一つには,個々の臓器の位置関係と記述を,
・もう一つには,器官系の中において発生と機能を概観し,
・さらに臨床に関連するテーマを補足した.たとえば心臓と肺のX線診断と断面解剖,冠状動脈疾患と心筋梗塞,結腸癌とその早期発見である.

 本書は発生学の基本的事項と器官系の概観から始め,続いて胸部,腹部,骨盤部の内臓について詳細に提示し,最後に臓器の脈管と神経,ならびに臓器の要約を付けた.この要約は,「重要な事実」をまとめたもので,臓器の位置,脈管と神経,発生,重要な疾患などを扱う.そのため要約は,試験準備にもとくに役立つ.

 「プロメテウス」は教科書の代わりになろうとするものではないし,またできることでもない.しかし「内臓」という広範な領域を把握するのを助け,解剖実習室で実見し試験で求められるように解剖学を解説するものである.
 本改訂版は,読者の皆さんのご提案とご意見によって製作される運びとなった.この場を借りて心より感謝の意を表したい.また,Frau Prof. Lüllmann-Rauch,Herr Prof. Wedel(ともにキール大学解剖学),Herr Privat-Dozent Dr. Müller(マインツ大学解剖学),Frau Dr. Wolloscheck(マインツ大学解剖学),Frau Prof. Spanel-Borowski(ライプツィヒ大学解剖学),Herr Prof. Lunkenheimer(ミュンスター大学),Herr Prof. Teutsch(ウルム大学解剖学)による,有用で示唆に富む寄与は大きな助けになった.ここに格別な謝意を表したい.
 今回の版には学生も協力してくれた.とくにFrau cand. med. Susanne Tippmannは,図と本文をTerminologia Anatomicaに準拠するという観点から精査し,数多くの提案と着想により,内容の提示方法について多大な貢献をしてくれた.

 Michael Schünke, Erik Schulte, Udo Schumacher, Markus Voll, Karl Wesker
 Kiel, Mainz, Hamburg, München, Berlinにて 2009年9月

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器官系の構造と発生の概観
 1 体腔の器官系と発生
 2 循環器系
 3 呼吸器系
 4 消化器系
 5 泌尿器系
 6 生殖器系
 7 リンパ系
 8 内分泌系
 9 自律神経系

胸部
 1 概観と横隔膜
 2 血管,リンパ管と神経の概観
 3 循環器系の器官とそれらの血管,リンパ管と神経
 4 呼吸器系の器官とそれらの血管,リンパ管と神経
 5 食道と胸腺とそれらの血管,リンパ管と神経
 6 局所解剖

腹部・骨盤部
 1 腹腔および骨盤腔の構造の概観
 2 血管,リンパ管と神経の概観
 3 消化器系の器官とそれらの血管,リンパ管と神経
 4 泌尿器系の器官とそれらの血管,リンパ管と神経
 5 生殖器系の器官とそれらの血管,リンパ管と神経
 6 局所解剖

臓器の脈管・神経のまとめ

臓器の要約
 
付録
 文献
 索引

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美しいだけの図譜ではない,機能解剖学的な解剖書
書評者: 阿部 寛 (秋田大大学院教授・形態解析学・器官構造学)
 プロメテウス解剖学アトラスの第2版全3巻のうち「胸部/腹部・骨盤部」を拝見した。初めに「器官系の構造と発生の概観」が加えられ,難解な臓器の発生を美しい図とともにわかりやすくまとめてある。続く内臓の解剖の項に直結しているために,内臓の発生学の知識はこの章で十分なほどであり,これらを本書一冊で学べるのは極めて都合が良い。

 続いて,例えば胸部内臓について,胸部に含まれる主要な器官系の構造を横隔膜・胸部の脈管と神経・心臓・呼吸器系・食道のように機能的に再編成して描き,胸部の最後に胸部の局所解剖で締めくくっている。すなわち本書は系統解剖学と局所解剖学の両者の表現を使い分けていて,解剖学実習を学ぶ学生は胸部臓器の意義を理解しつつ,解剖中の観察所見を学習できる。心膜が生き生きと淡く描かれているので,心臓と心膜腔や胸膜腔との関係がよくわかり,心臓があたかも動き出すかのようである。図の周囲には基本的事項から十分に深い内容まで丁寧な説明が加えられている。さらに超音波画像と胸部の断面図との関係をはじめとする臨床的な事項も多数納められている。

