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放射線医学イントロダクション
縦横無尽の入門講義

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放射線診断の基本を教授する実践的な入門書。教科書ではわからない読影のポイントを豊富な症例を用いて呈示。見逃してはならないサインを的確に捉える術をわかりやすく伝授する。初学者が見誤りがちな点を熟知した著者の的確なアドバイスが、画像診断の苦手意識を払拭する。診断だけでなくIVR、放射線治療についても解説。診療科に関わらず、臨床医として知っておきたい放射線医学のエッセンスが凝縮された1冊。
竹川 鉦一 / 田中 良明
発行 2012年03月判型:B5頁:276
ISBN 978-4-260-01381-9
定価 3,960円 (本体3,600円+税)
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推薦の序(小塚隆弘 / 平岡真寛)/(竹川鉦一,田中良明)

推薦の序
 レントゲン教授が発見したX線によって,はじめて人類は生体の内部構造を覗くことが可能になり,以来,医療に多大の貢献をしてきた。そこから発祥した画像診断から人類が得た恩恵は計り知れないものがある。画像診断は外科手術,病理所見で立証され,正確な診断技術に進歩,発展した。手術も画像診断とともに発展し,進歩したと思う。健診によって早期がんが発見され,結核の制圧に貢献した例を思い起こしてもらいたい。おそらく一度も画像診断を受けたことがない人はいないのではないか。
 画像診断の基本になる単純X線像には大量の情報が含まれ,読影に習熟すれば診断に至る貴重な情報を手に入れ,三次元情報を得ることも可能である。しかし,CT,MRIが開発されて以来,容易に三次元情報を入手できるために,画像診断の出発点である単純X線像に含まれる情報を深く読み取る手間を惜しむ傾向がある。折角の画像が単なる通過儀礼としかみなされないのは残念である。単純X線像からできるだけ多くの情報を読み,病態を推定したうえで,必要があればCTやMRIなど適当な検査法を選択し,最短のルートで診断に至るのが正しい筋道というものである。これは検査のコストを含む患者の負担,放射線被曝の見地からも重要なことである。一人の患者にどのような検査を行ったか,その順序を辿れば担当医師の思考過程,時には臨床の実力が判るのである。病歴,症状,あるいは臨床検査から的を絞らず,いきなりCT,MRI検査を行うのは邪道であり,また,思考がぶれて右往左往するのは自らの評価を落とし,患者にも迷惑と言うものだ。
 本書の著者である竹川教授は練達の画像診断の専門家であり,IVRにも経験豊富な放射線医学者である。彼は若くして米国に渡り,研修医としての修練を受けた。以来,実地に培った知識と経験から成る研究成果を発表するとともに多くの学生,教室員を育てた。その実力は高く評価され,同時にその温厚な性格とともに尊敬を集めている。
 本書では長年にわたるご自身の臨床経験を生かし,筋の通った画像診断の方法が濃縮された。文献上の知識ではなく,極めて合理的に最終診断に至る思考過程,画像診断の粋が盛られている。畏友竹川教授によってこのような優れた画像診断の手引きが完成したことを喜びたい。
 本書によって,学生,研修医がこのような立派な教師の述べる思考過程を学び,画像診断を十二分に活用できる医師が一人でも多く育つことを望むものである。

 2012年2月
 大阪大学名誉教授
 貝塚市立貝塚病院名誉総長
 小塚隆弘


推薦の序
 本書にて放射線治療を担当している田中良明博士は,日本の放射線治療を黎明期から長期間にわたってリードされたこの道の大家である。放射線治療における最先端治療から各臓器がんにおける標準治療まで,すべての領域に精通している。また,放射線治療だけでなく「熱」という物理学的エネルギーをがん治療に応用した温熱療法についても国内で厚生省の大型研究を8年間にわたって主導し,国内のみならず国外にも日本の誇る成果を発信し続けた信念の人である。
 『放射線医学イントロダクション―縦横無尽の入門講義』というユニークな題名の書籍であるが,イントロダクションと縦横無尽の2つが本書を表すキーワードであろう。入門者にわかりやすく,しかもダイナミックに発展している放射線医学の面白さを教えたいとの思いがこの題名に結実したと想像している。小生の体験からも入門書は専門書よりはるかに難しい。言うは易く行う(著す)は難しである。このような書物が実現できたのは,田中博士の博識と豊富な臨床経験によるものである。
 放射線治療に関心のある医学生・若手医師,また放射線治療を修練中の医師に是非勧めたい一冊である。

 2012年2月
 京都大学教授
 日本放射線腫瘍学会理事長
 平岡真寛



 本書は,筆者らが長年の医学部学生教育,初期研修医指導から得た経験を基に,放射線診断と放射線治療の理解を深めるための入門書として企画しました。
 特に学生さんは経験が浅いため画像解釈の手順がわからなかったり,正常像や臨床上問題のない先天性奇形と病的所見の区別を難しく感じることがあります。また初期研修医になっても,学生時代に充分な教育を受けられなかったため,臨床において難渋するケースが見受けられます。医学部のカリキュラム時間不足に関しては教育制度に問題があり,我々教師にも責任があると反省しているところです。
 そこで筆者らは正規の教科書を補うべく,画像診断,放射線治療について横から,時には縦から,できるだけかゆい所に手が届くように解説しました。特に医師免許を取得したばかりの若い医師でも責任ある診療ができるように考慮したつもりです。
 このような書籍をまとめることができましたのは,診療と教育に携わる我々をご指導下さった恩師,先輩,医療の現場で協力を頂いた同僚,後輩,諸種の支援を頂いた診療放射線技師,看護師さん方のおかげであると思っております。特にcollaborationとご厚意を賜った臨床各科の先生方,ご教授を頂いた病理専門医の諸先生に深く感謝を捧げます。
 さらに,本書の完成は筆者らの意図を汲み取って出版を後押しして下さった医学書院の七尾 清氏,阪本稔氏,読者を考慮して卓抜な編集をして下さった林裕氏のご努力に負うところが大であり,ここに深甚なる謝意を表します。
 また,過分な推薦の序文を頂きました大阪大学名誉教授小塚隆弘先生ならびに京都大学平岡真寛教授に深く感謝申し上げます。
 本書が医学部学生,初期研修医,放射線診療の協力者である診療放射線技師,看護師さんに役立つことを願っています。

 2012年2月
 竹川鉦一,田中良明

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 推薦の序(小塚隆弘)
 推薦の序(平岡真寛)
 序

第1章 放射線診断
 はじめに
 1.放射線診断はじめの一歩
 2.胸部
   A 胸部X線写真の見かた
   B 骨・軟部組織
   C 縦隔
   D 肺野
   E 胸膜・横隔膜
   F 上腹部
   G 肺の急性疾患
 3.腹部および骨盤
  I 腹部X線写真の見かた
   A ガス像
   B 脂肪
   C 軟部組織
   D 石灰化
   E 金属
  II 消化管疾患の診断
   A 食道疾患
   B 胃疾患
   C 十二指腸疾患
   D 小腸疾患
   E 大腸疾患
  III 肝・胆・膵疾患の診断
   A 肝疾患
   B 胆道疾患
   C 膵疾患
 4.脳神経
 5.頭頸部
 6.骨格および軟部組織
  I 骨および関節
  II 軟部組織(乳腺以外)
  III 乳腺疾患
 7.泌尿器疾患
 8.婦人科疾患
 9.免疫低下患者と合併症

第2章 血管造影・IVR
 1.血管造影およびIVRの進展
 2.IVRの実際

第3章 放射線治療
 1.はじめに
 2.放射線治療の方法
   A 外部照射法
   B 密封小線源治療
   C 内用療法
   D 温熱療法
 3.放射線治療各論
   A 中枢神経系腫瘍
   B 頭頸部腫瘍
   C 肺癌
   D 食道癌
   E 消化器癌
   F 腎・膀胱癌
   G 子宮・卵巣癌
   H 前立腺癌
   I 骨・軟部腫瘍
   J 造血器腫瘍
   K 小児腫瘍
 4.おわりに