 本書の最後に「臓器の脈管・神経のまとめ」と「臓器の要約」がある。近年は,臨床修練の開始が早まっており今後の学生は多くの科目を超特急で学ぶ必要があるが,本書のこのような学習上の配慮は復習や試験対策として知識の整理に多いに役立つことだろう。

 本書は決して美しい図を集めただけの図譜ではなく,機能解剖学的な解剖書であると思う。学生は解剖学の広がりを感じながら解剖学実習をより深く理解できるであろうし,卒業後も本書から新しい視点を得ながら長く役立つと思う。

 監訳者の一人の坂井建雄氏は 『解剖学用語 改訂13版』 (医学書院)をまとめた解剖学用語委員会の委員長(当時)であり,日・英・ラテン語の解剖学用語の造詣が深く,本書は解剖学用語の精度が高い。この点も安心して薦められるゆえんである。また12名の訳者の方々はいずれも長く解剖学実習に携わってきて学生のことを深く理解しておられる。このような方々の丁寧な訳で勉強できる学生は幸福であると思う。

 解剖学実習を学ぶ学生にとって唯一不十分だと思われる点は,実習の課程を解説する実習書であるが,各大学により個別に作成されていると思われ,それを本書がカバーできなかったのはやむを得ないことであった。逆に本書と実習書があれば解剖学実習の理解のために完璧であろう。
解剖学の理解への火を与える書
書評者: 佐藤 二美 (東邦大教授・解剖学)
 本書は好評を博したプロメテウスシリーズの改訂版であり,これにより3巻シリーズ第2版の改訂が完結した。初版にあった「頸部」が第3巻に移動したため,本書は「胸部/腹部・骨盤部」となり,より臨床的に重要な部分を扱うようになった。

 本シリーズの特徴である,美しい図を中心に見開きで一つのテーマが完結する構成になっている点,臨床医学とのつながりを意識した説明が随所に取り入れられている点などは初版と変わらないが,改訂により学習者のために心にくいばかりの気配りのきいた構成となった。

 まず第1章に「器官系の構造と発生の概観」が追加された。解剖学で構造を見る際には,その構造がどのようにしてできてきたかという発生段階の知識の有無で理解の深さが大きく変わる。例えば,腸管の発生過程を理解すれば,消化器官と関連構造物との位置関係,腹膜や腹膜腔の成り立ち,回転異常による腸管の位置異常など,全てが有機的なつながりをもって理解できるようになる。

 次章から「胸部」「腹部・骨盤部」という部位別の記載がなされているが,見事なまでに系統解剖学的な視点と局所解剖学的な視点を融合させる工夫がなされている。部位ごとに全体を概観し,血管・リンパ管と神経の分布について述べた後に,それぞれの主な器官系として「循環器系」「呼吸器系」「消化器系」「泌尿器系」「生殖器系」の理解を促す内容が続き,それぞれに対して,先に述べた血管などと合わせて詳述し,器官系とのつながりを明解に示している。極め付きは各章の最後に「局所解剖」としてさらにそれらの関連性を簡潔に記載している点にある。特に初学者は一つ一つの器官系の理解はできても,なかなかそれら全体が3次元的にどう配置され,どのようなつながりをもつか理解しづらい面が多い。実際私も学生時代には,各器官系については頭で理解できていても,いざ実習となると,それらの器官系の有機的なつながりが理解できず,戸惑った覚えがある。

 最後に,最終章に全ての臓器や脈管・神経の概略図と臓器の要約が書かれており,これは特に試験前の学生にはもってこいの学習教材である。学生のみならず医師にとっても参照するのにちょうど良い。教員側から言えば,「○○について解説せよ」というような問題に,本書の概略図のように単語と矢印だけ並べた答案を書かれると,「矢印の意味が不明,答えになってない。日本語できちんと説明するように」という理由で合格点を出すことはできないのであるが,今回,新たに表になった臓器の要約部分が増えたので,この点も解消された。

 ギリシア神話では,プロメテウスは人類に火を与え,人間が神と同じことをするようになったとゼウスの怒りを買った。このプロメテウスシリーズによって学生に解剖学の理解への火が与えられ,学生が教員と同じ知識レベルを共有できるようになれば,怒りをかうどころか教員にとっては最高の喜びである。

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