第4章 核医学診療
   A 脳神経のシンチグラフィ
   B 甲状腺シンチグラフィ
   C 心臓シンチグラフィ
   D 肝シンチグラフィ
   E 骨シンチグラフィ
   F 肺血流シンチグラフィ
   G positron emission tomography(PET)
   H 炎症および腫瘍シンチグラフィ

第5章 放射線被曝を考慮した検査の実施

 参考文献
 掲載画像索引
 索引

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放射線医学の入門として最適な教科書
書評者: 山田 章吾 (杜の都産業保健会理事長/東北大学名誉教授・放射線腫瘍学)
 本書の特徴は,診断と治療のベテラン名誉教授二人によって執筆されている点,また入門に特化したわかりやすいコア・レクチャーである点にある。

 医学の進歩は急速である。特に医療機器に頼る放射線医学はコンピュータの出現以来,診断においてはCT,MRIやPETなど,また治療においては定位放射線治療や強度変調放射線治療(IMRT)など,日々進化している。進歩に乗り遅れず,さらに先を行くには学問は細分化されざるを得ない。放射線医学においても診断,治療,核医学,さらにIVRに分かれ,またそれぞれの領域で臓器別に細分化されている。

 教育においてもこの傾向は顕著で,単純写真や造影検査の時代には系統講義と称して教授一人が時にユーモアや人生観などを混ぜて講義をしていたものであるが,情報量がけた違いに多い現代においてはその余裕はない。ほとんどの講義は,准教授,講師など多くの教員総がかりで行われているのが現状で,こうした変化は教科書にも及び,放射線医学全般にわたる教科書ともなると執筆者は数十人を超えるのが普通である。多くの専門家による教科書は各専門家から深く詳細な知識を得られるという利点がある反面,何が大事で何が重要でないかがわかりにくいといった欠点もある。各専門家にとってはあれも大切これも大切であり,また,いろいろな読者がいるので知識を切り捨てることができないためである。専門的教科書はこれでよいが,入門的教科書には別な形があってよいと思う。

 本書は放射線診断学を専門とする竹川鉦一名誉教授と放射線腫瘍学を専門とする田中良明名誉教授の二人で執筆されている。二人とも私どもの大先輩で,現在も臨床で活躍されている。本書は,その豊富な経験を生かし放射線医学の入門者にとって特に必要な核心のみを残し,それこそ他をバッサ,バッサと切り捨て,さらに各専門領域に“縦横無尽”に立ち入って必要な知識を記憶に残りやすく解説した大変ユニークな入門的教科書である。

 増加し続ける医学知識をすべて学生に講義しても記憶に残るのはわずかである。むしろ講義では核心に絞り,応用力を身につけさせることのほうが大切だとして医学教育にコア・カリキュラムが導入された。しかし,講義時間を短縮してコアのみのわかりやすい講義をとお願いしても,結局以前と同量の講義を早口で行っている講師も多い。講師も学生も,切り捨てられる知識,伝えられない知識があることが不安なのである。しかし,すべての情報を記憶するのは不可能であり,またいずれは各々の診療科の,さらに細分化された専門家として診療に当たることを考慮すると,専門領域以外は本当に核心のみ長期間記憶していればよいのではないかと考えられる。

 最初の画像診断やがん治療における治療の選択は,患者さんにとって決定的な意味を持つ場合が多い。その点本書は,放射線医学のコア・レクチャーとして,緊急時において忘れてはならない画像診断のサインや,がん治療において放射線治療の役割を患者さんに説明できる知識などを豊富なX線写真やイラストを用いて平易に解説している。さらに,福島第一原子力発電所の事故を受けて特に関心が高まっている医療被曝に対しても適切に解説されている。

 これから放射線医学を志す人や医学生,また当直など専門家に相談する前に放射線診断を余儀なくされる研修医など多くの医療関係者に,本書は放射線医学の入門書として最適と推薦できる。

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